ニュースの真相

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リニア騒動の真相43「正直」こそ最善の戦略!

シナリオ通りの「知事と10市町長の会議」  静岡県の川勝平太知事は11日、リニア南アルプストンネル建設作業道となる静岡市の東俣林道等を視察した。その視察結果を受けて、「知事と大井川流域10市町長とのリニア関連意見交換会」が16日、静岡県庁と島田、焼津、掛川、藤枝、袋井、御前崎、菊川、牧之原、吉田、川根本の10市町をウエブで結び、テレビ会議方式で開かれた。袋井市長が3度も「聞こえますか?」と大きな声で繰り返すなど、相互に何を言っているのか分からず、また音が割れてネット視聴では非常に聞き取りにくかった。そのせいか、島田、御前崎、川根本、牧之原、掛川、袋井の6市町長が意見を述べたあと、県事務局から「(川勝)知事の都合で、金子(慎JR東海)社長と会うことでよろしいか?」と尋ねると、それまでの6人の回答は賛成4、反対2だったにも関わらず、全員がすんなりと了解した。  その後、藤枝、菊川、焼津の市長代理が用意した文書を読み上げるなど意見交換にはほど遠く、そんな中で、掛川市長が「JR東海の準備工事は静岡県の権限でストップできるのか?」と尋ねたのが、唯一、聞く価値のある議論だった。難波喬司副知事が「(許可権限を持つ河川法は)河川区域に関わるものであり、(準備工事の対象となる椹島、千石、西俣の)ヤード(トンネル工事を行うための宿舎を含めた作業場)は対象外である。ヤード拡張に伴う県自然環境保全条例による協定締結は必要」などと答えた。  今回の目的は、JR東海の「準備工事」を認めるのかどうかの意見を聞くことであり、各自治体の行政トップにある者ならば、「権限」があるかどうかが何よりも優先するはず。それが全く「権限外」の事案にどのように当たるのか?それでも、難波副知事の回答に疑義をはさむ首長はいなかった。  川根本町長が「ヤード内に生息する動物がどこかへ行ってしまったかもしれない」と述べたが、その疑問に回答できるのはヤード内の準備工事に関わる権限を有する自治体のみである。  しかし、その肝心の自治体は「意見交換会」の席に呼ばれていなかった。 「準備工事」権限を持つ静岡市は外された  JR東海が求めているヤードの準備工事とは、土砂ピット(穴)、濁水処理設備、資材置き場、坑口予定個所の樹木伐採や斜面補強など。これらの作業に関わる法律は土壌汚染対策法、森林法、土砂採取条例、県立自然公園条例など、さらに、宿舎建設のためには建築基準法の確認作業なども必要。それらの権限はヤード所在地(静岡市葵区田代)である静岡市が有している。  静岡県が権限を有する河川法許可の審査基準に、「治水上又は利水上の支障を生じないものでなければならない」とあるから、本体工事について中下流域9市町の意見を聞くのは理解できる。しかし、今回の「準備工事」について河川法の「対象外」と難波副知事が明言した。これまでは利水に関係する問題ということで静岡市を外していた。「準備工事」を行えるのかどうかを問うのであれば、静岡市の意見を聞くのが本来の筋である。  川勝知事と田辺信宏静岡市長との関係がどのようなものであれ、本川根町長の発言「ヤード内の工事で動植物についての影響をどう考えるか」は、川勝知事の主張する南アルプスエコパークの重要性に通じている。すべて静岡市に関わる問題であり、静岡市がリニア問題の会合を避けているかどうかは分からないが、県は静岡市に出席を求めるか少なくとも意見を聞いておくべきだった。  意見交換会の結論について、各紙は『準備工事6月再開認めず 知事と首長ら意見交換 「国の有識者会議待つ」』(日経6月17日付)などと紹介した。「JR東海社長に流域住民の思いを伝えてほしい」(島田市)、「国の有識者会議の結論を待つべき」(掛川市)、「2027年開業にこだわるヤード整備の進め方は住民の不信感が増す」(藤枝市)など的外れの意見が続いた。  結局、「準備工事6月再開認めず」の結論で終えた。島田市長は「リニア工事に反対しているわけではない」とも述べていた。政治家としての戦略の1つかもしれないが、「本体工事」に関わる水環境問題ではないところまで「反対」してしまえば、全国の有識者は「静岡県は(本当は)リニア反対」と見るだろう。  今回の意見交換会をシナリオに沿った”茶番劇”と批判する関係者がいたが、その批判を否定できない。静岡市を外した上で、このような結論では、まともな議論を行っているとは思われないだろう。 昨年9月の川勝知事「筋違い」発言  昨年9月10日の定例記者会見で、川勝知事は「(田代ダムの水利権の話をJR東海に求めるのは)筋違い。第三者のJR東海は何か言うべき立場にはない。JR東海がやるべきは湧水全量を戻すことに尽きる」と述べた。  「上流部の河川水は、その一部が東京電力管理の田代ダムから早川へ分岐し、山梨県側へ流れている。このことを踏まえた上で、静岡県の水は静岡県に戻す具体的な対策を示す必要がある」と県は中間意見書でJR東海の見解を求めた。この意見書では「田代ダムから山梨県側に流出する静岡県の水を何とかしろ」と求めているように読めるから、JR東海は「東電の管理する田代ダムについて取水の制限をするのは当社では難しい」と回答した。  このような議論に対して、川勝知事「筋違い」は、田代ダム水利権はJR東海ではなく、静岡県、中下流域の利水者と東電との問題であることを踏まえた発言だった。  川勝発言などを紹介した『リニア騒動の真相16「筋違い」議論の行方?」は、「Honesty is the best policy」を結論として挙げた。雷と電気が同一であることを立証して避雷針を発明した科学者で、アメリカ独立宣言起草者の政治家ベンジャミン・フランクリンは『「正直」は美徳ではなく、最善の戦略である』をモットーにしたことを踏まえ、川勝知事は「Honesty is the best policy」を承知して、「正直=最善の戦略」を取っていると評価した。果たして、今回はどうか?  金子社長は26日、県庁を訪れ、川勝知事と会談する。1時間の予定であるが、川勝知事は10市町長との意見交換会結論「6月中の準備工事再開は認められない」を伝えるだけなのだろうか?20日付静岡が「県庁本館の正面玄関で金子社長を知事が出迎える」として、”異例の厚遇”という記事を書いた。単にマスメディアのための演出ならば、金子社長は出迎えを断り、そっと裏口から入ったほうがいい。”異例の厚遇”が単なる表面的なものではなく、知事の「正直=最善の戦略」であるかは政治家としての評価につながるだろう。 大井川開発の歴史は大倉喜八郎に始まる  6月14日付『リニア騒動の真相42雨中の”こんにゃく問答”対決!』でそもそも「準備工事」は静岡県の権限ではないのだから、「JR東海は地権者の特種東海に要請すべき」と書いた。  南アルプスの24430㌶という広大な社有林経営のためにことし4月誕生した特種東海関連会社・十山(本社・静岡市)の鈴木康平社長は「(準備工事でJR東海が静岡県の了解を得てもらうのは)利水者でもある当社の価値を守るため」と答えている。「死の商人といわれた大倉喜八郎には、日露戦争で缶詰に石ころを入れて送ったという噂が根強く流れていた」(河原宏『日本人の「戦争」』築地書館)という大倉喜八郎がその広大な山林を買収した。噂通りの冷徹な商人を創業者に持つならば、どうしてJR東海の最大事業に手を貸さないのだろうか?  「東海パルプ100年史」(2007年12月)序章は、「大倉喜八郎と井川山林」を詳しく書いていた。「電気好き」だった大倉は渋沢栄一らと大倉組内に東京電燈(後年、東京電力に吸収)を設立したとある。関係者によると、大井川の水を田代ダムから早川に流して電力事業に乗り出したのは、大倉だったようだ。  田代川第1、第2発電所は大井川から最大取水量4・99㎥/秒の水利権を持つ。東電は田代ダムに貯水される大井川の水を最大4・99㎥/秒使用できる。南アルプストンネル開設後、大井川表流水の減量分0・7㎥/秒のうち、JR東海は0・4㎥/秒を西俣非常口から西俣川に戻すとしているが、田代ダムからの維持流量を増やすほうがずっと大井川の水は戻るはずである。  特種東海が南アルプスの地権者としてではなく、下流域の利水者としての立場で、JR東海に県の了解を求めるように主張するのは田代ダムの話を振られたくないからなのだろうか?  大倉の時代、井川地区をはじめ南アルプスは林業が栄え、多くの人々が生活の糧にしていた。11日の知事視察に同行した記者たちは、大井川河岸にあまりに大量の流木が押し寄せているのに驚き、林業がいかに廃れてしまったのかを目の当たりにした。  林業の栄えた大倉の時代は遠い昔であり、井川などの貧しい過疎地域も中下流域からは遠い場所にある。だからこそ「水を飲む者はその源を思え(飲水思源)」が大切なことばとなる。 「飲水思源」の感謝が解決の糸口だ  「飲水思源」は、静岡市出身の高橋裕東大名誉教授(河川工学)が教えてくれた。30年前、中国でその言葉を知った高橋教授は当時、日本の各地で起きていたダム反対運動を連想したという。「下流でダム開発により水資源の恩恵に浴する人々は、上流でダムによって水没した人々や集落に思いを馳せよう」と話した。  林業が廃れたいま、特種東海は椹島を中心に観光開発に期待を掛けている。それが、上流部に生活する人々に恵みをもたらす可能性は大きい。  「桶つくるさわらの島の新事業、でき上るまでたがをゆるめな」。1926年大倉喜八郎が90歳を記念して、標高3120mの赤石岳登頂のときに読んだ歌が残る。当時の新事業とは水力発電だったが、いまや観光開発こそ期待の新事業である。  26日午前、奇しくも静岡市で特種東海の株主総会が開かれる。金子社長はその席へ出向き、特種東海社長に懇願したほうがいい。さらに、午後1時半からの知事との面会に同席をお願いすべきだ。「準備工事」がテーマであるならば、地権者の同意は欠かせない。それが南アルプス観光開発につながる。  20日付中日は1面トップ記事で「2027年リニア開業が絶望的な状況」を伝えた。本体工事に6年余も掛かるのであれば、準備工事を6月から始めてもとても2027年に間に合わない。知事も副知事も「河川法の許可権限」を取引材料にしないと重ねて明言してきた。水環境問題は科学的、工学的に議論を重ねても、正しい結論を得るのは非常に難しい。当初、JR東海は流域の市町へ思いを馳せることをしなかった。だから、これほどまでに静岡県の理解が得られていない。JR東海も「飲水思源」の感謝のことばを胸に流域の人々に向かい合ってほしい。 ※タイトル写真は静岡県庁で川勝知事が10市町長とのウエブ会議にのぞむ様子。撮影後、事務所に戻り、パソコンで会議を視聴した

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リニア騒動の真相42雨中の”こんにゃく問答”対決!

昨年も同じ議論、県は「本体工事」を蹴る  ほぼ1年ぶりとなる6月11日、川勝平太静岡県知事の南アルプスリニア工事現地視察に再度、同行した。時折、激しい雨が降る中、川勝知事は精力的に大井川河原を歩き回り、大規模な斜面崩壊が長期間にわたって続く赤崩(あかくずれ)の現況などをJR東海の宇野護副社長、メディアの記者らに説明した。視察終了後の囲み取材で川勝知事は「宇野副社長が赤崩を間近で見たのは初めてと聞いた。ぜひ、金子(慎JR東海)社長にも大井川両岸のすざまじい土砂崩壊をご覧いただきたい」などと話した。  赤崩から静岡工区基地となる椹島(さわらじま)ヤードに到着後、現地の作業員と話して、1年前とどこが違うのか、そして「準備工事」と「本体工事」の違いが何かがはっきりと見えてきた。  昨年7月24日、金子社長は会見で「5月20日に申請をした静岡県の許可が非常に遅れている。これでは準備工事に入れない」など、今年同様の発言をした。不当に審査を延ばしているという金子発言を受けて、担当局長は通常1カ月で終える審査が2カ月以上掛かっていることについて、「精査しているから」と答えた。  それから3週間後の8月13日、静岡県はJR東海から申請のあった河川の仮占用を許可した。この許可によって、千石ヤードに電線、水道管が通り、作業員らの8棟の宿舎のための「準備工事」が始まった。今回の知事視察に立ち会った作業員たちは千石ヤード宿舎を使っていると答え、毎日、約40㌔離れた井川地区から東俣林道を通う危険なでこぼこ道から解放された。  昨年8月の段階で、静岡県は「本体工事」について認めなかった。千石ヤードから西俣ヤードまで2車線の工事用トンネル約4㌔を建設する予定であり、工事用トンネルを掘り出すためには大量の電力が必要となるが、許可しなかった。JR東海は、あらためて大型重機などを動かす電線仮設の許可申請をしなければならない。当時、「精査」が必要だったのは、「準備工事」と「本体工事」を区別する作業をしていたからだ。その結果、宿舎用など957kWの電力供給を認めたが、工事用トンネル建設の約1400kWの電線架設は除外された。  「本体工事」に入るためにはどうしても静岡県の許可が必要となる。だから、それ以外の樹木伐採や整地など静岡県に許可権限のないすべてが「準備工事」と考えればいい。「準備工事」をJR東海が進めたからと言って、なし崩しに「本体工事」に入ることなどできるはずもない。 「準備工事」はちゃんと進んでいた!  「今月中に静岡工区での『準備工事』に入らなければ、リニアの2027年度開業は難しい」。金子社長の発言を受けて、川勝知事は「トンネルを掘るための工事なら本体工事の一環だ。2027年はJR東海の単なる企業目標にすぎない」などと答える。  金子社長の求める「6月中の準備工事再開」が大きなテーマとなり、記者たちの質問が集中した。「本体工事」と「準備工事」の違いは何か?川勝発言は融通無碍に変わった。実際のところ、川勝知事は「本体工事」と「準備工事」の違いを十分に理解した上で、「禅問答」をしていたのではないか。12日付新聞各紙は「準備工事 月内再開認めず」(産経)「知事、『準備工事』に否定的」(静岡)などの見出しが並んだ。  それでは次の2枚の写真を見てもらおう。  1枚目は2019年6月13日に現地視察をした際の椹島ヤードから大井川を見下ろしたものであり、2枚目は今回の視察で知事がJR東海からの説明を受けた、ほぼ同じ位置からのもの。左側に見える赤い矢印がリニアトンネルからの湧水を流す導水路トン ネル排出口付近を指す。ところで、1枚目の写真と2枚目では大きく違うのがわかる。昨年は大井川河原は大量の砂利堆積が続いていたが、今回は膨大な河原の砂利がきれいに片付けられ、さらに導水路付近が一段高くなり、河原には排水のための水路ができている。赤い矢印の区域は整地されている。「準備工事」は着々と進んでいたのだ。12日、JR東海が発表した資料では、赤い矢印区域の濁水処理設備等の設置や樹木伐採、斜面補強など手をつけたいようだ。ただ、2枚の写真を比べると、手前の斜面補強はすでに行っているように見える。  現地視察後、宇野副社長に「もし、『2027年度開業』が絶対に外せないならば、静岡県には何の権限もないのだから、地権者の特種東海製紙に強く要請すべきではないか」と聞いた。宇野副社長は「静岡県の”了解”をとってくれと特種東海が言っているから」と答えていた。  現地視察をしたあと、川勝知事、宇野副社長の話を聞くと、まるで「こんにゃく問答」だった。とんちんかんでわけのわからない「禅問答」である。 「こんにゃく問答」ー特種東海が”了解”求めたから?  リニア静岡工区工事で最大級の恩恵を受ける特種東海はなぜ、JR東海の意向を無視するのだろうか?  JR東海が「準備工事」を進めたい椹島、千石、西俣の3つのヤード、それに続く道路などいずれも地権者は特種東海である。また、特種東海(島田市の旧東海パルプが前身)は毎秒2㎥もの水利権を有する、大井川の恩恵を受ける利水者でもある。リニア工事は流域の10市町には何のメリットもないが、特種東海は”リニアバブル”とやゆされるくらいに経済的な恩恵にあずかるといわれる。  椹島に建設される大型の宿泊施設はリゾートホテルに転用される。また、東俣林道が整備されれば、特種東海の二軒小屋ロッジ、ウイスキー工場などを含め南アルプス観光の発展が大いに期待できる。リニア工事後にはすべて特種東海が運営していく。それなのに、特種東海はJR東海の要望になぜ、首を縦に振らないのか?  昨年のように静岡県に権限があるならば、川勝知事に許可を求めるのが筋だが、今回の「準備工事」は違う。ところが、川勝知事が認めないから「準備工事」ができないと報道、そのために、2027年リニア開業の遅れは必至とメディアは伝える。  「準備工事」再開のために、金子社長は川勝知事の面会を求める。23日開催のJR東海株主総会で、川勝知事が認めないから、「準備工事」に入れず、2027年開業が遅れると説明するのだろうか?これでは静岡県がストップを掛けているようだ。静岡県に「準備工事」を止める権限など全くないのだから、特種東海と話すべきである。  2027年開業にどうしても「準備工事」が必要ならば、民間のトップ同士で話し合えば、何とかなるはずではないか。わからないのは、川勝知事の顔色をうかがうことで特種東海にどれほどのメリットがあるのかだ。そもそも、JR東海、特種東海との間にどのような契約があるのかもさっぱりわからない。もし、「2027年開業」が遅れた場合の責任はJR東海か、静岡県か?はたまた特種東海か?  川勝知事、宇野副社長の「こんにゃく問答」を演出したのは、実は特種東海だったかもしれない。 「崩れ文化」を共有する流域市町のための視察  13日、国交省の水嶋智鉄道局長、江口秀二技術審議官らが報道陣を入れないで現地視察をスムーズに行った。午後6時半からの会見で水嶋局長は「『準備工事』、『本体工事』といったことばが乱れ飛んでいるが、観念的、抽象的なことばの議論に陥らないで建設的な議論が行われることが重要」などと話した。まさに、その通りである。  ただし、川勝発言が観念的、抽象的な「禅問答」となったのは、JR東海にも責任がある。権限に基づかない、あいまいな”了解”を求められたからである。水嶋局長は「県が判断を行う場合、どのような法的根拠によるものか明確に示す必要がある」と指摘、それでは、特種東海から川勝知事に託された”了解”はどのように考えるのか、水嶋局長に尋ねたが、はっきりとした回答は得られなかった。多分、当事者同士ではないので深く立ち入ることはしないのだろう。金子社長は昨年から「準備工事」ということばを使い、静岡県もその違いを認識していた。一度、国交省主導でJR東海、特種東海の会合を持ったほうがいいのではないか。”了解”などという法的根拠や制度とは関係のないあいまいな手続きのための面会を求められているのだから。  16日のウエブによるリニア関係10市町長意見交換会(焼津、藤枝、菊川は代理)が行われたあと、今月中に川勝知事は金子社長と話し合いを持つのだろう。  川勝知事が、金子社長にも見せたいと言った「赤崩」は崩壊面積約38㌶にも及ぶ大規模な崩壊地である。もし、赤崩の治山事業を行えば、数百億円規模に膨れ上がる。リニアトンネル工事で最大の残土置き場となる燕沢(つばくろさわ)で、堰堤の土砂が埋まっていることを川勝知事は指摘した。1966年から、静岡県の要請で林野庁の民有林直轄事業がスタートしているが、あまりに大規模なために広範囲には手が付けられない。かろうじて、燕沢には治山用の堰堤が築かれている。大井川両岸の「崩れ」はいたるところで見られる。  下流域には生命に匹敵するほど大切な水同様に、大井川の大量の土砂も大切である。長い年月を掛けて堆積していき、大井川平野を形成した。さらに駿河湾に流れ出て美しい海岸部をつくる。川勝知事は、大井川の「崩れ文化」を話すことで、その流域に暮らす人々の生活に思いをはせてほしいと金子社長にお願いするのだろうか。  どのような決着点か見えてこないが、国交省が適切な指導に入る姿勢だから、建設的な結論に向かうはずである。 ※激しい雨の中、川勝知事(左)、宇野副社長が燕沢の残土置き場を視察した

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リニア騒動の真相41「県益」を考えた対応を!

100キロ離れた中下流域の影響はない!  「核心に触れてきた」。6月2日国交省で開かれた第3回リニア中央新幹線静岡工区有識者会議をまとめた福岡捷二座長(中央大学研究開発機構教授)のことばがすべてを物語っていた。福岡座長発言は、沖大幹東京大学教授(水文学、水資源工学)、徳永朋祥東京大学教授(地下水学、地圏環境学)らの発言を受けたもので、静岡県関係者を慮ってか、結論的な物言いはしていないが、議論の全体を聞いていれば、有識者会議の方向性がほぼ決まったことが分かる。  要するに、トンネル内の湧水全量を戻すことで中下流域の地下水に影響はないことを静岡県民にどのように説明していくのか、そのために、JR東海には各種データをよりわかりやすく工夫するように求めたのだ。  有識者会議は「中下流域の地下水への影響」、「工事期間中の湧水県外流出」を2大テーマとしている。この2つのテーマは密接に関連しているように見えるが、実際は全く違う。少なくとも、沖教授らはそう考えていることがわかる。  「湧水全量戻してもらう。これは県民62万人の生死に関わる」。「日経ビジネス」(2018年8月20日号)誌上に掲載された静岡県の川勝平太知事発言は、「大井川表流水」の問題だった。それがいつの間にか、「中下流域の地下水への影響」問題にすり替わった。  静岡県の専門家会議は、トンネル工事によって地下水の流れを切断、または流れを変える可能性、重金属等の有害物質が地下水に流出する可能性を指摘、百㌔も離れた中下流域の影響を問題にした。それを受けて、川勝知事は2つの違う問題を全く同じ視点で発言するようになった。川勝発言を受けてか、百㌔離れた中下流域の市町長らは過去にあった「水返せ運動」と同列で騒ぎ立てた。  JR東海は一貫して中下流域の地下水への影響は生じない、としてきた。今回の会議でも、宇野護副社長、澤田尚夫中央新幹線建設部次長は「中下流域の地下水は掘削される南アルプストンネルから約百㌔離れており、影響は生じない」を説明、沖教授らがこれを支持する発言を行った。  有識者会議に出席する静岡県専門部会の森下祐一静岡大学客員教授、丸井敦尚国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センタープロジェクトリーダーも沖教授らの発言に「異論」を唱えなかった。水循環基本法フォローアップ委員会座長で、世界的な水の権威の発言を否定するのは難しいのだろう。 中下流域で問題が起きれば、「ブラックスワン」  大井川地域など県中部地域の地中に蓄えられている地下水賦存(ふぞん)量は58・4億㎥、そのうち地下水障害を発生・拡大させることなく利用できる地下水量は3・4億㎥。1960年代後半から焼津、吉田などで盛んに行われた養鰻業によって地下水の減量が顕著になったことから、71年に地下水の採取に関する県条例を制定、77年に改正、さらに2018年にも改正されている。  地下水採取を公的に管理する静岡県は、中下流域の15本の井戸によって、地下水の経年変化を調べている。有識者会議では、最上流部にある新東名付近の島田市島から下流域の吉田町川尻、焼津市藤守、牧之原市細江などの井戸15本の地下水位(常時計測)10年間の結果を別冊データとして専門家委員に示した。毎年の最大、最小、平均とともに、月平均水位など詳しい地下水の水位がひと目でわかるようになっている。条例制定後、現在まで大井川地域の地下水はほぼ同じであり、大きな減少などは見られない。  大井川は間ノ岳(3189㍍)を源流に駿河湾まで約168㌔の長さ、流域面積1280㌔平方㍍の大河川。間ノ岳だけでなく、大井川の水源は日本第2位の白根北岳(3192m)、荒川岳、赤石岳、聖岳など3千m級の南アルプス13座の山々が連なり、中下流域まで百㌔の間に不連続の断層帯が続き、南アルプスの地下水が中下流域まで伏流水のように流れていく仕組みは見られない。  リニアトンネル建設地の下流域には数多くの支流があり、豊富な水が本流に流れ込み、中下流域への利水の役割を果たす国交省の長島ダムに水を供給している。  中下流域の地下水量に大きな影響を及ぼすのは、それぞれの地域の雨量や工場などの取水量である。百㌔も離れた河川上流部の水の変化が地下水にどのような影響を及ぼすかという調査研究が行われないのは、JR東海の主張通り、大井川の場合、表流水として、そのほとんどが流れているからであり、南アルプスに降った雨が下流域の湧水となるわけではないからだ。川勝知事が「62万人の生命に影響」と言うのは、大井川広域水道を利用する島田、焼津、掛川、藤枝、御前崎、菊川、牧之原7市を合計した人口であり、まさしく「表流水の問題」である。  「リニア騒動の真相35『ブラックスワン』が起きる?」で、地下約4百mに建設される南アルプストンネル(約8・9㌔)が百㌔以上離れた地域の地下水に影響を与えてしまうとすれば、科学的な常識を超えた現象である、と書いた。つまり、「ブラックスワン」(常識を覆す大変化が起きること)が大井川の中下流域で起きる可能性はゼロではないが、限りなく、ゼロに近いことも確かである。そのためJR東海は期間無制限の「補償」にも言及している。  地下水を大量に使ってきた養鰻業は廃れてしまったが、生活用水を地下水に依存する吉田町はその影響には強い関心を持つ。「想定外の事態(地下水の枯渇)に対し、誰も責任を取り続けることができない。JR東海は100年、200年、300年、400年と責任を取り続けてくれない」(吉田町長)発言は政治家としては理解できるが、「科学的、工学的な議論の場」では相手にされない。つまり、もし何か万一のことがあったらという「ブラックスワン」を取り上げるのは、「政治的な議論の場」であるからだ。その役割は川勝知事に任されている。 非公開は「本県に厳しい結論を出すため」?  有識者会議を伝える3日付新聞各紙を見て驚いた。ほとんどすべてが会議開催を伝えるだけで、各委員発言を紹介したのは中日のみだったからだ。静岡は『データ不足 JRに指摘 委員「事実、推定分けて」』の見出しで、委員たちの議論の中身に触れず、JR東海のデータ提示をより分かりやすくという委員らの指摘を紹介しただけだった。中日は有識者会議各委員の主な発言をまとめた。  「トンネル湧水を全量戻すなら下流に影響しないはず。大井川の平均流量・毎秒74㎥と比べれば、先進坑掘削時に(山梨県側に)流出する毎秒0・08㎥が受忍限度かは受け手の気持ち次第。JRは住民が何に不安なのかをしっかり理解して、影響の比較対象を考えるべきだ」(沖大幹東京大学教授)、「技術者の感覚として(JRが提示した掘削予定地付近の水の浸透しやすさを示した数値からは)上流域の地下水はある程度河川に流れ出ている可能性が高く、中下流域の地下水の影響は大きくないとみられる」(徳永朋祥東大教授)など各委員の主張の”肝”をわかりやすく伝えていた。  新聞紙面が何をどのように伝えるのかは、それぞれの編集方針があるのだろうが、これでは中日以外の読者は有識者会議の議論内容を理解できないだろう。やはり、関心のある向きは国交省が公開する議事録を読むべきだ。  6日付静岡は、県議が有識者会議傍聴ができないことを問題視という記事を掲載した。取材すると、共産党、ふじのくに県民クラブの県議が傍聴を希望していた。静岡の記事では、県議の一人(匿名)が「専門家会議が委員名を伏せるのは、本県に対して厳しい結論を出そうとしているからでは」と伝えている。「本県に対して厳しい意見」とは何か?中日を読めば、どの委員がどんな主張をしているかの一端は理解できるだろう。「中下流域の地下水に影響はない」が「厳しい結論」だと考えるならば、県議は会議の趣旨を誤解しているのか、全く分かっていないかだ。  第1回会合のJR東海金子慎社長発言が問題になり、金子社長は正式に謝罪した。「科学的、工学的な議論の場」に自社の都合とも言える政治的な発言をしたからである。川勝知事は金子社長が面会を求めたのに対して、「有識者会議の検討を見守るのが筋だ」と回答している。  「会議の結論を県議会で検証するためにも傍聴は必要だ」と県議(匿名)は訴えたらしいが、会議の結論は議事録を読めば十分わかるだろうし、福岡座長がまとめるはずだ。どの委員がどんな意見を言うのかをチェックするのは「筋違い」である。  傍聴を許可されている新聞、テレビ報道が期待外れだとしたら、県議らは報道機関に厳しい意見を言ったほうがいい。 国交省全体と事を構えるのか?   前回の「リニア騒動の真相40」では、川勝知事が記者会見で水嶋智鉄道局長を批判した記事を書いた。静岡県はいまだに「全面公開」を求めている。1日付で難波喬司副知事は、赤羽一嘉大臣が「静岡県が求めている会議の全面公開との要件は、基本的に満たしているものだと考えている。こうしたことについては、静岡県の担当者の方とは事前に調整して、異論はなかったものと承知している」と発言したことに対して、『県はこれまで一貫して全面公開を求めており、「異論がない」と発言したことはない』と抗議した。  国交省に確認すると、ことし3月6日に「報道関係者の傍聴、会議後の記者ブリーフィング、議事録の速やかな開示」による「透明性の確保」について県側に説明、そこで「異論は出なかった」という。そのときに県側が「『異論がない』とは発言しなかった」とは言っているから、どちらの主張が正しいのか分からない。このような「闘い」は意味がなく、こじれれば、静岡県は鉄道局だけでなく、国交省全体と事を構えることになる。  静岡県は県民のために県土を発展させる役割を持つ。静岡県は長い間、公共事業のシェアが低く、そのために一般道路などの社会資本がお粗末だと批判されてきた。愛知、神奈川、山梨へ行ってみれば分かるが、静岡県の一般道路は各県と比較してあまりに貧弱である。国の公共事業を獲得できなかったからだ。必然的に県民は費用を支払い、東名、新東名など有料道路を使うことになる。歴代の政治家(知事、国会議員ら)が本県の公共事業をおろそかにしてきた結果は明らかである。  「国益」があると同様に「県益」もあり、各都道府県知事、地元選出国会議員らは今回のコロナ対策でも競っている。川勝知事は赤羽大臣と面会する目的を、「全面公開」を求めるだけでなく、来年の東京オリンピックなどでの支援を求めることを挙げていた。  「包帯のような嘘を見破ることで学者は世間を見たような気になる 時の流れを止めて変わらない夢を見たがる者たちと戦うため」(中島みゆき「世情」)。沖教授は自著「東大教授」(新潮新書)でこの歌をうたっていた。 ※タイトル写真は2日開かれた「第3回有識者会議」(国交省提供)

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リニア騒動の真相40「川勝劇場」の正当性探る?

なぜ、川勝知事は”爆発”したのか?   『恥を知れ、と言いたい』  あまりに強烈なひと言だった。静岡県の川勝平太知事が国交省の水嶋智鉄道局長を名指しした批判である。その他にも「folly(愚か者)、(水嶋局長は)猛省しなければならない」「(水嶋局長は)会議の運営が拙劣である。マネジメントの不誠実さが現れている」「(JR東海の)金子(慎)社長を(有識者)会議に呼んだのだから、責任を取るのは会議を指揮した水嶋局長ではないか」「金子社長の発言を許したのは水嶋局長、金子社長を(有識者会議に)呼んで謝罪、撤回させるのが筋だ」「(水嶋局長は)金子社長にすべて責任転嫁させている。水嶋局長は要するに筋を曲げている、約束を守らない、やる気がない」などなど。水嶋局長へのさまざまな不満、批判が続いた。なかでも川勝知事のボルテージが最高潮に達した「あきれ果てる運営で、恥を知れ、と言いたい」が極め付けだろう。  27日午後、静岡県庁別館の知事会見場へ足を踏み入れると、テレビ、新聞のカメラがいつもより多いのに驚いた。田辺信宏静岡市長、鈴木英敬三重県知事らに厳しい批判を繰り返した「川勝劇場」幕開けを期待していることがはっきりとしていた。  22日川勝知事が国交省主催の有識者会議について、「会議の透明性」「JR東海への指導」について申し入れを送ったのに対して、26日水嶋局長の回答が寄せられた。いずれも川勝知事の求めを退けた。ゼロ回答に対して、川勝知事コメントは「甚だ遺憾。もはや鉄道局とは話にならない。国交大臣に直接意見を述べたい」など”爆発”寸前だった。そのコメントを読めば、各社の記者たちは、恒例の「川勝劇場(激情?)」が始まるのが必至と見たのだろう。多数のカメラの中、まさにその通りとなってしまった。  さて、極め付けの『恥を知れ』である。水嶋局長の「恥ずべきこと」とは何か?川勝知事の批判は、主に1「会議の全面公開」、2「会議の運営」について静岡県の求めに応じなかったことにある。  本当に、水嶋局長は恥じなければならないのか? 水嶋局長批判は「筋が通らない」  水嶋局長は官僚であり、政治家ではない。当然、会議の運営について個人の裁量ではなく、国交省の判断基準に縛られている。法律や規則に沿って会議を運営しているはずだ。  国交省でもすべての会議は原則的に全面公開であるが、1機密性など 2個人情報などに関わるものの他に、3「率直な意見の交換若しくは意見決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合」などでも会議を非公開とすることはできる。静岡県の求める「全面公開、透明性の確保」について、水嶋局長は、報道関係者の傍聴、会議後の記者ブリーフィング、議事録の速やかな公表で確保しているという。  さらに、静岡県の求めに応じて、オブザーバーとして静岡県、大井川流域の8市2町のほか、新たに大井川利水関係者を加えた。また、沿線のリニア反対運動などを念頭に、有識者会議の各委員から、生配信での発言の取り扱われ方等に懸念が示されており、「限定的な全面公開」は委員の意向でもある。つまり、委員らの「率直な意見の交換」のために報道関係者らの傍聴に限るのは、水嶋局長個人ではなく、国交省の判断基準に沿ったものである。  静岡県の求める「全面公開」が公益上の必要性を認められるのかどうかは、最終的には赤羽一嘉国交大臣の行政的な判断に任せられる。26日付川勝知事コメント「国交大臣に直接意見を述べたい」。つまり、上位者の大臣に直訴したいのだろう。優秀な官僚であろう水嶋局長がこれほどこじれている問題をなおざりにするはずもなく、赤羽大臣の判断を仰いだ上で川勝知事に26日回答したと読むのがふつう。だから、よほどのことがない限り、国交省はこれを変えない。公務員であれば、誰もが承知する”常識”を静岡県担当者はなぜ、知事に説明しなかったのか?まさか27日記者会見で再び、川勝知事から「赤羽大臣」の名前が出るとは思いもしなかった。  また、静岡県の会議の公開基準も国交省とほぼ同じであり、1機密性など、2個人情報などのほかに、3「公開することにより、公正かつ円滑な議事運営に著しい支障が生じることが明らかに予想される場合」という曖昧な規定で非公開を容認している。これが国交省の「率直な意見の交換」などに当たる。つまり、静岡県もすべての会議情報を「全面公開」しているわけではない。  静岡県との約束は「全面公開」だが、具体的な会議運営を進める中で、特に委員の意向を無視するわけにはいかない。そんな事情は静岡県でも同じだろう。ああ、そう言えば、静岡県が「非公開」にした「リニア関連会議」があった。  当然、その会議でも「率直な意見の交換」があったはずだが、会議の核心はいまでも「非公開」のままである。 10市町長は「川勝知事一任」を決めたはずだ?  ことし1月20日、「川勝知事と大井川流域10市町首長とのリニア関連意見交換会」が静岡県庁別館で開かれた。14日にもらった通知では、非公開となっていたので、「川勝知事はリニア関連会議はすべて公開と言っていた」と担当課に話した。16日の修正で「知事あいさつ」まで公開とし、会議終了後に難波喬司副知事、染谷絹代島田市長が囲み取材に応じるとのことだった。「率直な意見の交換」の場であり、「非公開」はやむを得ないのかもしれない。  事務局の島田市に「議事録」公開を求めたが、静岡県、関係市町との調整があるので、しばらく待てとの連絡。1カ月以上過ぎた3月11日になって、ようやく手続き終了の連絡をもらった。開示費用を支払った文書は、調整が繰り返され、「議事録」と呼べるものに程遠かった。「鉄道局はリニア推進の立場であり、公平・公正な調整役ではない。国の新しい有識者会議のメンバーを公平・公正にするために、県からメンバーを入れる必要がある」、「全量回復と水質保全を大前提とした上で、JR東海の責任において、不測の事態に対し恒久的な対策を行う確約がない限り、基本協定の締結は認められない」、「想定外の事態(地下水の枯渇)に対し、誰も責任を取り続けることができない。JR東海は100年、200年、300年、400年と責任を取り続けてくれない」などが首長の意見だが、すべて匿名扱い。  昨年12月、雑誌『静岡人vol4リニア南アルプストンネル 川勝知事はなぜ、「闘う」のか?』を発刊したあと、雑誌寄贈を兼ねて、10市町長に取材を申し込んだ。5市町長は受けてくれたが、日程調整を含めて残りの市長との面会はかなわなかった。藤枝市担当者は「北村正平市長はリニアに関しては知事と全く同じ考え。そう書いてくれて構わない」と回答した。  つまり、1月20日の会議は、リニア問題についてJR東海、国交省からいろいろ働き掛けがあるが、10市町長の「川勝知事一任」を決めるのが趣旨だったという。  政治家の会議でもあり、「非公開」はある意味、理解できる。ただ、川勝知事はすべてのリニア関連会議を「公開」と決めて、国交省に厳しい意見で求めるならば、まずは、「隗より始めよ」の格言を思い出してほしい。情報公開されたあの程度の意見が交わされたのであれば、「非公開」にする理由は全くないからだ。 知事の現地視察は時期尚早である  27日午前、金子社長の謝罪文が静岡県に届けられた。川勝知事は金子社長に「公の場で謝罪、撤回する必要がある」と述べ、金子社長は29日の会見で静岡県から抗議を受けた自身の発言を謝罪、撤回した。さらに、流域の10市町長に「謝罪」の手紙を送る旨も明らかにした。これで川勝知事が水嶋局長に『恥を知れ』と批判した問題は解決した。  26日の川勝知事コメントは、「面会等についてはJR東海の社長発言等を見守ったうえで改めて関係者と調整したい」としていたが、27日金子社長「謝罪」の手紙を受け取ると、川勝知事は会見で突然、現地視察をした上で金子社長と面会するのかどうか判断すると述べた。  早期の面会を要請した金子社長の手紙(20日付)について、川勝知事は静岡市と約束した三峰バイパストンネル(仮称)について、その後どうなっているのか、完成見通しをはっきりと表明せよ、リニアトンネルの作業道となる静岡市東俣林道の安全確保を放置したまま「(面会の)お願い」は筋違いなどとする手紙(22日付)を送っている。知事の手紙に対して、27日付金子社長「謝罪の手紙」は、トンネルについては「間もなく、静岡市と施工協定を締結した上で、工事発注を行う予定」、東俣林道は「12月に工事を開始した、作業員の安全については林道が完成するまでの間にしっかりと確保する」など説明されていた。  会見で川勝知事は「私は(トンネルや林道工事は)なさっていないのではとの認識だったので、実際にどのくらい進んでいるのか見に行きたい。6月中下旬にでも現場を見て判断したい」などと発言、降って沸いたような現地視察が決まったのである。  静岡市に確認すると、三峰バイパストンネルは金子社長の手紙通り、施工協定締結前なので、昨年6月の知事視察と現地の状況は全く同じとのこと。東俣林道の改良工事については、12月から沼平ゲートから1・5キロ区間の舗装工事に入ったが、作業のできない1、2月期の冬期間を挟み、現在、付帯の排水構築物などの埋め込み工事を行っている。舗装工事にまだ入っていないようだ。つまり、トンネルも林道工事も現地の状況は見た目では昨年とほぼ同じ状況である。昨年10月の台風19号の被害を受けた、林道崩落区間に仮設道路を設置するなど静岡市の災害復旧工事視察は知事の任ではないだろう。  現在の状況を知りたいのであれば、多忙を極める知事が現地に出向くまでもなく、担当者が早期に現地に入り、Webを使い、その状況を詳細に知事に報告すれば済む。その上で判断すればいい。  今回の「川勝劇場」では、新たなハードルをつくり、肝心の「議論」を遠ざけているとしか見えない。これでは周囲が不信感を抱くだろう。金子社長から、ちゃんとした「謝罪」を受けたのだから、トップ同士の「議論」を早急に持つべきである。大井川流域10市町長は「川勝知事一任」でまとまっているはずだ。  「科学的、工学的な議論」は県委員を交えた国の有識者会議に任せ、「政治的な議論」の場となる川勝、金子トップ会談スタートを周囲は期待している。当然、これは「公開」でやってほしいがー。 ※タイトル写真は「川勝劇場(激情?)」となった27日の知事会見

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リニア騒動の真相39「謝罪」と「議論」の行方

JR東海社長が静岡県批判を「謝罪」した?  22日付中日新聞1面「JR社長トップ会談要望 知事に手紙 県批判を謝罪」3段見出しにある「謝罪」の2文字に目が釘付けになった。記事は4月27日の有識者会議で静岡県を批判したことを謝罪するとともに、「直接会って謝罪する意向とみられる」とも書かれていた。調べてみると、中日は21日付夕刊で川勝平太知事に同日朝、直接取材した記事「JR社長から謝罪の手紙 知事に会談要望」(見出し)をすでに掲載していたのだ。21日夕方になって、「中央新幹線南アルプス静岡工区の準備再開について(お願い)」という標題で、川勝知事に宛てた20日付の金子慎JR東海社長文書が公表されたが、そこには「謝罪」の2文字はなかった。それだけに、中日記事にはびっくりした。  JR東海社長の(お願い)文書には、「トンネル掘削の前段で行うヤード整備等整備を進めるに当たって6月中にも準備工事を再開する必要がある。2027年開業に向けて工程は大変切迫した状況にあり、面談を早い時期に調整してもらいたい」と知事面談の依頼が書かれていた。  金子社長の面談依頼に対して、同じく21日公表された川勝知事コメントは「大井川流域市町の利水関係者に確認のうえ、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、調整を進める」とあった。これまでのように面談依頼を断るのではなく、「調整を進める」とあるから、面談の手続きを進めるのだろう。しかし、どこにも「謝罪」に関することは書かれていない。  20日に開かれた県議会5月臨時会で、「新型コロナ」対応だけでなく、リニア問題に触れ、川勝知事は「JR東海の宇野護副社長が(静岡県の抗議を)重く受け止めているとしたが、金子社長が発言を撤回しないのは納得できない」などと不満を述べていた。  20日県議会で厳しい発言が出たばかりで、21日に金子社長から「謝罪」の手紙が届いたとしたら、絶好のタイミングである。中日記事を読めば、県が21日に公表した『JR東海社長の(お願い)文書』のほかに、「謝罪」したという金子社長の別の手紙があるはずだ。「謝罪」の手紙を教えてもらおうと担当課に連絡したが、担当者は不在だった。  金子社長は本当に謝罪したのか? 川勝知事、金子発言の「謝罪」求める  4月27日ウエブ方式による第1回有識者会議で、金子社長が発言した静岡県の対応に関する主な批判は以下の通り。  「南アルプスの環境が重要であるからといって、あまりに高い要求を課して、それが達成できなければ、中央新幹線の着工も認められないというのは、法律の趣旨に反する」  「有識者会議におかれては、静岡県の整理されている課題自体の是非、つまり、事業者にそこまで求めるのは無理ではないかという点を含めて、ご審議いただければ幸いです。併せて、それが達成できなければ、工事を進めてはならないという(静岡)県の対応について、これは、事業を所管されるのは国土交通省でありますけれども、こういった趣旨を踏まえて、適切に対処をお願いしたい」  上記の2項目を含めて6項目の金子社長発言に対して、静岡県は国交省の水嶋智鉄道局長宛に5月1日付で抗議文を送った。静岡県の抗議を受けた国交省は、金子社長発言が「有識者会議は科学的、工学的な議論の場」を逸脱するとして、赤羽一嘉国交省が「誠に遺憾」、水嶋局長が文書でJR東海に注意した。川勝知事は13日の記者会見で国交省の対応に「感謝する」と述べ、「(金子社長は)厳重に謹んでもらいたい」とも指摘、怒りの矛先を収めた感があった。  金子社長が川勝知事に面談を求め、謝罪の意向を示すことに何ら問題はない。ただ、担当者に確認したところ、金子社長が「謝罪」したという別の手紙は存在しなかった。中日記事は、20日付JR東海社長(お願い)文書にある「国交省から、発言は会議にふさわしくなく、今後は説明責任者として真摯に取り組むよう指導を頂いたことは、申し訳なく、重く受け止める。真摯に対応することで、地域の心配解消に取り組む」を好意的にくみ取り、静岡県への「謝罪」と受け止めたようだ。  中日記事「謝罪」が影響したのか、川勝知事は22日にあらためて金子社長宛に20日付文書に対する回答書を送り、その原文を公表した。回答書の最後に「(面談については)次回の有識者会議で発言の謝罪及び撤回を見届けた上で、関係各位と相談する」とあり、21日知事コメントよりもハードルがぐっと高くなった。水嶋局長にも、次回の会議に金子社長の出席を求め、発言の謝罪と撤回で指導の徹底を求めた。つまり、川勝知事ははっきりと「謝罪」を要求したのだ。  水嶋局長に「謝罪と撤回」で指導の徹底を求めた川勝知事の文書には「金子社長の勝手な発言を許可し、また、有識者会議の目的を全く理解していない事業者トップの不見識ぶりを如実に示した」「(金子社長は)みずからの不徳を恥じねばなりません」など厳しい文言が続いていた。  さらに、静岡県の抗議文などを有識者会議メンバーにちゃんと回覧するよう求めている。第2回会議の対応で金子発言に対する静岡県の抗議は決着をしたとばかり思っていたが、事はそう簡単に収まりそうもない。  「リニア騒動の真相38『今は来ないで!静岡県』?」で書いたが、静岡県の怒りの大きさ(wrath=憤怒、激怒レベル)に、国交省はちゃんと気がつくべきだったかもしれない。金子社長に頭を下げてもらはなくては会議が進まなくなった。 JR東海「お願い」は筋違い?  川勝知事の回答書を読むと、金子社長の依頼する6月中のヤード整備等再開へも異議を唱えている。これでは、たとえ金子社長が川勝知事と面談できたとしても、JR東海にとって首尾よい結果が得られるのか疑問は大きい。  回答書には、「当面は有識者会議の検討を見守るのが筋だ」と記した上で、1、静岡市と約束した県道三峰落合線のトンネル工事の早期着工がどうなっているのか、その完成見通しをはっきり表明してほしい。2、JR東海が「静岡工区の準備再開」を強く訴えるのであれば、畑薙から西俣へ通じる作業道の静岡市東俣林道整備を早急に進めるべきだ。危険な林道整備のほうが作業員の安全確保のために急務などと書かれている。  川勝知事は、JR東海が求める西俣ヤード整備等の準備に入る前に、1、2の懸念事項について明らかにするよう求めているのだ。いずれも静岡県ではなく、静岡市が対応する問題である。それなのに、『それ(約束した工事)を放置したまま「お願い」とは筋違いである』とまで書いている。JR東海がトンネル建設と林道整備を約束したのは、田辺信宏静岡市長に対してであり、当然、川勝知事ではない。  2018年6月20日、田辺市長と金子社長は静岡市の東俣林道をリニア工事作業道として使用の便宜を与える代わりに地域振興(県道三峰落合線トンネル建設)に関する基本合意書を結んだ。この合意書に対して、静岡県、大井川流域の8市2町は「抜け駆け」などと厳しく批判した。トンネルについては現在、静岡市が地権者との合意を結ぶ作業をしているとされる。ただ、2年も経過するのに、井川地区の期待が大きいトンネル工事についてその後、静岡市は何ら発表していない。一体、どうなっているのか、と考えるのは川勝知事だけではない。  東俣林道についても、何ら発表していない。唯一、10月12日から13日の台風19号による東俣林道の大きな被害について田辺市長は発表、沼平ゲートから3・8キロ地点の路肩決壊個所写真をメディアに提供した。12月になって、ゲート近くの舗装をJR東海は行うとしたが、これも静岡市は発表していない。だから、現在どうなっているのか全くわからない。  いずれの工事も主体はJR東海であり、静岡市は許可権限等を有し、管理監督する立場だ。川勝知事ではなく、静岡市が本来、JR東海に一体、どうなっているのか質すべきだが、静岡市にとっては全く他人事のようである。JR東海から何らかの申請が出れば、それを許可していくというスタンスを取っている。少なくとも、川勝知事のように作業員の安全確保にまで考えは及んでいない。  もし、金子社長が求めた川勝知事との面談が行われるならば、2つの懸念事項もテーマになるのだろう。静岡市の問題なのに、田辺市長は蚊帳の外に置かれてしまうのか?  いずれにしても、なぜか、静岡市の懸念事項について川勝知事がJR東海に回答を求めているのだ。 もっと早い段階で金子社長は面会すべき?  国交省に静岡県は合意5項目のうち、「会議の透明性」が履行されていない、と有識者会議の「全面公開」を求めている。「地域住民ならびに国民は、国費を使って行われる会議の内容を知る権利がある」などとして、「委員の自由な発言を阻害する恐れがあり、公開を限定する」という鉄道局の挙げた理由を退けている。  それでは、果たして、静岡県はすべての審議会、委員会を全面公開しているのか?  静岡県によると、県主催の会議はすべて原則、全面公開されているという。県表彰審査委員会、県総合計画審議会、県行政不服審査会、県情報公開審査会、県特別職報酬等審議会、県固定資産評価審議会、県感染症審査協議会などそれぞれの担当課に確認しなければならないが、「地域住民ならびに国民は、国費、県費を使って行われる会議の内容を知る権利がある」ことが守られているようだ。  金子社長とのトップ会談について、川勝知事は3月13日の会見で「金子さんが来られるとすればもっと早い段階で、社長が代わられたときに、すぐに来られる筋のものではなかったか」、「全部の地域住民の意見を尊重するべきなのに、そうした形がなかったのは残念だ」などと述べている。これが川勝知事の本音なのだろう。   JR東海は東俣林道の使用許可権限も持つ静岡市には早い時期から働き掛けを行っている。自民党静岡市議団が「南アルプスの保全が図れない工事を認めない」など厳しい姿勢でのぞんでいたこともあり、最終的に140億円の三峰バイパストンネルをJR東海の全額負担で行うという合意書を結んだ。当然、金子社長は早い段階で田辺市長と面談の機会を持ったのだろう。川勝知事になぜ、そのような面談を求めなかったのか?  それは、今回の金子社長発言から想像できる。国家的な優先度の高いプロジェクト・リニアについて、静岡県が大井川の水環境問題などで高いハードルを課すのはおかしいが見え隠れしている。(あまり知られていない)河川法の許可権限がなければ、JR東海は強行着工していたかもしれない。  この半年は、川勝戦略の”土壺”にはまったまま身動きできない。コロナ後の日本で、リニアが以前と同じ優先度の高いプロジェクトであるのかどうか?「謝罪」で「議論」が先に進むのか、全く見えてこない。 ※タイトル写真は、20日に開かれた県議会5月臨時会。当局の人数も非常に少ない

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コロナ危機4 無敵の「免疫」所有者は5人に1人!

映画「コンテイジョン」が教える現実  「新型コロナ」のパンデミック(世界的流行)を予言したと評判が高く、ネット動画配信サイト・ネットフリックスなどでランキング1位を続けるアメリカ映画「コンテイジョン(Contagion、接触感染)」(スティーヴン・ソダーバーグ監督)。題名の通り、他人との接触だけで感染していくために小池百合子東京都知事がよく使う「オーバーシュート(感染爆発)」が全世界で起こってしまう。感染したアメリカ女性の隣にいたまさしく日本人のステレオタイプ「黒眼鏡、黒スーツ」男性ビジネスマンが東京へ帰り、バスの中で意識を失い、倒れてしまうシーンが登場する。その後、日本でオーバーシュートしたかは定かでないが、病名不明の男性と接触したバスの乗客や救急隊員らが次々と感染していったと予測される。  マカオのカジノで感染したアメリカ女性は帰国後、自宅でけいれんを起こし、意識を失ったため、マット・デイモンふんする夫が女性を病院に連れていくが、女性は亡くなってしまう。夫が自宅に戻ると小学生の息子も同じ症状で死んでいる。女性の同僚、息子の学校のクラスメートなどに集団感染が起こり、全米、全世界に感染は広がり、パンデミックとなる。学校閉鎖、医療崩壊、食料品などの買い占め、ロックダウン(都市封鎖)によるパニックなどが起こり、まさにいま世界のどこかで起きていることを予言したシーンがこれでもかと続く。  UCLAサンフランシスコ校の研究者により、新型ウイルスが2003年のSARS同様にコウモリコロナウイルスの新種であることが突き止められ、CDC(米疾病予防管理センター)を中心にワクチン開発に必死で取り組んでいく。コロンビア大学感染症予防センターの研究者が監修しただけに、リアルな医療現場に焦点が当てられている。「人は1日に2千回から3千回も顔や頭を触り、起きているときには1分間に3~5回触る」として、接触感染を防ぐための水と石鹸による手洗い、マスクの着用なども映画の中で薦めている。特に、マスクの習慣のなかった欧米では、いまの現実そのものである。  最後に謎の病気の原因がわかる。ウイルスの宿主コウモリの落とした食べかすを子ブタが食べ、そのブタを調理した中国人からアメリカ女性、日本人ビジネスマンらへ感染していく。そう、まさに今回の新型コロナの発生を連想させるシーンで終わるのだ。2012年の公開当時、日本ではヒットはしなかったが、2020年の最高傑作に挙げられるだろう。  ところで、マット・デイモンふんする夫は妻、息子2人と濃厚接触するが、けいれん、意識障害など症状も出ないし、何らかの処置もしないのに元気そのものだ。周囲すべての人たちがマスクなどで防御をするのに、マット・デイモンだけは最後のシーンまでマスクさえ着用しない。  これは虚構の映画であるから、そんな設定をしたのか?それとも、現実の世界でも新型コロナに「免疫」を持っている人間がいるのか?ネットなどで情報を探したが、残念ながら、本当のことは分からなかった。  ようやく最近になって、実際に新型コロナでも最初から「免疫」を持つ人がいることを英国の科学雑誌が教えてくれた。 17・9%が「不顕性感染者」と判明  5月12日号の英感染症専門誌「ユーロサーベイランス」が、新型コロナに感染しても、全く症状の出ないまま治ってしまった人の割合を明らかにした。ウイルス名「SARS-CoV-2」(コウモリコロナウイルスに関係する、SARS-Cov-1に近い7番目のコロナウイルス)に感染しても、熱、のどの痛みや咳、だるさ、肺炎など新型コロナの病名「COVID-19」に掛からない人たちがいる。新型コロナに対する「免疫」を獲得している人を「不顕性感染者」と呼んでいる。  「不顕性感染者」はワクチンも治療薬も必要ない。どこかは分からないが、体の一部の何かが違うのだ。それで、最初から「新型コロナ」に負けない「免疫力」を持っている。そんな無敵の人たちがわたしたちの周りにいるのだ。  調査結果を発表したのは、京都大学、オックスフォード大学、ジョージア州立大学の研究者グループ。新型コロナ感染の流行で『1、亡くなった人 2、発熱や咳、肺炎などの症状の出た人 3、全く症状の出ないまま治ってしまった人(不顕性感染者) 4、未感染者』の4グループに分類した。3番目の「不顕性感染者」が数多く存在することで新型コロナウイルスは、SARSやMERSに比べて毒性が強くないことがわかる。  調査では、横浜港に停泊したダイヤモンドプリンセス号のクルーズ船乗船員3711人を対象に、3063回PCR検査が行われ、634人に陽性反応が出た。2月21日までに306人に症状が出て、2週間の潜伏期間などを経て、最初にPCR検査で陽性反応が出たが、全く症状の出ないまま治った「不顕性感染者」を113人と推計した。PCR検査で陽性とされ、隔離されたが、熱など軽い症状さえ出ない人が17・9%もいたことになる。他人への感染を考慮しなければ、「コンテイジョン」のマット・デイモンふんする夫同様にマスク、手洗いも不要な「免疫」獲得者ということになる。  静岡県では、PCR検査で陽性とされた人は2週間入院後、2回のPCR検査後に陰性と判定されれば、めでたく退院となる。県疾病対策課によると、感染者73人のうち、12人が無症状病原体保有者(不顕性感染者)だったという。単純に計算すれば、16・4%が不顕性感染者だったわけだ。その内訳は10代から60代までさまざまであり、そこにどのような共通点があるのかは全く不明である。ダイヤモンドプリンセス号の場合、さまざまな国からの50代から70代の高齢者が中心だった。今後、彼らの血液検査によって新たなことが分かるのだろう。  新型コロナの場合、今回の調査などでわかるように「不顕性感染者」の割合が高いのが特徴。だから、逆に気づかないうちに広がる恐れがある。いくら、「今は来ないで!静岡県」とキャンペーンしても、封じ込めは非常に難しいことになる。「集団免疫」を獲得することで終息を目指すほうが早いのかもしれない。不顕性感染者の割合が多いほうが治療を受けなくても免疫を獲得していく人が多いので有利だと言われる。  そして、すべての人が願うのは、自分自身も新型コロナに「免疫力」を持つ不顕性感染者に入ることである。 「不顕性感染者」になりたいのだがー  新型コロナの「不顕性感染者」の共通点はどこにあるのか?そんな調査研究はいまのところ後回しのようだ。目の前の「恐怖」に精いっぱいといったところか?  川勝平太知事は15日、休業要請を18日から解除した上で、「ふじのくに基準」に基づく新型コロナの流行は「限定期」、警戒レベル3の「注意」段階だと発表した。これまでと同様に「三密(さんみつ)」の回避、手洗い、消毒、マスク着用、ソーシャルディスタンス(約2mの距離確保)を求めている。14日現在、73人の感染者のうち、1人死亡、入院11人、退院者61人と深刻な状況にほど遠い。  「ふじのくに基準」の警戒レベルは6段階もあり、赤の「都市封鎖級」「特別警戒」、濃い黄色の「警戒」に次ぐのが、薄い黄色の「注意」だという。水色の「ほぼ日常」にも3種類もあり、全く色のない昔と同じ日常に戻るのは大変なことだ。2週間以上も感染者ゼロが続くのだから、「ほぼ日常」ではなく、「注意」とは首をかしげるが、どうも警戒度を上げることはあっても、下げたくはないらしい。映画「コンテイジョン」を見たあと、「油断するともっと恐ろしい第2波がやってくる」と脅されれば、多くの人は従うしかない。  ただあまりムダなことに予算を使うのも考えものだ。静岡市の155室のホテル「東横イン」1棟の借り上げを12日、発表している。お隣の神奈川県では隔離施設としてホテルの2450室確保したのに、滞在者は65人のみで97%が空室であり、緊急事態宣言が最初に出された東京、大阪7都府県では約9割が空室という。当初はPCR検査数の不足原因に、隔離施設の不足が叫ばれた。ところが、隔離施設としてホテルを用意すると、ほとんどの感染者が自宅療養を選んでいる。  中国製マスクの供給が進む中、いまだ「アベノマスク」が届かないように、2週間以上、感染者ゼロが続くいま、隔離対策施設に多額の予算を掛けるのに疑問が多い。各都道府県知事の知恵比べ、アイデアを競うようなコロナ対策を見ていて、”ふじのくにコロナ対策ビジョン”で「川勝流の発想」の切れが見られないと感じる県民は多いようだ。  3月13日の記者会見で川勝知事は、静岡県で感染者が少ないのはお茶をよく飲んでいるからではないかと話した。お茶にそんなパワーがあるのかどうかは分からないが、ワクチンや薬に頼るのではなく、「免疫力」をUPさせて、新型コロナに負けないほうがいいに決まっている。  「不顕性感染者」にどうしたらなれるのか? 「免疫力」はわたしたちの体の中にある  最近の報道を見ていると、専門的知識を有する医者が優位に立ち、何でも決めてしまうパターナリズム(父親的温情主義)と呼ばれる医療が支配する風潮が強くなっているよう感じられる。患者は何でもかんでも医者の言うことを聞いていればいい、と子どものように従ってしまうことだ。インフォームドコンセントやセカンドオピニオンということばが一般的となり、医者と患者がパートナーシップを持つと言われる時代になってずいぶんたつが、正体不明の新型コロナで何か昔に戻ってしまったようだ。  患者は医者の言うがままにワクチンや薬を飲んでいれば大丈夫かと言えば、決してそんなに簡単なことではない。医者も一方的な真実でしか、見ていないことが多いからだ。  いまから40年ほど前まで、お腹が痛いと言えば、何でも「盲腸」と呼んで5人に1人が手術を受けていた時代があった。(詳しくは大鐘稔彦著『外科医と「盲腸」』岩波新書)。いま「盲腸」と呼ぶ人はいない。現代で言えば、胃炎と言えば、胃がん対策として、ピロリ菌を抗生物質で”退治”してしまうことだ。ピロリ菌は病原体であり、除去すべきという医者がほとんど。ピロリ菌は日和見菌であり、除去することで、最近、急増している胃食道逆流症、その後の食道がんリスクを大きくしてしまう。びらん性胃炎の50代の患者に対して、徳島県医師会は「ピロリ菌は50歳以上の70%が感染しているが、胃・十二指腸潰瘍を起こすのはそのうちの2~3%、胃がんに至るのは0・4%に過ぎない」と回答している。胃がんを恐れてピロリ菌除去すべきか、与える障害を踏まえ、実際の症状を確認すべきである。  患者と病院とのつき合い方を取材して一冊にまとめたとき、監修していただいた脳外科医の前田稔・順天堂大学静岡病院長(当時)から言われたのは、「医者は患者を選べないが、患者は医者を選ぶことができる」(詳しくは『世界でいちばん良い医者に出会う「患者学」』河出書房新社)だった。  新型コロナでさまざまな治療薬やワクチンの開発が進んでいるが、実際は、そんな薬を飲まないでも新型コロナに負けない「免疫力」を持つ不顕性感染者であったほうがいいだろう。  静岡県は「社会健康医学」を推進する大学院大学設置を進めている。ぜひ、感染症に負けない「免疫力」についてちゃんと研究成果を出してほしい。新型コロナがちょうどよいテーマになるだろう。 ※新茶のシーズンもたけなわ、お茶と免疫力に関係があることはわかっている。写真は呉服町の竹茗堂。

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リニア騒動の真相38 『今は来ないで!静岡県』?

静岡県の対応は「法律の趣旨に反する」?  「南アルプスの環境が重要であるからといって、あまりに高い要求を課して、それが達成できなければ、中央新幹線の着工も認められないというのは、法律の趣旨に反する」(金子慎JR東海社長)  「新型コロナ」の影響を受け、ウエブ方式で国交省と各専門家、静岡県などをつないだリニア問題「有識者会議」(国交省鉄道局主催)が4月27日、初めて開かれた。第1回会議はこれまでの議論を整理することだけで本格的な論戦は次回以降に行われる予定だった。ところが、会議の前に「工事を進める事業責任者」としてあいさつをした金子社長の発言が、地元の強い反発を生んでしまった。金子発言には、JR東海が単に謝罪することだけでは済まされない内容を含んでいた。鉄道局は第2回会議で十分な時間を取り、適切な対応を迫られている。  島田市の染谷絹代市長は28日の会見で「(金子発言は)いかにJRが地元を理解していないかという表れ」とあきれ、さらに30日、川勝平太知事は金子発言を厳しく批判した。翌日5月1日新聞各紙の紙面を見れば、メディア(世論)がどちらについているのか一目瞭然である。お互いに名古屋市に本社を持つJR東海にとって、特に親しい関係を築いているはずの中日新聞が『JR東海社長の県批判 知事「無礼」と抗議』と社会面3段の大きな見出しをつけた。金子発言がいかに常識外れにとらえられたかを物語っている。  川勝知事を筆頭に、大井川流域の2市8町、大井川土地改良区など11の利水者団体連盟は1日、国交省の水嶋智鉄道局長宛に「抗議文」を送った。  静岡県が作成した分厚い「抗議文」を手にして、すぐに頭に浮かんだのは、1930年代の大恐慌下のアメリカを舞台にしたノーベル賞作家ジョン・スタインベックの小説「怒りの葡萄」だった。  「怒りの葡萄」の原題は「The Grapes of Wrath」。一般に「怒り」と来れば、「Anger」だが、「神の怒り」を象徴するWrathが使われている。Wrathは並大抵の「怒り」ではなく、「激怒」「憤怒」を指す。その分厚い「抗議文」はまさに「Wrath」(激怒、憤怒)そのものを感じさせた。抗議文を手にした水嶋局長は困惑するだけでは済まされない。静岡県側の「Wrath」に適切に対処しなければ、「有識者会議」メンバーがJR東海への反発を強めるだけでなく、会議の趣旨そのものに疑問を抱くことになってしまうのだ。  「有識者会議」開催は静岡県側がいくつかの注文をつけて遅れに遅れた。1月に鉄道局が提案してから、4カ月近くもたってようやく初会合となった。当然、JR東海は静岡県が意図的に開催を遅らせているのではといういらいらを募らせた。それだけに「有識者会議」は苦境に立つJR東海の援軍であり、会議での結論がJR東海に有利に働くと考えたのか、初会合開催を手放しで喜んでしまった。それが金子発言につながった。  JR東海トップの金子社長は、その発言の意味を理解しているのだろうか?静岡県の「抗議文」が金子発言の常識外れを事細かく明らかにした。 「有識者会議」に「政治的」役割を求める?  難波副知事が起案した「抗議文」は、A4判用紙7枚、8項目に分けてびっしりと書かれている。金子社長の発言内容を6項目で指摘、その問題点を詳細に明らかにした上で、最後の7、8項目で厳しい抗議を表明している。  1項目の「環境に関する法制としては、環境影響評価法に基づいて、資料の作成をしております。私どもは、中央新幹線の事業は、有益な事業であるからと、環境保全を軽んずるつもりは全くございません。果たして、逆に、南アルプスの環境が重要であるからといって、あまりに高い要求を課して、それが達成できなければ、中央新幹線の着工も認められないというのは、法律の趣旨に反する扱いなのではないかと考えているものです」、6項目の「有識者会議におかれては、静岡県の整理されている課題自体の是非、つまり、事業者にそこまで求めるのは無理ではないかという点を含めて、ご審議いただければ幸いです。併せて、それが達成できなければ、工事を進めてはならないという(静岡)県の対応について、これは、事業を所管されるのは国土交通省でありますけれども、こういった趣旨を踏まえて、適切に対処をお願いしたい」という金子発言が特に川勝知事らにとって「無礼」であり、「激怒」に至った内容である。  裏を返せば、JR東海が「有識者会議」に期待する「本音」そのものに違いないだろう。  ただ、トンネル工学や水文学の専門家で構成する「有識者会議」について、水嶋局長は「会議の趣旨はこれまでの議論の検証、政治的ではなく科学的、工学的な議論の場にしていただきたい」とその趣旨、役割を述べている。つまり、金子社長が「有識者会議」に「法律の趣旨に反するかどうかなど、適切に対処を願いたい」と求める役割にはほど遠いのだ。  水嶋局長の発言から読み取るべきは、『有識者会議は科学的、工学的にとどめ、「政治的な働き掛け」は水面下で行うべき、とくぎを刺している』ことである。「有識者会議」初会合で有頂天となった金子社長は、まさに「政治的な発言」にまで踏み込んだことに気づかなかった。  昨年10月、リニア南アルプストンネル静岡工区の早期着工を図るために、鉄道局主導の三者による「調整会議」設立を目指した。しかし、12月末、川勝知事が「環境省や農林水産省などすべての省庁の参画」「これまでの静岡県とJR東海との対話内容の評価」を求めたため、鉄道局は「調整会議」ではなく、水文学などの専門家による「新有識者会議」を立ち上げることとした。  1月20日付『リニア騒動の真相30「北風作戦」は失敗』で、『国は苦肉の策として「新有識者会議」設立という”奇策”に打って出た。藤田次官まで出張って事の解決に当たろうとしたが、時間の掛かる面倒な”宿題”を増やしただけである』と書いた。金子社長の”活躍”もあって、鉄道局はまさに時間の掛かる面倒な”宿題”ばかりを増やしている。第2回会合で鉄道局は設立の趣旨について、もう一度、ちゃんと有識者委員に説明しなければならない。設立の趣旨が「JR東海に有利で適切な対処をする」ことであれば、静岡県はさらなる”抗議文”を提出するだろう。 「論理」を説くのではなく、「感情」に訴える  このままでは、国の有識者会議も川勝戦略の”土壺”にはまって身動きできない状態が続いてしまうだろう。  2027年開業を目指すリニア工事は「新型コロナ」問題が絡み、各地で遅れている。いまのうちに、最大の課題とされる南アルプストンネル静岡工区の着工問題を解決したいのがJR東海の「本音」だろう。その解決のために金子社長は「企業論理」を全面に打ち出した。「企業論理」に立てば、金子社長の発言は間違っていない。しかし、いくら「論理的」に正しくても、世論が味方しなければ大衆の支持を得られない。  日経ビジネス2018年8月20日号で、川勝知事は「静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」とJR東海を批判、リニア工事が大井川中下流域の62万人の利用する地下水へ影響を及ぼす危険性を指摘した。それで、「立派な会社(JR東海)だから、まさか着工を強行することはないだろう」とも訴えた。知事発言は「論理的」な部分の代わりに、わかりやすいことばで「感情」に訴えた。だから、県民から多くの支持を得たのだ。  今回の金子社長の発言で、何度も「蓋然性(がいぜんせい)」ということばが使われた。「蓋然性」とは「事象が実現されるか否か」であり、類語に「可能性」「実現性」とあるが、一般にはあまり使われない。金子発言は「有識者会議では、専門的な知見から、これまで心配な事態が起こる蓋然性について、どの程度なものなのか、また、発生する可能性が大きいと考えておいでなのか、あるいは小さいものなのかを、お示しいただければありがたい」。静岡県は不測の事態が起きないようJR東海に求めているが、いくら科学的、工学的に議論をしたとしても、「不測の事態」が起きないと断言できる専門家は、存在しないだろう。金子社長は有識者会議の議論の行方にまで踏み込んでしまったのだ。  JR東海トップである金子社長は「論理的」に話すのではなく、現在の窮状のみを「感情的」に訴えれば、まだ違っていたのではないか。トップの役割は議論に介入するのではなく、深く頭を下げるだけで十分である。 JR東海に「一定の合理的な負担を」指導すべき  4日に新型コロナでの「緊急事態宣言」延長が決まった。生活困窮者への30万円給付ではなく、国民全員に一律10万円給付が始まった。中小企業、自営業者への持続化給付金、各県での休業要請に対する補償など「緊急事態宣言」延長で、さらなる財政出動を求める声が高まるだろう。  財政出動が繰り返され国債を発行し続ければ、いずれハイパーインフレ(物価高騰)などを招く恐れがある。ほとんどの人は政治の話には無関心だが、10万円を再び、もらえるという話であれば、目を輝かせる。政治家の話に耳を傾け、喝采を送る。そんなにお札を刷って大丈夫かと心配する向きもあるが、”コロナ”だから目をつむるしかない。すべて「論理」ではなく、「感情」が優先する。  大衆が支持するのは「論理」ではなく、「感情」である。1月20日付『リニア騒動の真相30「北風作戦」は失敗』で産経新聞主張(2019年12月3日付)を紹介した。『リニア新幹線は静岡県内に駅がなく、その経済的なメリットは小さいとされる。川勝氏は今年(2019年)6月にJR東海による経済的な代償を求める考えを示唆した。同社による一定の合理的な負担を含め、国交省が主導して環境対策などでも真摯な協議を進めるべきだ』。  鉄道局はJR東海に対して、『(静岡県へ)一定の合理的な負担する』よう指導すべきと産経は書いている。これも「論理」の話ではない。有識者会議の議論とともに、JR東海が『静岡県への一定の合理的な負担』を行うことは、静岡県民の「感情」に訴える一つの方策なのだろう。  「今は来ないで!静岡県」。東西の県境道路沿いに幟や旗などで静岡県が県外ナンバーの車などに要請している。「緊急事態宣言」延長で、そのまま同じ要請を続けていくのだろう。リニアに対して、『今は来ないで!静岡県』といつまで叫び続けるのか分からないが、JR東海の「無礼」(川勝知事)な対応が続く限り、『今は来ないで!静岡県』は続くはずである。 ※タイトル写真は、国交省で開かれた有識者会議。ウエブで結ばれた(鉄道局提供)

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「コロナ」危機2「休業補償」狂騒曲(静岡市編)

「25日から休業要請」と田辺市長が言った!  25日土曜日昼頃、静岡市の繁華街を歩くと、街の様子は一変していた。寿司屋、そば屋、イタリア料理店、うなぎ屋、ラーメン屋などなじみの店のシャッターが下り、ほぼ同じ内容のお知らせが店頭に貼ってあった。マクドナルド、ケンタッキーなどのテイクアウトを除き、ほぼすべての店が休業に入ったのだ。  「静岡市よりの要請により、臨時休業致します。休業期間 4月25日(土曜)~5月6日(木曜)」、「重大なお知らせ 静岡市からの休業要請に伴い4/25~5/6までレストラン営業は休業させていただきます」など同じ内容のお知らせが貼られていた。前日までふだん通り営業していた食事を提供する、市民にはなくてはならない店舗ばかりだった。浜松市も同じく、「4月25日から5月6日まで」の休業要請と補償について鈴木康友市長が21日記者会見を行った。浜松市は期間中、休業していることを第三者が見て明らかにわかるチラシを店頭掲示した写真を求めていた。当然、静岡市も同じなのだろう。  田辺信宏市長は23日、新型コロナ対策として静岡市独自の休業要請とその補償を発表した。「4月25日から5月6日」までの休業要請期間に、静岡市内の料理飲食を提供する約3200の事業者が閉店休業すれば、中小企業または個人事業主に1事業者当たり「50万円」、2店舗以上の事業者に「100万円」を支払うという内容だった。突然の発表に、各事業者らから「どうしたら50万円もらえるのか?」など問い合わせる市の相談窓口の電話は鳴り放しとなった。全国的に見て「50万円」「100万円」という飲食店への休業補償は大判振る舞いである。  23日夕方ローカルニュース、24日新聞朝刊各紙が田辺市長の発表を大きく報道した。25日からすべての店が休業に入るから、24日夜が最後と思い、近所にあるなじみの居酒屋に出掛けた。当然、休業補償が話題になった。店主は「組合は27日月曜日からと言っていた、土曜日曜は店を開けたいのだがー」と情報が錯そうして不安な表情。手元にあった24日静岡新聞、日経新聞朝刊に「25日から5月6日まで」と書いてある。静岡商工会議所HPの田辺市長名の通知も「25日」となっている。「27日からは間違いだ!」と酔った常連が叫んだ。  それで25日昼頃、繁華街を見て回った。やはり、すべての店の掲示が「4月25日~5月6日」となっていた。  ところが、25日午後7時頃、1軒のてんぷら料理店のみ煌々と明かりが輝き、店内には大勢の客が詰め掛けていた。その店の「お知らせ」を見て、驚いた。他の店舗とは違っていたのだ。 「27日が休業開始日」と変わっていた?  てんぷら屋のお知らせは「4/27(月)~5/6(水)まで休業させていただきます。4/25(土)26(日)は短縮営業させていただきます」。この土日は他店が一斉に休業しているから、昼夜とも利用客は多いかもしれない。しかし、「25日から」を守らなければ、休業補償を受け取れなくなってしまう。本当にそれでいいのか?  25日午後10時過ぎに静岡市HPをもう一度、確認した。「協力金ご案内」タイトルの項目は「最終更新日」が「4月25日」となっているのに気づいた。きょう(25日)情報を更新しているのだ。  25日何時に、どこをどのように変えたのかわからないが、そこに「4月27日(月)を休業の開始日とします」とあった。『※休業要請期間は「令和2年4月25日(土)から令和2年5月6日(水)」までであり、この期間について休業を行っていただくことが基本ですが、事業者の方への周知期間を勘案し、 協力金を支給する要件については「令和2年4月27日(月)」を休業の開始日とします』。何だ、これ、てんぷら屋の「27日から」は(休業補償をもらうのに)全く問題なかった。  それでもう一度、静岡商工会議所HPで23日付の静岡市危機対策本部長田辺信宏名「静岡市の休業要請及び同要請に基づく協力金の支給について」を確認した。「対象要件」は「4月25日から5月6日まで協力いただいた中小企業及び個人事業主」となっている。「協力金支給要件」は間違いなく「25日から」である。新聞、テレビは、協力金支給要件と合わせて休業要請を「25日から」と報道した。だから、ほぼすべての料理店事業主は25日から休業しなければ、50万円を受け取れないと勘違いした。しかし、実際は「27日から休業」で問題なかった。  飲食店が支払っている経費は「店舗賃料」「店舗保険」「食材、飲料仕入れ」「スタッフ給料」「HP管理費」「電気、ガス、水道代」など20以上の支出項目がある。「売り上げ」から「経費」を差し引いて、「利益or借金」が出る。「コロナ」自粛で客足は伸びていないから、ほとんどの飲食店の「借金」がふくらむ状況だった。もし、ちゃんと分かっていれば、土日の2日間営業をした料理店は多かったはず。2日間の違いはあまりに大きいのだ。  27日から5月6日までの10日間、単純に割れば1日当たり5万円の補償額となる。「25、26日の2日分10万円を上乗せしてほしい」。個人経営の小さな飲食店が多いから、切実にそう望むだろう。それでなければ、不公平である。 5月6日以降、休業延長を続けるのか?  静岡県が「20万円」の補償金を支払うことで休業要請したカラオケ、バー、スナックなどに静岡市は「30万円」を上乗せして「50万円」、静岡県の対象外となった料理飲食店に、独自に「50万円」を補償する。店舗の大小に関わらず、一律「50万円」の休業補償である。約17億円の補正予算を組んだ。  静岡市も休業状況が確認できる書類として店頭ポスターの写しを求めているから、手書きであれ、印刷であれ、お知らせを掲示しなければならなかった。ただ、そのお知らせは「4月25日~5月6日」の期間ではなく、「27日から」で全く問題なかった。  もう一つ、大きな問題がある。「連休明け後に休業しなくて大丈夫か?」である。「期間延長は社会情勢を踏まえて」などと書いた掲示も多かった。5月6日に「新型コロナ」収束が見えなかったら、各店舗とも引き続いて、感染を防止するために休業を続けるかどうか、判断に迷うところだ。  収束が見えなければ、政府、静岡県は引き続いて休業要請の方向で検討に入る。そうなれば、静岡市も再び、独自の休業要請を迫られる。休業延長で1日当たり5万円補償をするならば、各店舗とも休業を続けるだろう。  5月末までとしたら、22日間、1日当たり5万円の補償を支払うとすると各事業者へ110万円が必要。3200事業者、約35億円。田辺市長は「身を切る覚悟で休業補償を行う」と述べたから、市長報酬を削るだけでなく、市職員の協力を得て35億円を捻出するのか。  そんな仮定のことではなく、まず何よりも、17億円予算を組む前に補償などあてにせず、多くの店舗が休業していたことを静岡市は調査したのだろうか?  7割方の飲食店はすでに休業していた  静岡市内の繁華街では、田辺市長の休業要請を待たずに、すでに7割程度の飲食店は店を閉め、夜の街はひっそりとしていた。各店舗のお知らせを見れば、一目瞭然である。早いところでは、4月5日から休業に入っていた。8日から始まった7都府県の緊急事態宣言に合わせた自粛要請に従い、11日以降、飲食店の多くが順次休業に入っていた。  ある老舗居酒屋では「4月15日より5月下旬頃まで休業いたします」とあった。率先して5月下旬まで店を閉めるというのだ。そのまま廃業してしまうのではないか、そんな心配を寄せる常連が多かった。そうかと思えば、チョコレート専門店だが、待ち合いの5席があるだけの店舗でも、「4月25日~5月6日まで終日店内での飲食は利用できません」というお知らせを掲示、「50万円」を受け取るようだ。店内飲食でとうてい「50万円」もの売り上げがあるとは思えないが、飲食店側からすれば喉から手が出るほどにほしい補償なのだろう。  自主的に長い休業に入った店舗から言えば、25、26日の2日間の問題などしれている。後出しジャンケンのような不公平感が漂う。そう考えると、最大の疑問はそもそも休業補償「50万円」が必要だったのか? 料理飲食店の営業は「不要」なのか?  市単位で飲食店への休業補償を行っている自治体はほとんどない。福岡市、神戸市、千葉市、熊本市はテナント賃料を家主に補助することで飲食店の負担を少なくする試みを行っている。熊本市の場合、1カ月分の80%家賃補助で最大限28万円としている。  京都府、新潟県、宮城県などは県単位で個人事業主らに10万円程度の休業補償を行うと表明した。飲食店へは休業ではなく、時間短縮を求めている。東京都の協力金も食事提供施設に時間短縮であり、休業を求めていない。各自治体の詳しい支給要件まで分からないが、静岡市の休業補償は他と比べて破格の手厚い支援であるのは間違いない。5月6日までに「コロナ」との闘いが終わる予測が成り立てばいいが、そうやすやすと問屋はおろさないだろう。他県にならい、最初はもっと少ない金額でもよかったのではないか。ほとんどの県は飲食店への休業補償を表明していない。  公共施設はそれぞれの判断で休業期間を決めている。20日から5月7日まで閉館に入った静岡市美術館、静岡市内12の図書館は25日から5月10日(11日も休館日)まで閉館するとした。その1週間前、18日から閲覧席など利用できないような、びっくりするような感染対策を取っていた。それがとうとう休館となってしまった。  静岡市中央図書館長は「開館していることで市民から批判を受けることがあった。もはやこれ以上、火種をつくることはできない。正しいのは、新型コロナから市民を守ること」と話していた。さらに、「今後の状況により、期間等変更になる場合があります」と但し書きさえつけている。「新型コロナ」の収束はそんなに簡単ではないと考えているのだ。  今回の休業補償は見切り発車の様相が強く、いろいろな意味で拙速である。  料理飲食店は「時間短縮」すべきか「休業」すべきか?そもそも「不要不急」の意味をいまだに理解できない。おいしい食事を提供していた料理店は市民にとって「不要」の場所なのか?疑問が次々と浮かび、頭の中の「コロナ狂騒曲」はいつまでも鳴りやまない。 ※タイトル写真は、25日土曜日昼頃、静岡市七間町通り。休館中の美術館企画展「めぐるジャポニズム」PR旗が風になびく。人通りは消え、ゴーストタウンのようである。

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「コロナ」危機1生活困窮者を支援する財源は?

一律10万円給付の財源は真っ赤な国債  17日朝、日本銀行静岡支店の前を通りかかり、そうだ、徳川家康ならば、ちゃんと教えてくれるかもしれない。家康は小判1両を基準とする定位貨幣をつくり、金銀銭3貨の貨幣制度を考案、亡くなったあと、「お金の神様」と呼ばれた。家康の貨幣制度が約270年にも及ぶ、江戸幕府の安定政権を支えた。その原点が駿府の金座である。目の前の日本銀行静岡支店が金座跡。駿府の金座は江戸に一本化され、江戸金座跡に日本銀行本店が建つ。そもそもの日本の金融制度の始まりはここにある。日銀静岡支店の建物を眺めていて、「お金の神様」家康ならば、どのように現在の状況を見るのか、きっといい知恵を出してくれるだろう。そんなふうに考えた。  16日夜、全国民に一人当たり「10万円」を支給、全国すべての都道府県に「緊急事態宣言」を適用すると安倍晋三首相が発表した。「新型コロナ」で所得が半減した困窮世帯へ「30万円」給付の撤回を公明党が求めた。それにこたえ、「30万円」をやめて一律「10万円」配布に安倍首相は舵を切り替えた。17日の日経平均株価は607円も値を上げ、2万円回復も間近の高値で終えた。マーケットも「10万円」配布を大歓迎のようだった。(実際は日銀や年金運用機構が演出した”官製相場”かもしれない?)  今月7日、まず、安倍首相はコロナ緊急経済対策として108兆円規模の事業支出、39兆円の財政支出を打ち出した。その舌の乾かぬうちに、今回の一律10万円配布で、政府が国民すべてにおカネをバラまく初めての”ヘリコプターマネー”を決めた。必要なおカネは、約12兆5千億円。東京都はじめ各道府県、市町村でもコロナ対策のバラまきが目立つ。毎日毎日、首相や知事らが登場した政治ショーが繰り広げられ、おカネが飛び交うのを目の当たりにする。  働かなくてもおカネがもらえる。こんないいことはない。コロナが長引けば、多くの国民はもっともっとおカネをくれと言いだすだろう。  「打ち出の小槌」などないから、すべて赤字国債発行で賄うしかない。逆に考えれば、赤字国債発行は「打ち出の小槌」であり、いくらでもおカネを生み出すことができる。事業破綻や大量の失業など目の前にある実体経済に関わらず、値上がりする強気の株価を見ていると、金融緩和や赤字国債がバブル再来さえ演出できると錯覚する。  1980年代後半、株は永遠に上がり続け、地価が上昇し続けると思われた時代。世の中は好景気が当たり前で、投資すれば必ず儲かるから多くの人が株に手を出した。そんな世の中がずっと続けば、こんな楽なことはない。幻想に酔っていたのだ。大量の赤字国債を何度も発行でき、そのたびに一律10万円配布されれば、国民は大喜びだ。しかし、そんなうまい話があるのか。バブルはいつかはじける。バブル崩壊後、20年以上もの暗い時代が続いた。赤字国債の大量発行は本当に大丈夫か。  危険な綱渡りなのか、真相はさっぱり見えない。さてさて、この難所に直面した家康ならば、どんな知恵を授けてくれるのだろう。 家康が質素でけちだった理由とは?  家康は関ヶ原の戦いに勝利した翌年(1601年)、日本最初の銀座を伏見に設置した。1603年征夷大将軍に任じられ、江戸幕府を開くよりも前に、貨幣制度の確立に乗り出した。各大名ごとに私鋳銭が横行していては、天下統一はできないからだ。将軍職を秀忠に譲り、駿府を大御所の拠点にすると、金座、銀座、銭座の中心をここに移した。  家康は駿府に移った1607年、伏見城に蓄えていた金銀すべてを駿府城に移した。金銀の重さで駿府城の床が抜けたという記録が残る。その年暮れ、駿府城が焼けてしまったため、金銀を久能城(現在の久能山東照宮)に移した。いまも久能山に125万両の埋蔵金伝説が残る。秀吉、家康の時代、佐渡金山、伊豆金山、多田銀山、生野銀山など全国で数多くの金銀鉱山が発見され、日本はまさしくジパング(黄金の国)だったのだ。  家康の最大功績は、安定した政権を維持するため、すべての鉱山を幕府直轄として金銀を支配したこと。「日本人とユダヤ人」の著者山本七平は、家康が質素でけちだった理由について、第1に『幕府が通貨の一元的な発行権を握り、幕府に金の地金蓄積、いわゆる「金準備」が必要だったため』と指摘した。第2に『当時の主な輸入品は火薬、生糸、綿であり、この決済に金銀が必要だった』、第3に『財政が破綻すれば政権は維持できないと知っていた』という。歴史をおカネから覗けば、見方が変わる。  豊臣家滅亡もおカネのためだった。1615年大坂の夏陣のあと、家康は駿府の金座長官、後藤光次を大坂城に派遣、家康を上回る大金持ち、秀吉が残した金銀すべてを没収した。聚楽第、金の茶室など秀吉は金銀を湯水のように使ったが、家康は派手を好まず、食べるものを含めて質素、倹約に徹した。江戸時代を通じて、武士のモットーは質素、倹約となり、それが幕府の安定につながった。  それでも、さまざまな天災などで財政はひっ迫し、江戸幕府は何度か貨幣品位を落とす改鋳という「打ち出の小槌」を使い、財政基盤を強化した。金の産出量が大幅に減った佐渡金山を立て直したあと、勘定奉行となった荻原重秀の金銀改鋳が特に有名で、1・5倍の改鋳で得た利益が元禄文化の隆盛を演出した。  ペリー来航後に開国と続き、その結果、貨幣制度が破綻、幕府は崩壊した。  小判一両(金貨)と一分銀(銀貨)の金銀比価は1対5で、金1gに対して銀5gが同じ価値だったが、当時の国際金銀比価は1対16、金1gに対して銀16gだった。開港した横浜では銀5gで金1gが購入できたから、外国商人らは3倍以上の儲けを手にできた。初代駐日公使ハリスらは多額の金銀両替を求め、膨大な金が海外流出した。この事実に驚いた幕府は金流出を避けるため、対銀の金価格を3・75倍に引き上げた。これで一分銀の価値が3・75分の1に下がり、一分銀の下落に反映して、物価は瞬く間に3・75倍に向かって上昇した。  驚くべき物価高騰(ハイパーインフレ)が始まり、困窮疲弊した武士らは尊王攘夷に走り、開国した幕府の無能ぶりを責めた。狂乱物価は江戸、大坂、京都などで大混乱をもたらし、家康が確立した貨幣制度は機能不全に陥った。  今回の赤字国債の行方はいずれ、ハイパーインフレをもたらし、幕末と同じ大混乱を招くのだろうか? 大量の赤字国債発行を容認する「経済理論」  「コロナ」危機に直面したとき、政府の指導理論は「生きている人を守る」である。ウイルスとの闘いだけでなく、不況が人々の生活を困難にしているならば、何もしないで眺めているわけにいかない。108兆円もの緊急経済対策などだ。赤字国債によるおカネのバラまきでインフレの進行と通貨価値の下落が起きるリスクに対して、竹内淳・前日銀静岡支店長は「デフレ圧力があるので、インフレにはならない」と分析した。  世界中が新型コロナの「緊急事態」にあり、おカネをバラまいているのは日本だけではない。だから、有事の際の円は強く、円高基調を堅持、国債の暴落による金利の上昇など全く起きる気配はない。円安、インフレの心配もなく、赤字国債発行にためらうこともないのだろう。  「経済学」の科学的革命と呼ぶ、MMT(現代貨幣理論)は、日本の場合、年率2%のインフレターゲットになるまで赤字国債発行に問題はなく、赤字国債は永久債化して回収しなくていいのだとびっくりするようなうまい話をする。現在のインフレ率は1%前後だから、日本の赤字国債発行に問題なしとなる。  と言っても、多くの正統な経済学者はMMTは単に突飛な雑な思いつきで、数字に裏付けられた経済理論ではないと批判する。まあ大体の経済理論は当てにならないし、赤字国債発行の現状を見れば、日本の政治家の多くはMMTに信頼を置いているのかもしれない。  ただ、政治家は目先の利益で動くから、大きな落とし穴に気づかない。大量の赤字国債の高いリスクに警戒は必要なのだろう。 「令和天皇」即位の記念金貨発行を!  赤字国債は政府が(日銀発行の)紙幣を得るためのものだが、政府はダイレクトに貨幣を発行できる。5百円までの硬貨(補助貨幣)だが、それでは大きな収益を得ることはできない。そうか、硬貨であれば、金貨も発行できるのだ。  1986年、政府は天皇在位60周年記念の10万円金貨を発行した。金(20g含有)は10万円の40%程度で、鋳造費用を加え、6万円弱が発行益となった。1千万枚発行したから、額面では1兆円、約6千億円が発行益となった。10万円金貨は一般に流通していないから、各家庭などに退蔵された。金価格の高騰で、天皇在位60周年金貨は10万円以上の価値を持つ。  さて、提案するのは、この未曽有の事態を踏まえた令和天皇即位の記念金貨の発行である。失業者の増加が顕著になる「コロナ」後を想定する。頃合いを見計らって、20万円、10万円金貨をそれぞれ1千万枚発行する。額面で3兆円、天皇在位60周年金貨に比べて、金の含有量は少なくていい。その発行益で生活困窮者らに10万円支給できる。  昨年12月時点で日本の個人金融資産は1900兆円という。前回も書いたが、日本でも格差は広がり、100万ドル(1億1千万円)以上のミリオネアは何と約3百万人。令和天皇ご夫妻もコロナの影響について心を痛められている。国民の天皇家への愛慕の念は非常に強い。令和天皇即位金貨を購入する人は多いだろう。  いまから25年ほど前、絶滅の危機に瀕する野生生物を守る運動に取り組む世界自然保護基金日本委員会(WWFJ)総裁を務める秋篠宮ご夫妻を静岡市へ招き、WWFJへの寄付を募るパーティーを開いた。一人当たり20万円もの寄付が集まり、多額の浄財を元外務大臣の大来佐武郎WWFJ会長に手渡すことができた。多くの困っている人がいる一方、富裕層と言われる人々も多く、おカネの使い道に迷っていることがわかった。秋篠宮皇嗣ご夫妻の即位記念金貨も発行したほうがいいだろう。  赤字国債でおカネをバラまくことは簡単だが、みんなが納得できる捻出法として、天皇ご夫妻、皇嗣ご夫妻の金貨発行を薦めたい。家康が残したという久能山埋蔵金を見つけられれば、それを使ったほうが早いかもしれない。家康はこんな危機を見込んで、「埋蔵金」をどこかに残してくれたのだろう。 人口100万人当たりコロナ死者数(4月19日現在)  先週(12日)に続いて、「worldometers」(4月19日午前10時の統計)で調べた「各国の人口100万人当たり死者数」を紹介する。死者数は大幅に増えているが、100万人当たり死者数の各国順位は先週と同じだった。ニューヨーク州の死者数は異常に多い。日本の死者数はいまだ非常に少なく、東京もひと桁である。(カッコ内は実際の死者数)  1、スペイン355人(2万6606人)、2、イタリア324人(2万3227人)、3、フランス296人(1万9323人)、4、英国228人(1万5464人)、5、スイス159人(1368人)、6、スウエーデン149人(1511人)、7、米国118人(3万9014人)、8、ドイツ54人(4538人)、9、カナダ39人(1470人)、10、韓国4・53人(232人)、11、中国3・22人(4632人)、12、シンガポール1・89人(11人)、13、日本1・88人(236人)、14、香港0・53人(4人)、15、台湾0・25人(6人)など。  ニューヨーク2162人(1万7671人)、東京8・16人(68人)

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「コロナ」に負けない「お茶パワー」を!

息子2人を感染症で失った家康  1607年3月11日徳川家康は駿府城築城を指揮するために、江戸から駿府に戻る。江戸滞在中の2月18日家康は4男で清洲城主忠吉と面会した。忠吉の顔は鼻、くちびるが崩れ、顔面が特にひどい症状で紫の布で顔を覆い、病状もあって、今生の別れは短時間で終えた。その後、忠吉は清洲に戻ろうとしたが、3月になり江戸で亡くなってしまう。享年29歳。その1カ月後、4月には家康の2男、越前城主結城秀康が忠吉と同じ病気で亡くなる。享年34歳。8月には家康側近、紀州和歌山城主浅野幸長も同じく亡くなった。享年37歳。いずれも関ヶ原の戦場で生き永らえたのにあっけなく生命を落としてしまった。  家康は2人の子供のために当代随一の医者を派遣したが、その病気を治療することはできなかった。病名は、性的接触により感染する「梅毒」。1910年ドイツのコッホ研究所でエールリヒと秦佐八郎が特効薬サルバルサンを発見するまで、世界中で流行、数百万人の生命を奪った。その3百年前、家康は梅毒に効果的な薬はないのか、一生懸命に調べている。久能山東照宮には、家康が赤線を入れた「朝鮮版和剤局法」(国重要文化財)難病の部に梅毒治療薬として生薬「山帰来」が登場する。当時の梅毒は死に至るまでの期間が短く、感染しやすく、死亡率も高い病気だった。  家康の側近となった英国人ウイリアム・アダムス(三浦按針)の乗船してきたオランダ船リーフデ号に飾られた「海の守護神」エラスムスの木像。アダムスが尊敬した、科学的な思考の持ち主エラスムスは、「梅毒はあらゆる病気の中で最も恐れるべきものであり、これほどまでに全身に広がり、すべての医術を退け、患者を残酷までに苦しめる伝染病は他にない」と警告した。家康はアダムスから梅毒の恐ろしさを十分に聞いていたのだろう。1616年4月、74歳で亡くなるまで、水泳などで心身を鍛え、大好きなお茶を飲んで免疫力を高めることを第一に考えた。  さて、新型コロナウイルスである。世界中にまん延、死者数が10万人を突破(10日現在)、安倍首相は東京都など7都府県に緊急事態宣言を行い、愛知、岐阜、三重知事らも独自の「宣言」をした。コロナ関連であれば、どんな話題でもメディアが大きく取り上げる。メディア報道は毎日の感染者数速報を大々的に伝え、逆に不安を煽っていると批判する声も多い。  静岡人はメディア報道に踊らされることなく、家康流に冷静に「コロナ」を見てみることにしよう。  死者数を比較すれば各国の状況が分かる  海外報道は日本ではPCR検査を意図的に行っていないので感染者数が極端に少ないと伝え、メディアはそれに乗って安倍首相批判の恰好な材料にする。どう考えても、「感染者数」と「死者数」は全く違う。「生きている人を守っているのかどうか」はどちらなのか?最も良い指標は国民の生命を守ることを比べる「各国の人口100万人当たり死者数」。リアルタイムに世界中の人口、コロナ患者数などさまざまな統計数字を出す「worldometers」(4月12日午前10時の統計)を使って、静岡経済新聞が独自に調べた。  人口100万人当たりで最も死者の多いのは、スペイン(人口4670万人、死者1万6606人:以下同じ順序)355・58人、次いでイタリア(6千万人、1万9468人)324・46人。  感染者、死者数が世界で一番多い国となった米国(3億3千万人、2万555人)62・28人、カナダ(3770万人、653人)17・32人。死者の7割を占めるヨーロッパで死者数が少なく、メルケル首相の評価が高いドイツ(8370万人、2871人)34・30人、フランス(6520万人、1万3832人)230・53人、英国(6780万人、9875人)145・64人、スイス(860万人、1036人)120・46人、スウエーデン(1010万人、887人)87・82人など。  最初に新型コロナを発症、武漢封鎖を行った中国(14億3800万人、3336人)2・3人、韓国(5120万人、208人)4・12人などであり、最も死者数が少ないのはSARSを経験した台湾(2380万人、6人)0・25人、香港(750万人、4人)0・5人、シンガポール(580万人、7人)も1・2人と非常に低い数字が続く。  さて、緊急事態宣言や経済対策など安倍首相へ風当りの強い日本(1億2650万人、144人:ダイヤモンドプリンセス号の死者数含む)は、何と1・13人だった。何かと批判も多いが、この数字はいま流行りの「すごいぞ ニッポン!」と賞賛してもいいのではないか。  「臨時休業」や「自粛」などでメディアが大騒ぎの日本。毎日、新型コロナの感染者は増えているが、現在のところ、死者数は世界各国と比べて圧倒的に少ないのがまぎれもない事実である。 経済格差が莫大な死者数を生んだ?  ニューヨーク(817万人、8627人)ではアメリカの中でも飛び抜けて多く、100万人当たりの死者数は何と1055・93人。ほぼ同じ人口規模の都市、東京(833万人、40人)4・80人と比べれば分かるように、あまりに異常な数字である。なぜ、ニューヨークの死者が莫大なのだろうか?  2018年4月8日から21日まで、ニューヨークの隣町にホームステイして約50分のバス旅行で大学へ通った。ホームステイ先はコロンビアからの60代移民男性宅であり、熱烈な共和党のトランプ支持者だった。周辺は移民たちの貧しい地区で道路にはゴミが散乱していた。  毎朝通う中型バスの中で、一番驚いたのは、肥満体の若い男女たちがひしめき合うラッシュの様子だった。夕方の帰りのバスに目立つのは貧しい白人の高齢者たちだった。日本のバスの中では、めったに見ることのできない大きなお尻が座席を占領していた。バス停は1キロごとくらいにあり、次のバス停で停車希望者は必ず大きな声で「Next Stop」と運転手に指示しなければならなかったが、この地域のバス料金は非常に安かった。  いまと同じ季節のニューヨークは非常に寒く、数多くのホームレスや乞食が目立った。新型コロナによって亡くなっているのは、そのような貧しい人々なのだろう。日本とは全く事情が違うのだ。新型コロナで亡くなる人が日本で少なく、ニューヨークで多い理由について、英国の研究者が明らかにしている。  リチャード・ウィルキンソン、ケイト・ビケット著「平等社会」(酒井泰介訳、東洋経済新報社、2010年4月)。経済格差が健康状態に及ぼす影響を分析した。格差の少ない平等社会ほど、不健康や社会問題の発生頻度が低く、格差が広がるほど健康、社会問題に影響しているのだという。日本は世界の中で最も格差が少なく、健康、社会問題が少ない位置にあり、逆にアメリカは最も格差が大きく、貧しい人たちの健康、社会問題は最悪だと指摘する。  また格差の大きいほど成人の肥満率が高いことも明らかにして、日本人はアメリカ人の肥満率の12分の1以下であるという。毎日ペプシの3㍑ボトルを飲み干す若い黒人女性やヒスパニックの男性が3食ともファーストフード店で済ます例が挙げられていた。肥満は高血圧、糖尿病、心臓疾患、胆のう病のリスクが増すのだから、ニューヨークの新型コロナ患者たちが持病を持つことを容易に想像できる。  4月7日雑誌フォーブスは恒例の「世界長者番付」を発表、3年連続トップはアマゾン創業者ジェフ・ベゾス1130憶ドル(約12兆3千万円)、2位ビル・ゲイツ980憶ドルなどでアメリカの格差はますます広がった。1千万ドル以上の金融資産を有するビリオネア2095人のうち、日本からはユニクロの柳井正(197億ドル)ら26人が入っていた。SARS後に中国のアリババが極端に伸びたように、「新型コロナ」の影響で、ネットフリックスやズームなどシリコンバレーや中国企業が売り上げを伸ばし続けているから、新たなビリオネアが誕生するだろう。  金融資産100万ドル(約1億1千万円)世帯はアメリカでは10%、日本では5%程度だから、格差社会は日本もアメリカに近づきつつある。  残り95%のおカネを持たない平均的な日本人がなぜ、健康で「新型コロナ」の猛威に持ちこたえているのだろうか? 「強い免疫力」は弱毒性ウイルスを恐れない!  3月12日の記者会見で川勝平太知事は、静岡県民はお茶を飲んでいるから免疫力が高く、新型コロナに感染しても打ち勝つことができると述べていた。そうだ、お茶の力が大きいのだ。  新型コロナウイルスは弱毒性で自覚症状がないからまん延するのであり、一度抗体ができれば重症化リスクは低いとされる。ウイルスに感染しても異物を発見して駆除する抗体をつくり、ウイルスを排除していく。ウイルスとの闘いに勝つためには免疫機能がちゃんと働くことが重要。ふだんから家康のように水泳、武道に励み、お茶を飲み、十分な栄養を摂ることに心掛ければいい。新型コロナは鳥インフルエンザのような強毒性ウイルスではないから、免疫力の高い日本人の死亡者が少ないのだろう。  いまはマスク、手洗い、消毒が必要だが、実際は、ふだんの十分な睡眠、運動、栄養、ストレスのない生活こそが重要、それで免疫力は高まる。アメリカに行ったとき、ホテルのスタバで緑茶を注文したら、たっぷり砂糖の入った甘い緑茶が出された。アメリカ人の味覚は砂糖を好み、肥満につながることに目をつむる。過度の砂糖は免疫力を失わさせる。幸福なことに日本人は砂糖なしのお茶を飲む習慣を持っている。  タイトル写真にあるように新茶を祝う八十八夜イベントで川勝知事と踊った「お茶がえるクン」はいま、「新型コロナに負けないゾ音頭」をつくっている。「ちゃ、ちゃ、ちゃ、お茶のパワーでコロナに勝つぞ♪…」。川勝知事と一緒に踊る日を待ちわびる。さあ、静岡県発で元気が出るお茶パワーを発揮しよう。  古代ギリシアの悲劇詩人エウリピデスは「私が富に関心を持つのは、病んだ人に健康を取り戻させるため。富は日々の小さな喜びを与えるにすぎない。ひもじさが満たされれば、富者も貧者も同じである」と述べた。  「コロナ後の格差社会」は日本に必ず到来する。だから、静岡人はお茶をがぶがぶ飲んで、踊ったり、歌ったりして楽しい生活を送れば、健康でいられる。「格差社会」到来の大波の中で、安倍首相でも小池知事でもなく、また、リニア問題で考えを異にする大村愛知県知事、鈴木三重県知事でもなく、静岡県をお茶パワーで引っ張る川勝知事が手腕の見せ所だ。 ※タイトル写真は、八十八夜イベントでお茶がえるクンと踊る川勝知事たち。ことしも八十八夜はやってくるが、どうなることやら?