「がん5年生存率」調査  静岡市立病院の成績は?

初のがん5年生存率発表

 9月12日、国立がん研究センター(東京)は全国にある「がん診療連携拠点病院」な ど250カ所の医療機関別「がん5年生存率」を初めて明らかにした。

 2008年~20 09年に胃がん、大腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がんの5つのがんと診断された患者の ステージ(進行度)に応じた5年生存率を全国の病院ごとに公表した。 それぞれの治療成績がひと目でわかるから、特にがんと診断された人たちは新聞記事に釘付けとなり、藁にすがる思いで“治る病院”を探したと聞いた。

 病院にとって、衝撃的な調査結果だった。

手術数による病院ランキング

 筆者は医療支援のNPO法人「Q(キュー)ネット」(静岡市)のメンバーととも に雑誌「静岡県の良い病院」を発刊した。地域の医療情報が極端に少なかっただけに多くの人に読んでもらえ、評判は高かったようだ。ただし、2号でストップ。ごめんなさい。 まさに、それが2008年、2009年であり、厚生労働省の資料を基に「手術数によ る病院ランキング」をつくり、それぞれの専門医を取材した。

  当時、がんの部位別死亡者数は、静岡県の男性では、肺がん(22・6%)、胃がん(1 6・0%)、肝臓がん(12・4%)、大腸がん(11・1%)、女性は大腸がん(12・7%)、 胃がん(12・4%)、肺がん(12・4%)、乳がん(9・6%)などの順に多く、今回 の5年生存率が大きな意味を持つことがわかる。

 肺がんの手術数で言えば、2008年のトップは聖隷三方原185、静岡がんセンター182、浜松医科大学附属130、県立総合122,聖隷浜松100、静岡市立81など の順だった。

 2009年では、聖隷三方原、静岡がんセンターとも217、県立総合1 18、静岡市立97などと続いた。2008年の肝臓がんは静岡がんセンター192、県立総合120、2009年も同じ順番だった。

発表しなかった病院とは?

 だからこそ、5年生存率はどうなったのか、非常に強い関心を持った。

がん生存率調査に参加しなかった静岡市立病院

  静岡県のがん診療連携拠点は10病院。2008年には沼津市立が登録されていたが、 現在は沼津市立ではなく、その代わりに磐田市立が入り、同じ数の10病院ががん診療連携拠点だ。 調査書では、全国250病院の中で124番目に静岡がんセンター、131番目に磐田市立が成績を公表している。

  何度も探したが、8病院しかない。10病院ないのだ。どこの病院がないのか?

 「県立総合」と「静岡市立」が含まれていないことがわかった。だから、2つの病院の成績は分からない。それはなぜだ?

 「がん診療連携拠点病院」を担当する静岡県疾病対策課に確認した。国立がん研究セン ターによる調査なので、県は関知していないとのこと。つまり、病院に直接聞いてみなければ 事情は分からない。

セカンドオピニオンの権利

 患者の権利として「セカンドオピニオン」がある。

 がん患者の場合、 「セカンドオピニオン」を求めるケースが非常に多い。ただし、「セカンドオピニオン」の意味を勘違いして、患者は「セカンドオピニオン」を受けた病院で、 そのまま治療受ける場合が多い。そのためか、 「セカンドオピニオン」を受ける病院も慎重 にならざるを得ないようだ。

 静岡市立の医者から、がんと診断された患者は、静岡がんセンターに「セカンドオピニオン」を希望する場合がほとんどと聞いた。ただし、治療の見込みのない患者を静岡がん センターは「セカンドオピニオン」で引き受けない、ともこぼした。治療成績が落ちるのをいやがるそうだ。まあ、そういうこともあるかもしれない。ただし、確認はしていない。 また、いまも同じかどうかもわからない。病院側が治療成績が落ちることを嫌うことは理解できる。

さくらさんも乳がんだった?

 今回調査で、静岡がんセンターのコメントには「地域の医療事情からⅣ期で治療開始する患者および高齢者で合併症を有して手術対象とならない患者の比率が高い」とあった。 このコメントでは、静岡市立の医者の話とは全く逆に、高難度のがん患者ばかりを引き 受けている、と言っているようだ。どちらが正しいのか、判断するのはなかなか難しい。静岡がんセンターの胃がん、 大腸がんの5年生存率は好成績である。

さくらさんの写真の代わりに事務所が提供した自筆の似顔絵

 漫画「ちびまる子ちゃん」の作者で、旧清水市出身のさくらももこさんは2006年ころ、乳がんと診断されたそうだ。約10年たって、ことし(2018年)8月15日に53歳という若 さで亡くなった。さくらさんは5年生存率をちゃんとクリアしている。死亡原因は明らかにされていないので、乳がんの再発なのか、他の病気かはわからない。5年生存率という考えは、なかなか難しいものかもしれない。

 いま、がんと診断された人たちは大きな不安を抱えているだろう。

 2019年の正月もちゃんと生きていることを願うだろう。当然、5年生存は未来の話だ。

 「静岡の未来」はちょっと暗い話で始まった。しかし、正確な情報を集めることが「未来」にとっていかに重要かを知ってほしいと考えた。正しい情報によって、どのように対応するか決めていくことができる。情報によって、あなたの未来が変わってしまうこともありうる。

  5年生存率の調査に、静岡市立、県立総合がなぜ、加わらなかったのか? こちらの疑問は「ニュースの真相」で、いずれ正しい情報を紹介していきたい。

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