リニア騒動の真相36「苦闘」鉄道局の打開策は?

ワニが教える「地球温暖化」論議

 浜松市HPに『6万年から12万年前、浜名湖湾岸に広がる低湿地ではナウマンゾウが草を食べ、水辺には体長3mのワニが生息していた』とある。本当に熱帯に生息するワニが浜名湖にもいたのか?

6万年から12万年前の浜名湖周辺(浜松市HP)

 20年ほどまえ、浜名湖湾岸にワニが生息していた証拠の化石を発見した長谷川善和・群馬県立自然史博物館長(現・名誉館長)のもとを訪れた。長谷川さんは1968年浜名湖の北部引佐地区の採石場でワニ20頭などの化石を発掘、骨格からマレー半島などの沼や川にすむ口がとがったマライガビアルワニの種類に近いと教えてくれた。群馬県博物館に保管していたワニ化石を倉庫から出してくれた。20頭のワニ化石をつなぎ合わせてもらい、現在、生息するワニの白い頭骨を置くと何とか1頭のワニに見えた。(※タイトル写真

 当時の浜名湖周辺はインドネシアと同じくらいの熱帯性気候だった。だから、現在よりも温度は4、5度高かった。その後、非常に暑かった間氷期が自然変動で終わり、ワニたちは滅びていく。

 小氷河期のあと間氷期となり、日本はワニのいない温帯性の四季に恵まれた気候の中で過ごしている。ところが、CO2(二酸化炭素)増加に伴う地球温暖化が進むと、4、5度の気温上昇で再び、ワニのいる時代に逆戻りだという。そんな気候変動を抑えるため、CO2削減は全世界的なテーマとなっている。

 スウエーデンの少女グレタ・ツゥーンベリ(17歳)は昨年9月の国連地球温暖化対策サミットで、大幅なCO2削減を求め、「もしあなたたち(大人たち)がわたしたち(次世代の若者)を裏切ること(人為的なCO2増加)を選ぶならば、あなたたちを絶対許さない」と訴えた。「地球を救える時間はあと数年」と叫ぶグレタは若者を中心に世界中の共感を得ている。

 来年以降にならないと詳細は分からないが、ことしの地球は過去20年間でCO2排出量は最低の状態を記録するはずだ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によって、日本を含め、CO2を大量排出する先進国が機能不全に陥った。ニューヨーク、パリなど世界中で実質的な”都市封鎖”状態だ。グレタはCO2大量排出の航空機移動を拒否したが、世界中の航空便がほぼ全面的にストップしてしまったから、航空会社の多くが倒産するかもしれない。

 さて、これでCO2排出量が極端に少なくなり、温暖化が進む地球を救える、とグレタは大喜びだろうか? 

温暖化は「人為的CO2排出」か「自然変動」か?

 地球温暖化進行と言うが、30年前と比べて実際には気温は0・3度程度しか上昇していない。わたしたちは生涯に30トンもの有害汚染物質?CO2を吐いているが、世界中でCO2削減は大テーマ。静岡市でも、地球温暖化をテーマに、NPO法人に「協働パイロット事業」の提案募集を行っている。『脱炭素化社会の実現に向けた市民・事業者の取り組み』である。(4月6日まで)

 「世界共通の喫緊課題として地球温暖化が挙げられており、2050年までに脱炭素化社会を実現すべく、多くの自治体でCO2排出ゼロを宣言している。市民・事業者のライフスタイルを見直すための意識変革が必要である。地球温暖化を身近な問題と捉え、多くの人が意識変革できる、実効性のある提案を募集する」。大幅なCO2削減につながる実効性の高い「意識変革」とは何だろうか?

映画「不都合な真実」チラシ

 CO2排出の影響を告発した映画「不都合な真実」で有名な元アメリカ副大統領アル・ゴアらは、地球温暖化問題の「意識変革」を促すために、2016年、「ママもパパも聞いてよ、僕たちが大きくなるうちに温暖化がひどくなるんだ。そんなふうにしたのは大人たちだ!」と子供が親を追及するCMをつくっている。まさに、”グレタ・ツゥーンベリ”を全米各地に誕生させる試みだった。

 静岡でもグレタにならって「地球を救える時間はあとわずか(2050年を目標とするとあと30年)」活動に子供たちを「温暖化防止大使」に起用するのが一番いいのかもしれない。 

 ところで、人間たちがCO2を排出していなかった10万年前は大気中のCO2濃度はいまよりずっと濃かった。浜名湖でワニが生息できるほどのCO2濃度はいつ実現するのかわからない。30年間でたった0・3度の気温上昇が人為的なCO2排出が原因かどうかさえわかっていない。

 米国の環境保護庁(EPA)は、温暖化対策をしても世界のCO2排出量はほとんど減らず、気温もほとんど変わらないと発表した。パリ協定にアメリカ、中国など未加盟国が加わったとしても地球の気温は変わらないことも認めている。オバマ時代に参加したパリ協定に、トランプは大統領就任直後に離脱、石油資源豊富なアメリカではCO2削減に対して民主、共和両党の間で真っ向から意見衝突する。まさに科学的な知見も激しく対立するから、CO2削減でどちらが正しいかわからない。

 ところが、静岡市だけでなく、日本全体で年5兆円以上の「温暖化対策費」が飛び交うのは、グレタやゴアらスーパーヒーローの存在があるからだ。CO2削減が正しいかどうかは別にして、「意識変革」とはどちらかの側につける工作なのだろう。

鉄道局の嘆き「新有識者会議」開催めどたたず

 3月27日国交省鉄道局から静岡県に提出された「有識者会議について」の文書では、「鉄道局がリニア問題に関与して昨年8月から7カ月以上、有識者会議提案から2カ月が経過したが、会議開催のめどがたっていない」と嘆いていた。

24日付静岡新聞の写真

 23日静岡県は「有識者会議」メンバーについての疑問やJR東海の立場が不明などという文書を提出した。27日の鉄道局文書はそれに回答したものだが、鉄道局の嘆き通り、「新有識者会議」が開催されるかの見通しは暗い。鉄道局は「トンネル湧水の全量戻し」「大井川中下流域の地下水影響」を2大テーマとしてまず、何とか課題解決に持っていく方針なのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 そもそも13日に突然、川勝平太知事は記者会見で「新有識者会議」メンバーを公募すると発表、「驚きだ」(水嶋智局長)、「理解できない」(金子慎JR東海社長)などとメディアを含めてびっくり仰天した。

 県の公募理由を求めたため、難波喬司副知事は5項目の理由及び意見を水嶋局長宛に提出した。それが今回の「このままでは会議のめどが立たない」という鉄道局の嘆きとなる。川勝知事の突然の公募発表からでさえ2週間も経過した。こんな状況を見て、28日付静岡新聞は「新有識者会議の開催見通せない」と伝えた。

2月7日付中日新聞

 まてよ、2月7日付中日新聞は「事前協議」の長期化の可能性を指摘、いつになったら「新有識者会議」が発足するか見通せない状況であると1カ月以上前に予測していた。中日「リニア着工までの流れ」図によると、「事前協議」が終わると、「トンネル湧水の全量戻し」「大井川下流域の地下水への影響」を評価する「国の新有識者会議」が方向性を見つける。その後、国、県、JR東海の「3者協議」で着地点を見つける取り組みを行うことで、静岡県の「有識者会議」が納得するような結論が得られるようだが、「事前協議」段階がまだ終わりそうにない。

 鉄道局は4月中旬に第1回有識者会議開催を提案したが、新型コロナの影響が大きくなる一方の中で、やはり見通しは真っ暗である。

「生物多様性」議論は「こんにゃく問答」になる

 川勝知事「戦略」では、「水循環」「委員公募」と来て、とうとう「生物多様性」まで「新有識者会議」に加えてしまった。「中立性」にこだわる鉄道局は川勝知事「戦略」に負けてしまったのだ。

 「生物多様性について議論する場合の委員構成を明らかにせよ」という静岡県の主張に対して、27日付文書で鉄道局は「現時点で委員の選定を行うのは難しい。有識者会議で議論を行う段階でメンバーを検討する」と拍子抜けの回答をした。つまり、全く考えていないことを明らかにしたが、この回答で新有識者会議でも「生物多様性」について議論することを表明したのだ。

 「生物多様性」まで加わったら、リニア問題が本当に解決できるのか、鉄道局は「大混乱」の行く末を分かっているのだろうか?立ち位置の違う鉄道局に自然環境保全はあまりに荷が重いはずだ。

 「リニア騒動の真相」では、これまで何度も鉄道局「戦略」を見直したほうがいいと書いてきた。JR東海、川勝知事の「闘い」に鉄道局は参入したが、「地球温暖化」議論を見れば分かる通り、環境問題の科学的議論ではどちらが正しいという決着はつかない。お互いにとんちんかんの「こんにゃく問答」になるのが落ちである。

味は変わらないらしい(川嶋尚正氏提供)

 静岡人はイルカを食べるし、伊東ではイルカ漁も行ってきた。日本人がクジラ、イルカを食べることを欧米人には許せない。しかし、日本の食文化である。静岡県の生物多様性専門部会で「イワナ」が大きなテーマである。ヤマトイワナ、外来種のニッコウイワナ、その交雑種が大井川上流部には生息する。専門部会ではヤマトイワナを守ることが至上命題らしい。5年ほど前、静岡市調査で西俣川支流でヤマトイワナは確認されているが、絶滅危惧種に指定されるから、JR東海調査では発見されていない。

 西俣川支流に生息するヤマトイワナのDNAを守ることが生物多様性だというが、これは非常に難しい。一般には全く理解できない。釣り人たちに試しに聞いてみたが、ヤマトイワナとニッコウイワナの味に違いはないのだという。イワナを食べるのではなく、守るのは誰だろうか?本来は静岡県、静岡市の役割だが、今回はJR東海に任せたいらしい。

 川勝知事は品川ー名古屋間2027年リニア開業にこだわらず、品川ー大阪間の開通を一挙に目指したほうがいい、と発言してきた。スケジュールの遅れ具合から、鉄道局も川勝知事の考えに賛同して後押ししているのかと疑ってしまう。このままでは全く見通しが立たない。

 鉄道局に「打開策」はあるのか?川勝知事「戦略」に対抗するならば、グレタ・ツゥーンベリ、アル・ゴアばりのスーパーヒーローを招へいして、市民を味方につける「意識変革」を始めたほうが早い。ほとんど何だか分からない「生物多様性」をちゃんと教えたほうがいい。

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