静岡市中心街の信号機が消えた理由は?

突然信号機が撤去された

信号機の代わりに進入禁止の標示

 3月13日、静岡市の七間町通り、両替町通り交差点の信号機が消えてなくなった。何の前触れもなく、街中の信号機が突然、消えてなくなったのだから、毎朝通勤、通学に使っていた市民、学生らは本当にびっくりしただろう。

 早朝、散歩していて信号機がなくなったのに気づいたとき、何年か前、七間町通りを代表するオリオン座(東海地方一の大画面を誇っていた)、ミラノ座など映画館がすべて消えた記憶がよみがえった。そのときは何度も告知があり、建物の解体から始まったので、しみじみと「シネマ通り」の名前にお別れを言うことができた。

 今度のお別れは突然だった。信号機ひとつとはいえ、昨日まで見慣れた風景が変わってしまった。信号機があるのが当然だったから、タクシーなどは歩行者に注意して交差点を慎重に通過していくのがわかった。何かの工事の都合で一時撤去されたのか、それとも信号機自体の具合が悪くて修理に出されたのか?そんなことも考えた。

 いずれにしても、静岡市中心街交差点にあった信号機がなくなるのは初めてだ。

閉店した人気ラーメン店など

 静岡市は人口減少を止められず、商店街の地盤沈下が大きな課題だ。交差点近くの人気ラーメン店が昨年夏閉店、交差点角にあった中華バーミヤン(2階は系列イタリア料理店)は駐車場に変わり、老舗あなごやなども消えた。七間町通りでは数多くの空き店舗が目立つ。交差点の近くにあった家具・雑貨店も閉店、いま現在は4月7日投開票のある静岡市長選候補の後援会事務所として使われている。選挙が終われば、また空き店舗になってしまうだろう。

 そうか、人通りがめっきりと少なくなり、信号機は不要と判断されたのか?

警察の判断で信号機は撤去できる

14日午前信号機撤去後の作業が行われた

 道路の維持管理は静岡市だが、信号機を設置、維持管理するのは警察署。早速、静岡中央署交通課に聞いた。「信号機を13日未明に撤去した。告知等はしなかった」と回答。やはり一時的なものではなく、未来永劫に不要なものとして撤去されたのだ。「信号機を設置してほしい」という地域からの要望は数多いと聞く。「信号機撤去」も地元民の要望なのか?

 「撤去の手続きは明確に決められていないが、警察署内で検討した上で、県警本部の了解を受けた。当然、静岡市に報告した」。そうか、やはり寂れていく街に信号機は不要と判断したのか?

 「そのような理由ではない。単に交差点の信号機がなくても安全と判断した。また、歩行者にとってはムダな待ち時間がなくなるから便利で流れがスムーズになる」。つまり、人通りが少なく街が寂れたのではなく、街の活気を取り戻すためと言っている。札ノ辻から七間町通りと言えば、江戸時代の東海道として一番活気のある通りだった。

札ノ辻の交差点

 そう言えば、すぐ東側の七間町通りと呉服町通りの札ノ辻交差点にも信号機は設置されていない。週末には、呉服町通り、七間町通りは歩行者天国となり、多くの家族連れでにぎわう。午後1時からの歩行者天国は最近、午前11時からと2時間も前倒しされた。そうか、七間町通りも呉服町通りのように活気ある通りにするために信号機を撤去したのか。

 人が歩きやすい街に、活気ある通りにしたい!待てよ、「活気ある街づくり」に信号機は不要だと言えば?

中心街に残った信号機とは?

 わたしの頭の中に浮かんだ街の様子を概念図にしてみた。

 お分かりだろうか。さまざまな道路が交差しているが、主要道路との信号を入口、出口とするとその面の中に、ただ一カ所のみ信号機が中心街に残されている。撤去された交差点のすぐ南側、2つの青葉通り、青葉緑地(青葉シンボルロード)、両替町通りの交差点、横断歩道にある信号機だ。

 毎週末ごとに、青葉緑地でさまざまなイベントが開催され、多くの市民らが詰め掛ける。信号機があるばかりに、歩行者は待たされることが多い。スムーズな人の通りを重視するならば、2つの交差点信号機を撤去したほうがいいのでは?また、にぎわいの街づくりにも不可欠なのでは?

 「できればそのようにしたい」。中央署担当者は力強く答えた。ぜひ、そうすべきだ。

 しかし、そう簡単なものではないらしい。地元の意向等を十分に聞いた上で撤去しなければならないからだ。今回のように突然行えば、市民らからクレームが出るかもしれない。一方通行の青葉通りも交通量はそれほど多くはないが、信号機がなくなって不満を唱える住民がいるのかもしれない。

 何よりも地元の活気や発展をのぞむのは、青葉緑地の終点にあり中心街を見渡す静岡市役所だ。静岡市が率先して信号機の撤去を地元に提案すれば、スムーズにいくに違いない。

 「まちは劇場推進課」など派手なキラキラネームの担当課をつくっているのに、なぜ、静岡市は信号機を撤去するよう連携しないのか?

権限のないことはやりたくない

4階の道路整備課から。次は7階へ

 中央署から信号機撤去の報告を受けた静岡市道路整備課(維持係)に聞いてみた。まずは、信号機の設置、撤去の権限は静岡市ではなく、警察にあるという説明から始まった。権限のない事業については、あまり考えたくないというお役所式の答弁だ。

 「街のにぎわい」のために信号機が必要かどうかを検討はできるのでは?「それはその通りだが、道路整備課が担当ではなく、市街地整備課や都市計画課、商店街を管轄する商業労政課(清水区役所)などのいずれかが担当する」。うーん、街全体をデザインするとき、各課のセクショナリズムを廃して、一番よい方向に調整する部署がないと言っているように聞こえる。どこも実際には、直接の担当ではないから、もしかしたら、たらい回しになる可能性も出てきた。

 とりあえず、市街地整備課へ行ってみよう。

コンパクトシティにするためには 

 「車優先ではなく、歩行者たち優先のにぎわう場所にしていきたい」。市街地整備課で話を聞いていたら、お隣の都市計画課担当者がやってきて、そう言った。それならば、信号機は不要では?「当然検討していく」と回答。えっ、検討?いつ、どこで議論していくのかと聞けば、いまのところはそういう場所はないとのこと。裏を返せば、信号機撤去の担当課ではないので、検討材料ではあっても全く考えていない、と聞こえてくる。

 「一方通行の青葉通りで車のスピードが出てしまう。信号があることによって減速できる」。市街地整備課担当者の信号機はあったほうがいいという意見だ。車に乗っていて、一刻でも急ぐといつの間にかスピードが出てしまうのはよくわかる。

 交通事故の抑止効果で信号機の役割は大きい。それでも、静岡中央署は七間町通り、呉服町通り交差点の信号機撤去という、びっくりするくらいの英断に打って出た。信号機撤去で交通事故が起きれば、責任を覚悟の上だ。

 そう考えれば、青葉通りのほうが危険性が高いというのはうなづけない。交通標識、道路標示などで周知すれば、信号機の効果に近いはずだ。

 週末に呉服町、七間町通りだけでなく、両替町通りも「歩行者天国」にしたほうが活気が生まれる。人口減少対策を専門とする日本銀行の竹内淳静岡支店長は「コンパクトシティとして街中にもっと人を呼び込むことで街の魅力を発信する、そのための規制緩和をやるべき」と話している。信号機のひとつもない中心街という「魅力を発信」するために、最後に残された信号機(「規制」)をなくすことに全力をつくすべきだ。

 静岡市長選の各候補は中心街の信号機撤去を公約に入れたほうがいいのでは?

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