静岡街中に温泉は見つかったのか?

「温泉掘削中」看板消える?

 2017年10月静岡県環境審議会温泉部会は静岡市葵区の昭和通り沿いに建設される「ホテルオーレイン静岡(仮称)」棟の西側空き地(常磐町)での温泉掘削を許可した。この空き地はホテルの駐車場が建設される場所だ。その年暮れには掘削のための高い鉄塔のやぐらが設置され、「温泉掘削中」の大垂れ幕がお目見えした。静岡市郊外にはいくつかの日帰り温泉施設があるが、中心街に温泉施設はない。JR静岡駅から北西に約650メートルの場所での温泉ボーリングがスタート、道行く人たちは「温泉掘削中」という大垂れ幕に大きな関心を寄せていた。

温泉掘削のやぐらが消えた?

 ところが、最近になって、「温泉掘削中」の大垂れ幕だけでなく、掘削のための鉄塔やぐらなどすべてが撤去、元通りの更地になっていた。この空き地を見ると、ついこの間まで大掛かりな掘削が行われていたとは思えないほどの静けさだ。まさか、「温泉」は見つからずに、ボーリングは中止されたのか。

 温泉掘削には多額の費用が掛かるが、最近の温泉探査は進んでいるから事前に多くのことが分かっていただろう。と言っても、静岡市の街中は温泉未発見地域だから、かなり深い地層を掘削した場合、固い岩盤など何らかの理由でボーリングがとん挫することもあるだろう。

 温泉法では、水温25度以上の地下水あるいは総硫黄など19成分のいずれかを一定量以上含む地下水を「温泉」と定義している。掘削工事で温泉を確認すると、揚湯試験とともに温泉分析を通常は行っている。

 そのあと温泉をくみ上げるための動力装置許可、可燃性天然ガスが出ているかどうかの確認、もし可燃性天然ガスの発生があれば、そのガスを分離するためのガスセパレーター設置許可などを経て、温泉をくみ上げるための採取許可が出される。さらに公衆向け施設となると保健所による温泉法、公衆浴場法などの細部にわたる厳しい指導が入り、ようやく温泉利用許可が出される。

 静岡県担当課によれば、温泉が発見されれば、温泉分析などを行い、正式に温泉と認めてもらうのがふつうだが、ホテルオーレからは何らの申請は出されていないという。

 やはり、大掛かりなやぐらを設置してボーリングしたが、温泉は見つからなかったのか?

”温泉”工事は一時ストップに

 藤枝市にあるホテルオーレ本社に聞いたが、温泉についてははっきりとしたことを教えてくれなかった。ただ当初2020年2月末オープン予定だったが、オープンが半年近く遅れることになったと話してくれた。今回の温泉ボーリングは期待外れに終わり、もう一度挑戦するために、オープンが遅れるのだろうか?

温泉のためのパイプ

 もう一度、現地に出向いた。更地にさまざまな重機が入れられ、いろいろな工事に入っていた。駐車場棟建設のための準備らしい。恐る恐る「温泉」について聞くと、その中の一人が「温泉は見つかりました」との明るい返事をしてくれた。25度以上の地下水だったらしいから、”温泉”に間違いない。しかし、温泉分析など温泉に関わる作業は一時ストップして、150台以上を収容する駐車場建設を行い、それが終わってからあらためて揚湯試験、温泉分析を行い、静岡県に晴れて”温泉”と認めてもらう段取りらしい。

 安倍川伏流水による豊かで冷たい地下水で静岡市のサウナは評判が高く、首都圏等から「サウナー」と呼ばれる熱心な愛好家らが”聖地”静岡市を訪れている。効能の高い温泉とともにサウナ、水風呂に期待は高まる。

 ところで、ホテルオーレイン静岡は地上14階307室の客室を備え、14階屋上に天然温泉を楽しむ静岡市では最大級のホテルとなる。隣の駐車場からホテル屋上まで温泉をくみ上げるパイプ設置などこれからが本番となり、それで工事に遅れが出るのだろう。その工事現場を見ながら昭和通りを歩いていくと、別のホテル工事現場にぶつかった。

東横イン建設現場の向こうにホテルオーレイン静岡建設現場。ホテル三交イン静岡も見える

 看板に「東横イン オープン予定」とある。東横イン本社に聞くと、ことし12月開業を目指して建設真っ最中だという。こちらは14階建て、客室数155室という。その現場からホテルオーレイン静岡をのぞむと、その向かいに三交イン静岡(177室)が見えた。さらに七間町通りを越えて進むと、昭和通り沿いにホテルオーク(人宿町)が昨年3月にオープンしたばかり。こちらの客室数は64室。驚くなかれ、すぐ近くの昭和町にことし3月アパホテル(88室)が既存ホテルを買収、リニューアルオープンした。

昭和通りは「ビジネスホテル街」に

 いつの間にか、昭和通りにビジネスホテル建設ラッシュが起きていた。ホテルオーレイン静岡が開業すれば、約900室ものベッドを提供する「昭和通りビジネスホテル街」がお目見えする。

 従来から静岡市の宿泊施設不足が嘆かれていた。

 ある審議会で、グランシップ館長が「大きな学会や国際会議などを誘致しようとしても、静岡市には十分な宿泊施設がないからと断られてしまう」事例を紹介した。5年ほど前、わたし自身も知人の医科大学教授主宰によるグランシップでの大きな学会開催のお手伝いをしたところ、やはり、宿泊施設確保が問題となった。参加者は歓迎パーティを終えたあと、新幹線で首都圏に戻り、翌日学会発表で来静するなどてんやわんやだった。静岡市を観光などで売り出そうとしている市長らは、観光施設整備より宿泊施設の充実が必要なことを承知しているのか疑問に思った。

建設中のホテルオーレは静岡市内最大級ホテル

 さて、今回のビジネスホテル建設ラッシュは業界の側が静岡市の宿泊施設不足に狙いをつけたのだろう。にわかに起きた”ビジネスホテル戦争”の主人公とも言えるホテルオーレ。ここから屋上の天然温泉を売り物に静岡市の魅力を売り込んでくれるだろう。日本人ほど温泉、裸のつきあいが好きな民族はいない。景気の先行きに暗雲が漂うが、東京オリンピック開催の2020年、屋上温泉のあるビジネスホテルがお目見えすると、青葉シンボルロード、青葉おでん街に近い”静岡ビジネスホテル街”はフル回転するはずだ。屋上温泉からの景色をいまから楽しみにしてほしい。

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