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リニア騒動の真相30「北風」作戦は失敗?

屋上屋の「新たな有識者会議」提案  1月17日、国交省の江口秀二審議官が静岡県庁を訪れ、静岡県提出の「2つの要請」に対する回答書を難波喬司副知事に手渡した。川勝平太知事からの「2つの要請」を拒否する代わりに、国交省は「新たな有識者会議」提案という”奇策”に出た。  18日付新聞各紙を読んでみても、「新有識者会議」の目的は何か、記者たちは表面的な事実しか書いていないから、読者にはさっぱり理解できないだろう。「トンネル工学や水文学の専門家で構成する会議で、これまでの県有識者会議の議論を検証する」役割とは、つまり、静岡県の有識者会議メンバーにいちゃもんを付けることのできる専門家(御用学者?)を招集するということになる。  川勝平太知事がただ黙って、それを受け入れるはずもないだろうが、たとえ、「新有識者会議」が設立されたとしても、屋上屋を重ねるムダな時間をさらに費やし、国交省が望む「解決策」に至るのにほど遠いことははっきりとしている。なぜ、国交省がそんな”奇策”(愚策?)に出たのか分からない。  静岡県の有識者会議に出席してきたJR東海の技術者たちは、「新有識者会議」が解決策にほど遠いことを予測できるだろう。南アルプスの現状をちゃんと把握する静岡県の手強い有識者メンバーと議論してきたからである。新たな専門家(学界の権威)を招集して静岡県の有識者会議の議論を評価しても、それぞれの意見、思惑がぶつかり合い、さらなる調査の必要性だけが出てくるだけである。「会議は踊る」のたとえ通り、早期着工に向かって進むことは期待できない。  静岡県とJR東海との協議を主導する国交省の手綱さばきに官邸は疑問を抱くだろう。官邸の意向は「川勝を何とかしろ」だった。これでは、川勝知事の術策にはまって、土壺にはまった現実に変わりない。”奇策”は打開策にはならない。  ここまでは川勝知事の作戦勝ちといったところか。 ”3者協議会”設立で3カ月以上の空白  昨年10月4日の静岡県の専門家会議で、難波副知事の会議運営に危機感を抱いたJR東海は官邸に”ご注進”した。その結果、国が積極的に関与する新たな枠組み三者協議会(連絡調整会議)をつくることになる。  10月11日、国交省で開かれた協議では、枠組みをつくるための協議案を国交省が作成することになり、24日には藤田耕三事務次官、水嶋智鉄道局長らが静岡県庁の川勝知事を訪ね、国が主導して静岡県、JR東海の議論を整理、なるべく早期に静岡工区の着工に持っていきたい意向を示した。「新しく立ち上げる調整会議は時間を限った形で開催したい」(藤田次官)。その発言を読み解けば、早急に静岡工区の着工を実現させたいJR東海に側面から強力に支援する役割を国が果たすことである。  国の筋書きはちゃんと見えるが、表面上は「交通整理役」という国の提案を川勝知事は受け入れる姿勢だった。ところが、このあとすぐに迷走する。  10月31日国交省で開かれた第2回の協議が静岡県側による”リーク(情報漏れ)”を問題視され、水嶋局長は難波副知事らを厳しく叱責した。国交省から送られた「調整会議の進め方案」が静岡第一テレビによって前日(30日)夜、スクープされた。31日の協議は、リーク問題に絞られ、公文書管理などで水嶋局長は難波副知事らの責任を追及した。  これに反発して、11月6日定例記者会見で川勝知事はこれまでの姿勢を一変、「鉄道局だけでは仕事の整理ができない。(国交省)河川局、環境省、農水省が加わった上で国が関与すべき」と国の新たな体制を求めた。そして、12月25日、「環境省や農林水産省など、水資源、自然環境に関連するすべての省庁の参画」、「国交省による、これまでの静岡県とJR東海との対話内容の評価」という「2つの要請」を水嶋局長宛に文書で提出した。川勝知事の「2つの要請」に答えなければ、協議が進まないことを国交省は十分承知していた。  その結果、国は苦肉の策として「新有識者会議」設立という”奇策”に打って出た。藤田次官まで出張って事の解決に当たろうとしたが、時間の掛かる面倒な”宿題”を増やしただけである。  10月4日以来、静岡県の専門家会議はストップしたままである。3カ月以上の空白が生まれ、さらに今後、「新有識者会議」人選をはじめ検討事項は山積する。そもそも国が提案した「調整会議」も頓挫したままだ。 産経社説「JR東海に一定の合理的負担」求める  「トンネル湧水の全量戻す」と「下流域の地下水への影響」の2つの問題点ははっきりとしている。JR東海は「湧水全量戻す約束を果たせ」という静岡県の主張に対して、「安全を期すために工事中の湧水流出はやむを得ない」と説明する。トンネル工法上、どちらの主張が正しいのか現時点で判断できない。多分、時間が掛かるだろう。  「下流域の地下水への影響」についても、「工事中にトンネル湧水の一部が流出しても大井川の流量は減らない」というJR東海の説明に「表流水ではなく、地下水の問題であり、もし、遠い将来に影響が出たときには責任を果たせ」が静岡県は主張。これも議論はかみ合わない。  これから何度話し合っても、お互いが納得できる結論を得ることはできない。17日、江口審議官は「科学的、工学的に検証する第三者的な専門家会議を設ける」と説明したが、科学者は、それぞれの知見に基づいた学識の範囲でしか意見を言うことができない。南アルプスというフィールドを長年研究してきた者とそうでない者が意見を闘わせれば、「新有識者会議」を評価する別の諮問機関さえ必要になる。  国交省はどうすればいいのか?  昨年12月3日付産経新聞主張「リニア新幹線 国が地元協議を主導せよ」。多分、官邸の意向に沿った主張なのだろう。将来の日本を支えるリニアの必要性を説いた上で、「政府を交えた協議自体に注文を付ける川勝氏の姿勢には首をかしげる。関係者は冷静な話し合いを進めるべきだ」と書いた。その通りである。国交省鉄道局は冷静に本来の役割を果たすべきである。主張では以下のように国交省の役割を示していた。  『リニア新幹線は静岡県内に駅がなく、その経済的なメリットは小さいとされる。川勝氏は今年(2019年)6月にJR東海による経済的な代償を求める考えを示唆した。同社による一定の合理的な負担を含め、国交省が主導して環境対策などでも真摯な協議を進めるべきだ』  国交省鉄道局はJR東海に対して、『(静岡県へ)一定の合理的な負担する』よう指導すべきと産経は書いた。国交省はこれまで「新しい枠組み(調整会議)」設立、「新有識者会議」設立と国主導のかたちで議論を進める体制をつくり、静岡県の主張を何とか封じ込め、無理にでも国の意向に従わせる「北風作戦」を取った。JR東海に「一定の合理的な負担」は言ってこなかった。  官邸に近い産経新聞でさえ、ちゃんと「北風」と「太陽」の両面作戦を薦めているのだ。「北風」作戦では川勝知事が屈しないことは、この3カ月間で国交省は理解しただろう。JR東海を国交省に呼んで、成田空港の土地収用対策を学ばせた。その意図も静岡県には分からなかった。リニアの反対運動ではないのだ。川勝知事のほうから、何らかの条件を出すことはない。  川勝知事は「(JR東海は)誠意を示せ」と何度も繰り返して述べている。だから、国交省は「誠意」の示し方を指導すればいいのだ。 「リニア反対派」抑え込みに本腰か?   ZAITEN2月号(財界展望新社)が『JR東海・葛西敬之名誉会長 国民に禍為す「リニア」の暴走』大特集を組んでいる。「過激にして愛嬌あり」のキャッチフレーズ通り、同書は歯に衣着せぬ記事のオンパレードである。  『「川勝の本心はカネ目」「東海道新幹線の新駅づくりなどで21年の知事4選に向けた実績づくりを画策している」などとマスコミにネガティブ情報を流させた』のはJR東海らしい。  『JR東海では沿線住民はおろか、地元首長に対しても「上から目線の葛西流」がまかり通る。実際、金子(慎JR東海社長)は記者会見でも川勝に対して「条件があれば、はっきり提示して欲しい」など繰り返し訴え、カネで片を付けたい本音を丸出しにして来た』  『2年にわたる静岡県との協議が平行線のままであることに業を煮やしたJR東海は国土交通省を巻き込んで、19年10月、国も含む3者協議の場を設けさせた。しかし、仲介役のはずの国の担当者を国交省鉄道局長が務めるなど「静岡県を押し倒す意図が丸見え」(霞ケ関筋)だったため、まったくワークしていない。金子は県の頭越しに大井川流域10市町の首長に面会して同意を取り付ける奇策も探ったが、10市町側にすげなく断られている』  同書によると、川勝知事を始めとする「リニア反対派」の抑え込みに官邸が本腰を入れ始め、「反対派」の情報をもらして叩きつぶすことを画策しているようである。  さてさて物騒なことである。20日に静岡県庁で開かれる川勝知事と大井川流域10市町長との意見交換会は途中から「非公開」となった。リニア問題はすべて「公開」でという川勝知事の要請だが、そうもいかないらしい。昨年10、11月に難波副知事宛に脅迫状が計3通届いた。静岡県のリニア対応に不満を持つ”不審者”が送ったようだ。議論はいいが、脅しや暴力では解決しない。  ただ、非公開の「県知事との意見交換会」だけを見ても一般市民は本当のところが理解できないから、何をやっているのか不満は募る。専門家や行政担当者だけの会議だけでなく、一般市民がわかり、さらに自由な意見交換の場を設けたほうがいい。 ※タイトル写真は1月18日付静岡新聞写真

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リニア騒動の真相29田辺市長が「闘えない」理由

リニア問題で「批判の嵐」受ける  昨年12月20日、静岡市の田辺信宏市長をインタビューした。雑誌静岡人vol4「JR東海リニア南アルプストンネル計画 なぜ、川勝知事は闘うのか?」特集号の発刊にともない、市長インタビューを申し込んだところ、なかなか日程調整が進まず、再三再四、当局へ要請した。担当者から「リニア問題」絡みではなく、もう一つの特集「川勝vs田辺 静岡市歴史文化施設」に限った質問にしてもらえないかという打診があり、了承した。  特集「川勝vs田辺 静岡市歴史文化施設」。旧青葉小学校跡地に約60億円の事業費で建設される「静岡市歴史文化施設」について、川勝平太知事は「駿府城跡地の遺構が博物館機能を有し、旧青葉小学校跡地に歴史文化施設を建設すれば二重投資になる」として「いったん棚上げすべき」と記者会見で述べるとともに、2度にわたる意見文書を送り、中止を求めたが、田辺市長は建設計画をそのまま進める意向をはっきりと示している。   雑誌静岡人vol4では、新施設の目玉展示が久能山東照宮所蔵の重要文化財「家康所用の歯朶具足」などのレプリカばかりであり、当初の「歴史博物館」構想としてスタートした施設内容と大幅に違っていることを指摘した。さらに、駿府城天守台の発掘による跡地保存、活用などもはっきりとしない現状を踏まえ、川勝知事の意見に従い、いったん中止すべき決断を求めた。今川氏遺構を含めた駿府城跡地整備には多額の費用も掛かるのだから、川勝知事へ費用負担を要請して、静岡県と連携して整備を進めるべきとした。(詳しい内容は雑誌をご覧ください)  一方、「リニア問題」について言えば、川勝知事と同一歩調を取る、大井川流域の8市2町長は、田辺市長の姿勢に厳しい意見を持つ。井川地区と静岡市中心部を結ぶ「140億円」県道トンネル建設を条件に、許可権限を持つ東俣林道使用などの便宜を図るとした静岡市は2018年6月、JR東海と合意書を結んだ。この合意書締結を全く知らされていなかった静岡県、流域市町は、静岡市長の”抜け駆け”に反発、各首長からは県全体の将来を考えていないと批判の嵐が巻き起こった。「政治家の魂を売り、後世まで恥をさらした」という意見まであった。  こんな状況の中で「リニア問題」質問を控えてくれ、という事務方の意向も理解できる。「静岡市歴史文化施設」についても批判的な論調だが、田辺市長がインタビューに応じたのは、政治家の「議」を重んじる姿勢を持つからなのだろう。 「リニア問題」で1つの要望をした  「リニア問題」質問を控えた。その代わりに、田辺市長に「リニア問題」に関して1点だけ要望した。  静岡県とJR東海との議論は、主に南アルプストンネル掘削による下流域の水環境への影響について。破砕帯を有する特殊な山岳トンネルでは、川勝知事も認識するように掘削して初めて分かることが多い。  昨年10月24日、国交省の藤田耕三事務次官、水嶋智鉄道局長が静岡県庁を訪れた際、水嶋局長は「静岡県の対応は、理学的対応に偏っていて問題。工学的対応で、掘削しながら問題が出たら対応するやり方にすべきだ」と注文をつけた。掘削する前にあれこれ議論するよりも、掘削して何か問題が発生したならば、そこで立ち止まって対応すべきというのだ。  この注文に対して、川勝知事は「問題はそういうことではない。安全、安心をどのように確保するのかということ」と回答した。つまり、下流域の水枯れ問題は、もしかしたら、30年以上経過後、遠い将来に起こりうる可能性もある、だから、安全、安心を工事着工前に担保すべき、と知事はいうのだ。両者の議論は全くかみ合わっていない。  国交省の意向は、なるべく早い段階で静岡工区着工こぎつけたい、早期着工を静岡県に要請することであり、一方、静岡県は水環境を「遠い将来」においても担保するようJR東海に求めていく姿勢だ。「遠い将来」に下流域で水枯れが起きたとしても、リニアトンネルによるものか、他に原因があるのか、100キロ以上も離れた下流域の水枯れ発生について、因果関係を明らかにするのは非常に難しい。「遠い将来」の水枯れまでJR東海は担保するわけにはいかない。  そんな状況の中で、将来にわたる水環境の重要性を示すものとして、川勝知事は「南アルプスエコパーク」保全は「リニア南アルプストンネル」着工よりも優先すると、さまざまなメディアインタビューに答えてきた。「南アルプスエコパーク」は水源地の役割を有する自然環境として重要であり、エコパークはリニアにも勝ると知事は考えているのだ。  本当にそうなのか? 世界遺産として水源地の森を守るを提案  リニア南アルプストンネルが建設される地域(エコパーク)を有するのは静岡市、当然、その地域の保全の役割を担う。エコパーク地域を含めて大井川の水源地である森林等を有するのは静岡市、川根本町、100キロ以上離れた下流域の市町は表流水、湧水などでその恩恵を受けている。リニア南アルプストンネルのあるなしに関わらず、水源地をどのように保全するのかは大井川流域全体の重要な問題である。  田辺市長に要望したのは、水源地としての南アルプス保全を静岡市がアピールすることの大切さだった。「エコパーク」とは日本のみの呼称、実際は「ユネスコBR(生物圏保存)地域」。同地域は、地元の経済的利益を図る広大な「移行地域」を抱える。当然、リニアトンネル工事も経済的利益をもたらすのだから、ユネスコはリニア工事を否定しない。リニア工事によるユネスコBR地域の取り消しなど決してあり得ない。「エコパーク」と「リニアトンネル工事」は対立するものではないのだ。  本当に水の大切さを求めた自然環境保全を訴えるならば、BR地域ではなく、世界自然遺産を目指すべきである。雑誌静岡人vol4でも紹介した通り、光岳周辺を中心とした南アルプスの南限地域は、その可能性が高いのだ。流域市町が連携して、特徴的な光岳周辺の原生自然環境保全地域を全面に出して、「水源地」としての森林保全を推進する姿勢こそ重要である。  「水源地」森林を保全する役割を持つことのできる静岡市が、世界遺産運動の旗頭になり、大井川の水を利用する下流域の市町と協力すべきと、田辺市長に要望した。「遠い将来」にわたって水環境の保全を訴え、「水源地」森林を守る静岡市の姿勢をアピールすることで、下流域の市町長から感謝されこそ、批判を受ける筋合いはなくなる。リニア議論の中心「水環境を守る」田辺市長の姿勢に期待したい。 ぜひ、「川勝vs田辺」公開討論会の場を  「静岡市歴史文化施設」についても質問ではなく、1つの要望をしただけである。「ぜひ、川勝知事と公開で討論してほしい」。それだけである。  1982年12月、静岡県が県立美術館建設に際して、発掘調査を行っていた最中、小和田哲男静岡大学助教授(当時)が「駿府城跡地発掘で今川館跡と見られる遺構が見つかった」と独自の記者会見を行った。県立美術館建設は中止され、県立美術館は谷田丘陵に変更された。  当時の発掘を行ったのは静岡県教委であり、発掘よる文化財資料はすべて県埋蔵文化財センターに保管されている。駿府城跡地発掘では、静岡県との関係は深く、ぜひ、静岡市は連携して整備を進めるべきだという主張を雑誌静岡人vol4に掲載した。  「駿府城跡地を巡る公開討論会を行ってほしい」。その要望に対して、田辺市長は「静岡県の発掘のあとに静岡市が独自で発掘を行って、多くのことがわかっている」と説明した。本当なのか?その後の静岡市発掘については、全く知らなかったから、驚いてしまった。  約40年前、小和田氏の発言後に専門家による特別委員会が設けられ、県立美術館建設中止とともに、「さらに精密に調べれば、今川氏との関係がはっきりとする」と意見が付けられた。田辺市長によれば、その後に静岡市が発掘調査を行ったというのだ。  本当にびっくりした。駿府城跡地周辺ではさまざまな発掘調査が行われていることは承知していたが、静岡市が「今川館跡」関連で再び、発掘調査を行ったという事実を知らなかった。それであれば、さらに多くのことが分かっているはずである。  「全く知りませんでした。あとで、担当課に聞いてみます」。「公開討論会」云々以前に静岡市の発掘調査について認識していなかったから、そう答えるしかなかった。 本当に、市長の「勘違い」なのか?  「県教委の発掘調査後に静岡市が独自で発掘調査などしていません」。駿府城跡地の発掘調査担当の歴史文化課長はそう言った。田辺市長は「嘘」をついたのだろうか?  そのあと、田辺市長インタビューに立ち会った秘書課担当者に連絡して、田辺市長が、静岡市による今川氏関連遺構の調査をしたと言ったことは間違いないと確認した。それで、歴史文化課長に問いただすと、「市長の勘違いではないか」と答えた。一体、どうなっているのか?  正月明けに、歴史文化課は「豊臣方の小天守台」発見の記者発表を行った。2018年10月、豊臣秀吉配下の武将中村一氏の天守台石垣が発掘されたという報道があり、話題になった。「家康の駿府城の内側から、豊臣秀吉が築かせた城を発見!」。静岡市の発表は3年前の報道発表に沿って、「秀吉の技術」がなければできない城だった、としている。そのときも違和感を覚えた。  中村一氏は家康が天正時代に築いた最初の駿府城に、家康が江戸へ移った翌年に入城した。一氏は関ヶ原の戦いでは東軍の家康方に加わり、戦場で病死した。駿府在城は11年、翌年息子の一忠は米子城に国替えされ、後任に内藤信成が入っている。5年後に家康は江戸から移り、駿府城を改修、その天守閣は五層七階の大天守閣がそびえ、大天守閣の周囲に櫓や小天守閣を巡らせた環立式とされていた。今回の発掘では、おかしなことに慶長時代の小天守台石垣について発表されていないのだ。  そもそも城郭構造は最高機密の一つであり、秀吉が家康に築城技術を伝授したなどの「事実」があったとは知らなかった。「なぜ、秀吉なのか」という問いに、担当課長は「石垣によってその事実がわかった」という。  12月31日に静岡新聞に、『「秀吉の城」小天守か』という発表前の独自ネタが掲載された。担当課長の話を聞いていて、何よりもマスコミに大きく取り上げられることが至上命題のようで、今回の発表でも「江戸時代より前の城跡で天守が2基並ぶ遺構が発見されたのは全国初」が大きなポイントだった。「秀吉の城」という表現は非常にあいまいでわかりにくい。しかし、発表には必ず「秀吉」がついている。  科学では確率統計論などに基づいて「蓋然性が高い」という判断をする。考古学の世界では(行政の意向に沿った)一部の専門家による意見がまかり通り、検証作業はなおざりだ。雑誌静岡人vol4で紹介した静岡市歴史文化施設建設予定地発掘で「道」発見の報道発表でも同じだった。  科学的な証拠のある「事実」を重んじるのが行政だが、歴史文化課は違うようである。マスコミ受けを狙った底の浅い報道発表を見ていると、田辺市長はいつも「勘違い」ばかりしてしまうだろう。「市長の勘違い」で済ませられる世界は、本当に恐ろしい。田辺市長が「闘う」ことなど到底できるはずもない。  田辺市長は「闘う」ために、雑誌静岡人vol4をじっくりと読んでほしい。担当の歴史文化課長は、駿府城跡地整備で静岡県との連携を望んでいると言っていたのだから。

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リニア騒動の真相28 「宿題」が2つ残っている

「宿題」の1つー川勝知事「2つの要請」  暮れも押し詰まった2019年12月25日、静岡県の難波喬司副知事は東京・霞が関の国交省を訪れ、江口秀二審議官に面会した。難波副知事の目的は江口審議官に、水嶋智鉄道局長宛の文書を手渡すことだけだった。国交省の提案した新たな会議体設立について、「リニア中央新幹線静岡工区の進め方について」という標題で静岡県の求める条件が記された文書である。求める条件とは、川勝平太知事の「2つの要請」である。  1つ目の要請は、「国交省のほか、環境省や農林水産省など、水資源、自然環境に関連するすべての省庁の参画をすること」。  2つ目が、「国交省として、これまでの静岡県とJR東海との対話の内容について評価すること」。  10月24日、国交省の藤田耕三事務次官が静岡県庁を訪れた際、川勝知事は口頭で「国は、自ら現場を調査して考えをまとめることが必要、静岡県の中間意見書、JR東海からの回答に対する見解を文書で示してほしい」と要請した。これが、「対話の評価」である。  11月6日の定例記者会見で、川勝知事は突如として「鉄道局だけでは仕事の整理ができない。(国交省)河川局、環境省、農水省が加わった上で国が関与すべき」と「他省庁の参画」を断固として求めた。難波副知事の持参した文書は、知事の「2つの要請」を正式なかたちにして、国交省へ提出したのである。  だから、「2つの要請」を国交省はすでに十分すぎるほど承知している。国交省が何らかの回答をするものと静岡県は待っていたが、1カ月以上過ぎても返事はなかった。  そんな中、水嶋局長は静岡新聞インタビュー(12月15日付)で、1つ目の要請「他省庁の関与」は「交通整理の場に、制度上接点がないメンバーを入れる意味は理解しかねる」と否定、2つ目の要請「対話の評価」は「国は環境アセスメントや着工認可で政策判断を終えている。判断するのは県」などと拒否、「2つの要請」に応じかねることをはっきりと表明している。多分、事務レベルでは鉄道局の意向は静岡県に伝えられていたはずである。  それがなぜ、暮れも押し詰まった時期になって、静岡県は「2つの要請」を再度、持ち出したのか?そもそも「行政の常識」から見れば、水嶋局長の主張の通りであり、旧運輸官僚の難波副知事は頭では理解していたのだろう。しかし、川勝知事の要請は、流域市町村長の賛同を得ているから、静岡県のメンツが掛かっている。静岡県のメンツを立てるため、難波副知事はわざわざ東京まで出向き、要請文書を手渡すだけという単なる「お使い」の役割を果たした。つまり、静岡県の要請に答えなければ、協議が進まないことを国交省に伝えたのである。  2019年からの「宿題」である「2つの要請」に国交省はこたえなければならないのか? 2つ目の「宿題」は「リーク」の説明  2019年からの「宿題」はこれだけではない。  2つ目の「宿題」のほうを国交省は忘れてはいないだろう。新たな「会議体」の枠組みを話し合う国交省、静岡県、JR東海との三者による協議が10月31日に国交省で予定されていたが、枠組み合意の話し合いは全く行われなかった。静岡県の「リーク」(情報漏れ)が原因だった。  31日に行われた話し合いの記録が公文書の情報開示手続きによって明らかになった。一体、どのような話し合いだったのか?(※この議事録は静岡県側が作成したものであり、録音などの記録媒体をすべて詳らかにしたものではない)  (水嶋鉄道局長) 本日(31日)は、2回目の合意文書を作成する場であったが、非常に心外であったのは昨日(30日)の静岡第一テレビの報道。  誰がしゃべったんだ。これをやったのは。副知事なのか。局長なのか。合意文書案は、事務的調整段階であり、次官も局長も案を見ていない段階のものである。何でこんなことになるのか。こんな文言案は、自分は見ていない。  声を荒げて申し訳なかった、こういう話は信頼関係がないと、成り立たない。国が調整役として前へ進めようとしているときに、国が地元を軽視しているみたいな世論操作をなぜするんだ。この第2ステージをぶち壊そうとしているのか。  この内容は県がリークしたものとしか考えられない。何の意図があって県はこれをリークしたのか。リークした人物は誰か。知事が国の調整を期待すると言っているのに、リークは調整を壊したくてやっているのか。調整は、相互信頼関係が大事だ。なぜ、その信頼関係を損なうリークを県は行うのか。  誰がリークを行ったのか特定してもらいたい。それを踏まえて、今後、県はどういう情報管理を行うつもりか明確にしてもらいたい。  (難波副知事) しっかりと調査する。  静岡第一テレビの「スクープ」がなぜ、国交省へ深刻な影響を与えたのか、水嶋局長がなぜ、激怒したのか理由は以下の通りである。  (江口技術審議官) 静岡第一テレビの報道を見ると、次官の知事訪問の映像の後に、事実に反する内容で調整過程が示されているが、これでは「次官が地元を軽視した内容で、調整を行っている」ようにとられてしまう。  つまり、藤田事務次官が地元軽視を指示したような印象を与え、静岡第一テレビの報道は国交省全体の姿勢にとられてしまうことが逆鱗に触れたのだ。「事務的調整段階」であり「事実に反する調整段階」案だったから、水嶋局長、江口審議官が大問題とし、難波副知事は「(リークを)しっかりと調査する」と明言、静岡県側の議事録に記された。  しかし、2カ月以上たっても、静岡県は「しっかりとした調査」の結果を回答していない。もし、10月30日の「リーク」がなかったならば、3者による新たな会議体の話し合いは進み、会議体は11月中に立ち上がっていたはず。静岡県の「リーク」で水嶋局長は難波副知事らを激怒、その報告を受けた川勝知事は水嶋局長の対応に一気に硬化した姿勢を見せた。「鉄道局だけでは仕事の整理ができない。環境省、農水省、河川局などの関与を求める」という「他省庁の参画」発言につながった。  川勝知事が「他省庁の参画」を求めるもともとの原因は、静岡県側の「リーク」にあった。とすると、静岡県からの要請文書はブーメランのように静岡県に戻ってきてもおかしくない。  「2つの要請」文書を受け取った水嶋局長は、逆に「10月30日のリークについて静岡県はしっかりとした調査の経緯を含めて、リークした人物名を明らかにして、その理由等を説明してもらいたい」などの要請文書を難波副知事宛に提出することができる。本当に「調整案」だったかは別にして、「しっかりと調査する」と述べたことは非常に重い。 「他省庁の参画」「対話の評価」は必要か?  そもそも静岡県の求める「他省庁の参画」と「対話の評価」は本当に必要かは大いに疑問だ。  難波副知事が水嶋局長に提出した要請文書では、「他省庁の参画」は「複数の市町長が環境省、農水省が新たな枠組みに加わってほしいという要望があった」、「対話の評価」は「地質構造・水資源専門部会長から国交省の評価をもらいたいという意見があった」などを理由に挙げているが、十分な説得力に欠ける。  環境省は環境影響評価書提出前であれば、当然、自ら積極的に会議体に参画することを求めるだろう。すでに環境省の意見を踏まえた上で、国は事業認可をしているのである。今更、環境省が何らかの意見を言える立場ではなく、南アルプス国立公園を保全する役割から単にオブザーバーとして席を温めるにすぎない。農水省の参画はもっと理解し難い。水源地の森林を保全する役割を林野庁は持つが、森林整備は林野庁と連携、静岡県が主体となって取り組むことのほうが多い。言うならば、静岡県自身の問題である。  何らかの権限を持たずに議論に参画しても、各省庁が本来の役割を果たすことができないことを難波副知事は承知しているはずである。川勝知事は県民向けに環境省や農水省などの名前を出し、小泉進次郎環境大臣らに面会、参画を要請することもできるだろうが、一体、環境省、農水省にどんな実務的な役割、機能を求めるのか、はっきりとしない。  国交省内部はどうか。鉄道局の問題であり、河川局は積極的に参画していない。大井川の管理等で言えば、他省庁よりも河川局のほうがさまざまな権限、予算を有している。それでも河川局は鉄道局の問題だとして口を差しはさむことはしない。 静岡県は「リーク」問題を説明すべきだが  今回、面談記録の公文書を情報開示して、川勝知事への私信(焼津市の酒造会社社長=名前等は伏せられていた)、「リニア中央新幹線には避難機能が欠けている」と題した静岡県立大学特任助教の小論文(いずれも写し)が、10月24日の藤田事務次官との面談記録の参考文書として添付されていた。  特にびっくりしたのは、台風19号による東俣林道で沼平ゲートから4・2キロ地点の約150㍍の崩落現場写真だった。静岡市が提供したのは3・8キロ地点の路肩決壊個所だけで、4・2キロ地点の崩落現場写真で台風被害がいかにひどい状況だったか、初めて分かった。  なぜ、静岡市は最もひどい崩落現場写真を提供しなかったのか?(※タイトル写真と左の写真が情報公開で提供。すっぽりと道が消えてしまった崩壊現場で、完全復旧が2021年3月頃の理由がよく分かる。河川内の仮道路の様子は不明、現地への立ち入りが禁止されて新聞、テレビの報道はされない)  2019年からの「宿題」に、行政が情報をちゃんと出さないことがある。行政は多くのことを隠したがるから仕方ないかもしれない。しかし、「リニア問題」に限って言えば、川勝知事はすべてを公開した上で議論すると言っている。そうであるならば、まずは、10月30日の静岡第一テレビへの「リーク」は静岡県側が行ったものかどうかの調査結果、そして、もし、静岡県の「リーク」であれば、「リーク」した人物は誰か、その経緯、理由を含めて正々堂々と公表すべきである。そうでなければ、川勝知事のすべてを公開して議論する「発言」の信ぴょう性に疑問符が付くことになる。  2019年からの「宿題」が2つ残っている。2つの「宿題」の答えを出すには、「無理」を通さなければならない。「無理」を通せば、「本音」がはっきりと見える。ぜひ、2つの「宿題」をテーマに公開討論会を行うべきである。それで、鉄道局のスタンスもはっきりとするだろう。そして、解決の糸口が見えてくるはずである。

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「県議の資格ない」川勝知事発言の行方

なぜ、「謝罪」に転じたのか?  12月25日付朝刊の新聞各紙は知事会見について、読売、静岡、朝日、産経は「県議の資格ない」「やくざ、ごろつき」発言を伝えたが、中日、毎日は記事にしなかった。最も大きな扱いは朝日で、地方版のトップ記事だった。  24日午後2時から始まった川勝知事の会見は1時間を過ぎたところ、静岡新聞記者の質問で会見の様相が一変した。ことしの漢字を「祥」と書いて、1年を振り返り、笑顔が続いた川勝知事の表情は急に厳しいものになった。  「文化力の拠点」を巡り、公明党県議団、共産党県議との面談で「反対する理由は川勝が嫌いだというだけ」「反対する人は県議の資格はない」などとした発言について、記者は「謝罪、撤回しないのか」と問いただした。この記事を掲載したのは静岡新聞のみで、他社は取材していない。この質問に対して、川勝知事は「撤回する必要はない」「こんなことを言った覚えはない。書いた人はそう思って書いたが、言った覚えはない」などと述べた。  もし、知事の言う通りならば、静岡新聞は「嘘」を掲載したことになる。記者は「当方の信用に関わるので、議会の要請があれば、音声記録を提供する」と追及したが、川勝知事は「言った覚えは全くない」とした。  ところが、朝日記者に続いて、NHK記者の「やくざ、ごろつきと言ったのか」という質問で、知事は「(図書館)建設に反対する人はいない。県民がみな欲しいと言っているものに反対するのは公益に反する。公益に反する人は議員の資格がないと申し上げた」、さらに「公益に反する人を反社会的勢力という。それはやくざ、ごろつき」などと述べた。結局、川勝知事は20日付静岡新聞に掲載された発言を認めるかっこうとなったが、謝罪、撤回は最後まで拒否した。  25日夕方、急展開する。川勝知事は緊急記者会見を開き、発言をすべて謝罪したのだ。発言の撤回まではしなかった。静岡新聞によると、2月県議会で来年度予算審議への影響が避けられない、つまり、2020年度予算案を否決するなどと最大会派の自民党県議団が県に伝達したことで、川勝知事も謝罪会見が避けられないと考えたようだ。 県立図書館の駐車場は「有料」に  「文化力の拠点」について、24日の会見で川勝知事は「職員の(県議団への)説明不足がはっきりした」と述べた。12月県議会では、事業規模などを巡り自民の坪内秀樹県議の代表質問に対して、川勝知事が詳細に答弁した。それでも、今月末に予定していたパブリックコメント(意見聴取)は延期された。その延期に対して、川勝知事は「公益に反する」などと発言、「ごろつき、やくざ」「議員の資格はない」などにつながった。  川勝知事はどこに問題があるのか、ちゃんと理解しているのだろうか?  12月県議会の答弁で川勝知事は、図書館来館者について岡山県の100万人、山梨県の90万人を例に出して、「魅力ある図書館を整備すれば、それに応じた集客を生む」として、現在の20万人から「100万人」も可能だと述べた。  さらに「食の都」にふさわしい、さまざまな食を楽しめるレストラン、フードコート、カフェなどのワンフロア全体に集め、図書館に来なくても食を楽しむ人たちが集まる施設にしたいと述べている。AI、ICTの拠点、大学コンソーシアムなど魅力あふれる施設などは当初の計画とは大幅に変わっている。  昨年度、県立図書館が新図書館建設で行ったパブリックコメントを見て、驚いた。そこに「駐車料金を減免してほしい。広い駐車場がほしい」という意見が寄せられていたからだ。  現在の県立図書館は県立美術館の隣にあり、駐車場は「無料」である。しかし、新しい図書館では駐車場は「有料」となることが決まっている。お隣の山梨県では最初の1時間は無料だが、その後有料である。しかし、新県立図書館では最初から「有料」となる。東静岡駅と隣接するだけに、駐車場を無料というわけにはいかないらしい。県民は図書館を利用するためには駐車場代を支払うことを歓迎するだろうか?  現在、グランシップの駐車場(550台)はグランシップ利用者は半額となっている。県立図書館が建設されれば、両者は同じ駐車場を共有して利用することになる。これまでのグランシップ駐車場と同じ方式が採用される可能性が高いだろう。  12月県議会で川勝知事は「学生時代、昼食、夕食の食費を削って本を買って、勉強した思い出がある」などと述べた。それだけに、県立図書館への思い入れが強いのかもしれない。ただし、毎日、長時間、図書館で勉強すれば、昼食、夕食の食費は駐車場代に消えてしまうわけだ。 駐車場の大混雑は避けられるのか?  駐車場は現在(550台)と同じ規模である。年約70万人来館するグランシップ、年100万人来館する県立図書館だけでなく、ワンフロア―すべてが「食の都」となれば、同じ駐車場をすべての施設で共有するだけに、土曜、日曜日は大混雑を引き起こすことの懸念はないのだろうか?  図書館、食の都だけでなく、AI、ICTの拠点、大学コンソーシアムなど魅力あふれる施設にすればするほど、来館者は増えるだろう。グランシップのイベントだけでも駐車場が満杯になる場合がよくあるのに、果たして、新たな数多くの利用者を見込めば、駐車場が不足する事態は避けられないだろう。  県議団の各会派はプロジェクトチームをつくり、施設の問題点を洗い出すことになった。今回の知事発言で多くの県民が「文化力の拠点」に強い関心を持つことになっただろう。  19日、共産党の鈴木節子県議は「県立中央図書館にいろいろ付けて財政が膨らむのは再考すべき」と求めた。川勝知事は「県議会はなぜ、足を引っ張るのか。反対する人は県議の資格はない」とまで述べたようだ。  まず、「文化力の拠点」にいろいろ詰め込むのではなく、「県立中央図書館」機能のみにすべきである。「県立図書館」に反対する人はいないが、その他の機能には県議会各派も疑問を抱いている。  図書館の駐車場が「無料」から「有料」になる。それだけでも、多くの県民は反対意見を持つ。さらに、グランシップと共有の駐車場では、大混雑を引き起こす可能性さえある。  「県議の資格はない」かどうか、来年度予算案を審議する2月県議会定例会で「文化力の拠点」についてさまざまな議論が出ることを期待したい。議会は行政のチェックをする役割が大きい。知事がその議会に対して、反対する人は「県議の資格はない」「やくざ、ごろつき」などと言う発言が正しいのかどうかは、議場での議論で明らかになるだろう。  県立図書館に反対しているわけではなく、「文化力の拠点」機能や膨らむ事業費に異論があるようだ。少なくとも、わたしは県立図書館の駐車場が「無料」から「有料」になることに反対であり、大混雑も避けたい。多分、多くの県民も同じではないか?しっかりとパブリックコメントを行い、県民の意見に耳を傾けてほしい。 ※タイトル写真は、自民の坪内県議が「文化力の拠点」について疑問を呈した12月県議会。「県議の資格はない」など本人たちの前で言えるのかどうか

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リニア騒動の真相27知事の「説明責任」

牧之原市長、袋井市長、吉田町長、静岡市長に面会  先週、杉本基久雄牧之原市長、原田英之袋井市長、田村典彦吉田町長、田辺信宏静岡市長を訪ね、リニア南アルプストンネル計画の問題点について、各自治体の立場や諸事情からどんな考え方を持つのか聞いた。  田辺市長を除く、大井川流域の8市2町長は非公式のかたちで会合を持ち、トンネル建設に不可欠な河川法の許可権限を持つ川勝平太知事に一任してJR東海との交渉を任せることを決めている。  田村町長は「リニアトンネルが南アルプスの破砕帯を貫通する。その結果、下流域の地下水が枯渇する可能性がある。JR東海は流域自治体の地下水へ影響が全くないことを説明しなければならない。静岡県環境保全連絡会議の専門家全員が納得できるまで説明責任を果たさな ければならない。影響が少しでもあるならば、南アルプスを貫通することは容認できない。また、どんな影響が出るか分からないのであれば、やめてくれということだ」と厳しい口調で話した。「将来、地下水への影響が出たとき、町の存続にかかわる致命的な問題。地元のために闘う」。  田村町長、田辺市長と面会したのは静岡県議会最終日の20日、その日の静岡新聞朝刊は川勝知事による衝撃的な発言を伝えた。鈴木英敬三重県知事に対する「嘘つきは泥棒の始まり」発言に勝るとも劣らない強烈な内容だった。県議会に大きな衝撃を与えただろうから、県議会最終日と重なり、川勝知事発言がどんな混乱を巻き起こすのか吉田町、静岡市でも話題になった。 自民県議団は「やくざの集団」「ごろつき」?  『「文化力の拠点」巡り 知事「ごろつき」自民念頭に批判』の一段見出しの小さな記事である。『JR東静岡駅南口の県有地に整備する「文化力の拠点」計画の見直しを求める自民県議団を念頭に、「反対する理由は川勝が嫌いだというだけ」と強く批判した上で、「やくざの集団、ごろつき」などと非難、さらに「反対する人は県議の資格はない」と述べた』。中日をはじめ他社の新聞には掲載されていない静岡独自の記事だった。  もし、知事が本当にそんなふうに言ったのならば、自民県議団を侮辱、挑発したことになる。その影響が大きいだけに静岡新聞記者は慎重に「事実」のみを伝えたはずである。  県議会終了後、自民県議団は総会に川勝知事を呼び、発言の真偽を問い質した。自民県議らの前で川勝知事は「良識の府を預かっている方に対して、ここでも口に言うのがはばかられるような言葉を言うのをあえて言うことはありません」と難しい言い方をした。古参の自民県議は、知事は発言を全面的に否定した、と言うのだ。別の県議は「(知事は)稀代の嘘つき」と述べたが、その発言の真偽を確認することができない以上、その場では知事の否定を受け入れるしかなかった。  自民県議団と知事のやり取りを経て、静岡新聞はどのように書いたのか?記事を否定されたようなものだから、記者は真っ向から川勝知事を「嘘つき」と闘うのではないか?  この案件を記事にした21日付静岡新聞の見出しは『川勝知事「議会軽視ではない」 「ごろつき」発言で釈明』。  『発言の撤回や謝罪はせず、「議会を軽視したことはない。力を合わせ県の発展のために務めねばならない」と訴えた。取材時の音声記録によると、川勝知事は19日の公明党県議団、共産党県議との面談で自民を念頭に「ごろつきと一線を画して堂々と正論をやってほしい」と発言、「(文化力の拠点整備に)反対する人がいたら県議会議員の資格はない」とも述べていた』。知事が前日の記事内容を否定したとは書いていない。さらに、『自民の議員総会で知事は、文化力の拠点整備に議会から批判があることについて「当局の説明不足」が原因だとの認識を示した』  この記事では何だか分からない。前日(20日)の記事が「嘘」なのか「正しいのか」?  今回の記事には「やくざの集団」が省かれていた。また、議会の反対理由が「川勝が嫌いだというだけ」ではなく、「当局の説明不足」になっていた。これでは二枚舌となる。  それで、静岡新聞社に「やくざの集団」「反対する理由は川勝が嫌いだというだけ」は、知事が言ったのかどうか、「音声記録」にあるのかどうかを尋ねた。  静岡新聞社からの回答は「いずれの知事発言も記者の音声記録に残っている」だった。もし、これが「真実」ならば、川勝知事は「嘘」をついたことになる。 知事は「嘘・偽り」を言わない!  「嘘つきは泥棒の始まりです」。そう発言した11月17日、川勝知事の定例記者会見を確認してみた。(その発言の経緯については、『リニア騒動の真相24鈴木知事「事実無根」の真実』を参照)  記者会見の席で、川勝知事が「嘘・偽り」について政治家としてどのように発言したのか。  『ふじのくに公務員の心得8カ条の第2条「嘘・偽りを言わない」というところに赤線を引っ張って三重県知事に差し上げた』『静岡県庁では、一切、身に私を構えず、「嘘・偽りを言わない」ということを心得にしている』(※「身に私を構えず」は江戸時代、薩摩藩で使われた私利、私欲を追うなの意味)  『最近はあったこともなかったことにするようなことが、政治家の間で横行している。嘘つきは泥棒の始まりです。ましてや人の上に立つ人は、嘘偽りを言ってはいかんというふうに強く思っておりまして、そういう意味では、そういう資格を持った政治家かなと思いますけれど、これは不健全なこと』『最近の、いわば強弁をして、言い張り続けて、事実を隠すといいますか、事実と異なる状況の説明に終始してしまうということが横行しておりまして、大変危険なことだと思っております』『それで事柄ばれたら、それを不都合だからといって、なかったことにするといったような強弁を言い続けて、それが勝ちだとみたいな、そういう事態が横行しているのを、私は一国民として憂いております』  知事会見の記録は文字になってしっかりと残っている。「嘘つきは泥棒の始まり」と形容して鈴木三重県知事を批判したのだから、川勝知事は「嘘・偽りを言わない」を信条としているのは間違いない。となれば、自民県議団に対して「やくざの集団」や「ごろつき」と言っていないだろうし、「反対する理由は川勝が嫌いだからだ」「反対する人がいたら県議会議員の資格はない」などと言うはずもないだろう。  果たして、川勝知事か静岡新聞社のどちらが正しいのか? 魂を売らない政治家とは?   「君は知っているか」。そんなキャッチフレーズのチラシを見て、映画「東京裁判」(小林正樹監督)を35年ぶりに見た。4時間37分もの長いドキュメンタリーは太平洋戦争の戦争責任を追及した。東京裁判は戦勝国の政治判断によって天皇の訴追を除外し、日本を侵略戦争に導いたのは東条英機ほか陸軍の軍人らA級戦犯に限定した経緯を描いた。  映画に戦後の首相として登場する岸信介は戦時中の重要官僚として、また東条内閣の閣僚として、A級戦犯とされたが、東京裁判を免れた人物の代表であり、東京裁判の被告席に座らなかったことだけで軍国主義者ではないことになり、戦争責任を解除されたとみなされた。巣鴨刑務所を出てわずか8年、政界の最高位におさまった。戦後、「妖怪」と称され、虚実ないまぜにした岸の政界工作、権謀術策はさまざまに伝えられている。  岸内閣の下で行われた総選挙で自民党が圧勝するのは、世界恐慌を思わせる不況の時期と重なり、軍需景気が盛り上げてくれるかもしれない経済的恩恵への期待感だった。この期待が、岸の戦争責任などを問う声を押し流した。失業や倒産におののく人々は政治家の質よりも目先の利益を求めることを優先した。岸の孫に当たる安倍晋三首相は、民主党政権の失敗と景気低迷という岸と同じような状況の中で誕生、長期政権を維持している。しかし、安倍首相個人にかかわる問題も数多く起きている。  川勝知事は森加計問題や桜を見る会などを念頭に『最近の、いわば強弁をして、言い張り続けて、事実を隠すといいますか、事実と異なる状況の説明に終始してしまうということが横行しており、大変危険なことだと思っております』と安倍首相らの事実と異なる”釈明”を批判している。つまり、そのような政治家とは一線を画していると言いたいのだろう。  2市8町の首長は、川勝知事にリニア問題での解決について全権委任している。杉本市長、原田市長、田村町長らは経済的な利益をJR東海に求めていない。首長の何人かが、「経済的利益で政治家の魂を売った」と田辺市長を厳しく批判した。孫子の世代に禍根を残さない、住民たちにとって生命ともいえる水問題の解決のみを知事に求めた。そこには、知事の「嘘・偽りを言わない」など指導者としての質を信頼してのことだろう。  川勝知事の定例記者会見は24日午後2時から。その席で、今回の発言について、知事はちゃんと説明するのだろうか?知事は「説明責任」をはっきりと果たさなければ、この問題はあとを引くだろう。 ※タイトル写真は川勝知事への雑誌静岡人vol4贈呈の際に撮影したものです。雑誌発刊は、リニア問題で知事を応援する意味合いが込められています。知事の説明責任は重要になります。『リニア騒動の真相25「嘘つきは泥棒」だった』に関わる問題はまだ解決していません。ちゃんと終わってから報告します。

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リニア騒動の真相26「成田」ではなく「流木」に学べ!

「成田闘争」に学べー国交省の真意は?  国交省鉄道局鉄道課所管の「交通インフラ整備と地域共生に関する勉強会」が12月9日、同省で開かれた。成田国際空港会社の担当者が空港建設にともなう用地買収の事例を説明、JR東海担当者は「地域共生」のヒントを学んだという。会議は非公開で、会議内容は国交省HPに紹介することになっているため、担当課に聞くと、HPでの紹介がいつできるのかはっきりと日時を示すことができないという。一体、どんな会議だったのか?  「現代の成田闘争へ」。これは日経ビジネス2018年8月20日号の特集「リニア特集 夢か悪夢か」の沿線各地で起きている反対運動をまとめた記事の大見出し。神奈川県相模原市でマンション立ち退きを求められた事案で、交渉に当たるのがJR東海ではなく、相模原市の職員であり、最後は「強制収用」に踏み切る方針などに住民の不満や納得できない様子、山間地のリニア計画地で始まった反対派11人が共同登記する「土地トラスト」運動を伝えていた。  山梨県南アルプス市では地上に高架を建設する区間で、地権者は畑の桑を1本千円で売り、名札を付けた「立木トラスト」運動が始まり、JR東海は約7百人もの同意を得なければならない状況、早川町での残土処分問題、JR東海と工事連携の合意をした静岡市に対する県、周辺自治体の反発なども取り上げた。  日経ビジネスが伝えた神奈川県の「土地トラスト」や山梨県の「立ち木トラスト」などはリニア反対運動。だから「現代の成田闘争」と見出しを付けたのだろう。成田空港の用地買収や騒音問題は、「成田闘争」と切り離すことはできない空港反対運動である。当然、静岡県の水環境問題はリニア反対運動ではない。  国交省が成田空港の事例を持ち出してJR東海に何を参考にさせようとしたのか、その真意はさっぱり分からない。 「成田」は”武力闘争”の舞台  9日の「勉強会」には、JR東海から宇野護副社長、澤田尚夫・中央新幹線建設部次長(環境静岡)、二村亨・中央新幹線静岡工事事務所長らが出席した。この顔触れを見れば、神奈川、山梨、長野などのリニア反対運動に対するものではなく、リニア南アルプストンネル(静岡工区)工事に焦点を絞ったのだろう。  1966年6月、成田市三里塚小学校の説明会で地元の人たちは空港計画を初めて知ったが、政府は地元への詳しい説明もなく、突然、成田空港建設の閣議決定をした。用地取得や騒音問題に反発する住民らの反対運動は激化、「成田闘争」や「三里塚闘争」と呼ばれた。現在、香港では大学生など若者たちがデモや投石などで警官らに対する激しい反発を繰り返している。成田闘争は機動隊などと激しく対立、双方に死者が出るなど、香港での”武力闘争”を大きく上回った。左派の運動拠点となり、”武力闘争”は泥沼化した。78年3月、成田空港は開港、その後も反対運動は続いている。  2018年3月、成田空港第3滑走路建設計画が発表され、2029年3月までの新設を目指して、用地買収や騒音対策などで地元への取り組みが続けられている。第3滑走路計画地で「絶対反対」を貫く地権者の農家への対応など課題は山積する。  鉄道課によると、成田空港では「共生用地部門」を設け、空港周辺に窓口をつくって、用地取得や騒音などの相談に当たっている。その上で、地域との接し方や議論がかみ合うような取り組みなどの参考事例を取り上げたようだ。JR東海の宇野副社長は「いろいろな角度からコミュニケーションを取り、地域と長期の信頼関係を築いたことをお聞きした。今後地域との連携、事業の推進に生かしたい」というコメントを発表している。  赤羽一嘉国交大臣は「JR東海は地元の皆さんへの理解を深めていく汗をかかなければならない。地元に丁寧に説明し、理解を得るのが大事という認識をするための勉強会」と話した。いずれも表面的なコメントであり、わざわざ”武力闘争”の舞台を持ち出した真意にはほど通く、静岡県に間違ったメッセージを発することになりかねない。  「勉強会」に、全く別の意図があるのかもしれない。今後、現地視察も予定しているようだが、国がJR東海を指導するのではなく、JR東海の自発的な取り組みを期待しているとのこと。一体、JR東海にどんな取り組みを期待しているのか? 「絶対反対」を覆した安倍川の事例  リニア南アルプストンネル計画にからむ大井川下流域の水環境問題について聞くために、国交省静岡河川事務所の川上哲弘所長を訪ねたが、静観の構えのようだ。鉄道局と違い、いまのところ、JR東海へ何らかのアドバイスをする用意もないとのこと。  地域と連携、地域を理解するための「勉強会」であるならば、東京ではなく、地元で行うべきではないか。それだけははっきりとしている。  2003年11月、第1回安倍川流木クリーンまつりが開かれた。翌年には第1回大井川流木クリーンまつりが開催された。「地域連携」の意味をその2つのまつりで考えてもらいたい。  流木クリーンまつりを提案したのは、静岡河川事務所の境道男所長(当時)。荒廃する森林や川の中にできた林から流れ込む流木は河川事務所が管理する安倍川、大井川の大きな問題となっていた。ただし、流木クリーンまつりを境所長が提案したのには別の大きな理由もあった。  昭和30年代の高度経済成長、東京オリンピック開催などが続き、安倍川の砂利は大量に清水港から東京へ運ばれた。最盛期にはダンプトラック30万台分が採取され、1967年までの13年間に約1400万㎥もの砂利が採取された。機械掘りによる過剰な砂利採取が、静岡、清水海岸の浸食をもたらし、景観を全く変えてしまった。  このため、1968年建設資材用の砂利採取が禁止された。68年から始まった砂利採取禁止は35年間にも及んだため、逆に安倍川の河床は大幅に上昇した。2002年アユ漁はほぼ全滅、洪水を引き起こす可能性まで指摘されていた。静岡河川事務所は年間10万㎥の建設資材向けに砂利採取解禁へ方針を転換せざるを得なかった。そのためには、地元の理解を得るのが条件となった。  砂利採取に「絶対反対」を唱えていた漁協、水防団は容認の方向へ傾いていた。「絶対反対」を貫いたのは、清水海岸浸食対策期成同盟会だった。海岸侵食をもたらした最大の原因は過剰な砂利採取であり、砂利採取業者に強い不信と敵意を捨て去ることはできなかった。  「同盟会」の山本義光会長(当時)は境所長らの説明に全く聞く耳を持たなかった。激しい口調で砂利採取業者を非難し、砂利採取に「絶対反対」の姿勢を崩さなかったのだ。 NPO法人の果たした役割  山本会長ら「期成同盟会」のメンバーは海岸後退が続く羽衣の松、三保の松原まで及ぶ清水海岸の白砂青松を取り戻すことに一生懸命だった。毎年、源流部の大谷崩れの状況を視察するとともに、海岸復活ために、政治家、官僚らに何度も談判に出掛けた。ごまかしは通じなかった。いったん約束をしておいて転勤してしまった官僚の赴任地まで出向き、ちゃんと約束を守るよう詰め寄った山本会長の逸話は数多い。  だから、砂利採取解禁で山本会長らの気持ちを翻意させるのは非常に難しかった。  境所長提案の流木クリーンまつりのために、NPO法人「水の国」しずおかフォーラムが立ち上げられた。新聞記者、静岡大学農学部、東海大学海洋学部の教員らを中心に安倍川、大井川の環境保全をテーマに活動することを目的に、森、川、海にかかわる団体の参加を呼び掛けた。  山本会長らの「期成同盟会」は説得に応じて、NPO法人加盟に合意した。NPO設立会合で、安倍川、大井川が東京という大都会の発展のためにやせ細り、それに伴い、美しい清水海岸が消えたことを振り返った。日本で初めて開催された東京オリンピックのために安倍川の砂利がどれだけ大量に都会で必要だったか、地方は東京へ資源、おカネ、人を送り続けることで日本という国の発展を支えた歴史に触れた。  何度かのNPOの会合で、漁協などそれぞれの団体が抱える課題などに触れ、山本会長らも砂利採取もやむなしという姿勢に転換していく。地域エゴをむき出しにして相互が反目しあうのではなく、NPOを起点に安倍川流域で一致団結して何をすべきかを理解した。  境所長提案の「流木クリーンまつり」は地域の人たちを結び付ける役割を果たした。第1回の流木クリーンまつりに山本会長がにこにこ笑いながらやってきて、安倍川骨材事業協同組合の市川一郎理事長と固い握手を交わしたことが印象的だった。 事態打開は難しいが、まずは地元へ  さて、大井川流木クリーンまつりである。  第1回大井川流木クリーンまつりは島田市で行われた。準備のための会合に流域の自治体、各種団体が島田市に集まった。源流部から河口まで約52キロの安倍川と違い、全長168キロの大井川では自治体、各種団体ともそれぞれが抱える問題が全く違っていた。大量に流木の発生している場所で、流木拾いを行ったあと、さまざまな啓発イベントで親交を深めることが「まつり」の目的だったが、どこで開催するかによって参加者は限られてしまうから、まず、開催場所を決めることが大きなテーマになった。  静岡河川事務所の裁定によって、第1回は島田市、第2回は大井川町(現在の焼津市)で行うなどとしたが、結局、それぞれの地域の限られた団体等が参加するだけで、安倍川のような「地域連携」が難しいことがわかった。  結局、大井川流木クリーンまつりは3回行っただけで、開催継続を断念した。地域の事情が、全く違っていたことが大きな理由だ。地元の理解を得るために何をすべきかは地元の人たちに聞くことが重要だが、どのように「地域連携」を図るのかは非常に難しい。  リニアトンネル工事による大井川の水環境問題で、利水自治体は「一致団結」しているというが、その中身は全く違うのだ。川根本町長、島田市長、掛川市長の本音を聞いていても、それははっきりとしている。地元の理解を得るために何をすべきかは地元の人たちに聞くのは重要だが、これは簡単なことではない。   環境アセス法に基づいてリニア工事実施計画を認可したのは鉄道局であり、主体となるのは鉄道局だが、大井川の水環境問題で地域の連携や理解となれば、静岡河川事務所をはじめとした河川局の果たす役割は大きい。旧運輸省、旧建設省という組織の違いで相互の連携が難しいことはわかるが、「成田闘争」の成田国際空港会社を持ち出して、JR東海が現地視察を行えば、静岡県、流域自治体などに悪いシグナルを送ることになりかねない。  東海道新幹線静岡空港新駅建設を検討するために、成田国際空港に何らかの情報を得る「勉強会」ならば、大きな意味があるだろうから、はっきりとそう言えばいい。まあ、いまのところそんな気配もなさそうだがー。  事態打開のヒントを得るためならば、まずは地元の人たちの意見を積極的に聞く姿勢を持ったほうがいい。「勉強会」も地元で開催すれば、「地域連携」に向けてさまざまな知恵やアイデアが生まれてくるはずである。 ※タイトル写真は「流木」の向こうに富士山(塩津治久カメラマン撮影)

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リニア騒動の真相25「嘘つきは泥棒」だった

県議会でリニアの質問目白押し  12月6日から12日まで静岡県議会12月定例会代表質問、一般質問が行われている。リニア中央新幹線の南アルプストンネル(静岡工区)着工に関する質問が目白押しだ。各県議会議員とも「水問題」への関心は高く、大井川下流域の水環境問題とリニアトンネル着工をどのように両立させるのか川勝知事の対応に期待する声を数多く聞いた。  特に、6日の代表質問に立った函南町選出の廣田直美議員(ふじのくに県民クラブ)は深刻な渇水問題は他人事でないから、リニアの質問にも力が入っていた。函南町からも支援者が数多く駆け付け、廣田議員の質問に熱心に耳を傾けた。リニア南アルプストンネル掘削による水の影響について、丹那盆地で起きた過去の経験を踏まえ、廣田県議は水を守る大切さを訴えた。函南町民とって渇水は切実な問題と承知しているからだ。雑誌静岡人vol4「JR東海リニア南アルプストンネル計画 なぜ、川勝知事は闘うのか?」特集号では「7つの謎を巡る旅」の4番目「丹那盆地の謎『忘れられていく「渇水の記憶」』」として「函南町民の闘い」を取り上げた。  約百年前、当時、「世界のトンネル事故のチャンピオン」(「鉄道の歩み80年1872-1952」日本国有鉄道発刊)と評された東海道線丹那トンネル工事は丹那盆地に暮らす人々に「塗炭の苦しみ」を与えた。 世界史に名を残した難工事  1918年丹那トンネル工事がスタート、当時の最先端工法を試みたが、膨大な湧き水、温泉交じりの粘土という苦闘の連続で最初の計画では工期7年、予算770万円だったが、実際には2倍超の16年、3倍超の2600万円もの費用が掛かる世界のトンネル史上に名を残す難関工事となった。3度の大事故が起こり、公式には犠牲者67人とされるが、朝鮮人や女性の犠牲者を含めて112人あるいはそれ以上の犠牲者が出たという研究記録がある。  そして、犠牲者はトンネル工事作業員だけでなく、トンネルから地上約60mに住む丹那盆地の人々の生活にも及んだ。丹那盆地は豊富な湧水によって、水田、ワサビ栽培、酪農などが営まれていた。ところが、トンネル着工から5年たつと湧水の減少が見られ始めた。丹那トンネルの総延長7841mの2倍、約1万5千mもの水抜きトンネルから膨大な湧き水が流出していたからだ。  丹那トンネル掘削によって、それまで水を通さない温泉余土を取り除いてしまったため、巨大な貯水池に横穴を開けたように地下水がトンネル内にすべて流出してしまったのだ。流出した水の総量は約6億㎥、芦ノ湖の3杯分に相当したとされる。その渇水被害で丹那盆地のワサビ田は全滅、現金収入の大半を占めた稲作も壊滅状態となってしまった。  最終的に、渇水被害の補償について鉄道省と交渉に当たったのは、静岡県の田中廣太郎知事(当時)。稲作から酪農中心の農業へ転換せざるを得なくなったが、丹那盆地の農民らの強い要請を受けて田中知事は鉄道省から約200万円という高額な補償を勝ち取っている。  丹那トンネルは1934年12月1日に開通した。トンネル真上の丹那盆地で起きた「悲劇」は語り伝えていかなければならない。それだけに廣田議員は「いずれ着地点のために政治判断をしなければならないときが来るかもしれないが、川勝知事には丹那盆地の悲劇を踏まえ、納得いくまで水確保を最優先に取り組んでほしい」と述べた。2015年12月、山梨県早川町の南アルプストンネル現場でリニア新幹線全線の初の起工式が行われた。その後、リニア沿線の各県で起工式が行われ、残すは静岡工区のみとなった。川勝知事は丹那盆地の「悲劇」を繰り返さないことを確認した上で、静岡工区の起工式に臨むはずである。 「文化力の拠点」事業に批判の自民改革会議  知事野党で最大会派、自民改革会議からは坪内秀樹議員が6日の代表質問に立った。富士山の豊富な湧水、名水百選の柿田川を抱える清水町・長泉町選出だけに、リニアの水環境問題はやはり他人事ではない。坪内議員は「知事の姿勢は間口を広げていて問題の本質を見えにくくしている。環境省など他省庁への拡大や他県の知事らを突っつくのではなく、国交省主導の三者協議をしっかりとやることで信頼関係をつくってほしい」と注文をつけていた。    富士常葉大学で非常勤講師(環境政策論)を務めた鈴木澄美議員(自民改革会議、富士市)は「静岡県の主張する環境保全にともなう水収支の問題は非常に難しい。環境保全をちゃんとやることは重要だが、譲れるところは譲るという落としどころを見つけなければ開発との両立はできない。障害はあるだろうが、リニアに反対しているわけではないのだから、しっかりとやってもらいたい」と話した。自民改革会議の深澤陽一県議(清水区)、佐地茂人県議(駿河区)、良知淳行県議(焼津市)、東堂陽一県議(掛川市)らにも意見を聞いたが、大井川流域の首長のスタンス同様にそれぞれに違いがあっても、水環境問題への取り組みの重要性の認識は一致していた。  リニアの水環境問題ではなく、東静岡駅南口に計画されている「文化力の拠点」整備事業では川勝知事の姿勢に自民改革会議から厳しい意見が浴びせられている。坪内県議も代表質問で厳しい姿勢で知事に迫った。 名前倒れの「文化力の拠点」施設内容  静岡経済新聞は2018年12月12日「現場へ行く」のコーナーで『「文化力の拠点」は”スタンフォード式”で』の記事をUPした。「大学コンソーシアム」の拠点を標榜するならば、ロダンコレクションで知られるスタンフォード大学と連携すべきという趣旨の記事を書いた。「文化力の拠点」などと大層な名前を付けるのであれば、AI、IT企業、研究所の集まるシリコンバレーの中心”スタンフォード大学”の力を借りるなど思い切ったことをやるべきだ。それでなければ、「文化力の拠点」という名称そのものが恥ずかしくなるからだ。  それから1年たち、県議会で「文化力の拠点」事業整備に最大270億円の巨額な費用が掛かり、川勝県政、最大の「箱物事業」となることが明らかになった。2024年度のオープンを目指すらしい。決まっているのは、県立図書館の移転のみだという。これで果たして「文化力の拠点」なのかどうか疑わしい。  すぐ隣には、建築家磯崎新氏が設計した「グランシップ」がある。「文化力の拠点」施設は、現在のグランシップ駐車場につくられる。「文化力の拠点」建物に駐車場が整備されるだろうが、来館者は非常に不便を強いられることははっきりとしている。また、従来の県立図書館への来館者は、県立美術館と共同の駐車場を利用していたが、図書館来館者の車が大半を占めていた。東静岡駅南口の「文化力の拠点」に図書館が入るとなれば、グランシップ、図書館の駐車場の確保は本当に万全なのか?  静岡空港建設への批判が高まっていた時代、NHKの静岡空港特集番組に出演した石川嘉延知事(当時)は「静岡空港の赤字はグランシップの赤字ほどにはならない。想定内でおさまる」と述べた。当時のグランシップの赤字は3億円程度。静岡空港の赤字が果たして想定内だったか?  磯崎氏による斬新設計のグランシップは開館当初から雨漏りが続き、最近では壁のレンガ剥落で大規模修繕も行われ、管理費用の赤字だけではすまなかった。「文化力の拠点」施設も他の県施設同様に著名な建築家を使うのだろうが、デザイン重視ではなく、使い勝手のよい利用者ファーストを優先すべきである。「文化力の拠点」整備費は明らかになったが、新たな箱物に必要な年間管理費はどのくらい掛かるのか、赤字が大きく膨らむことに懸念はないのか?  そもそも名前倒れの「文化力の拠点」は必要なのか?施設の内容を含めて、必要性議論をリニア同様に徹底的に行うべきである。 「看過できない」事件が起きた  「いまのその発言、看過できない」。リニアの水環境問題にかかわる静岡県環境保全連絡会議専門部会でJR東海の発言者に向けて、難波喬司副知事が厳しい指摘を行う前に使う決まり文句である。ことし何度聞いただろうか?  「嘘つきは泥棒の始まり」。こちらは、川勝知事の記者会見での発言である。三重県のリニア新駅について「90%亀山に決まった」と鈴木英敬知事から聞いたと川勝知事が明らかにしたところ、「事実無根」で「断固抗議」した鈴木知事に対して、逆に、川勝知事は「嘘つきは泥棒の始まりだ」と非難した。詳しい内容は『リニア騒動23鈴木知事「事実無根」の真実』を参照されたい。  2019年を象徴する川勝知事、難波副知事の非常に個性的な発言に対して、静岡経済新聞は「静岡県リニア問題の流行語大賞」に選んだ。  この2つの印象的なことばを選んだ理由は、雑誌静岡人vol4を発刊して、その後に起きた事件を象徴するのにふさわしいからだ。まさしく、「看過できない」事件が発生、「嘘つきは泥棒の始まり」どころか、やはり「嘘つきは泥棒」だった。故意に行った犯罪を糊塗するため、組織を守るような新たな「嘘つき」を許すわけにはいかない。  いまのところ、その内容については公表できないが、このタイトルを見れば、事件にかかわった関係者は理解できるだろう。「嘘つき泥棒」に強い怒りを覚える。絶対に「看過できない」。持つべき「品格」と果たすべき「責任」を問うつもりだ。  県議会で、難波副知事が「県民に(リニア問題について)直接説明する機会を増やしていく」と述べた。廣田県議をはじめ多くの県議のみなさんに最新刊の雑誌静岡人vol4を購入いただいた。「看過できない」事件とは全く別で、リニア問題は来年も大きなテーマ。「丹那盆地の悲劇」を知らないで、トンネル建設で静岡県民の水を守ることが何かを語ることはできない。雑誌静岡人vol4リニア特集号を多くの方たちに読んでもらい、行政からの情報だけでなく、ちゃんと水環境問題の理解を深めてほしい。 (※『リニア騒動25「嘘つきは泥棒」だった』のタイトルは関係者のみに向けたものです)

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リニア騒動の真相24川勝知事「闘い」の理由

知事、副知事と一緒に雑誌発刊の記念写真  11月27日、出来上がったばかりの雑誌静岡人vol4「JR東海リニア南アルプストンネル計画 なぜ、川勝知事は闘うのか?」(定価1000円)を川勝平太知事に持参しました。  午後1時の知事面会前に、リニア問題を統括する静岡県環境保全連絡会議本部長の難波喬司副知事、副本部長の吉林章仁副知事に雑誌を手渡しました。難波副知事は12月3日に掛川市で「水について考えるシンポジウム」に出席するので、その席で雑誌を宣伝してくれるとのことでした。書店が非常に少なくなっているだけに、雑誌の売れ行きは気になるところ。ぜひ、多くの方たちに手に取ってほしい気持ちを分かってもらえていました。(※掛川市生涯学習センターで行われるシンポジウムに難波副知事は「リニア中央新幹線建設に係る大井川水問題の現状・静岡県の対応」について基調講演、そのあと松井三郎市長がコーディネーターとなり、「掛川の水について考える」をテーマにしたパネルディスカッションにも参加する)  吉林副知事はリニア問題ではなく、特集「川勝VS田辺 静岡市歴史文化施設」を指さして、「この問題も特集したの?」と驚いていました。吉林副知事には、「川勝VS田辺」となっていますが、知事、市長の対立をあおっているのではなく、両者の連携を探るのが、この特集の真意ですと説明しました。田辺信宏静岡市長の最優先課題「静岡市歴史文化施設」。駿府城天守台跡発掘についての利活用が決まっていないのに、全く別の内容の施設建設を急ぐことに川勝知事は「二重投資」と厳しく批判しています。実際に、「歴史文化施設」建設は中止すべきです。  駿府城跡発掘で、家康の駿府城天守台、中村一氏関連の驚くべき発見が続いています。もう一つ、今川義元関連の遺跡がその隣で発掘された事実を忘れています。今川氏の貴重な文化財が駿府城公園で発見されたことを40年前、記者会見した小和田哲男・静岡大学名誉教授はよく知っています。川勝知事、田辺市長が連携して、徳川、今川の2つの時代の遺跡を生かす方策を見出してほしいのです。全国を見回しても、そんな貴重な文化遺産を一堂に観光できる場所などありません。世界的な観光名所になるはず。「連携」がキーワードです。 ド派手な表紙が目立ちます  さあ、川勝知事です。雑誌発刊前に、出来上がった表紙を秘書課長に預けました。表紙だけを見れば、知事の写真、文字の大きさ、色彩などド派手な体裁です。秘書課長から電話で、知事はこのような表紙は本意ではないとの意見をもらったと話していまし。まさか、雑誌を持参して、知事から怒られるのでは、と気が気ではありませんでした。  雑誌「巻頭言」で、「全量戻してもらう。これは県民の生死に関わること」という川勝知事の”名言”を取り上げ、こんなかっこういい発言をした知事はこれまでいなかったことが、ニュースサイトを立ち上げるきっかけとなり、今回の雑誌発刊まで決めたことを説明。SNSばやりで活字離れが進み、どう考えても雑誌の売れ行きは芳しいものではないでしょう。雑誌取次、書店など関係者から、なるべく派手に、目立つものでなければ、来店者の目に入らない、一度も手に取らないのでは、という意見を聞いて、ド派手な表紙にしてもらえるようデザイナーに依頼しました。(※10年前「久能山東照宮」特集号を発刊したときに比べて、書店の数は半減、いずれ書店も街から消えてなくなるのでしょうか)  7つの謎のうち、「川勝平太の謎」が知事インタビューをもとにした最も重要なテーマです。と言っても、知事はどのように決着すべきかをはっきりと話していません。「(JR東海は)誠意を示すことが大事」。それだけです。この発言の真意を探るために、東京、島田へ出掛けました。(具体的な内容については、雑誌をご覧ください)  知事にとっては、リニア問題はさまざまな政策課題のうちの一つであり、リニア問題ばかりに集中しているわけではないでしょう。ですが、知事発言のひとつ、ひとつが全国からの注目を集めています。「リニア騒動の真相23鈴木知事『事実無根』の真実」は、三重県の鈴木英敬知事「事実無根」発言が本来の意味とはかけ離れ、本人でしか分からない意味で使っていることを紹介しました。そんな事情を知らない川勝知事は「嘘つきは泥棒の始まり」と厳しく鈴木知事を批判、その批判を「うそつき非難」の見出しで共同通信が全国に配信しました。  「リニア騒動の真相23」記事の中で、『11月1日に放映されたNHK名古屋の番組「ナビゲーション」で、鈴木知事がリニア開業は2033年伊勢神宮の式年遷宮に間に合わせてほしいとする発言をアナウンサーが言ったのを川勝知事が聞いた、としている。(※複雑な言い方になったのはあくまで川勝知事の発言であり、この番組を見ていないから詳細不明)』と書いたのですが、当日、川勝知事からNHKナビゲーションのアナウンサー発言として「三重県の鈴木知事は『20年ごとに行われる伊勢神宮の式年遷宮が行われる2033年に間に合わせるくらいの意気込みで最大限取り組んでいく』としています。」という番組内容を紹介したペーパーを手渡されました。川勝知事らしく非常に律儀な気の使い方でした。  雑誌を読んでいただき、多くの静岡県民にリニアをより深く理解するために推薦してほしいとお願いしました。 川根本町長、掛川、島田両市長にも贈呈  26日川根本町から、29日の鈴木敏夫町長の日程を開けてあるので来町してほしいとの連絡をもらいました。大井川流域市町へも連絡を入れ、首長の日程調整をお願いしました。29日午後1時で掛川市から松井三郎市長の日程を入れてもらい、29日午後2時半で、島田市から染谷絹代市長の日程を入れてもらいました。  静岡市から川根本町へ国道77号を走らせると、山間は秋色に染まり、絶好のドライブ日和となりました。大井川に沿う山々は何と美しい色合いを持ち、七色の変化に富んだ景色がつづきました。  今回のリニア騒動で、川根本町は大井川下流域の利水者に当たりません。下流域の市町に大井川の水を供給するため、山々の森を守る立場にあります。だからこそ、リニアトンネルによって自然環境が損なわれることに強い危機意識を有しています。「7つの謎」のうち、最後の「光岩の謎 光岳を世界遺産にしよう!」は川根本町に関係した”大きな謎”です。  富士山の世界遺産運動に携わったとき、世界自然遺産にあてはまるのか、最初にその登録基準が問題になりました。1992年9月、日本政府が世界遺産条約を批准して、政府は最初から「富士山」を有力な候補としていました。登録基準に「顕著な特徴の地質学的又は地形学的形成物」(自然遺産登録基準①)、「類例を見ない自然の美しさ」(自然遺産登録基準③)に当てはめようとしましたが、さまざまな理由で自然遺産では登録できないことがわかり、「文化的景観」という文化遺産の新しい登録基準を追求することになりました。いずれにしても、自然遺産での登録はハードルが非常に高いのです。  光岳周辺1115㌶は「原生自然環境保全地域」を核に、その周辺を含めた3055㌶が「森林生態系保護地域」であり、保護、保全では十分に機能しています。登録基準も「フォッサマグナ」に隣接する中央構造線、糸魚川静岡構造線という特異な地質、地形を有し、また、北半球最南端のライチョウ、ヤマトイワナ、チョウノスケソウ、ハイマツなど絶滅の恐れのある貴重な種の宝庫でもあります。鈴木町長からは「全国5カ所の原生自然環境保全地域のうち、3カ所が世界遺産であり、光岳周辺も世界遺産にふさわしい」など世界遺産に乗り気の発言をされ、早速、環境省に取材することを約束しました。  掛川市役所の食堂で松井市長と偶然出会い、午後1時の約束を30分も前倒しにしてもらい、約1時間、掛川市の事情を聴くことができました。90%の上水道を大井川に頼っている掛川市にとって、水問題をないがしろにはできない、リニア南アルプストンネルの影響が50年後に起きないとも限らない、そのときにどのような対応をJR東海がするのか、いまちゃんとしておかなければならないのだ、という熱い思いを聞いていました。「一定の信頼関係がJR東海とは持てていない。金子慎社長が地元と話し合いをしたいという気持ちが本心なのか分からない」などと話していました。  染谷市長とは、30分という短い時間でしたが、島田市の抱えるテーマについて、初めて聞くことばかりでびっくりさせられました。毎年、大井川源流部を訪ね、川勝知事が水問題を提起する前から、JR東海の考え方に隔たりがあったのだと言います。大井川の水の保障を求めるのだという姿勢に変わりはない。地域振興の中で、新幹線静岡空港新駅の考え方には静岡県とは相容れないものがあるようでした。静岡市の安倍川(約52キロ)とは違い、約168キロという長大な大井川には事情の違う流域の自治体があり、それぞれが個別の問題に直面しているようです。  静岡県が利水団体の代表としてJR東海、国との協議に当たっていて、一致団結の自治体ですが、それぞれ事情が違い、その「温度差」を痛感できました。  袋井、菊川、御前崎、牧之原、藤枝、焼津、吉田の7市町長とも個別に面会して、それぞれの考えを聞くことで、リニア騒動の別の面がはっきりと見えてくることは間違いないでしょう。 科学者たちはリニア問題を解決しない?  染谷市長から、専門家はそれぞれの科学的な立場で意見を述べることができても、この問題を解決に導くための主張をすることはないという趣旨の発言がありました。  今回の雑誌では、『「氷が溶ける」南極大陸』で地球温暖化の原因について考えてみました。地球温暖化の原因に二酸化炭素による「温室効果」が通説になっていますが、塵や二酸化炭素の影響ではなく、間氷期における当然な温暖化現象と見る科学者も多いようです。1980年代に最高気温の記録が次々に塗り替えられたのはセントへレンズ火山の噴火のあとであり、火山噴火が地球に及ぼす影響は二酸化炭素などの影響に比べて、類を見ない深刻なものになりうると唱える科学者も多いのです。単なる地球環境の変化ととらえています。その変化を助長するのが、「人間」であることに間違いありません。  日本の人口減少とは対照的に、世界の人口は1995年に56億人から増加の一途をたどり、2019年77億人、2030年85億人、2050年97億人、2060年に100億人を突破します。急激な人口増加はさまざまな資源の無秩序な利用につながり、当然二酸化炭素の増加は避けられません。膨張していく人口を支える食糧だけでなく、車やスマホなどが必需品となる未来では二酸化炭素を抑えることが本当に可能かどうか。スウェーデンの少女グレタが大人たちは無策だと唱える解決策の向こうにはっきりと見えるのは、自分たち自身です。地球環境の敵は「人間」以外の何ものでもなく、二酸化炭素を抑えるためには人口を減らすしかありません。  科学者たちの意見は立場によって違い、静岡県、JR東海のそれぞれの立場にたつ科学者たちの意見も同様であり、いつまでも行っても同意を得られることはありません。「政治決着」とはそのようなときに使うことばでしょうか。いずれにしても、どのような解決があるのか、流域自治体の首長の意見に耳を傾けたいと思います。  ※「リニア騒動の真相」とありますが、今回はまさしく、雑誌静岡人発刊PRで、『川勝知事の「闘う」理由』も雑誌静岡人に掲載されています。ぜひ、多くの方たちに読んでいただきたく、書店で手に取ってみてください。

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リニア騒動の真相23鈴木知事「事実無根」の真実

三重県知事を「うそつき」と非難  『三重県知事をうそつきと非難 静岡知事、リニア駅発言で』。あまりに強烈な見出しの記事が全国を駆け巡った。  11月19日静岡県の川勝平太知事の記者会見を伝える「共同通信」配信を全国の地方紙、スポーツ紙、ロイターなどが見出し、記事をそのままに掲載した。静岡県内の主要テレビ局、新聞が同じ内容を伝えているが、リニアに関する三者協議へ知事が農水省の関与などを求めた発言、大井川の流域自治体とJR東海との交渉などを伝える記事のほんの一部分でしかなかった。  共同通信は、静岡県にかかわるリニア問題の協議内容ではなく、川勝知事の三重県知事に対する「うそつき」非難のみに絞り、ダイレクトに伝えた。配信された見出し、記事を北海道、秋田魁、新潟、信濃毎日、岐阜などの全国の地方紙がそのままに使った。共同通信の記事は以下の通り。  『静岡県の川勝平太知事は19日の記者会見で、リニア中央新幹線の三重県内の駅に関する自身の発言に「事実無根」と抗議した三重県の鈴木英敬知事に対し、発言内容は事実だとして「うそつきは泥棒の始まり」と非難した。 川勝知事は6日、公表されていない三重県内の駅設置場所について「(鈴木知事が)90%亀山市に決まったと言っていた」と述べ、8日に三重県から抗議を受けた。川勝知事は会見で、先月31日に催された天皇の即位を祝う「饗宴の儀」の際に鈴木知事から直接聞いたと強調した。』  共同通信記事を読んで、鈴木知事は怒り心頭に達したかもしれない。記事は、知事発言の事実を伝えてはいるが、背景や言葉の意味を正確に伝えていない。川勝知事の誹謗中傷なのか、正鵠を射た論評なのか、それとも何か別の理由があるのか全く判断できない。単に両者の対立をあおっているかのようだ。  なぜ、川勝知事はこのような発言をすることになったのか?そもそもの始まりは、2週間前の11月6日川勝知事の記者会見だった。 「90%亀山で決まり」発言は”事実無根”?  6日記者会見の知事発言をもとに、静岡経済新聞は「リニア騒動の真相21 正々堂々の『ちゃぶ台返し』」のタイトル記事をUPしている。10月31日国交省で開かれた国、静岡県、JR東海の「非公開」三者会議の内容を川勝知事が明らかにした上で、国交省鉄道局幹部による静岡県職員への「罵倒」「叱責」を厳しく批判したことなどを取り上げた。  その記者会見では、川勝知事は名古屋以西のリニア駅について三重県知事、奈良県知事と「饗宴の儀」に同席したときの会話を披露していた。「リニアの真相21」記事で伝えなかったのは、川勝知事のリニアに対するひとつの見識を示すものだが、国交省で開かれた国、静岡県、JR東海との三者会議の内容とはかけ離れていたからである。「うそつきは泥棒の始まり」発言の発端であり、どんな内容だったか、振り返ってみる。  川勝知事は、従来からリニア開業は2027年の品川ー名古屋間ではなく、品川ー大阪間に延伸した上で、開業年の目標を考え直したほうがよいと明言していた。川勝知事の考えに呼応したような発言が、三重県の鈴木知事から飛び出していたことを会見で紹介した。11月1日に放映されたNHK名古屋の番組「ナビゲーション」で、鈴木知事がリニア開業は2033年伊勢神宮の式年遷宮に間に合わせてほしいとする発言をアナウンサーが言ったのを川勝知事が聞いた、としている。(※複雑な言い方になったのはあくまで川勝知事の発言であり、この番組を見ていないから詳細不明)  大阪への延伸を開業の目標にしたほうがいいと考える川勝知事は「(三重、奈良とも)まだルートも決まっていないようですけれど、あなたはどこに駅を造りたいのか」と三重、奈良の両知事に尋ねた。  川勝知事の問い掛けに、鈴木知事は「90%亀山に決まった」と回答したと会見で明らかにした。奈良県知事も回答したようだ。  川勝知事は、2045年開業とされていた品川ー大阪間のリニア開業について、官邸主導でリニアへの3兆円の財政投融資が決まり、8年間の短縮が図られ、開業が2037年に前倒しされたのだから、さらに、3兆円プラスしてもらい6兆円の財投が決まれば、数字の理屈で言えば2030年開業も視野に入るという計算を披露した上で、ルート選定ですでに地元の理解が得られている裏付けとして、鈴木知事の「90%亀山に決まった」発言を明らかにした。  翌日(7日)付の新聞各紙は、「90%亀山に決まった」鈴木知事発言を取り上げていなかったが、スペイン訪問中の鈴木知事は川勝知事の発言内容を知り、海外出張中にもかかわらず、「事実無根」であり「断固抗議すべき」と担当部長に指示した。 「知事は亀山とは言っていない」は誤報  8日、三重県地域連携部長は静岡県くらし・環境部長へ電話で連絡を入れ、川勝知事発言に「断固抗議」した。その「断固抗議」を読売三重支局が抜きネタとして、9日付朝刊に掲載。記事の最後には『三重県幹部は、読売の取材に「知事は亀山とは一切言っていない。今後も言われたら困るため対応した」と話した』とある。読売記事を読めば、「事実無根」は「亀山」という地名を川勝知事が出したことである、と誰もが考えるだろう。読売を追い掛けた各社ともほぼ、同じ内容で伝えた。  読売記事には、『静岡県部長が「申し訳なかった」と謝罪した』とあり、話を複雑にしてしまった。鈴木亨静岡県くらし・環境部長に確認すると、「謝罪したのは事実だが、川勝知事の発言内容の正否ではなく、謝罪にそれほど深い意味はなかった」と話した。「お騒がせして申し訳ない」と言ったところが、謝罪内容だったという。  ところが、三重県部長は静岡県部長が謝罪したことも読売記者にしゃべってしまった。「静岡県が謝罪した」という事実だけが残り、鈴木知事は、三重県による「断固抗議」が功を奏したと勘違いしたようだ。  スペインから帰国した鈴木知事は11日午前、定例記者会見に臨んでいる。そこで「事実無根」の内容が明らかになった。  会見で鈴木知事は「ああういう言い方は一切していません。活発に活動されているのは亀山とかが、昔から活動されていますねって話をしただけなんで、全く事実無根である」と述べている。これで、三重県幹部が読売記者に言った「知事は亀山とは一切言っていない」が間違いであることが明らかになった。「亀山」という地名を川勝知事が出したことは、「事実無根」ではなかった。となると、「90%」が「事実無根」なのか?  鈴木知事は「ああいう言い方をしない。何か特定の割合を言って、ああいう言い方をそもそもしない、なので事実無根だ」と述べている。つまり、川勝知事の「90%亀山に決まった」のうち、「90%」という割合を示していないのが、鈴木知事の「事実無根」だった。三重県の地元メディアに聞いてみると、(鈴木知事を含めて)三重県のリニア新駅は「亀山でほぼ、決まり」と考えているらしい。「90%亀山に決まった」ではなく、「ほぼ、亀山に決まった」と川勝知事が言えば、問題はなかったのかもしれない。  鈴木知事の「断固抗議」の意味は、「極めてセンシティブな話を何らプロセスを経ず軽々しく言われた」「饗宴の儀で歩きながら立ち話をしたことなので、正確な言い回しとか、言った言わないを申し上げるつもりはない」「了解なく、立ち話のような場でのことを定例会見でおっしゃるのはどうか」など。川勝知事が立ち話を何の断りもなしに話題にしたことを担当部長に抗議させたのであり、「お騒がせした」という静岡県からの謝罪を受け入れたようだ。  鈴木知事は「事実無根」と短い会見の中で5回も述べたが、その意味は読売新聞が書いた「事実無根」とは全く違っていた。「事実無根」とは「事実に基づかないこと」だが、鈴木知事の使う「事実無根」は、自分自身の”言い方”と違った場合は「事実無根」。これでは相手に伝わらないから、担当部長さえ勘違いして、読売は誤報してしまった。  11日午前中に記者会見を済ませたあと、鈴木知事は東京へ向かった。全国知事会に出席するためである。 鈴木知事「事実無根」は単なる独特の言い回し  午前中の記者会見で、全国知事会で川勝知事に抗議をするかと問われた鈴木知事は「この件で話すつもりはない。そもそも何ていうか事実無根なんで、わざわざ声を掛けて、やりとりをする必要性はないと思っている」と述べた。本当に「事実無根」であるならば、その問題をはっきりさせなければならない。鈴木知事の「事実無根」は本来の意味ではなく、軽い意味で使う知事独特の言い回しだから、謝罪を受け入れて終わりと考えたようだ。  全国知事会で、わざわざ声を掛けたのは、鈴木知事ではなく、川勝知事だった。川勝知事は、鈴木知事が「事実無根」をどんな意味合いで使っている分からないから、「事実無根」発言を問題にした。静岡県の公務員心得8カ条のうち、「心は素直に嘘・偽りを言わない」を鈴木知事に示した上で、「わたしはあなたがおっしゃた通りに言った」と問いただした。その問い掛けに、鈴木知事も午前中の記者会見で述べたように「何ら了解もなく、立ち話のような場でのことを定例会見でおっしゃるのはどうか」などと切り返せばよかったのだが、「事実とは違う。交通結節性の高い場所での設置を求めていること、亀山の商工会議所が誘致活動に力を入れていることは伝えた。『90%』という根拠のない数字を使って話すことはあり得ない」と反論した。(中日新聞12日付朝刊)。これでは、何が「事実無根」かわからないから、相手が怒ってしまうことに気づかなかった。  鈴木知事の「事実無根」は、川勝知事の怒りに火をつけ、19日の記者会見での「うそつきは泥棒」発言につながった。  「嘘つき」が政治家の間で横行?  リニア中央新幹線で三重県のどこに開業しようが、静岡県には全く関係はない。関係してくるのは、2027年開業を目指すJR東海によるリニア南アルプストンネル静岡工区の早期着工問題だけである。  川勝知事は「2027年は企業目標」として、JR東海は静岡県の水環境問題を解決することが重要との姿勢を崩さない。一方、鈴木知事は6月の知事会見で川勝知事に「早期着工に向けて誠実に対応してほしい」などの注文をつけ、さらに、リニア沿線の「期成同盟会」に川勝知事が入会申請書を提出したことに、愛知県の大村秀章知事を支援、入会反対の姿勢を明確にしている。  鈴木知事の「事実無根」が意図的なものか、国語力の問題かは分からないが、両者の立場が違った場合、その議論、対話がいかに難しいか、今回の問題で際立ってしまった。それは、静岡県、JR東海との議論、対話でも同じことである。  JR東海は2018年10月、「原則的に静岡県外に流出する湧水全量を戻す」と表明したが、ことし9月になって、「工事期間中の湧水を全量戻すことはできない」と湧水の一部は、山梨、長野両県に流出することを認めたため、利水者たちは強く反発している。  JR東海の「湧水全量戻し」表明について、金子慎社長は「話が進まないので、利水者の理解を得たいと方向転換した。問題を解決しようとした中で出てきた方策」と発言、利水者たちの賛同を得るための”方便”であり、「できるかどうかわからない表明」を認めた。「湧水全量戻す」と言えば、利水者たちも理解してくれるだろうと考えたようだが、静岡県が不確実性の高い問題にさらなる回答を求めたため、JR東海は「湧水全量戻しはできない」と再度、方向転換した。  「嘘も方便」は、辞書では「ことをうまく運びためには、一つの手段として嘘が必要なこともある」。つまり、立場が違えば、「嘘つき」も正当化されるということだ。しかし、水環境の議論で「方便」は通用しなかった。  「嘘つきは泥棒の始まり」。こちらは強烈である。そう名指しされた鈴木知事は「事実無根」を言い立てるのだろうか?11月に入り、ことしはやったキーワードに「嘘つき」が浮上している。  最近の安倍首相にかかわる「桜を見る会」問題には、さまざまな「嘘つき」がいるようで、政局に大きな影響を及ぼすかもしれない。川勝知事は「最近はあったこともなかったようにすることが政治家の間で横行している。うそつきは泥棒の始まり。人の上に立つものはうそ偽りはいけない」とも述べている。「桜を見る会」を意識しているのかもしれない。  「事実無根」を問題にした川勝知事の「嘘つき」呼ばわりに、鈴木知事はさらなる反応を示すのだろうか?川勝知事の見立てではないが、「嘘つき」も最近の政治家に横行する資質だから、案外、喜んでいるかもしれない。ふつうそんなことはありえないが、今回の「事実無根」で「断固抗議」の内容を見ていると、政治家がふつうではないことだけは見える。 ※タイトル写真は、菅官房長官に太平洋・島サミットの三重県開催を要望する鈴木知事(鈴木知事のブログから)

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リニア騒動の真相22 早期着工の「視界」ゼロ

台風19号で東俣林道は寸断される  昨年10月17日から「リニア騒動の真相」連載を始めて、1年が経過した。この1年間では、JR東海が強く望んできたリニア南アルプストンネル静岡工区の「早期着工」へ向かう兆しさえ見えてこない。「流出する湧水全量戻し」議論は紛糾したままであり、今後もJR東海は静岡県環境保全連絡会議専門部会で理解を求める議論を続けていくしかない。当分、時間は掛かりそうだ。  静岡県との合意を目指す鈍い動きだけでなく、「早期着工」に向けた環境は国やJR東海の思惑とは裏腹に、予期せぬ自然災害の発生によって視界がきかない状況に陥ってしまった。  東日本へ記録的な被害をもたらした台風19号は、10月11日から12日に掛けて、大井川源流部に深刻な影響を与えた。リニア南アルプストンネル静岡工区へつながる静岡市東俣林道約27キロ区間のうち、林道起点の沼平ゲートから4・2キロ地点で道路そのものが崩落、その手前3・8キロ地点では道路が一部損失した。(タイトル写真は3・8キロ地点の道路一部損失現場。クラックが入り、危険な状態=静岡市提供)  それでも、約3週間後の11月5日までに、3・8キロ、4・2キロ地点をう回する、幅4㍍の仮設道路約1・5キロが大井川の河原に設置され、工事用の4トントラックの通過ができるようにした。リニア建設を優先して、静岡市の河川への仮設道路設置について、静岡県は一次占用許可として災害復旧に向けた緊急措置で通行を許可している状態だ。  全崩壊は1カ所だったが、JR東海の工事宿舎につながる千石ヤード付近の林道約2キロ区間でも道路半分が損失してしまった。現在も大型車両は通行できない状況。その他、林道の30カ所の斜面から大量の土砂流出があり、撤去作業に追われている。今回の大雨で地盤が緩んでいるため、少しの雨量で路面、斜面の崩壊が起きる可能性が高い。  7月1日、静岡市は、リニア建設にともなう東俣林道改良工事に関する協定をJR東海と結んだ。リニア南アルプストンネル(静岡工区)建設をスムーズに進めるための措置である。静岡市が林道の「通行許可」「工事許可」を出すことで、今後増える工事車両を安全かつ円滑に通行できるようJR東海独自で林道を整備することを可能にした。  東俣林道は、そのままの状態では大型車両がすれ違うにはあまりに狭隘で、ガタガタの道路は危険な個所が多いから、土砂崩れが発生、通行止めとなることもしばしば。台風19号被害を見れば、一目瞭然だ。  7月の協定締結後、9月までにJR東海は現地の測量、設計を行い、林道工事着手に向けた協議をスタートさせることになっていた。約80億円を掛けて路面舗装、落石対策、道路拡幅、ガードレール新設、橋梁補修、待避所の設置など全面的な改良工事を行うとJR東海は発表。具体的な改良工事に入るためには、それぞれの工事区間で静岡市の許可を得る必要があった。JR東海から工事実施の申請はなく、結局、台風19号の被害で林道改良工事計画そのものが完全にストップしてしまった。 西俣ヤードまでの被害は甚大だ  台風19号による災害復旧を行う主体は静岡市。11月補正予算に国の補助金を見込んだ災害復旧工事費を計上して、12月に国の査定を受けた上で工事に入る予定。工事が順調に進んだとしても完全復旧するのは、早くても2021年3月頃になる見込みという。  災害復旧の期間中に、東俣林道の改良工事に入るのは難しいと見られる。JR東海の林道整備スケジュールは、2019年度中に開始予定だったが、少なくとも1年以上の遅れになることは間違いない。  南アルプストンネル本体工事に入るための準備工事として、千石非常口から西俣非常口まで約4キロの工事用輸送トンネル新設を行う予定だが、工事車両等の安全を考慮すれば、林道整備が終わっていない段階で無理にトンネル掘削工事に入ることはできないだろう。  台風19号の被害は東俣林道だけにとどまらなかった。静岡市管理の東俣林道終点から先へは、特種東海製紙管理の私道につながっている。林道終点から約5キロ先に南アルプストンネル本体工事の基地となる西俣ヤード(斜坑トンネル設置予定場所)があるため、特種東海製紙管理の私道をJR東海が大型車両の安全通行のために整備した。  今回の台風被害を調査した静岡県くらし・環境部によると、JR東海が整備した二軒小屋発電所下流仮桟橋2カ所が流出、管理道5カ所で土砂崩落が起きていた。リニア南アルプストンネル建設基地となる西俣ヤードの資材置き場も大きくえぐり取られてしまったようだ。  台風被害を受けた東俣林道を使うことができず、その先に続く特種東海製紙管理の私道まで大型車両や重機を運び込むことができないから、復旧の見通しは立てない状況だ。静岡県との合意を得て、トンネル本体工事の「早期着工」を強く望むJR東海だが、自然災害による準備工事の遅れをどのように取り戻すことができるのか不透明。JR東海広報室は現在、全くわからない状況と回答した。  ことし8月13日付で千石宿舎に電線や水道管を引く大井川の占用許可が静岡県から下りている。いくら許可が下りたとしても、道路が寸断され、思うように使えない状況で、準備工事さえままならない。これから雪のシーズンに入るため復旧工事は困難になる。 流域首長がJR東海と会わない理由?  今月6日の島田、掛川、藤枝、焼津の各市長を皮切りに、国交省の江口秀二審議官が大井川流域の各市町長に面会して、地元の合意を得る努力を始めている。リニア南アルプストンネル静岡工区の早期着工への地ならしとも言える「非公開」会談を行った。7日付中日新聞は、各市長ともJR東海が地元を軽視し、住民へ説明する姿勢が全く見られないという不満を伝えていた。  各市長の意見を踏まえ、JR東海の金子慎社長は13日の定例記者会見で流域市町長に個別に面談して、「大井川の表流水は減少せず、地下水にも影響を及ぼさない」などと水問題の懸念を払拭して、地元の理解を得たい意向を示した。すでに各市町に面会を打診したことも明らかにした。  ところが、藤枝、焼津、菊川、牧之原、袋井、川根本、吉田の市町長はJR東海との面会を断り、島田、掛川の両市長は返答を保留した。各市町長はこれまでのJR東海の対応に不信、不満が強く、金子社長からJR東海の立場をいくらまくしたてられても「聞く耳」を持たないという姿勢を明らかにしたようだ。  この背景に何があるのか?  リニア計画が始まった2014年、JR東海は静岡市の井川地区で第1回の事業説明会を開催している。それから、さらに2回、井川地区で説明会を開き、井川地区と静岡市内を結ぶ「140億円の県道トンネル」地域振興策を全面に出して、静岡市との合意書を交わした。水環境問題の深刻さは最初から分かっていたはずなのに、5年前、JR東海は大井川下流域の市町には一度の説明会も行わなかった。  そんな状況の中で、2017年10月10日の記者会見で川勝平太知事はJR東海の対応について「明確な抗議」を行い、「湧水全量戻し」を前提に「(解決には)誠意を示すことが大事」と厳しく述べた。ところが、知事の「誠意を示すこと」発言にJR東海は何ら反応を示すことなく、そのときにも下流域の市町住民向けの説明会等を開くこともなかった。  静岡県は「湧水全量戻し」を前提にした会議を重ね、JR東海からの説明を受けてきたが、利水者の求める「水の確保」議論は紛糾したまま続いている。2018年8月、JR東海は地元への理解を求める説明に回りたいと、難波喬司副知事に申し出たが、副知事は「利水者や市町と個別に交渉することを控えてほしい」という趣旨の要請をした。今回、JR東海が市町訪問を見合わせていたのは、難波副知事にストップを掛けられたからだと説明している。そんな紛糾している最中に、JR東海が地元の理解を得る交渉に入りたいというのであれば、ふつうストップを掛けるのは当然だろう。  5年前、遅くとも知事の「誠意」発言のあった2年前、JR東海は井川地区同様に下流域の自治体を回り、水減量で迷惑を掛けることになるとなぜ、説明会を開かなかったのか?金子社長はJR東海の主張を述べるばかりで「大井川の表流水に問題はない。地下水に影響はない」と説明しているが、現在の議論から見れば、立場の違いを鮮明にするだけで、何らの説得力を持たない。JR東海の論理を相手に押し付けようとしていると見られるのが落ちである。2年前、川勝知事は「誠意」について説明した。ところが、いまだに、JR東海はその意味さえわからないようだ。  「世界最大の活断層地帯」南アルプスでの工事は、”不確実性”課題の多い難工事になることが分かっている。だから、議論は紛糾している。その上、台風19号によって、大井川源流部がいかに風雨など自然の脅威にもろい地域であることも明らかになってしまった。いくら、JR東海が「大丈夫」と太鼓判を押しても、これではだれも納得できないだろう。  大井川の上流部、下流部ともにリニア工事の早期着工へ「視界」ゼロの状態が続きそうだ。