知事”舌禍”事件ー「無責任」静岡県政の象徴

「言行不一致」川勝知事は辞職しない!

 11月14日付『川勝知事「舌禍事件」ー大山鳴動”鼠”一匹』を振り返る。10月の参院静岡補選の応援演説に浜松に出向いた川勝平太知事は、自民候補の若林洋平・元御殿場市長の好物を念頭に御殿場には「コシヒカリ」しかないなどの差別発言した。選挙後に「コシヒカリ」発言に批判が沸き起こり、当初、「誤解」と言い訳していた知事だが、世論の理解を得られず、最後には11月12日の会見で20秒間、県民に向けて頭を下げた。この謝罪で騒動の収拾を図った。

 そこに新たな”舌禍”が明らかになる。12月1日付中日新聞が、6月の知事選最中に、女性蔑視、建設作業員への差別と受け取られる発言を暴露した。知事は2日の会見で再び、発言を撤回、謝罪した。タイトル写真では、頭を下げる知事を記者たちのカメラが狙ったように見える。実際は、知事がテレビ、新聞のカメラの前で頭を下げることもなかった。

 知事は「何を言っているのか分からない恥ずかしい発言だった。確かに不適切で撤回して、おわびする」などと述べたに過ぎない。「何を言っているのかわからない」ならば、「確かに不適切」にはならないはず。会見では、知事の”得意技”「何を言っているのかわからない」発言を繰り返し、記者たちを煙に巻いて、切り抜けた。その程度の話だった。

 6日から県議会の代表質問、一般質問が始まる。自民県議団が知事の不適切発言へ何らかの追及はあるだろう。まあ、それが何であろうとも、これで一件落着である。今回の女性蔑視、建設作業員への差別発言が明らかになっても、自民県議団があらためて不信任決議案を提出できないからだ。県議会では「追及」と「謝罪」の茶番が繰り返されるだけである。知事は、表面的な「謝罪」とは裏腹に、どこかで不満を爆発させているだろう。そのとばっちりを受ける職員はかわいそうだが、知事自身は何らの痛痒もなく、今回の「舌禍事件」も”鼠”一匹で、幕引きとなる。それはなぜか?

 ことし3月30日付静岡新聞コラムがその理由もちゃんと教えてくれている。

3月30日付静岡新聞

 『「座長は御用学者にちかい」「(JR東海と有識者会議、鉄道局は)臭い関係。腐臭を放っている」。川勝平太知事は(3月)23日の記者会見で、県内のリニア工事を巡り、強い言葉でJR東海や国土交通省を批判した。

 あえて刺激的な言葉を発して論争を巻き起こし、事態の転換を図るのは川勝知事の政治手法。悲しいことに、長く取材するうち、こちらも少々の発言では驚かない耐性ができてしまっている。ともあれ、よくまあ、物騒な言葉が次から次へと出てくるものだ。

 舌禍を繰り返しながらも、選挙で圧勝を重ねて3期12年。「なぜ川勝知事は選挙に強いのか」とよく聞かれる。正直、よく分からない。自民党がだらしないから、と答えることにしている。(政治部・宮嶋尚顕)』

 見出し『なぜ選挙に強いのか』は、6月の知事選の前であり、4期目も川勝圧勝でその通りの結果となった。圧倒的な支持率の高さで選挙に強い理由を宮嶋記者は「自民党がだらしないから」と見抜いていた。今回の舌禍事件で、知事が無事、切り抜けられたのも同じく「自民党がだらしないから」なのだろう。

 会見で、川勝知事は辞職しない理由を新たなオミクロン株出現によるコロナ対応を挙げた。記者たちは忘れてしまったかもしれないが、昨年末、知事は「現在の危機はコロナの第三波の真っ最中であり、年末の不要不急の帰省は我慢するように」と呼び掛けながら、自身は12月26日から1月3日まで自宅の長野県軽井沢町の自宅へ”帰省”していた。「帰省は我慢してください」の口先が乾かぬうちに、さっさと”帰省”できるのは、知事がそれほどコロナに対して危機感を持っていないのであり(※その証拠に知事はコロナワクチンを受けていない)、また、知事不在であっても担当部局でコロナ対応ができることも明らかになった。

 そのような知事の”言行不一致”にさえ、厳しい意見を言える者は誰もいない。だから、自民県議団に期待するが、肝心の自民県議団もちゃんと知事の責任を糾弾できない。さて、どうするのか?

「御用学者」を平気で使う静岡県

 今回の会見で、テレビ静岡記者が「コシヒカリ」発言に対して、公選法違反の可能性を厳しく追及した(※新聞、テレビではどこもやっていない)。若林氏が公選法違反で知事を告発すれば、まさしく”舌禍”事件となる可能性はある。自民党はちゃんとした弁護士をつけて、若林氏を応援すべきだ。若林氏が政治生命を賭して、知事と対峙すれば、知事の”化けの皮”がはがされる可能性が高い。そのくらいでなければ、知事に向かい合えない。これまで”舌禍”がいくらあっても、その場、その場を切り抜けてきたからだ。そして、すぐに忘れてしまうのだ。

 静岡新聞・宮嶋記者のコラムに”舌禍”として登場する「座長は御用学者」は、国のリニア有識者会議座長の福岡捷二氏を指す。知事は、福岡氏に対しては、度々非難の刃を向けていた。これも過去の遠い記憶となってしまった。

 4月に宮嶋記者も転勤となり、他社も12月の異動があり、知事会見には新顔の記者たちが多くなった。となると、過去の川勝”舌禍”事件を記憶していないだろう。川勝”舌禍”で有名なのは、自民県議団を念頭にした「やくざ」「ごろつき」などの暴言、菅義偉首相(当時)に対する「教養のレベルが図らずも露見した」「夜学に通い、単に単位を取るために大学を出た。学問をされた人ではない」などの差別発言。川勝”舌禍”について、もう一度、事件簿として紹介していきたい。

 まずは、福岡氏への暴言である。

 知事は福岡氏の「座長コメント」を度々、批判してきた。宮嶋記者コラムの3月23日以前、2月9日の会見で「コメントと言うにはあまりにもずさん。蛇足であり、要らない」「座長コメントの撤廃を求める」と宣言。「座長コメントは明らかに事務官が書いている。だから、座長コメントはなしにする。座長コメントはやめなさい。事務官奴隷になるような座長というのは、福岡さん、今までの学業は泣きますよと申し上げたい」。官僚に対する格好よい批判とも取れる。

 問題なのは、知事が本当に福岡氏の座長コメントを読んで、理解しているのかどうかである。この場合、「山梨県側へ流出しても、椹島よりも下流では河川流量は維持される」という座長コメントを批判したのだが、福岡氏は有識者会議での議論をまとめたに過ぎない。それなのに、福岡氏への一方的な批判に終始していた。

 また、宮嶋記者コラムにある「御用学者」発言も、「トンネル湧水が山梨県側に流出した場合においても、静岡工区で発生するトンネル湧水を戻すことで下流域の河川流量は維持される」という座長コメントに対するものだった。有識者会議の結論はその通りであり、次回の有識者会議で結論が出される。それに対する不満なのだろうが、2人の県委員も参加する、2年近くの科学的・工学的な議論の結果である。川勝知事のお得意のフレーズ「万機公論に決すべし」から言っても、有識者会議の結論に従うべきである。この期に及んで、意味のない文句を言い続ければ、度量の狭い政治家に見られるだけである。

 「御用学者」とは、静岡県リニア環境保全連絡会議専門部会委員の、県費を支払う県事業のコンサルタントのことである。誰が考えても「御用学者」を県担当者が平気で使っているのだ。当該コンサルタントは、対外的な肩書に「静岡県専門部会委員」を使っている。「御用学者」とはそのような者たちを指すのである。

「嘘つきは泥棒」は川勝知事のことだった

 『三重県知事をうそつきと非難 静岡知事、リニア駅発言で』。2019年11月19日川勝知事の会見を伝える「共同通信」配信が全国の地方紙、スポーツ紙、ロイターなどに掲載された。記事内容は以下の通り。

 『静岡県の川勝平太知事は19日の記者会見で、リニア中央新幹線の三重県内の駅に関する自身の発言に「事実無根」と抗議した三重県の鈴木英敬知事に対し、発言内容は事実だとして「うそつきは泥棒の始まり」と非難した。

 川勝知事は6日、公表されていない三重県内の駅設置場所について「(鈴木知事が)90%亀山市に決まったと言っていた」と述べ、8日に三重県から抗議を受けた。川勝知事は会見で、先月31日に催された天皇の即位を祝う「饗宴の儀」の際に鈴木知事から直接聞いたと強調した。』

 三重県知事の言い分は、「極めてセンシティブな話を何らプロセスを経ず軽々しく言われた」「饗宴の儀で歩きながら立ち話をしたことなので、正確な言い回しとか、言った言わないを申し上げるつもりはない」「了解なく、立ち話のような場でのことを定例会見でおっしゃるのはどうか」などである。相互の主張はともかく、知事職に就く公人に対して、公人である知事がふつう『嘘つき』呼ばわりするのは常識外れとしか言いようがない。

 その後、自民県議団に対して「やくざ」「ごろつき」発言問題が発覚するのだが、川勝知事は当初、「そんなことは言っていない」と逃げていた。このため、当該の音声媒体が自民県議団に提供され、知事の『嘘』が明らかになった。つまり、『嘘つきは泥棒の始まり』はまさに、川勝知事のことだった。知事は自身のことを『嘘つき』だと言ったのかどうか?

「仏の川勝になる」という意味不明の発言

 「あきれ果てる運営で、恥を知れ、と言いたい」。川勝知事は、意に染まないことがあると、担当者を痛烈に批判する。2020年5月27日の会見では、国の有識者会議の「全面公開」「運営」について、当時の国交省鉄道局長の水嶋智氏を名指しで罵倒した。

 「folly(愚か者)、(水嶋局長は)猛省しなければならない」「(水嶋局長は)会議の運営が拙劣である。マネジメントの不誠実さが現れている」「(JR東海の)金子(慎)社長を(有識者)会議に呼んだのだから、責任を取るのは会議を指揮した水嶋局長ではないか」「金子社長の発言を許したのは水嶋局長、金子社長を(有識者会議に)呼んで謝罪、撤回させるのが筋だ」「(水嶋局長は)金子社長にすべて責任転嫁させている。水嶋局長は要するに筋を曲げている、約束を守らない、やる気がない」などなど。

 もし、県行政の運営で、知事の意に染まない意見を述べる職員がいたとしたら、知事は当該職員を面と向かって罵倒し続けるだろう。

 「仏の川勝になる」。6月の知事選出馬前の会見では、『「仏の川勝」、その時に決めまして、翌年、翌々年と、どこかで色紙を書かされてですね。「続仏の川勝」「続々 仏の川勝」としてですね。3年、「石の上にも三年」ということで、仏になろうということで、最近は仏教もしっかり勉強しておりまして、文字どおり、鍛えております。仏にはなりませんが』など意味不明の発言を繰り返していた。まさに「裸の王様」である。

 「ことばがものすごくきれいで誰からも批判を受けないけど、全く仕事のできない政治家」。橋下徹・元大阪府知事による川勝評である。まさしくその通りである。

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