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リニア騒動の真相86”毎日新聞”終焉の行方?

「リニア静岡工区の行方」の講演会   東洋経済オンライン6月1日付『静岡県知事選、「リニア」が争点にならない理由』、6日付静岡経済新聞『リニア騒動の真相84これでは川勝圧勝だ!』で、川勝平太氏が圧倒的に有利な情勢を伝えたのに続いて、13日から新聞、テレビ各社は電話やインターネット調査を基に、川勝氏がリードするとの予測を報道した。すべてのメディアが約3割は決めていないという全く同じフレーズで、川勝リードの予測したのにはびっくりした。きょう20日は投票日だが、大勢は決まったのだ。  20日午後8時の開票に合わせて、テレビ(特番を打つ局もある)、新聞社のネット報道は開票の速報を行う。選挙管理委員会の開票を待つのではなく、川勝氏にどれだけ早く、「当確」を打つことができるかに関心が集まっている。県内の主要投票所での「出口調査」の情報を基に、午後8時の開票と同時に「当確」を打つ可能性が高い、という。  自民党推薦の岩井茂樹氏が大きく出遅れ、劣勢を盛り返せなかった理由等は、『これでは川勝圧勝だ!』でも解説したように、岩井氏がリニア問題から逃げたとともに、有権者を是が非でも投票に向かわせようという具体的な”公約”を打ち出すことができなかったからである。(※一部週刊誌が報じた秘書暴行疑惑など岩井氏の暗いイメージが影響しているという意見も多かった)  一方、川勝氏はリニア、リニアを連呼して、「命の水を守る」「南アルプスの自然環境を守る」と訴え、反「リニア」を中心とする環境保全派の有権者たちの圧倒的な支持を得るのに成功した。  川勝氏の4期目に当たっての抱負等は、選挙戦の訴えと変わりないだろう。ただ、リニア、リニアを連呼した川勝県政の「リニア静岡工区の行方」は何よりも気になるところだ。本当に、今後4年間、川勝氏はリニア工事の着工を凍結してしまうのか?  そんな関心を察知したのか、静岡県の毎日新聞販売店会の江崎新聞店は”毎日大学”と銘打った講演会を静岡市で開いた。投票日の前日、19日にまさしく「リニア静岡工区の行方」と題した講演会を開催、講師は、県政担当の毎日新聞静岡支局記者。=タイトル写真はチラシ=  この講演会は毎月1回開催の”毎日大学”の一環で、毎日新聞読者であれば、年間12回の講演会に参加でき、年会費は6000円。一般の参加は1回当たり1000円だから、半額ということだ。主催者によると、「リニア静岡工区の行方」には通常の講演会より聴衆が多く、約50人が詰め掛けた、という。残念ながら、講演会には参加できなかったが、毎日記者がリニア静岡工区の現状について、詳しく説明したのだろう。ただ、現状を説明できても、1年先、2年先の行方まで予測できたのかどうか?自分の会社のことを含めて、1年先の未来を予測するのは難しいからだ。  毎日新聞は、16日付1面で7月1日からの購読料改定(月額4037円→4300円)を発表した。朝日新聞が同じく、7月1日から同4400円への購読料改定を行うので、2018年に同4300円に値上げしていた読売新聞に朝日、毎日が追随、新聞購読料は3紙がほぼ同じ金額となる。  一番最後になった毎日新聞は、せっかく部数を伸ばす機会を得たのに、なぜ大幅な「値下げ」に踏み切らなかったのか、不思議でならない。新聞社以外の各企業は物価を抑え、1円でも安く売ろうという必死である。新聞社だけが、昭和時代に繰り返した”カルテル”を結んで、全社一斉の値上げという同じことをやっているのだ。4300円に値上げしたことで、多くの毎日読者が定期購読をやめる可能性が高い。  スマホの普及などで紙媒体離れが進んでいる。だから、”毎日大学”のような読者参加型のサービスに新聞販売店が努めている。今回の値上げは、毎日新聞の終焉を早めてしまうかもしれない。 約2300万部の新聞部数が消えた  ことし4月の静岡県内の新聞購読部数は、ABCレポートによると、静岡55万部、中日11万1千部、朝日6万3千部、読売5万8千部、日経4万7千部、毎日2万5千部、産経1万3千部、東京3千部(百部以下は切り捨て)だった。ただ、ABCレポートの部数は広告や折込チラシの料金に反映されているが、実数とはかけ離れている、という。  昨年9月20日発行の週刊誌サンデー毎日に、ノンフィクション作家下山進氏が静岡新聞の大石剛社長(当時)をインタビューした記事では、『静岡新聞の最新の部数は51万部まで落ち込んでいる』と書いていた。半年以上も前の話だ。そこで大石社長はインタビューを受けた際、ABCレポートの数字ではない別の部数を答えたようだ。社長が4万部も少ない数字を教えているのだから、ABCレポートがあてにならないことくらい関係者はみな承知している。ただ、広告主や折込チラシの依頼者は、ABCレポートによって、新聞社、販売店から不当に高い料金を請求されている。この事実を知ったら、広告や折込チラシから離れてしまうだろう。  静岡新聞が4万部も誤魔化しているとしたら、他紙も同じことをやっているだろう。  2008年12月6日付週刊ダイヤモンドは『新聞・テレビ複合不況 崖っ縁に立つマスメディアの王者』という特集を組んだ。ちょうど、静岡空港問題が大きな騒ぎになっていたときだったので、『静岡空港開港延期!知事の政治責任は?』特集記事を同誌に寄せた。その記事の中で、地元メディアによる静岡空港推進の世論誘導を問題にした。たまたまABCレポートによる、県内各紙の部数を紹介している。  いまから約13年前、静岡71万5千部、中日14万2千部、朝日10万6千部、読売9万2千部、日経7万3千部、毎日6万部、産経2万3千部だった。大石社長のインタビュー記事の”51万部”が正確ならば、静岡は20万部減少したことになる。  他紙も3、4万程度の部数減となっている。毎日は3万5千部の減少だが、現在2万5千部だから、もし、このまま減少が続けば、いずれ、静岡県内で毎日は消えてなくなってしまう計算だ。それも、部数減少は加速度的に早くなっている。だから、1年、2年先の毎日新聞の行方はどうなっているのか、分からない。地方の限界集落同様に、地方の新聞が消えていく運命にあるようだ。  毎日新聞社の河内孝・元常務取締役(営業・総合メディア担当)は2007年3月、『新聞社 破綻したビジネスモデル』(新潮新書)を発刊した。当時は、読売1千万部、朝日800万部などと喧伝され、新聞の総部数は5256万部を誇っていた。ことし3月時点の総部数は2966万部だから、14年たって2300万部減少した。  河内氏が『破綻したビジネスモデル』と書いた当時、昭和時代に大儲けしたビジネスモデルの破綻を意味しただけで、実際には、当時でも新聞経営は他の業種に比べて、着実な利益を得ることが可能だった。それなのに、2007年だけでなく、翌年の2008年には週刊誌でも『崖っ縁に立つ』危機感をあおっていた。河内氏も書いているが、実際には新聞社の経営の中身は全く外に出ていないから、メディアとはいえ、新聞社の経営状況を分析のしようもなかっただけにすぎない。  新聞部数同様に、新聞社の経営状況もすべて闇の中にある。 新聞社の究極の既得権とは?  『日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律』(略して、日刊新聞紙法)が1950年に制定されて以来、新聞社はどこからも買収されない、何があろうとも追及されない、事実上の独占経営ができるように国の権力によって守られている。これが新聞社経営が闇の中にある理由だ。  先日、新型コロナウイルスの感染者数について『さざ波』、日本の緊急事態宣言について『屁みたいなもの』発言(ツイッター投稿)で内閣官房参与を辞職した高橋洋一嘉悦大学教授は、この日刊新聞紙法を「新聞社の究極の既得権」と批判している。『これが世界と日本経済の真実だ』(悟空出版)の中から、日刊新聞紙法を取り上げた週刊現代オンラインの現代ビジネスで、『新聞、テレビが絶対に報道しない「自分たちのスーパー既得権」』と題した記事を公開している。  『まず日刊新聞紙法というのはどういう法律か。すごく変わっている法律で、実は世界にこんな法律は日本にしかない。ポイントは、新聞社は全国紙のすべてが株式会社で、地方紙も株式会社が多いのだが、その「株主が誰か」ということだ。  商法の大原則だが、株式というのは譲渡制限がない。これは株式会社の株式会社たるゆえんと言える。譲渡制限がないからどんな時にもオーナーが代わり得る。この「オーナーが代わり得る」ということが重要だ。  要するにオーナーはのうのうと安住できないということだ。そうすることで会社の緊張感が保たれ、きちんとした経営をするということになる。  しかし新聞社の株式は、日刊新聞紙法によってなんと譲渡制限が設けられているのだ。』  アマゾン創業者ジェフベゾス氏が、ワシントン・ポスト紙を買収したことが大きな話題となった。同紙はその後、デジタルファーストを掲げて、大変革を遂げた。アメリカの多くの地方紙が破綻している中で、買収による生き残りは、新聞業界では日常茶飯である。ところが、日本の場合、どんなことがあっても、他の業界からの買収はできない仕組みなのだという。  『株式が譲渡されない安泰な経営のなかで、オーナーが口出しをすることがないので経営陣にはなんのプレッシャーもかからない。そうして経営トップが大きな顔し続けることになる。  日経新聞などは企業の不祥事を追求する記事で「コーポレートガバナンスが重要」とよく書いているが、自分の会社が一番コーポレートガバナンスが利かないのだ。なぜなら、株式の譲渡制限があるからだ。それではガバナンスなど効きようがない。  新聞社の株式が譲渡されないということは、つまり絶対に買収されない仕組みになっているということだ。さらに、その新聞社がテレビ局の株を持つ。朝日新聞ならテレビ朝日、読売新聞は日本テレビといった具合だ。そうすると、テレビも新聞社と同じようにまったくガバナンスが利かなくなる。  そうして新聞社を頂点として構成されたメディアは、既得権の塊になってしまう。  以上のような仕組みになっているため、一度新聞社の経営陣に加わってしまえば絶対安泰だ。クビになることはまずない。これは、他の業界では絶対にあり得ない既得権を守る規制なのだ。』(※『 』は高橋洋一氏の記事の引用です) リニア問題解決or毎日新聞終焉はどちらが先か?  今回の毎日新聞値上げの記事の中に、『人手不足に伴い新聞輸送・配達コストが増大していることなどから戸別配達網の維持が困難になりかねない事態になっている』などと値上げの理由を挙げている。  新聞販売店の購読料の配分はほぼ50%だと言われる。新聞業界だけが専売店システムを設けて、毎日、読売、朝日のみを配達する。ただ、静岡新聞、日経新聞はそれぞれの専売店に配達してもらうから、こちらは合配と呼ばれる。部数が少なくなっているのだから、すべての新聞を配達するほうがずっと合理的で人件費等も安く済むはずだ。これも昭和時代が続いているのか、あくまでも専売店システムを崩さないようだ。  部数から言えば、江崎新聞店の経営は、毎日新聞ではなく、合配の静岡新聞で成り立っているようだ。静岡新聞社史には、1964年日曜日の夕刊廃止に伴い、他紙が値上げした際、大幅な値下げに踏み切った、と書かれている。そこから、静岡新聞の部数は大幅上昇に転じたのだという。いまから見れば、あまりに常識的な手法だが、当時は業界のルールに背いたことになり、静岡新聞は業界の”孤児”となってしまう。  朝日、毎日、読売を読んでも、静岡県の話題はほぼ同じである。静岡県庁からの発表記事をそのままに書いている場合が多いからだ。これもアメリカの新聞などと全く違う。だから、毎日新聞が消えてなくなっても、静岡県民は誰も困らない。  本当に、『リニア静岡工区の行方』をちゃんと取材できて、紙面に紹介できるのならば、毎日新聞の価値があるかもしれない。残念ながら、いずれ、毎日新聞の一般読者は静岡県内ではゼロになる確率が高い。  大井川流域の自治体首長が、これから2年後までにリニア問題は解決すると予測した。なぜか?さて、誰がどのように解決するのか楽しみである。 ※20日15時半過ぎにアップしました。これから4時間半後に開票が始まります。

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リニア騒動の真相85”公約”を果たせ!

「日本一住みやすい静岡県」って?  静岡県知事選公報で、岩井茂樹氏は『「日本一住みやすい静岡県!」実現へ。』を訴え、未来をひらく8プランを提案している。具体的に何をどのように取り組むのかの公約ではなく、「女性の笑顔が輝くように!」などすべて曖昧な目標を掲げている。8プランの「安全・安心なまちづくり」の中に、小さな文字で「リニア問題」を取り上げ、命の水を最優先に建設的な対話とのみ記されている。いずれにしても、何らかの具体策を示さないで、「日本一住みやすい静岡県!」を実現できるのか、はなはだ疑わしい。  川勝平太氏は「レインボーマニフェスト」として「リニア問題」を筆頭に7つの項目を掲げているが、こちらも具体的な政策ではない。『「言うべきことは、はっきりと言う!」これが、私の知事就任以来、変わらぬ信念です。』とあるが、「言うだけ」くらいならば、誰でもできる。それを実現できるかどうかだが、川勝氏は言い放しのことが多い。  『静岡県はリニアに反対していません。静岡県のエゴで工事を止めているわけでもありません。時間が掛かっているのはJR東海による環境影響評価が不十分であるためで、現在はそうした状況を打開するために国土交通省が設置した有識者会議で議論が行われている最中です。  大事なのは「工事によってどのような影響が起きる可能性があるのか」「それをできる限り回避または低減するにはどうすればよいのか」といった当たり前のことを、国やJR東海にはっきりと伝えることです』など、それこそ当たり前の主張を繰り返している。  国の有識者会議を取材していればわかるが、専門家たちは、JR東海による環境影響評価の説明について具体的に検証を行い、下流域への地下水等の影響がないことなどに科学的な根拠を与えている。一方、川勝氏は有識者会議が「全面公開」ではないなど議論の本質とは関係のないことにいちゃもんをつけて、国交省の姿勢を厳しく批判、メディア受けを狙う。山梨県、長野県へ一滴の湧水も流出させないことがJR東海の約束だったなど、無理難題を唱え、下流域の影響回避とは全く違う議論に終始する。政治家ならではの駆け引きかもしれないが、いつまでも同じ姿勢となれば、静岡県外からは反対のための反対ーエゴとしか見られない。  一体、有権者は何をもって、選択の基準とすればいいのか迷うだろう。連日のように、県知事選のアンケート調査結果が新聞各紙で報道される。記事を読んでも、選挙公報同様に両候補の主張内容の貧しさだけが目立つ。各紙とも投票率の低下に不安を抱く。有権者の関心の薄さは候補者の責任でもある。  10日付産経新聞は『静岡県は全国的にも医師不足が顕著だが、医療の充実に向けた対策』を両候補に問い掛けていた。  『医師不足』は静岡県にとって、一番、切実な問題である。本当にこの問題を解決できるのならば、静岡県知事にふさわしいはずだ。 静岡県に「早稲田大学医学部」?  川勝氏は2009年7月の知事選挙で、「医師不足」の解決策を掲げて、初当選した。  『2009年夏、さまざまなマニフェスト(公約)を掲げた川勝平太知事が誕生した。新知事として積極的、広範囲に活動、女性たちを中心に圧倒的な人気を誇っている。川勝知事のマニフェストのうち、最も注目が集まるのは「県東部地域に医科大学誘致」である』で始まる記事を、2010年に発刊した雑誌『静岡県の良い病院2010ー2011』(発行:NPO法人Qネット)の巻頭言に掲げた。それだけ、川勝氏への期待が大きかったからだ。川勝氏の写真は非常に若い。と言うのも、2008年、県知事選に出馬前、静岡文化芸術大学学長時代であり、いまから、13年も前である。  川勝氏は民主党公認だったから、2009年10月に、国の事業仕分けにならって「県の事業仕分け」を始めている。2007年から石川嘉延前知事の時代に始まった「県の医師確保対策」事業費4億2400万円も事業仕分けの対象だった。県は「人口比率から全国平均進学率を出せば、静岡県では、250人が医科大学へ進学する計算だが、現実は150人~160人にとどまっている」と説明、浜松医科大学しかない悲惨な結果を数字が裏付けていた。「医学生の偏在は中堅勤務医の偏在に関係する」(武井義雄・元エモリー大学教授)の指摘を根本的に解決するには、医科大学新設しかないのだ。石川知事が医科大学新設に消極的だっただけに、川勝氏への期待は大きく高まった。  『川勝知事は関係の深い、母校の早稲田大学に協力を依頼した。早稲田大学も医学部設置は悲願である。ぜひ、早稲田大学医学部を静岡県東部につくってほしい。  「カネはいくら掛かってもいい」。県民の多くが川勝知事を応援している。頑張れ、頑張れ!川勝知事。』と記事に書いた。  川勝氏は本当に、頑張ったのか?しかし、いまだに医科大学設置の声は聞こえてこない。川勝氏は「早稲田大学から(静岡県の方角が)都の西北ではないので、断られた」など珍回答をした。一体、医科大学新設はどうなったのか、いまでも取り組んでいるのか、川勝氏は説明していない。  今回の産経新聞の「医療の充実に向けた対策」に川勝氏はどう答えたのか? 医科大学新設はどうなった?  『県内における医師偏在が課題。地域の実情に応じ、効果的な配置を図っています。(略)医療従事者は「ふじのくにバーチャルメディカルカレッジ」(本庶佑学長)の展開が奏功し、県内勤務者が平成22年の18人から今年は578人に大幅増加。医系大学の地域枠設置数は全国1位です』など回答している。一般の人たちには、この説明では全く理解できないだろう。  まず、「ふじのくにバーチャルメディカルカレッジ」(本庶佑学長)と大層な名前を使っているが、医科大学とは全く関係のない、有名無実の組織。県の「医学生奨学金」制度を促進するための施策の1つに過ぎない。月額20万円を貸与、医学部6年間で学生は1440万円を受け取り、貸与期間の1・5倍期間(9年間)を静岡県の公的医療機関で勤務すれば、全額返還免除となる石川知事時代に始めた制度である。2007年度から、これまでに1308人に貸与したところ、今年4月1日の時点で、578人が県内の病院に勤務している。10年以上たって、578人の費用対効果については記されていない。  分かるのは、川勝氏は、医科大学新設をあきらめ、いまや石川知事の施策を受け継いで、「医学生奨学金」制度を積極的に推し進めていることだ。  2009年県の事業仕分けで、公募委員(勤務医)は「医学生奨学金」制度について「効果が薄い」などと指摘していた。もともと静岡県で働くことを目指していた学生にはボーナスのような制度であり、また、カネをやるから、卒業したら、静岡県で働け、と若い医師たちに強制することがいいことかどうか。  防衛医科大学校は、医学科・看護科ともに入学金、授業料とも無料であり、月額11万7千円の学生手当、年2回の期末手当が支給される。静岡県の奨学金制度など比較にならないほど優遇されている。医学科の場合、9年間(看護科は6年間)に満たず離職する場合、卒業までの経費を償還しなければならない。それだけの責任を持つのだ。静岡県と一番違うのは、防衛医科大学校の場合、卒後の臨床研修などの指導等でもレベルが非常に高い。  静岡県の場合、返還免除のために指定した病院での臨床研修(2年間)、専門研修(3~5年間)を求めているだけである。卒後研修の内容を保証しているわけではない。  医師は国家試験に合格すれば、医師の資格を得る。そこから研修医制度はスタートする。一人前の医師になるまでに、少なくとも6年間は掛かる。少なくとも、最初の6年間、研修医はあまりに未熟の場合が多い。  10万人当たりの医師数調査では、静岡県は全国で40番目であり、全国平均を大幅に下回る。この統計に使う病院勤務医の約20万8000人のうち、約1万7000人が研修医である。未熟な研修医でも、統計の数字では1人に数えられる。  静岡県では医師の数合わせのために、「医学奨学金」制度を創設したとしか思えない。「医者は3人殺して、一人前になる」。医師であり、作家久坂部羊氏の医療小説「破裂」のキャッチコピーである。久坂部氏だけでなく、数多くの医師が同じ証言をしている。ヒヤリハットだけでなく、表面に現れないが、深刻な医療ミスは数多いのだ。もし、研修医にすべてを委ねることになったら、患者はあまりにも不幸である。 医学生奨学金制度の欠点とは?   他国の医療教育制度を見れば、日本の研修医制度がお粗末なことがわかる。  アメリカでは、生物学専攻の単位を取得することを条件に4年制大学を卒業したあと、MCATと呼ばれる統一試験を受けて、初めて、医科大学へ進学することができる。MCATは一般教養だけでなく、面接が重んじられ、将来、どのような医師を目指すのかを見極め、良き臨床医になる学生を選抜する。  医科大学では実践が重んじられ、ほとんどの時間が臨床教育に費やされる。4年間の医科大学を卒業したあと、医師免許を獲得するために義務付けられた臨床研修(インターンシップ)がスタートする。主要な科目の経験を積んだあと、免許をようやく取得できる。この免許で、一般医(家庭医)として開業できる。  専門医となるためには、さらに3年間の徹底的な臨床研修(レジデンシ)を受ける。臨床研修プログラムは、第三者の審議会が厳しく管理し、症例数、その種類、教官数とそのレベル、サポート状況などすべてをチェックする。医学生たちは最高レベルの臨床研修を目指して、自分の望んだプログラムに必要書類を送って、面接の通知を待つ。東海岸で教育を受け、西海岸で卒後臨床研修を受けるのが人気だが、アメリカの臨床研修は非常に厳しい。  とにかく、アメリカの医学教育は「医療のプロ」をつくることを目指している。それに対して、日本では、6年間の医学教育のあと、筆記だけで医師免許を与えている。何回も書くが、その時点では、まだ、ほとんど使いものにならない。卒後9年間静岡県での病院勤務を求めるが、6年間をどう過ごすのか、研修医にとっては大きな問題である。もし、わたしが患者とだったならば、研修医だけの診察等は避けるだろう。  卒後研修をどのように受けて、プロの臨床医を名乗るのか、あまりにも大きな問題だが、静岡県の医学生奨学金制度はその点を全く考慮していないのだ。 早稲田の田中総長と連携してほしい!  さて、一方の岩井氏は何と回答したのか?  『現在の医師不足は、「医療費亡国論」に基づく国の政策の失敗が原因であり、その方針転換を国に求めたい。また、県内に感染症や災害時の対応を兼ね備えた国と県の連携による医療施設を作りたい。ただ、医師育成には時間が掛かるので、知事がトップセールスで医師確保に動き回ることが、現時点は最も重要と考える』。本当に静岡県の医師不足について理解しているのか、こちらも疑問だらけだ。(「医療費亡国論」とは、1983年医療費の膨大が、国を滅ぼすとして、医療保険制度の改革や都道府県の病床数規制につながった厚生官僚の主張)  リニア騒動の真相84で、今回の知事選は川勝氏がほぼ決まりだと書いた。このままでは、川勝県政がさらに4年間、続くことになる。今回は、川勝氏の公約は反リニアのみである。  医科大学新設を阻んでいるのは、まさに国の岩盤規制である。「言うべきことは、はっきりと言う!」のが川勝氏の信念ならば、リニア問題ではなく、医師不足の対応にちゃんと責任を果たすよう、医科大学新設を求めて、国と真っ向からけんかするくらいの気概ではっきりと主張べきだろう。  ちょうど、早稲田大学の田中愛治総長は、2018年の就任以来、医学部創設を唱えている。まさか、元総長のように「都の西北」など方角のことは言わないだろう。ぜひ、いま一度、初心に帰り、医科大学新設に立ち向かってほしい。

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リニア騒動の真相84これでは川勝圧勝だ!

陳腐なキャッチフレーズが並んだ!  静岡県知事選が3日、スタートした。正味17日間で、圧倒的に有利な戦いを進める現職の川勝平太氏に対して、前参院議員の岩井茂樹氏が形勢逆転を演出できるかに掛かっている。立候補者の出陣式が静岡市内で開かれ、第一声を聞いたが、いずれも抽象的なイメージばかりで、有権者が「これだ!」と選択を促す具体的な公約はひとつもなかった。どちらもどちらだが、これは川勝氏の思う壺なのかもしれない。  象徴的なのは、キャッチフレーズにも現れていた。岩井氏の『まっすぐに、力あわせ 静岡県を前進させる』(タイトル写真)に対して、川勝氏は『東京時代から静岡時代へ』。選挙とは一にも二にも、目立つこと。『静岡県を後退させる』であれば、誰もがあっと驚くが、”前進させる”は子供でもつくれるキャッチコピー。『コロナに打ち勝つ 給付金10万円を約束!』とあれば、誰もが「おお!」と大歓声を上げた。岩井陣営は危機的状況に目をつむっているのか、あまりにも楽観的である。  一方の川勝氏も『東京時代』を賛美して、これから『静岡時代』では、これまでの12年間の県政を総括しろ、と言いたくなる。有権者の顔が見えない独りよがりだが、川勝氏はこれでいいのだろう。  翌日(4日)の新聞各紙は、両氏の演説の中身を簡単に紹介していた。川勝氏は、相変わらず「リニア」「リニア」を連呼していたことがよく分かる。『大井川の水源は南アルプス。62万人の命を育む水。命の水を守らなくてはならない』(毎日)、『前国土交通大臣が「ルートの変更」「工事の中止」に言及した。推薦をした自民党は責任を取る立場にある。JR東海は全量戻す約束を反故にした。私は約束を必ず守る』(読売)、『(南アルプスの)希少な水が工事で毎秒2トンなくなると言われたら、許せるはずがありません。ユネスコエコパークに認定されている南アルプスや命の水を守るために、私たちは立ち上がらなければならない』(朝日)など、これまで何度も何度も述べてきたことの焼き直しである。  川勝発言を検証すれば、さまざまなぼろを指摘できるが、国の有識者会議、県の専門家会議を傍聴することのない有権者に、”仮想の敵”JR東海と「闘う」知事を印象付ければいいのだ。川勝選対本部はJR静岡駅への動員を呼び掛けていないが、「リニア」反対のコアな面々が応援に駆け付けた。”確信犯”のコア層が投票行動に迷う有権者に強く働き掛けるのだろう。 陣営発表は「1200人」だが?  岩井氏は「リニア」に何ら触れなかった。これまで川勝氏との対談で、何度も「ルート変更」「工事の中止」発言を行い、とりあえず、「リニア」の争点外しに成功していた。第一声でも『川勝さんは何も分かっていない。ただ、反対だけを連呼すればいいものではない。わたしはリニア問題に真剣にちゃんと向き合う』などと訴えれば、リニア問題に関心を持つ有権者らは岩井氏の姿勢を見直すだろう。  翌日の各紙を見ると、『最優先でやりたいことは(コロナ)ワクチン対策だ。ワクチン接種率はあまり高くない。県が中心となって、国や市町と連携を取ることが重要』(読売)、『この県は自動車産業が命。産業構造が変わっていく中で、国と連携して産業を守ります。トップセールスで県産品を国内や世界に広げ、企業誘致などで、活力を呼び込んでいきます』(朝日)、『静岡の未来のため、今、新しい風を入れないと間に合わない」(毎日)などだが、そのまま川勝氏の演説だと説明されても、何ら違和感がなく、岩井氏独自の政策が全く見えてこなかった。キャッチフレーズでも書いたが、『コロナ支援金10万円を約束』とでも言えばいい。財政の裏付けは、現職知事の肝煎り事業計画を一時中止すればいい。おカネは後からついて来る。  朝日によると、静岡市常磐公園には、「陣営発表で約1200人の支持者らが集まった」とある。現場にいたテレビ局の政治記者に聞くと、せいぜい7、800人だと答えた。まあ、どんなに多く見積もっても1000人以下である。つまり、自民県連は1200人程度の動員を静岡市内の支持者に働き掛けたのだろう。  せっかく動員を掛けて集まったのに、一番、肝心な、新知事となった暁(あかつき)に、静岡県民に具体的などんな奉仕ができるのかはさっぱり伝わらなかった。川勝氏を必死で追い掛ける知名度の低い岩井氏が、特に無党派層に浸透させ、自分自身に投票させるために、一体、何と言うべきだったか? 岩井氏の理想は、石川嘉延前知事?   静岡市での出陣式のあと、岩井氏は沼津市に移り、県東部の首長らを集めた出陣式を行った。『理想は石川嘉延前知事。石川さんは53歳で知事になった。私も昨日(2日)53歳になった。天命を感じる』(静岡新聞)など具体的な名前を挙げたのだという。まさか、石川氏と立候補の年齢が同じだけと言うことだけではないだろう。石川氏を理想とする”天命”とは何を指すのか?  石川氏の県知事選と言えば、2001年7月、3期目選挙の鮮烈な記憶が残る。当時、2006年開港を予定する静岡空港に対して、県内だけでなく、中央のメディアなどが公共事業の「無用の長物」論を唱え、空港計画中止の議論が巻き起こっていた。そんな中、静岡空港反対の機運を知り、いち早く出馬表明したのが、東京在住だが、静岡とゆかりの深い、前参院議員の水野誠一氏。元西武百貨店社長であり、石原慎太郎東京都知事(当時)はじめ石原軍団などさまざまな人脈をバックに持つ水野氏に、静岡空港反対で「嵐」が吹き荒れる予感が起きた。  石川氏は、「嵐」をどう抑えたのか?  石川氏は空港反対勢力が求める住民投票条例案に賛意を示し、「住民投票の結果に従う」と突然、表明したのだ。知事選前の6月、市民グループは空港建設の是非を問う住民投票条例案を27万人の署名とともに直接請求した。石川氏は条例案を受け取ると、「賛成」の付帯意見をつけて県議会に委ねたのだ。県民の多くは、空港の是非を問う住民投票が実施されると期待した。石川県政が積極的に推進してきた事業を否定される可能性が高いのに、住民投票に「賛成」するという離れ業に、少なからぬ県民が拍手を送った。静岡空港問題の争点外しであるが、有権者の目にはそう映らなかった。  石川氏に有利に働いたのは、小泉(純一郎)旋風が吹き荒れ、参院選と同日選挙になったため、知事選への関心は薄れてしまったことだ。マスコミ報道は、選挙と言えば、参院選一色に染まった。結果、石川氏の得票は102万票を超え、水野氏の約57万票を大きく引き離し、3期目を軽々と決めた。水野氏だけでなく、空港反対を唱えた共産など4候補の合計得票数は約78万票で、石川氏の静岡空港の争点外しはまんまと成功した。ただ、新聞各紙は石川氏に投票した相当数に「空港反対」が含まれると分析している。  「住民投票をしたら、静岡空港計画はつぶされる」。自民県議らはそう考えた。それでも、石川氏は住民投票条例案を上程した。空港建設事業費1900億円のうち、すでに約1000億円を投入、2001年度にも167億円を予算化していた。当然、JR東海は静岡空港新駅に聞く耳を持たなかった。それでも、静岡県はまっしぐらに空港計画を進めた。結局、自民県議団は知事提案を否決、住民投票の大騒ぎは終わりを告げた。  したたかな石川戦略から、岩井氏は何を学んだのか? のぞみの静岡駅停車を公約にすべきだ!  しかし、まわりまわって、石川氏を辞職に追い込んだのも、静岡空港問題だった。  4期目の最終盤になって、石川氏は静岡空港開港を妨げる立木問題で辞職を余儀なくされた。5期目に向けて、着々と準備を進めていた矢先だった。石川氏は、立木問題で空港開港のさらなる延期を避けるために、自らの首を差し出すことで、地権者の了解を得たのだ。公共事業として「無用の長物」というだけでなく、環境アセスにも大きな問題があったが、すべて目をつむり、政治家として静岡空港開港を優先した。  2000年当時、マスコミが「静岡空港」開港への批判を繰り広げたのに対して、「静岡県の交通事情に見る―静岡空港への期待」と題して、石川氏が県民向けに訴えたトーク文書が残されている。  『静岡駅ホームにいると、通過する新幹線のぞみ、ひかりは往復14本であり、県庁所在地なのに静岡駅の「ひかり」は1時間に1本しか停止しない』と石川氏は嘆いた。結果、「のぞみ」に対して”通行税”を徴収する提案を行った。また、静岡空港新駅設置をJR東海に要望するのは「身勝手で厚かましい要求」ではなく、JR東海にもプラスだとも述べ、JR東海に何とか悲願の空港新駅設置に聞く耳を持ってほしいと訴えた。それだけ静岡県にとっては、空港新駅が必要と懇願したが、JR東海は無視した。それが、現在のリニア反対につながっているのかもしれない。  石川氏は、空港開港時の利用者は160万から170万人と予測したが、開港当初から予測の半分にも満たない惨憺たる結果となってしまう。現在のコロナ禍の中、静岡空港に明るい先行きは見えてこない。新幹線を見れば、毎日約200本ののぞみが静岡県内を通過していく。その通過ごとに、こだま、ひかりは各駅停車を強いられ、5、6分の待ち時間につきあわされる。  石川氏を理想とする岩井氏は、リニア問題の解決だけでなく、のぞみ、ひかりの停車を何とかすると訴えるべきだ。川勝氏と違い、政治力で解決できるのだ、と訴えてほしい。  リニア問題では、JR東海の環境影響評価は甘く、流域の住民の理解を得ていない、と批判した。その発言を通して、「ルート変更」や「工事の中止」も選択肢のひとつだと述べた。国とのパイプを強調するのならば、ただ単に批判するのではなく、石川氏の悲願を受け継いで、のぞみ停車の道すじをちゃんと示すべきだ。  自民党推薦の最大の強みは政治力なのだろう。川勝氏とは全く違う岩井氏の強みを見せつけることではないか。岩井氏が静岡県内にのぞみを停止させることを”公約”にすれば、当然、有権者はJR東海が素直に従うと見るのがふつうだ。  リニア工事で静岡県へのメリットは何も見えてこない。JR東海はリニア沿線の新駅設置に取り組んでいる。東洋経済オンラインに、静岡県知事選、「リニア」が争点にならない不思議 | 新幹線 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (toyokeizai.net)を掲載した。  まだ間に合うのかどうか分からないが、県知事選に勝つ”天命”のためには、岩井氏は、静岡県内へののぞみ停車を公約とし、必ず、実行できると自信満々に訴えるべきだ。

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リニア騒動の真相83「BAD BLOOD」な関係?

「リニア」外しの意外な選挙戦略とは?   6月3日告示の県知事選(20日投開票)で、「リニア」を争点から外すという元国交副大臣の岩井茂樹氏(自民党推薦)の姿勢は、25日の公開討論会ではっきりとした。川勝平太知事から「(大井川流域住民の理解を得るために)厳しい姿勢で臨む選択肢」を問われた岩井氏は「場合によれば、ルート変更、工事の中止も含めて毅然と対応したい」などと切り返した。流域住民が理解しない限り、国の有識者会議による(下流域への影響はほとんどないと結論づけている)中間報告案を認めない立場を強調したかっこうだ。  川勝氏は「ルート変更」や「工事の中止」と言った岩井氏の発言を予期していなかっただろう。「リニア」推進の立場を取る国や自民党をバックにしているから、まさか、川勝氏の得意技である「ルート変更」や「工事一時凍結」というお株を奪い、さらに踏み込んだ「工事の中止」にまで岩井氏が言及するなど思いもしなかったはずだ。  川勝氏が「(自民党推薦であり)自民党全体の責任で話しているのか」と追及すると、岩井氏は「その時の状況を踏まえて選択肢の中で(工事の中止も)ありえる」とかわした。  討論会会場の約150人、テレビ、新聞報道を見た県民が岩井氏の発言を額面通りに受け取ったのだろうか?当然、「ルート変更」も「工事の中止」も、「場合によっては」という前提があり、数ある「選択肢」のひとつに過ぎない。これが「リニア」の争点外しの選挙戦略であり、岩井氏が当選すれば、「リニア」推進に舵を切ることはほとんどの関係者が了解済みだ。反「リニア」の川勝氏に対して、「リニア」推進の岩井氏という構図を一番承知しているのは、リニア工事中止を求めた日本山岳会など反「リニア」の団体である。  さて、本当に「リニア」推進を訴えることが選挙戦でマイナスになるのか?川勝氏が「リニア」凍結を求めるのは、リニア工事が「命の水」と「南アルプスの自然環境」をおびやかすから、と訴える。”環境保全派”の川勝氏が岩井氏との違いを出す戦略だろう。と言っても、川勝氏は表面上、「リニア」には賛成の立場を取ってきた。それが、コロナ禍の中、「リニア」の必要性を見直すときに来ていると発言、反「リニア」色をさらに強める。川勝県政が継続すれば、今後4年間、静岡県内のリニア工事の着工は見送られるのは確実である。それでいいのか?  いまの日本に、リニアが必要であることをシリコンバレーで起きた事件を基に紹介したい。「BAD BLOOD」は、その事件を追ったドキュメンタリーのタイトル。ちなみに、「BAD BLOOD」とは、「悪い血」のダイレクトな意味だけでなく、悪感情とか反目とかでも使う。まさに、川勝、岩井両氏の関係も表わす。 美女エリザベス・ホームズを支えた大物たち  「BAD BLOOD Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup」は2018年5月、米国で出版された。著者はウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の調査報道記者ジョン・カレイロウー。血液一滴で200種類の病気を判別する革新的な血液検査装置を開発したというスタートアップ企業、セラノスの創業者エリザベス・ホームズの真実を追う物語であり、2015年10月15日付WSJ1面トップ記事「もてはやされたスタートアップの行き詰まり」(見出し)を世に出すことで、セラノスの秘密と嘘を暴いていくドキュメンタリーでもある。  エリザベス・ホームズ=タイトル写真=は見栄えがよく、フォトジェニック(写真うつりのよいこと)が大きな特徴だ。ブロンドヘアの白人、大きな青い瞳、落ち着いたバリトン・ボイス、スティーヴ・ジョブスをまねた黒いタートルネックのセーターなどのイメージ戦略がシリコンバレーの女王を創り上げている。取締役会の高名なベンチャーキャピタリスト、ドン・L・ルーカス、ラリー・エリソンやスタンフォード大学の花形教授チャニング・ロバートソン、元国務長官ジョージ・シュルツらはセラノスの秘密や嘘が暴露された後でも、WSJの記事や内部通報者ではなく、エリザベスをとことん信用する。大物政治家らは、彼女の若い魅力的な才能に惹かれ、絶対的な庇護者となってしまった。  彼女はスタンフォード大学化学工学部に進学したが、19歳で中退、2003年22歳の時、セラノスを設立、彼女らの発明したとされる「痛くない血液キット」によって、アメリカの大手薬局チェーンと業務提携するなど急速に拡大した。10年間で医療費が約2千億ドル節約できると予想され、世界中の注目を集め、セラノスの企業価値は9000億円を超え、弱冠31歳で資産50億ドルを稼ぎ出し、雑誌フォーブスは「自力でビリオネアになった史上最年少の女性起業家」ともてはやした。ホワイトハウス、米商務省などが協力して国際的起業を支援する機構メンバーにも選ばれ、オバマや現大統領のバイデン(当時、副大統領)らもエリザベスを絶賛した。  ことし2月になって、『シリコンバレー最大の捏造スキャンダル全真相 BAD BLOOD』(集英社)という邦題で日本語版が出版された。2006年11月の革新的な血液検査装置をスイスの製薬会社への売り込んだ成功の瞬間から2018年3月の証券取引委員会(SEC)の詐欺罪提訴までが詳しく描かれている。第1章「意義ある人生」から第18章「ヒポクラテスの誓い」まで、セラノスの不正に満ちた内部で何が起きているかを追っている。第19章「特ダネ」から第24章「裸の女王様」までの後半4分の1で、WSJのジョン・カレイロウー記者とセラノスとの対決が描かれる。米国弁護士の役割や秘匿特権などだけでなく、とにかく、登場人物が多く、仕事、家族や友人などの関係も複雑多岐にわたり、カタカナの分かりにくい名前ばかりだから、人間関係を理解するだけでも日本人にはひと苦労かもしれない。WSJへ通報したジョージ・シュルツの孫タイラー・シュルツは弁護士費用を40万ドルも支払った。社会正義遂行のために破産する可能性さえあったのだ。日本とは全く違うのである。  静岡経済新聞は2018年10月28日付「取材ノート エリザベス・ホームズの正体を暴いたのは?」で一度、紹介しているので、こちらを読んでほしい。 GAFAMも大風呂敷のスタートアップだった  なぜ、リニアが日本には必要なのか?その理由は、日本には「セラノス」が誕生しないからである。  GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)など、現在、世界を支配するIT企業も最初はスタートアップだった。Fake it, until you make it!(そうなるまでは、そうであるふりをしろ)。1980年代につくられた造語、Vapor-ware(ベイパーウエア)とは、制作中と発表しながら、なかなか実用にならないソフトウエアやハードウエアを指す。つまり前宣伝だけは華々しいが何年たっても実現しない霞や幻のようなソフトウエアやハードウエアで、大風呂敷を広げるだけ広げてあとは成り行き任せにするIT業界の傾向を指す。  マイクロソフト、アップル、オラクルもかつてはそんな大風呂敷を広げた。シリコンバレーのテクノロジー業界では大風呂敷はお家芸であり、資金調達の手段として許容されているという。  GAFAMに追い付こうとするスタートアップの一つがセラノスだった。スタンフォード大学教授のロバートソンはエリザベスに対して「第二のビル・ゲイツかスティーヴ・ジョブスの瞳をのぞき込んでいることに、わたしは気づき始めた」と言っている。エリザベスをはじめ、多くの若者たちがシリコンバレーを中心に数多くいて、大風呂敷を広げているのだ。  同書は、『2013年の秋までには、シリコンバレーの生態系に凄まじい勢いで資金が流れ込み、ここから生み出された新種のスタートアップを表わす造語「ユニコーン」ができた。ユニコーンとは、評価額が10億ドルを超える巨大スタートアップを指す言葉だ』とあり、当時、その数は100社を超えたのだ。  ユニコーンの代表格が、配車アプリのウーバーであり、当時35億ドルの評価額で3億6100万ドルを調達した。音楽配信サービスのスポティファイは40億ドルの評価額をもとに2億5000万ドルを調達していた。セラノスはこれらのスタートアップの評価額を一足飛びに追い越し、60億ドルと評価され、その差を広げていた。2014年には評価額90億ドルに達し、エリザベスの個人資産は50億ドルに膨れ上がった。とにかく、大風呂敷を広げることで資金を集めまくるのがスタートアップということだ。  大風呂敷を広げたままのセラノスが許されなかったのは、その製品が単なるソフトウエアではなく、人々の血液を一滴で分析、検査する医療器具だったからだ。医師は臨床検査の結果に基づいて治療方針を決める。臨床検査室の機能がちゃんと果たされていなければ、誤診を招き、多くの患者の死を招く恐れがあった。多くの人の生命を危険にさらすと承知して、エリザベスは自社技術がすでに完成しているように嘘をつき、大風呂敷をさらに広げようとした。  著者のジョン・カレイロウーはエリザベスを「稀代の売り込み屋(大風呂敷に酔う者)」と呼んでいる。工学用語も検査室用語も難なく自在に操り、新生児治療室の赤ちゃんが採血されずに済みますように涙ながらに訴えかけることで信頼を勝ち取り、あっという間に人々に魔法を掛けてしまう。  ちょうど、セラノスが事件化され、WSJで大きく報道されていた2018年4月から7月までアメリカの各地(ニューヨーク、シアトル、サンフランシスコなど)を回った。そこで実感したことの一つが、ウーバー(配車プラットフォーム)がなければ、アメリカでは生活できないことだった。GPSがなければ、自分自身の立っている場所がどこか分からないのだ。ホテルだけでなく、エアビーアンドビー(民泊プラットフォーム)も使った。ホストファミリーはアレクサ(アマゾンの音声サービス)を使い、スマホがなければ、生活ができないのだ。アメリカではスマホがなければ旅行(生活)できないから、わたしもスマホの契約をした。  日本に帰国して、すぐにスマホを解約して、ガラケイに戻した。便利で親切な国、日本ではスマホの必要性がないと実感したからである。PCがあれば、スマホがなくても何の不便もない。政府がこぞって高齢者らにスマホを持つように呼び掛けるが、必要性が薄いのだから、契約してもスマホの機能を使いこなせない高齢者が多い。スマホに道案内を頼むよりも、誰かに聞いたほうがずっと楽しい。アメリカと違い、日本はそういう国であり、公共交通、タクシーなど整備され、ウーバーを必要としない。(※法的にも縛られている)  日本の個人生活で、ITのお世話になることは最小限で済む。そんな国で、シリコンバレーのスタートアップが生まれる可能性は非常に小さい。  セラノスも日本のような国民皆保険の国では必要ない。つまり、成長分野が望めるIT産業は日本ではなかなか誕生できない。 リニアをインバウンドに生かすために  一体、日本の成長産業分野で何が残っているのか?コロナ禍が終息すれば、インバウンド需要が再び伸びて、観光産業がけん引していかなければ、他に目ぼしい産業はないだろう。4000万人以上のインバウンドに期待するしかない。  トヨタが30年後にいまのままであるのかどうかわからない。もしかしたら、潰れているかもしれない。トヨタは水素自動車に賭けているが、シリコンバレーを含めて世界では電気自動車にすべてターゲットを合わせている。エジソンのつくったGEやワトソン・シニアがつくったIBMがそうだったように、アップルもグーグルも現在の形を変えているだろう。  日本は中国と違い、GAFAMにすべてを頼っている。このプラットフォーム分野ではすべてアメリカの専売特許に任せている。だから、日本を売るしかないのだ。青函トンネル、本州四国連絡橋、東京湾横断道路などムダな公共事業かもしれないが、日本でしか体験できない。リニアも全く同じである。南アルプスの地下約4百㍍を貫通するリニアは日本に来なければ体験できない装置となるだろう。  約80年前、太平洋戦争で230万人の戦死者と80万人の一般市民が亡くなった。日本全土が焼土と化した。敗戦後、日本の復興が始まった。高度成長期が続いたが、バブル崩壊後、長い停滞期が続き、2011年の東日本大震災で約2万人の人命が失われると、また、日本の復興が始まった。日本人は不幸と幸福の狭間の中で生きている。コロナ禍という不幸が終えたあと、日本の復興にリニアはどうしても必要となるだろう。それが予測できるだけに、いまの若い人たちの未来にリニアは必要となると断言できる。  リニアについては、さらに詳しく書く機会があるだろうから、そのときに詳述する。今回、「BAD BLOOD」という優れたドキュメンタリーでシリコンバレーの現実を垣間見たことで、いまの日本に何が必要なのかをリニアに結び付けて、簡単に紹介した。  月刊WiLL7月号(ワック)が『リニアの夢を砕く 川勝平太静岡県知事はズブズブ親中派』(白川司)という論文を掲載していた。”ズブズブ親中派”かどうかの証拠には欠けるようだが、川勝氏が反「リニア」であることは間違いない。6月20日投開票の知事選では川勝氏が圧倒的に有利であり、工事凍結どころか、リニアはこのまま宙に浮いてしまう可能性さえある。本当にそれでいいのか、有権者が判断する。

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リニア騒動の真相82「命運」決まる選挙戦だ!

「リニア推進」vs「反リニア」の戦い  自民対全野党の激突となる静岡県知事選(6月3日告示、20日投開票)の前哨戦がスタートした(公明は自主投票となる見込み)。「リニア」を争点にする川勝平太知事に対して、前国土交通副大臣の岩井茂樹・前参議院議員はJR東海を指導する国の有識者会議を重視する姿勢を示している。その上で、流域住民の理解と協力を得ることが最大の解決策として、県の姿勢と大きな違いのないことを強調した。つまり、「リニア」を争点から外したのだ。  川勝氏は4月28日の出馬表明の会見で、岩井氏を“国交省の顔”になぞらえ、「リニア」を知事選の最大の争点に挙げていた。「国交省に堂々と正論を吐かないといけない」「県民が水問題に関する見解を表明する良い機会になる」などと発言、リニア工事による大井川の下流域の水問題について政策論争する構えで岩井氏を挑発した。  ところが、岩井氏は「国交副大臣というが、確かに鉄道も担当だったが、水の担当者でもあった。水をどうやって有効的に使っていくのかが仕事だったので、国交省だからと言ってリニア推進派ではない」などと述べ、大井川流域の理解と協力を最優先する姿勢は知事と同じだと「リニア」論争から逃げた。  「リニア」論争から逃げる岩井氏の気持ちも理解できる。リニア問題については、「湧水の全量戻し」のひとつを取っても、一般の人たちが理解できるように説明するのは非常に難しいからだ。  2013年9月、JR東海は環境影響評価書の中で大井川の流量が毎秒2㎥減るという予測を示し、2年後に、毎秒1・3㎥を戻し、残りの0・7㎥は必要に応じて戻す案を示した。これに対して、静岡県は「全量戻せ」と主張した。結局、JR東海が「湧水全量(毎秒2・63㎡)戻し」を約束したことに対して、今度は、知事は「全量戻しであるならば、工事中の水一滴を含むすべて」と切り返した。いつの間にか、工事期間中の山梨県、長野県への流出分すべてを戻せ、という議論にすり替わってしまった。  JR東海は「作業員の人命安全」を最優先して、山梨県外、長野県外への流出はやむを得ないとしている。その背景には、たとえ、流出したとしても、湧水全量戻しによって、大井川の流域への影響はほぼないからと説明する。これに対して、県は山梨県外、長野県外に流出することで、静岡県全体の地下水へ影響が及ぶとしている。一般の人たちはこの議論についてこられるのか?(※この「リニア騒動の真相」で何度も詳しく紹介しているので、時間のある方はご覧になって、ちゃんと理解してほしい)  岩井氏は、リニア問題の争点を説明するのではなく、分かりやすく、大井川流域の理解と協力を最優先すると表明した。ただ、これは単なる選挙戦略である。岩井、川勝の両氏が「リニア」に同じ姿勢で臨むなど関係者の誰ひとりとして夢にも思わないだろう。  結局のところは、岩井氏が当選すれば、「リニア」推進であり、川勝氏であれば、「リニア」凍結であると承知している。つまり、岩井氏が当選しなければ、リニア着工の道は開けないのである。 菅首相から手渡された「自民党推薦」証の威力は?  コロナ禍の中、外出自粛などを要請されているから、ふだんの選挙戦とは事情が大きく違う。投票率を読むことができない。だからと言って、選挙戦略が変わってくるわけではない。岩井氏は静岡、浜松、沼津に後援会事務所を開設、川勝氏も事務所を静岡に設けた。どんな選挙であっても、1票でも相手側より多く取れば、勝ちとなるから、政策論争よりも、どのようにしたら、相手側よりも票を1票でも上積みできるかのほうが重要である。  岩井氏は14日、静岡市七間町通りに開いた選挙事務所で出馬表明を行った。田辺信宏・静岡市長が2019年4月の市長選挙で使った同じ場所であり、それまで2年間もシャッターが閉まっていた。 事務所入り口には、岩井氏の写真が掲示され、上川陽子法相(前県連会長)と並んだポスターも掲示されていた。ポスターを見ると、知事選が終わったあと、上川法相が来る衆院選挙で、この事務所を使うことがわかる。上川法相の時局講演会が知事選の投開票日の翌日、6月21日午後4時から、この事務所で開催されるという告知が記されているのだ。入管法、少年法改正など喫緊の法務行政で忙しい上川法相としては、知事選で多くの人が訪れる認知度の高い場所だから、選挙事務所にするのは都合がいいのだろう。ただ、「二兎を追う者は一兎をも得ず」のたとえにならなければいいのだが、本当に大丈夫か?  と言うのも、14日の岩井氏の出馬会見を仕切った自民県連は、県政記者クラブ以外の記者を締め出してしまった。わざわざ、東京から取材に訪れたフリーの記者はかんかんに怒っていた。選挙とはイメージを大切にするものであり、気に入らない人間を排除する戦略では、岩井氏に好意を持つ他のメディアも離れてしまう可能性がある。  出馬会見の翌日(15日)、事務所を訪れ、菅義偉首相から岩井氏に手渡された自民党の「推薦書」を見せてほしい、と頼んだ。事務所によると、記者会見前には飾ってあったが、公職選挙法の関係もあって、報道陣の要請ですべての掲示物を外してしまったのだ、という。菅首相、二階俊博幹事長の「必勝」の色紙を含めて、再び、掲示されたのは16日になってからだった。(タイトル写真は「自民党推薦」の証書など)  事務所正面の神棚の下に「自民党推薦」が仰々しく飾られていた。今回の知事選で、「自民党推薦」はどのくらいの威力があるのか、聞いた。誰も納得できる回答をしてくれなかった。18日付静岡新聞が公明党が自主投票とする方向で、党本部に上申するとあったから、党本部の力では公明党を動かすことはできないようだ。  前回の参院選挙で、広島選挙区の河井案里氏に1億5千万円の選挙資金が送られた経緯が問題になっていた。今回の知事選では岩井氏側にいくらくらいの選挙資金が回されるのか、そんなおカネの話題が飛び交えば、知事選にはマイナスになってしまうかもしれない。  自民党推薦を得るために、上川法相は何度も党本部を訪れていた。県連推薦ではなく、党本部推薦に格上げされることで、どのくらい、知事選挙で有利に働くのか、わかりやすく教えてほしい。自民党が一丸となるとどのくらい強力なパワーが発揮されるのか?果たして、自民党推薦によって、岩井氏の当選は確実なのか? 川勝氏事務所は選挙事務所には見えない  一方、川勝氏の選挙事務所は16日に事務所開きを行った。ふじのくに県民クラブの県議、連合静岡代表らが集まった。一番、びっくりしたのは、外からは何の事務所か分からなかったことだ。「東京時代から静岡時代へ! 世界に輝くSDGsモデル県を共に創ろう!」という何だかわからないスローガンの書かれた看板があった。事務所に数多くのテレビカメラが集まっていたから、通行人たちは興味深げに室内をのぞいていたが、川勝氏の選挙事務所だとは誰も気がつかなかったようだ。  この空き店舗は、もともとは婦人服のブティックがあった場所という。事務所に入ると、大きな鏡があって、しゃれたつくりであり、奥には岩井氏の事務所と同様に神棚があった。川勝氏の写真がついたチラシや名刺などが置かれていた。川勝氏「レインボーマニフェスト」の一番最初にやはり、赤字で「リニア問題」とあった。「令和時代に求められている環境と経済の両立を図ることで、本県をSDGsのモデル県にします!」と小さな字で説明があった。SDGsがリニア問題とどのようにつながるのか理解するのは難しい。  さて、双方の陣営が目標得票数を、前回知事選で川勝氏が獲得した83万票台に設定しているのだ、という。そんな低い得票数で本当に当選が可能なのか? 83万票台が当選ラインは間違い?  川勝氏は2013年の知事選で知事選史上最多の108万票を獲得している。前回知事選では、自民党は対立候補を擁立することができず、自民静岡市支部などは元県教育委員会委員の女性候補支援に回ったが、大きな争点もなく、それでも83万票を川勝氏は獲得している。  今回選は「リニア」を争点に、岩井氏に自民党推薦を出しているのだから、自民県連は各支部に号令を掛けて大車輪で票の上積みを図っているだろう。自民県連は、2017年衆院選で県内8選挙区の自民党候補が獲得した合計得票85万3千票をにらんで、当選ラインを83万票台としたようだが、今回選で85万票を岩井氏が獲得したとしても、川勝氏の得票には及ばないだろう。  「リニア」を争点に大きな掛け声で「命の水」と「自然環境」を訴える現職の川勝氏へ支援の輪は広がっているからだ。108万票を超える勢いである。外向きには、両方の陣営は当選ラインを「83万票台」としているが、実際のところは分からない。コロナ禍の中、投票率は大きく落ち込む恐れもあるが、川勝氏の100万票超えはまず、間違いはないだろう。  いずれにしても、「リニア」の命運を握ることになる。もし、川勝県政の継続となれば、4年間は「リニア」着工は遠のくことははっきりとしている。それがたった1カ月間で決まる。「自民党推薦」がどれだけの威力を持つのか、どのような大物政治家が静岡を訪れるのか、虚々実々の戦いとなる1カ月弱の選挙戦がスタートしている。  JR東海にとってこそ、さまざまな意味で「命運」の決まる選挙となるだろう。

ニュースの真相

静岡新聞とスルガ銀行の”不可解な絵画取引”?

「ZAITEN」最新号に掲載された記事  10日付日本経済新聞朝刊に月刊誌ZAITEN6月号(5月1日発売、発行・財界展望社)広告が掲載された。何と『静岡新聞「スルガ銀行」との不可解な絵画取引』の見出しとともに、大石剛前社長の写真を見つけて、びっくりした。早速、丸善ジュンク堂書店で「ZAITEN」を購入した。メーン特集『NHK「公共放送」の大嘘』のほか、『テレビ朝日「報道ステ」CMが炎上した理由』などマスメディアに対して厳しい批判記事が掲載されていた。「W不倫」発覚時に「俺、田舎の人間だぞ!田舎の人間追っかけて何が楽しいんだよ」(写真週刊誌フライデー3月5日発売から)という”迷セリフ”で一躍、全国の注目を浴びた大石社長(当時)。またもや”田舎新聞”なのに全国誌から追っかけられたのだ。今度の記事には、一体、何が書いてあるのか?  ことし1月、大石社長(当時)の静岡新聞社がスルガ銀行からフランスの画家ベルナール・ビュフェの作品632点を購入したのだという。スルガ銀行の元頭取岡野喜一郎氏(故人)が創設したビュフェ美術館を巡っては、絵画寄付に不法行為があったとして、岡野一族に約32億円の損害賠償請求訴訟が起こされている。このため、同美術館を管理、運営する財団法人理事長を岡野光喜前会長が退任、前会長と関係の深い大石社長が引き継いだ。シェアハウス問題で苦境にあるスルガ銀行を救済するつもりなのか、大石社長は巨額の絵画取引まで主導したようだ。ただ、これがふつうの取引ではないのだ。  静岡新聞社が絵画を購入しても、絵画はそのままビュフェ美術館から移動することなく、管理、展示は同財団に任せ、他への転売もできない契約なのだという。多額のおカネを払っても、静岡新聞社にはメリットがないようだ。ビュフェ美術館を巡る取引では、岡野一族に資金が還流されていたのだが、今回はどうなのか?また、ビュフェ絵画の譲渡を伝える静岡新聞の記事写真に掲載された『キリストの受難 復活』(銀座・日動画廊の4億円相当の評価だという=タイトル写真)は、スルガ銀行が過去に同財団に寄付したものだという。すでに寄付した絵画を静岡新聞社に売却したことになる。売買に不正があったのかどうか分からないが、この取引には”不可解”なことばかりのようだ。  詳しくは、ZAITEN6月号を読んでもらったほうがいい。  記事の中で気になったのは、『静岡新聞社はこんな不可解な事実を承知の上、譲渡契約を結んだ可能性も否定できない。当然、取締役会を経たが、「大石の独断専行を止められる役員は誰もいなかった」(別の関係者)という。同社は本誌の取材に対し、具体的な譲渡額については「答えかねる」。また、取締役会決議の詳細についても「答えかねる」とした』など、静岡新聞社が経緯を明らかにせず、一切の回答を避けていることだ。  リニア問題では、JR東海や国交省を厳しく追及する静岡新聞社の姿勢とは真逆である。都合の悪いことはシャットアウトでは、新聞の信頼は失われるだろう。同社のリニア問題担当記者は、自社の姿勢こそ厳しく問うべきである。 警察の見立てを報道しても問題ない?  最近の静岡新聞は、フライデーのW不倫報道だけでなく、今回のZAITEN、また8日付の新聞各紙が同紙の報道姿勢を伝えるなど、社会的な話題をメディアに提供する側に回っている。  8日付朝刊では、朝日新聞地方版トップ記事『容疑者住所巡る訴訟 静岡新聞社に賠償命令 「地番秘匿の必要性高い」、原告「最後まで戦う」』、中日社会面記事『容疑者の地番掲載 違法 地裁判決 静岡新聞に賠償命令 「人生台無しに」原告男性 控訴意向 無罪推定が大原則 本紙見解』など同業他社が非常に大きな紙面を割いて、静岡新聞社の報道姿勢を問い質した。  静岡新聞は、2018年7月、静岡県警によって県内在住のブラジル人夫婦が覚醒剤取締法違反などの疑いで逮捕された事件で、夫婦の住所の地番を掲載した記事を掲載した。さらに翌日の紙面では、「夫婦が薬物密売グループのリーダー格」などとする同社だけの独自ネタによる大きな記事も掲載している。ただし、どこの新聞社等も追い掛けていない。  夫婦は逮捕、取り調べを受けたが、嫌疑不十分(検察庁が裁判で容疑を立証するための証拠が不十分として起訴を見送る。限りなく無実に近い)で不起訴となった。夫婦は嫌疑不十分となった逮捕事実(地番を含めた)だけでなく、「薬物密売グループのリーダー格」という警察の一方的な見立てを基にした報道によって、仕事や家族らに深刻な被害を受けた。このため、プライバシー侵害、名誉棄損など訴え、総額約690万円の損害賠償請求と謝罪広告の掲載を求めたのだ。  静岡地裁は「地番まで掲載する必要性が高いとは言い難い」など、夫婦それぞれに33万円(合計66万円)の支払いを静岡新聞社に命じた。  ところが、「薬物密売グループのリーダー格」という警察の見立てによるスクープ記事は、おとがめなしとされた。裁判官は、静岡新聞は警察の見立てをそのまま掲載したのであり、その時点では「新聞記事を掲載する合理的な嫌疑が存在した」などいう理由で夫婦の訴えを退けてしまった。実際には、「薬物密売グループのリーダー格」は何ら確証のない、言うなれば、警察の飛ばしを静岡新聞は報道してしまったのだ。  それでも静岡新聞社は、警察の見立てを鵜呑みにしただけなのだから、責任は問われないことになった。夫婦の代理人弁護士は「警察の見立てを書くのならば、新聞社が独自にそれが正しいのかちゃんと調べるべきである。最高裁判例でもそうなっている」として、夫婦は東京高裁に控訴する方針だ。警察からの情報を基にスクープ報道したのだから、静岡新聞社は記事に責任を持つべきだと主張している。静岡新聞社は、警察の捜査資料を確認した上で報道したのかどうかさえ疑わしい。  静岡新聞社は『当社の主張が一部認められず、遺憾です。判決内容を精査した上で対応を検討します』と他人事のようなコメントしている。中日は、『被告は「静岡新聞には警察の見立てを報じる際に、それが事実か、最後まで確認してほしい」と訴えた』とある。被告夫婦の悔しさが伝わってくる。  地番を掲載しなかった中日は「無罪推定が大原則」の見出しで、同紙はどんな事件、事故でも地番までは伝えないと書いている。それでは、警察の見立ては逮捕事実でもなく、単に警察による憶測に近いのだから、そんな報道をすること自体、適切ではないことになる。  判決後の静岡新聞コメントを読んでいて、報道に責任を持つ姿勢など全くないことがはっきりとした。東京高裁で、被告夫婦の無念を晴らすことができるように期待したい。 「マスコミをやめる」を実行したほうがいい  一体、静岡新聞社に何が起きているのだろうか?  ことし1月11日の同紙は、4面にわたって自社広告を掲載した。『静岡新聞SBSは、マスコミをやめる。』というびっくりするような見出しが目に飛び込んだ。「かつてマスと呼ばれ一括りにされた大衆はもういない。その大衆に向けて一方的な情報を送り続けたコミュニケーションはもはや通用しない。  静岡新聞SBSは、マスコミュニケーションをやめる。静岡の一人ひとりに、静岡新聞SBS一人ひとりで向かい合うことから、もう一度はじめようと思う。必要とされている情報はなにか。その届け方はどうあるべきか。読者を読み、視聴者を見て、リスナーを聞き、自分で考え、自分で働く。正解はひとつじゃない。静岡県民361万人の数だけある。私たちの新しい価値は、きっとそこから生まれるはずだ」など「ユーザーファスト」というわけの分からない記事が掲載された。次のページを開くと、全2面にわたって全社員の決意が極めて小さな赤字で書かれていた。  その決意の中で、大石剛社長(当時)は「創立以来の危機をチャンスに変える!元々オールドメディアの足元が揺らいでいたところに、COVIDー19が発生し、創立以来の危機に見舞われている。これは逆に大きくrebirth、新生、甦生する好機を得たということだ」と書いた。新聞社社長の文章としては情けないほど幼稚である。「ユーザーファースト」は口先であり、自分たちのことしか考えられないことが「マスコミをやめる」ことらしい。  「創立以来の危機」と大石社長が言うのは、経営の状態であり、広告や部数が減ったことだけを指している。マスコミにとって最も必要な適正な報道をする姿勢とは関係ない。報道機関としての使命が何か全く分かっていない。  ”W不倫”騒動で、静岡新聞、静岡放送社長を辞任したが、顧問代表取締役という肩書で引き続き、大石前社長が実権を握っているという。  ところで、”W不倫”は戦後すぐまで、立派な犯罪だった。大石顧問にそのような自覚があったのだろうか?  1947年削除された刑法183条「夫のあるの女性が、姦通したときは2年以下の懲役に処す」という姦通罪によって、”W不倫”は厳しく罰せられた。約75年前までは、もし、”W不倫”が発覚すれば、まず、女性側の夫が配偶者の妻と相手の男性に姦通罪を訴えることで、姦通罪が成立したのだ。今回の”W不倫”も事実かどうか、警察が調べることになったのだろう。  ただ、刑法183条がなくなったからと言っても、警察の捜査がなくなっただけで、民法上の責任を免れることはできない。つまり、女性の夫は損害賠償請求をすることができる。民法709条「故意または過失により他人の権利を侵害したる者は、これによりて生じた損害を賠償する責任がある」から、”不倫”が事実だと夫側が信じれば、弁護士を通じて慰謝料の請求を行うことができる。  大石顧問は、”W不倫”については最後まで否定していたが、本当にそうなのか?犯罪事実でなくても、メディアに実名で報道されることの痛みを実感したのだろうか?  『「静岡新聞SBSはマスコミをやめる」はただのビッグマウスか、革命者になるか。静岡のみなさん。どうか厳しい目で見守ってください』と自社広告の最後にあった。ブラジル人夫婦は、報道機関としての使命を見失った静岡新聞社は早いうちに、さっぱりとマスコミをやめてほしいと願っているだろう。

お金の学校

マンション理事長へろへろ日記1裁判を起こす

マンション管理士に気をつけろ  4月29日付毎日新聞朝刊に『マンション管理のトリセツ』(幻冬舎から自費出版)を紹介する半5段広告が掲載されていた。部数の急激な落ち込みが伝えられる毎日新聞とはいえ、全国版広告だから、掲載費は決して安くないだろう。「好評につき重版でき」とうたっているから、売れているようだ。「マンション管理」に関心を持つ人が数多くいるらしい。  「管理会社と設計事務所の財布にならないために」、「悩める管理組合理事・役員 必読の一冊」というキャッチコピーも目を引いた。上半身の大きな写真つきの著者肩書には、NPO法人近畿マンション管理者協会会長、マンション管理士となっていた。ネットで調べると、「近畿マンション管理者協会」ではなく、「マンション管理者協会」が正式名称のようだ。HPでは、大規模修繕工事のコンサルタントやリプレース、理事長代行業務等の各種業務を行い、管理組合からの報酬を得ていると書かれていた。近畿地区にはマンションがたくさんあり、商売繁盛のようである。ただ、マンション管理士という肩書だけで信用するのは危険であり、マンション管理組合理事、役員は気をつけたほうがいい。  静岡経済新聞「お金の学校」の2019年7月1日付『謎の「マンション管理士」に気をつけろ!』で、マンション管理士とは何なのかを書いた。わたしのマンションをキャバクラ寮に貸し出したH育英会とのやり取りの中で、H育英会が相談したというマンション管理士と面会し、その不思議な活動を紹介した。H育英会側に立って便宜を図るような活動したマンション管理士は、そのために平然と真っ赤な嘘をついていたのである。  マンション管理士という国家資格を持つ専門家が嘘をついていたことが分かったから、すべての事情をマンション管理士の全国組織・日本マンション管理士会連合会に質問状を送った。同連合会が当マンション管理士からも事情を聞いたあと、わたし宛に謝罪とともに、当マンション管理士に対する処分の文書を送ってきた。当マンション管理士は、H育英会に便宜を図るために非弁活動を行った可能性が高い。管理会社には、数多くのマンション管理士の資格を持つ社員が働く。もしかしたら、マンション管理士が管理会社の意を汲んで活動しているかもしれないのだ。  「NPO法人近畿マンション管理者協会の会長が本音で語る一流のマンション・マネジメント」というキャッチコピー通りであれば、『マンション管理のトリセツ』は参考になるのかもしれないが、十分に注意をしたほうがいい。  もうひとつ、「国土交通省が勧めた理事・役員の輪番制は廃止すべき」と内容の一部も紹介してあった。それはその通りである。つまり、マンション管理士を信用、そのことばを鵜呑みにしないためには、理事・役員は必要最低限の知識とともに経験が必要であり、輪番制では単なるお飾りになってしまう可能性が高いからだ。つまり、管理会社に任せきりとなってしまう。  わたしのマンションは管理会社へ委託せず、自主管理を行い、わたしが25年以上、理事長としてさまざまなトラブルに当たってきた。『マンション管理のトリセツ』は何かの役に立つのかもしれないが、わたしのマンションでは少なくとも「管理会社」や「設計事務所」の財布になることはなかった。  わたしのマンションは8階一棟建てマンション(1階が駐車場)だから、7区画、7世帯しか住んでいない。管理会社に委託したくても、7世帯の管理費等では財政的な余裕はないから、管理会社に費用を払って委託するのは合理的ではない。管理会社の「財布」にならないのは、それだけお金が潤沢ではないからだ。  大規模マンションであれば、多額の収入があり、潤沢なお金の中で、”腐敗”の生まれる可能性もあり、国交省は理事・役員を定期的に交替するように勧めている。しかし、わたしのマンションのように7世帯しかない場合、どのようにしたら、将来の大規模修繕のために積立金を増やしていくのか頭の痛い問題であり、毎年の管理費等をいかに少なく済ますのか必死にならざるを得ない。  さて、そろそろ本題に入る。25年間も理事長をやっていると、さまざまなトラブルに直面する。今回のトラブルは裁判に発展してしまった。 マンションをキャバクラ寮に貸し出した育英会  どんな素晴らしい住宅でも購入後、そこで生活してみると、さまざまな問題が生じる。わたしの住むマンションでも、びっくりするようなトラブルが次から次へと起きてきた。その度に、理事長一人で対処しなければならない。トラブルに当たるのは嫌いではないが、今回のトラブルはちょっと面倒で大変である。いまも解決に至っていない。  それで、今回のトラブルの対応について、経過報告をしながら、マンションに住む人たちにマンション管理について関心を持ってもらいたい。少しでも”生きた教科書”になれば、幸いである。  わたしは、1993年にJR静岡駅から徒歩約15分~20分の繁華街にマンションを購入した。91年新築、約91㎡の専有面積でエレベーターが開くと、そのまま玄関という、当時としてはグレードの高いマンションだった。映画館やデパート、スーパーマーケットなど至近距離にある。バブル時代に計画したから、バブル崩壊で売れ残り、大幅値引きが始まった。ようやく3区画売れ、わたしは新築2年後にさらに値引きすると言う営業担当者の勧めに乗ってしまった。わたしが入居した段階では、3区画は売れ残っていた。その後、何年も掛かって、買い手がついた。その間に、マンション価格はわたしの購入したときから大幅に下げた。長期の住宅ローンを支払いながら、資産価値の下がるのを横目で見ていた。  93年に購入したあと、分譲した不動産会社とのトラブルに当たった。不動産会社が売れ残り区画の管理費等をちゃんと支払っていなかったからだ。このときには、静岡地裁で調停を行った。何とか、不動産会社から請求額の半分をもらい、その功績が認められた。95年に理事長に就いてから、ずっと理事長としてマンション管理の現場に立ってきた。  今回のトラブルの発端は、2019年7月1日付『謎の「マンション管理士」に気をつけろ!』でも書いた、7世帯のうち、唯一、賃貸に出しているH育英会所有の1区画をキャバクラ寮にしてしまった問題である。  2017年9月末、突然、H育英会から新入居の電話連絡が入った。当然、どのような入居者か聞いたが、プライバシー侵害に当たるので職業さえ言うことができないと説明された。翌日、入居あいさつに来た若い男に聞くと、”キャバクラ従業員”と名乗った。前日提出された届け出書類にある氏名、電話番号は若い男とは違い、それがキャバクラ会社の社長のものだった。そこで、キャバクラ寮としてH育英会が賃貸に出したことがわかった。  その後、何度も何度も、H育英会にはキャバクラ寮契約の解除を求めたが、H育英会は拒否し続けた。2019年3月の通常総会で、H育英会に制裁的な管理費等の値上げで対抗した。H育英会は値上げ分の支払いを拒否した。こちらは管理規約の改正とともに、滞納金請求を続けることで、キャバクラ寮の契約解除を求めていた。  昨年のコロナ禍の中、H育英会は全く連絡もなく、突然、マンションを売却した。売却を担当した不動産会社は、新たな買主に重要事項の告知を行う義務がある。わたしは、重要事項としてH育英会の管理費等滞納金68万円がある旨を知らせた。  新しくマンションを購入した女性Kは、H育英会から管理組合から滞納金と言われているが、法的根拠はないので支払う理由はないと説明を受けたのだという。H育英会の事務局員Tとその父親のT常務理事(弁護士)から説明を受けたようだ。もともとはこのマンションを購入、ここで亡くなったHさんの遺言承継人、弁護士がTであるが、面識は全くない。Kは、H育英会(亡くなったHさんの遺産の一部でつくったから、H育英会と称している)と支払う義務のない契約をしたから、管理組合には滞納金を支払わないと通告してきた。  理事長として、そのまま滞納金未払いを黙って見過ごすわけにはいかない。 静岡簡裁から静岡地裁へ「移送申立」反対  キャバクラ寮の契約解除のためにさまざまな苦労を味わされた。このまま滞納金を未払いで済ますわけにはいかない。けじめをつけなければならない。結局、管理組合が原告となり、Kを被告として、68万円の滞納金請求訴訟を静岡簡易裁判所に起こした。  3月の通常総会で議題として取り上げ、Kにも訴訟提起を説明した。友人の弁護士に会って、68万円の滞納金請求訴訟を受けてもらえるのか聞くと、面倒な手間は同じだから、100万円程度の弁護士費用となってしまう、という。少額訴訟の裁判を低価格で受ける弁護士は非常に少ないとのことだった。それで、本人訴訟と決め、訴状をつくり、立証のための詳しい証拠をつけて、3月22日、静岡簡裁に提出、無事に受理された。  4月28日になって、Kの訴訟代理人にH育英会のT弁護士が就いた、と知らされた。それだけでなく、Tは静岡簡裁から静岡地裁への移送申立書を提出してきた。なぜ、静岡地裁へ移送するのか、さっぱり理由がわからない。それで、この訴訟について、相談した友人の弁護士に連絡すると、簡裁裁判官のほうが”優しい”と曖昧なことを言っていた。  30日午後、「移送申立に反対する意見書」を静岡簡裁に提出した。  T弁護士は管理規約で「静岡地方裁判所をもって、第1審管轄裁判所とする」とあり、民事訴訟法第11条に基づく「専属的合意」による管轄の定めとしている、と移送の理由を書いていた。  これに対して、1)当マンション管理規約は「専属的合意裁判所とする」とまでは定めていない。管理規約制定時、当マンションの所在地から最も至近距離にある裁判所を選択して、静岡地裁としたのであり、静岡簡易裁判所であってもその条件は全く同じである(静岡簡易裁判所は1階にあり、2階から静岡地方裁判所になっている)。2)簡易裁判所と地方裁判所の審理に何ら変わりはないから、管理規約に反することにならない。3)3月13日開催の管理組合総会で、被告Kに対して、訴訟を起こす旨を説明した。68万円という少額であり、簡易裁判所に提訴することも説明、Kから異論、反論は出なかった。4)2003年公布の「裁判の迅速化に関する法律」では、裁判所、弁護士、当事者は裁判の迅速化を推進する責務を負う。移送すれば、5月11日の第1回口頭弁論の期日が変わり、裁判の遅延は確実である。この4つが移送反対の理由だった。  5月7日、静岡簡易裁判所書記官から電話があり、「裁判官は静岡地裁への移送を決定した」と告げられた。決定及び理由の書面到着から1週間以内、即時抗告ができる旨も告げられた。  本人訴訟としたが、相手が弁護士となれば、今回の移送申立同様に裁判テクニックは不可欠なのかもしれない。友人の弁護士に電話で、相談業務のみ乗ってもらえるよう依頼、了解してもらった。近く、弁護士と面会して、費用等についてちゃんと確認する。  民泊の場合同様に、キャバクラ寮としての貸し出しを規制できるのか、また、管理費等を制裁的に値上げしたことが法的に問題ないのかどうか、この裁判で争うことになるはずである。 ※「マンション(管理組合)理事長へろへろ日記」は、今回の裁判にへこたれないよう、その経過を報告して、みなさんの支援を得ていくのがこの連載の目的です。『裁判官も人である 良心と組織の狭間で』(岩瀬達哉著、講談社)によると、簡易裁判所の裁判官年収は約1500万円らしい。なぜ、わたしの反対意見書が採用されなかった理由がちゃんと書かれているのだろうか?

ニュースの真相

リニア騒動の真相81知事選の前哨戦スタート!

自民岩井茂樹氏の出馬はどうなった?  18日付『リニア騒動の真相80自民候補はどうなった?』で、自民党の岩井茂樹参院議員が21日にも出馬表明すると予測した。結局、自民静岡支部や浜松支部など岩井氏出馬を求める署名提出など表面的な政治手続きのみで、岩井氏本人の立候補会見につながらなかった。派閥など水面下での調整が続き、ようやく週末までに党内でストップを掛ける動きはなくなったようだ。週明け早々、29日から始まるゴールデンウイーク前までに岩井氏が出馬表明する観測が流れている。  それぞれの思惑とは別に、与野党一騎打ちの知事選(6月3日告示、20日投開票)前哨戦はすでにスタートしている。  JR東海を相手取って、大井川流域の住民107人がリニア工事の差止を求める訴訟の第2回口頭弁論が23日、静岡地裁で開かれた=タイトル写真、地裁構内では写真撮影禁止=。「静岡県リニア工事差止訴訟の会」に、大井川の水とリニアを考える藤枝市民の会、大井川の水を守る62万人運動を推進する会、南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク静岡、リニア新幹線を考える静岡県民ネットワークなど実態のよく分からない団体がリニア工事差止訴訟に加わっている。これだけ見ても、地域の住民運動というよりも、政治的な色彩が非常に強いことがわかる。  もうひとつの見方をすれば、リニア問題で国、JR東海と「闘う」川勝平太静岡県知事を支える「政治運動」といっても過言ではない。23日午後の口頭弁論に先立って、支援者らは2時間以上も前から、20人以上の一団が静岡市繁華街で工事差止訴訟に参加するようチラシを配り、署名を求める活動を行っていた。その勢いで、静岡地裁へ数多くの支援者が詰め掛け、気勢を上げた。知事選が始まれば、署名をした人たちに働き掛け、川勝支援の輪を広げる狙いもあるのだろう。  昨年9月静岡市で開かれた訴訟準備会では、「住民側を貫く川勝平太静岡県知事」という資料が配布され、参加者らは現職の知事支援を旗幟鮮明にした。  23日の静岡地裁周辺で異様だったのは、遠くから公安と思われる警察関係者が支援者らの動きをチェックしていたことだ。著名な政治活動家が加わっているのかもしれない。「リニア問題」は、まさに、政権与党に厳しい批判の刃を突き付けるかっこうの材料となっている。与野党激突となれば、急進的な勢力が「闘い」の象徴・川勝当選に向けて積極的な支援活動を展開するだろう。  反原発、反リニアを声高に叫ぶ川勝知事を中心に、すべての野党がまとまるのだろう。川勝県政も、差止訴訟の第2回口頭弁論に合わせたように、「リニア問題」にさらなる火をつける動きを行った。 全く意味のない県意見書の真意とは?  難波喬司副知事は23日、国交省の上原淳鉄道局長にリニア有識者会議へ疑問を述べる意見書を送付した。翌日の静岡新聞は煽情的な見出しで国の有識者会議の中間報告(案)に大きな欠陥があるよう指摘した。  静岡新聞見出し『科学的正確性欠く』があまりにも印象的だった。実際の意見書では、『科学的・工学的な議論が深まり、大井川水系の水循環の全体構造がだんだんと明らかになった』、『科学的・工学的に深い議論が行われていると認識しているが、このような形で「中間報告」が取りまとめられることを憂慮する』など有識者会議の議論が『科学的・工学的』であることを大筋では認めている。ある一部分を除いて、有識者会議が『科学的・工学的正確性欠く』という静岡新聞見出しにはつながらない。  意見書の中身を見れば、『20年間に22回、水不足の状態が発生、慢性的な水不足に悩まされている』とあり、『大井川の水利用の実態を理解していない』と言及している。しかし、静岡県内では、四国や九州、関東地域のような水不足に悩まされた経験は非常に少ない。過去に、大井川流域の深刻な水問題があったのは、利用者の過剰利用によるものだった。  有識者会議の中間報告(案)は『中下流域の河川流量は上流域のダムにより利水の安定供給のためにコントロールされ、扇状地内の地下水は、取水制限が実施された年を含めて扇状地内全体として安定した状態が続いている』と、利水者の非常に恵まれている状況を指摘している。ことしの計画的な取水制限でも、『水不足状態』があった場合に、利水者からの要請によって、水供給を行うのが多目的ダム・長島ダムの役割なのだが、その出番はなかった。まさに扇状地内全体は安定した状態にあるのだ。  県は、有識者会議の指摘に反論できるような大井川流域の『水不足状態』を明らかにしていない。それなのに、有識者会議が「大井川の水利用の実態を踏まえていない」という不満を述べているが、その理由は明らかではない。  静岡新聞が見出しに採った『科学的正確性欠く』のは、どの点なのか?『トンネル掘削完了後の恒常時には、トンネルがないときには下流に地下水として流れ地表流出していた地下水の全量を、トンネル湧水として上流の地中深くで集め、それをポンプアップして導水路で大井川に流すため、導水路トンネル出口(椹島)では河川流量は工事前よりも少し増える。その下流では、地下水の地表流出が少し減少し、河川流量の増分が相殺される』という現象を重要視していないから、『科学的・工学的に正確性を欠く』と指摘した。  しかし、一体、誰がこの複雑怪奇な記述を理解できるのだろうか?一般読者は何が書いてあるのかさっぱり分からないだろう。  『地下水の地表流出が少し減少する』下流域とはどの地点を指すのか、また、どのくらい量であり、椹島下流のどこまで影響を及ぼすかなど何ひとつ明記されていない。また、そのような現象が見られる『科学的・工学的』根拠も示されていない。たとえそのような現象があったとしても、井川ダム下流の中下流域への影響はないと、県も認めている。それなのに、わざわざ「地下水の地表流出が少し減少」という曖昧な現象を取り上げ、疑問点として挙げたのだ。  有識者会議の議論を聞いていない読者らには、静岡新聞見出し『科学的正確性欠く』のみがダイレクトに伝わり、それを鵜呑みにしてしまう。一方的な内容の意見書は、知事選を想定した地元対策ではないか。それならば、意図は十分に理解できる。  まさに愚民政策を地でいくようなものである。しかし、それだけ川勝知事の危機感が強いのだろう。 「72歳」という年齢に危機感を抱く  今回の知事選で、川勝知事が危機感を抱く大きな理由は「年齢」である。ことし8月で知事は73歳となる。2年後には後期高齢者に突入する。4期目の終了で、満77歳となるのだ。  昨年12月、井戸敏三・兵庫県知事は75歳を区切りに次期出馬を取りやめることを表明、引退する。ことし2月、小川洋・福岡県前知事はがん治療を理由に71歳で辞職した。それぞれの健康状態は違うから、何とも言えないが、70歳(古稀)を過ぎたところで、ふつうは老年期に入る。  72歳の川勝知事は、違った意見を持っている。県独自の「ふじのくに型人生区分」をつくり、56歳~65歳を壮年盛期、66歳~76歳を壮年熟期にして、老年期ではない、と主張する。知事は「壮年熟期」の後半にいるから、まだまだ社会で元気に活躍する世代であり、知事職を担う年齢にふさわしいようだ。ただ、この「ふじのくに型人生区分」は健康寿命延伸のための目標であり、現在、静岡県の健康寿命では男性71・68歳、女性75・32歳と記されている。  平均の健康寿命から見れば、川勝知事の健康寿命は終えている。ちなみに、知事選出馬を予定する岩井氏は52歳で「壮年初期」としている。  毎日、1159段の階段を登って出勤する久能山東照宮の神職たちの定年は65歳、権宮司は70歳、宮司は75歳である。百歳まで現役の宮司や寺院住職もいるかもしれない。しかし、神職や学者らと違い、激務の知事職はなかなかそういうわけには行かない。どんな人間であれ「年齢」には勝てない。知事の不安のひとつが、「年齢」にあることは間違いない。  田辺信宏静岡市長が23日の会見で「(岩井氏は)若いのでよりよい県政を目指すという胆力で訴えてもらいたい」と述べ、川勝知事の「年齢」に暗に触れて、自民候補への支援を鮮明にしたことが印象的だった。  前回の2017年知事選では、静岡市を廃止する「静岡県都構想」をぶち上げて、川勝知事は田辺市政を批判した。今回のリニア問題でも折に触れて、田辺市長を批判、やり玉に挙げている。 「井川地区はほったらかしだ」を忘れていない  「年齢」を含めて、川勝知事は13日の出馬表明会見で、自身の健康状態などにひと言も触れなかった。知事は「オリンピックパラリンピックの成功」「コロナを機に医療産業を育てていく」「リニア問題を見据えて命と環境の世紀にふさわしい地域づくり」など「オリパラ」「コロナ」「リニア」の3つを公約に挙げていた。  知事選公約で忘れてはならないのは、静岡市を廃止、特別区を設置する川勝独自の「静岡県都構想」である。前回の2017年知事選では、知事は「静岡市は政令指定都市としては失敗事例。人口は70万人を切った。葵区は広く、(田辺市長は)南アルプスの裾野にある井川地区はほったらかしだ」などと痛烈に批判した。現在でも、川勝知事と田辺市長との関係は最悪状態だ。その最も大きな理由は、リニア問題に対する姿勢である。  田辺市長は2018年6月、リニアトンネル建設に全面的に連携・協力、JR東海は地域振興のために約140億円の県道トンネル建設を進めるなどとした基本合意書を金子慎JR東海社長と結んだ。田辺市長が知事への報告を無視したため、「寝耳に水」の川勝知事は激怒、田辺市長を”悪者”扱いをして、徹底的に批判した。リニア問題を議論する流域自治体から地元の静岡市を外してしまう。  ただ、考えれば分かるように、もし、田辺市長が知事に相談を持ち掛ければ、JR東海との基本合意を結ぶことはできなかっただろう。前年度の知事選で、川勝知事が「井川地区はほったらかしだ」と批判したことに反発、JR東海から過疎地域の振興を勝ち取ったから、井川地区の住民らは田辺市政を大歓迎した。  昨年11月27日、県リニア環境保全連絡会議が開かれ、地元の井川地区自治会、観光協会、漁協、山岳会の4団体代表が出席、意見を述べている。「田代ダムから山梨県に行く水問題もあり、ダムを使うなど知恵を使って解決してほしい」「JR東海が悪という報道は偏っている。過疎高齢化が急速に進んでいるので何とかしてほしい」「いまの技術ならば解決できるのではないか」「ダムによって、下流域の人たちは灌漑用水を受けている」などの意見が出ている。いまのところ、県は井川地区の意見をすべて無視したかっこうだ。  そもそも知事の「静岡県都構想」は掛け声だけで、「二重行政の解消」に取り組むと言うが、実際、全く何もやっていない。「井川地区はほったらかしだ」と言うならば、知事は、一体、何をすべきなのか?  井川地区では過疎高齢化が進む。そこに住む人たちが何を望んでいるのか?72歳で選挙戦にのぞむならば、知事は同じ高齢者の意見に耳を傾けてみてはいかがか。

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リニア騒動の真相80自民候補はどうなった?

川勝知事は4期目の知事選出馬を表明  川勝平太知事は13日の定例会見で4期目の知事選(6月5日告示、20日投開票)出馬を明らかにした。報道各社に出馬表明を予告していたから、通常は代表のテレビカメラなど2台のみだが、テレビ各社は独自取材のためにカメラを用意、また新聞各社は、複数の記者とは別にカメラマンを配置したから、会見場は大にぎわいの状態だった=タイトル写真=。  知事はコロナ、リニア問題は6月以降も長期的な対応が必要であり、各界各層からリニア問題に関して応援のメッセージが届き、6日には1千通余の署名を持って女性ファンたちの出馬要請があったのだという。また、県内各地あちこちで早く出馬表明をしてほしい、という声を聞いたことなど『リニア問題でそう簡単にわたしに代わる人がいないのであれば、自分がやるべき』として、出馬を決意したと説明している。  さらに、きょう(13日)届いた女性の手紙を紹介した。『川勝平太様、リニア問題などでさまざまな意見がある中で6月に行われる県知事選の前に、どうしても知事に伝えておきたいと思い、お手紙を書かせていただきました。国とJRだけのためのリニア中央新幹線。静岡の環境の未来のために川勝知事の今の強い姿勢をとり続けてほしいです。中途半端で不明確で利益しか考えていないJRに負けないでください。実はわたしは10年前に川勝知事に何度かお会いしたことがあります。そのころから県や国の政治について興味を持つようになりました。  18歳になった今、わたしは選挙権があります。まことに僭越ながら、知事は6月の県知事選に出馬してほしいと願っております。静岡を守るのは川勝知事しかいないと思っております』などと紹介した。  公職選挙法では「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的とし、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為をしてはならない」と定めている。もし、他の候補者が名乗り出る可能性を知っていれば、いくら何でも、このようなあからさまな自己宣伝はできなかっただろう。  会見に出席しているほとんどすべての記者はこの時点(13日)で他の立候補の動きをつかんでいないから、知事の自己宣伝に何ら疑念を抱かなかったのだろう。その証拠に、川勝知事の4期目はほぼ決まりと考えた記者の一人は「もし、このまま立候補がなければ県政史上初めての無投票の可能性がある。それについてどのように考えるのか」とまで質問したのだ。  知事は『静岡県の抱えている問題は日本の全体の問題に関わる。被選挙権、被候補者になる人が、政策論争をしているときではない、(他の立候補がないのは)そう考えているのでは』と回答した。このあと、1期目の2009年知事選で、7月5日投票の1カ月前の6月5日に出馬表明をしたことを紹介した上で、『これからやっていくために夢を持っている人がいることを知っている。わたしはうまくバトンタッチできればいいなと思っている』など(すでに4期目以降の)新たな知事への期待にまで話が行ってしまった。  ところが、翌日(14日)静岡新聞1面トップ記事が、自民の候補者擁立の動きがあり、「与野党激突の構図」を伝えたことで一変した。  自民県連が、国交省副大臣、岩井茂樹参院議員の擁立へ向けて最終調整を行っているのだという。前日のあまりに平和な知事会見を見ていたから、その驚きは人一倍、大きかった。 20日に岩井茂樹氏は立候補表明?  14日付静岡新聞の抜きネタを各社とも一斉に追い、15日付新聞各紙は『自民、岩井氏擁立へ 国交副大臣 現職と一騎打ちか 県幹部「勝算ある」』(朝日)、『リニア争点 与野党対決へ 岩井氏擁立、自民県連で急浮上』(産経)など1日遅れで報道した。取材に応じた岩井氏は「現段階ではコメントできない」など出馬の意向を避けた。  一方、15日付静岡は『知事選2021出馬の舞台裏』(下)で、上川陽子自民県連会長と中沢公彦幹事長が10日、岩井茂樹国交副大臣を擁立することで話し合いを行い、12日に本人に打診、13日に党本部に報告したという時間的な推移の舞台裏を明らかにしている。つまり、急転直下の擁立だったというのだが、「(自民県連は)不戦敗を含め川勝知事に3連敗中の自民はすでに臨戦モード」に入ったようだ。  前回の2017年知事選で、自民静岡支部などが支援に回った元五輪銀メダリストの溝口紀子氏が56万票だったのに対して、川勝氏は83万票だった。岩井氏は前回参院選で74万票の得票だから、勝機は十分などとの自民県連の”皮算用”まで紹介していた。15日に自民県議会議員全員、その夜には自民国会議員全員も岩井氏擁立を支持を決めて、岩井氏本人の立候補表明への準備は着々と進んでいた。  ところが、その動きはピタリと止まってしまった。18日になっても、岩井氏の立候補表明は行われていない。一体、何があったのか?  一部報道で派閥(竹下派)に反対の動きがあるのだというが、実際は、15日から訪米した菅義偉首相の帰国(18日)を待っているのだろう。自民党総裁でもある菅首相に裁可を仰ぎ、県連だけでなく、自民一丸で知事選に臨む体制をつくるのが筋である。自民が現職知事に負けられない選挙戦と位置づけるのならば、表明するのは、遅くとも、投開票日の2カ月前となる20日(大安)となるだろう。  静岡新聞では『リニア絡み官邸の影』という大きな見出しで、官邸が川勝知事のリニア対応に不満を募らせていると伝えたが、昨年10月17日の会見で、川勝知事が日本学術会議問題をきっかけに痛烈に首相批判したことを本人だけでなく、菅首相の周辺は決して忘れていないだろう。そちらの影響が大きいことは間違いない。  つまり、『官邸の影』があるとすれば、まずは『菅義偉という人物の教養レベルが図らずも露見した』『夜学に通い、単に単位を取るために大学を出た。学問をされた人ではない』などという、侮辱発言に対する個人的な恨みをどう晴らすのか、その返り討ちを岩井氏に託すのが、これまた政治家としての筋なのだろう。 知事交代がない限り、リニア問題は進展しない  リニア問題を取材していれば、今回の知事選が大きな転換点になる可能性を持つことがはっきりわかる。  昨年暮れ、川勝知事はリニアトンネル静岡工区で「工事凍結」宣言を表明するようJR東海に迫った。昨年6月にはJR東海社長、7月に国交省事務次官が県庁を訪れ、トンネル本体工事とは無関係の準備工事再開を要望したが、知事はトンネル工事の一部とみなして拒否した。知事がトンネル設置のために必要な河川法の占用許可権限を有しているから、彼らは知事に要望した。しかし、中下流域の「利水上の支障」を盾に認めない姿勢を崩さないから、手も足も出なかった。  その後、有識者会議が繰り返され、中下流域の表流水や地下水への影響はほぼないとの結論を出しても、県専門部会に諮り、地元の理解を得ることを知事は求める。水問題が決着しても、南アルプスの自然環境に問題ないことをすべて示せと要求する。中下流域への水の影響はほぼないと分かっていても、水一滴でも県外流出はまかりならぬという主張をメディアがこぞって報道すれば、有識者会議の結論などどこかに飛んでしまう。  川勝知事は、甲府までの部分開業や長野県への迂回を求める。  つまり、知事の座が変わらない限り、リニア問題の進展はないだろう。県職員たちは知事の意向に従っているだけに過ぎない。 「リニア工事」が選挙の争点か?  17日の国の有識者会議を傍聴していて、川勝県政であれば、今後、さらに4年間、有識者会議そのものが続いていくのも間違いないとわかる。  第11回有識者会議は「トンネル掘削に伴う大井川表流水への影響」がJR東海の想定するトンネル湧水量であれば、中下流域での河川流量は問題なく維持される、「トンネル掘削に伴う地下水への影響」は河川流量が維持されれば、中下流域の地下水への影響は、河川流量の季節変動や年変動に比べて極めて小さい。国交省作成の中間報告案に委員から異論、反論等は出なかった。今後も細部の修正のみが行われるのだろうが、大筋は変わらないはずだ。  今回の一番の山場は、静岡県地質構造・水資源専門部会長を務める森下祐一委員が、有識者会議の議論に異論を唱えたことだ。森下氏は上流域の水収支解析を行ったように、中下流域でもシミュレーションをつくり、同様の解析モデルをつくるべきではないか、と投げ掛けた。これに対して、他の委員からは、有識者会議の議論が中下流域への影響を問題にしているのであり、そこに悪影響が出ないと判断されたのだから、さらなるパラメーターを与える面倒な作業を伴う、新たな評価システムをつくる必要性はないなどと退けられた。  県専門部会であれば、森下氏の意見がそのまま通るのだろうが、地下水や水文学のトップレベルの専門家らによる有識者会議では、科学的、工学的な見地から森下氏の提案は完全に否定された。県委員でもある丸井敦尚氏も大勢についたから、森下氏以外はすべて徳永朋祥東大教授の意見に従ったことになる。ことばを変えれば、科学的、工学的な議論と言っても、専門家によっては意見は大きく違うのであり、客観的な物差しはトップレベルの学者たちがつくるのだ。だから、有識者会議の結論を県専門部会に諮るというのは順序から言っても、全くおかしいことになる。  有識者会議の議論は、その目的に沿って健全な意見が交わされていることがわかる。ただ、知事の十八番である「命の水」とされる中下流域の水環境への影響について、問題がないと有識者会議の結論が出たとしても、川勝県政は別のいちゃもんをつけることはすでに書いた。  県政記者クラブだからか、知事意見を鵜呑みにする記者も多い。有識者会議後の記者ブリーフィングでは、あまりにも恣意的な質問が飛び交い、有識者会議の議論とは遠く離れてしまい、質疑応答の時間も非常に長い。有識者会議で問題にならなかった異論、反論が続くのだから、翌日(18日)の新聞各紙は有識者会議の結論とは全く違い、国及びJR東海への批判一色に染まっている。  その根底に、JR東海のリニアトンネル工事は自然環境にとって「悪」という記者たちの思い込みがあるようだ。  『JR東海は約束だった湧水全量戻しを反故にした』、『リニアトンネル工事は大井川の水環境に影響を与え、南アルプスの自然環境破壊につながる』、『JR東海は利益だけのために工事を進めようとしている』、『公共工事(国家的プロジェクト、財政投融資3兆円を投入)はコロナ禍の中、ムダな事業となる』などJR東海は「悪」という思い込みで記事が作成されている。  自然環境に影響を与えない開発事業などありえない。だから、開発する側は「悪」とみなされる場合も多い。その利便性を享受して生活しているのも批判に立つ同じ人間たちである。ただ、今回のリニア工事の場合、静岡県への利便性は全くない。  川勝県政がこれだけ批判を繰り返す「リニア工事」が選挙の争点となって、もし、岩井氏が立候補するとしても、その対応は難しいことになる。政治家ならば、有権者の感情にどのように訴えるのか心得ているのだろうが、開発事業の推進者と見なされれば、女性たちからは強く反発を受けるだけだ。  政治とは科学的、工学的な議論をする場ではなく、県民の感情に訴える場である。岩井氏がどのような政治家なのか、大いに期待したい。

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芸術家・藤枝静男を知ってもらうために

藤枝静男が墨書した平野謙の愛唱詩「冷やかに」  昭和60年(1985)7月だった。『冷やかに水を湛へてかくあればひとは知らじな火を噴きし山のあととも』。藤枝静男さん自身が墨をすり、何度か新聞紙に試し書きをしたあと、わたしの持参したマット紙にさっと書き上げた。「詠 亡友平野謙愛唱詩」と添え書きした。自刻した印で落款を済ませれば完成だ。同じ詩を特製の原稿用紙に愛用の万年筆で何度か書いてもらっていた。墨書をお願いすると、何らためらうことなく受けてくれた。藤枝さんにとって、書くことも芸術創作のひとつだった。旧制高校時代からの親友、評論家平野謙の病床へ見舞った話もそれまでに何度も話題になった。  当時、藤枝さんは78歳で、わたしは30歳が目の前だった。まだ若く未熟であり、酒を飲んでは、大声を出して、けんかをしたり、毎日が『火を噴いている』状態だった。まさに自分にふさわしいことばであり、すっかり気に入ってしまった。おカネでは買えないわたしの宝物のひとつとなった。  詩の作者は生田長江という初めて聞く名前であり、翻訳、評論、小説などで明治、大正、昭和期に活躍、平塚雷鳥ら女性たちの支援者だったという。  7月初め、浜松支社から沼津支社への転勤内示(8月1日異動)を受けてから、ほぼ毎日、仕事の合間をぬって、藤枝静男さんの自宅を訪ねていた。表通りの眼科医院の裏側で、藤枝さんは奥様が亡くなられてからは、母屋にただひとりで住んでいた。玄関で大きな声で訪問を告げてから、2階に上ると、いつでも「ああ、君か、また来たのか?きょうは何の話だったかな?」が決まり文句だった。時どき、お手伝いの女性が現れて、お茶を出してくれたりしたが、ほとんどは藤枝さんと2人だけの時間が流れていた。  それまでの人生の中で、他人の話を聞くのが、こんなに楽しいと思えたことはなかった。こんなに素晴らしい経験と教養にあふれる人が世の中にいるんだなあといつも感心していた。  奈良の志賀直哉宅をはるばる訪れ、書画骨董好きの志賀さんのために購入したばかりの玉舟和尚の書を持参した話は文化欄の記事にした。せっかくの書を志賀さんからけちょんけちょんにけなされてしまい、差し上げるつもりだったのに、仕方なく、情けなく、浜松に持ち帰ったのだ。浜松在住の俳人、相生垣瓜人さんに上げたら、瓜人さんは大喜びされたのだという。記事では瓜人さんが玉舟のお礼に何かを贈ったことを書いたはずだったが、それが何だったのか、すっかり忘れてしまった。  当時、藤枝さんが書いていた原稿の題名に『今、ここ』とあった。『今、ここ』とは、時間を止めることはできない、どんなに大切な時間でも限りがある。出会いのときめきもあるが、必ず、別れのときが来ることをテーマにしていた。  平野謙愛唱詩も同じで、『火を噴いた』過去があり、いずれ、冷たい水をたたえる『今、ここ』の境地にいる。そして、この年になって気がついたのは、そのすべてが泡のように消えてしまうことだ。 「近代文学」の仲間たちとサワガニ  もうひとつ、とにかく、藤枝さんは気前がよかった。  その年の6月、舞阪町の弁天島で開かれた「近代文学」の仲間たちの会を取材した。長編小説「死霊」の埴谷雄高さんも出席していて、難解な思想小説の作者をイメージしていたから、とても怖い人かと思ったら、そんなことはなく、まだまだ『火を噴いている』最中のエネルギーに満ちた酔っ払いだった。藤枝さんより2歳若かったから、仲間たちの中でも人一倍元気だったのかもしれない。弁天島での年1回の仲間たちの会もすべて藤枝さんが提供していた。  その年限りで、弁天島の旅館が閉めてしまうから、会を休止すると藤枝さんは言っていた。ただ、休止する本当の理由は、藤枝さんの健康状態だった。「すぐにいろいろなことを忘れてしまう」と藤枝さんは正直に話していた。写真では、埴谷雄高の後ろで、藤枝さんは旧友の本多秋五と話しているが、友人らとの会話で古い記憶は確かでも、最近のことになると危なげだった。ぼけてしまい何もかもわからなくなることを一番、恐れていた。  藤枝さんはそれから、8年後に神奈川県の療養所で亡くなった。亡くなってから3年後に毎週1回、『浜名湖の恵み』という連載特集を担当、そのとき、再び、「近代文学」仲間の会と引佐町伊平地区のサワガニを紹介した。藤枝さんは「近代文学」の仲間たちと、伊平辺りまでドライブをして、たくさんのサワガニを捕まえ、空揚げにしてビールを飲んだことを随筆にした。藤枝さんが再び、10年後に訪れて、探してみたが、サワガニは見つからなかった。  当時(1996年)、いまから25年前、少なくなったと言ってもサワガニは捕獲されて、東京の料亭などにたくさん送られていた。わたしの写真でも、いっぱいのサワガニが映っている。現在、若い人たちで、サワガニを食べたことがある人はほとんどいなくなった。『浜名湖の恵み』では、ドウマンガニ(大きな泥ガニ)、ズガニ(上海ガニの一種)も紹介したが、サワガニは食べておいしいわけではなく、鮮やかな甲羅の赤を彩りとして楽しむものだったから、すっかりと消えてなくなっても話題にならないようだ。  多分、時間がたつとはそういうことで、周囲の自然も変わってしまっている。サワガニはまだ見ることはできても、食べる文化は忘れられるのも仕方ないことだ。  わたしたちが承知している自然環境の常識が若い世代には全く分からない場合も増えている。逆に、情報機器の急激な進歩にわたしたちはついていけない。だから、新しい世代によることばの意味がわからない文学作品が次から次へと生まれている。果たして、いまの学生たちが藤枝さんたちの「近代文学」を読んで理解できるのだろうか。 日本近代文学館に資料を寄贈  藤枝さんの書『冷やかに』と「近代文学の会」の写真などを公益財団法人日本近代文学館(東京・駒場)に寄贈した。渋谷駅から井の頭線で駒場東大前駅を降りて、住宅街に沿って5、6分歩くと、駒場公園があり、その一角に近代文学館があった。  近代文学館はその名の通り、明治以来の「近代文学」を収蔵しているそうだ。パンフレットを読むと、「収集・整理・保存」を業務に挙げ、「展覧会、講座・講演会」を開催している。  2018年開催した没後10年「小川国夫展」の立派な図録をもらった。そう言えば、静岡市の会社に入社したばかりのとき、小川さんの謡曲講座に通っていた。歌舞伎と違って、謡曲はちゃんと筋立てがわかっていないと見ていても何が何だかわからない。謡曲の舞台よりも、小川さんの話はとてもわかりやすく楽しかった。最後に小川さんを取材したのは、富士山世界遺産特集でインタビューしたときだった。小川さんの『新富嶽百景』(岩波書店)を読んで、初めて、若山牧水「富士よゆるせ今宵は何の故もなう涙はてなし汝(なれ)を仰ぎて」を知った。酔っ払って、ただ富士山を仰ぎ見ているだけで泣けてくる牧水がそこにいて、それが日本人の心情だと小川さんは教えてくれた。富士山を見ていて、突然、泣けてくるのが、日本人であり、だから富士山は、世界遺産などという他人様の称号がなくても、日本の象徴であり、霊山なのだ。小川さんにとって、富士山とは親しみであり、おーい、お富士さんと呼び掛ける存在だとも話してくれた。  小川さんの写真を探していたら、1996年、裾野・総在寺が創建されたとき、お祝いに訪れた立松和平さんの写真が出てきた。小説「遠雷」の自筆抜粋が刻まれた石碑の前に立っている立松さんを撮影した。最後に立松さんに会ったのは、2004年6月で、立松さんが堂主を務めた北海道の知床毘沙門堂建立10周年を祝う法要だった。  総在寺を建立した浦辺諦善さん(沼津・光長寺南之坊)、歌人の福島泰樹さんとの交流の中で、立松さんにもしばしば会う機会があったが、2010年、62歳で亡くなってしまった。法隆寺で修行中だったと浦辺さんから聞いたが、真偽のほどはわからない。  なぜ、こんな話に飛んでしまったかと言えば、浦辺さんが熱心な法華経信者だった宮沢賢治の資料を収集していたからだ。総在寺境内には「遠雷」文学碑とともに「雨ニモマケズ」詩碑が建立されている。  文学者の展覧会には人があまり入らないだろうが、宮沢賢治だけは違うようだ。「宮沢賢治展」には数多くの人が訪れる。 藤枝静男展を期待しています  2005年4月に、浦辺さんが手に入れた丸善特製の原稿用紙に書かれた賢治の手紙とはがきを賢治全集の編纂に携わる大学教授2人が沼津の光長寺で鑑定した。当然、肉筆に間違いなかった。   新発見の手紙は、盛岡中学の5年先輩から送られた手紙に対する賢治の返事だった。昭和3年(1928)に先輩は新興宗教の行者を気取って、賢治にいろいろアドバイスをしたようだ。手紙の最後には4行詩が書かれていた。『暑曇連日 稲熱続発 諸君激昂 迂生強奔』。やはり賢治を研究してきた大平宏龍・法華宗専門学校教授によると、「仏典などからの引用ではなく、賢治の創作の可能性が高い。毎日暑い日が続き、稲はイモチ病にかかり、農民らは怒り、(私は)農業指導のために走り回っている」と教えてくれた。  もうひとつの新発見のはがきは東京の詩人大木実に宛てたもので、やはり、昭和3年に起きた三陸沖地震への見舞いに対する返礼で、病床にあった賢治は地震の惨状も伝えている。  浦辺さんは高校を卒業すると、大阪で法華宗僧侶の修行に入るとともに、古書店で宮沢賢治の『グースコブドリの伝記』初版本を購入したのを皮切りに、『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』などの初版本を集め、自筆書簡まで4千点余もの資料を集めている。  「世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」。浦辺さんは賢治のことば通りの思想を広めるために「賢治文庫」を開設した。ただ、「賢治文庫」は一般に公開されていない。文学資料を公開して、多くの人に見てもらうのはなかなか大変なことなのだろう。  昨年6月から9月、熊本市現代美術館で「谷川俊太郎展」が開催、そのパンフレットが送られてきた。文学を展覧会として鑑賞させようという試みで、パンフレットを見る限りではおもしろく思えたが、コロナ禍の中、どれだけの人たちが鑑賞したのか、心配だった。文学を読むのではなく、楽しんで見せるのは非常に難しい。  小川国夫展に続いて、いつの日か藤枝静男展が開催されるのを期待したい。ぜひ、日本近代文学館を訪れて、藤枝さんの『冷やかに』を鑑賞していただければ幸いである。 ※タイトル写真は日本近代文学文学館事務局に寄贈した藤枝静男関係の資料など。電話03(3468)4181です。