「コロナ」危機2「休業補償」狂騒曲(静岡市編)

「25日から休業要請」と田辺市長が言った!

 25日土曜日昼頃、静岡市の繁華街を歩くと、街の様子は一変していた。寿司屋、そば屋、イタリア料理店、うなぎ屋、ラーメン屋などなじみの店のシャッターが下り、ほぼ同じ内容のお知らせが店頭に貼ってあった。マクドナルド、ケンタッキーなどのテイクアウトを除き、ほぼすべての店が休業に入ったのだ。

 「静岡市よりの要請により、臨時休業致します。休業期間 4月25日(土曜)~5月6日(木曜)」、「重大なお知らせ 静岡市からの休業要請に伴い4/25~5/6までレストラン営業は休業させていただきます」など同じ内容のお知らせが貼られていた。前日までふだん通り営業していた食事を提供する、市民にはなくてはならない店舗ばかりだった。浜松市も同じく、「4月25日から5月6日まで」の休業要請と補償について鈴木康友市長が21日記者会見を行った。浜松市は期間中、休業していることを第三者が見て明らかにわかるチラシを店頭掲示した写真を求めていた。当然、静岡市も同じなのだろう。

 田辺信宏市長は23日、新型コロナ対策として静岡市独自の休業要請とその補償を発表した。「4月25日から5月6日」までの休業要請期間に、静岡市内の料理飲食を提供する約3200の事業者が閉店休業すれば、中小企業または個人事業主に1事業者当たり「50万円」、2店舗以上の事業者に「100万円」を支払うという内容だった。突然の発表に、各事業者らから「どうしたら50万円もらえるのか?」など問い合わせる市の相談窓口の電話は鳴り放しとなった。全国的に見て「50万円」「100万円」という飲食店への休業補償は大判振る舞いである。

 23日夕方ローカルニュース、24日新聞朝刊各紙が田辺市長の発表を大きく報道した。25日からすべての店が休業に入るから、24日夜が最後と思い、近所にあるなじみの居酒屋に出掛けた。当然、休業補償が話題になった。店主は「組合は27日月曜日からと言っていた、土曜日曜は店を開けたいのだがー」と情報が錯そうして不安な表情。手元にあった24日静岡新聞、日経新聞朝刊に「25日から5月6日まで」と書いてある。静岡商工会議所HPの田辺市長名の通知も「25日」となっている。「27日からは間違いだ!」と酔った常連が叫んだ。

 それで25日昼頃、繁華街を見て回った。やはり、すべての店の掲示が「4月25日~5月6日」となっていた。

 ところが、25日午後7時頃、1軒のてんぷら料理店のみ煌々と明かりが輝き、店内には大勢の客が詰め掛けていた。その店の「お知らせ」を見て、驚いた。他の店舗とは違っていたのだ。

「27日が休業開始日」と変わっていた?

 てんぷら屋のお知らせは「4/27(月)~5/6(水)まで休業させていただきます。4/25(土)26(日)は短縮営業させていただきます」。この土日は他店が一斉に休業しているから、昼夜とも利用客は多いかもしれない。しかし、「25日から」を守らなければ、休業補償を受け取れなくなってしまう。本当にそれでいいのか?

 25日午後10時過ぎに静岡市HPをもう一度、確認した。「協力金ご案内」タイトルの項目は「最終更新日」が「4月25日」となっているのに気づいた。きょう(25日)情報を更新しているのだ。

 25日何時に、どこをどのように変えたのかわからないが、そこに「4月27日(月)を休業の開始日とします」とあった。『※休業要請期間は「令和2年4月25日(土)から令和2年5月6日(水)」までであり、この期間について休業を行っていただくことが基本ですが、事業者の方への周知期間を勘案し、 協力金を支給する要件については「令和2年4月27日(月)」を休業の開始日とします』。何だ、これ、てんぷら屋の「27日から」は(休業補償をもらうのに)全く問題なかった。

 それでもう一度、静岡商工会議所HPで23日付の静岡市危機対策本部長田辺信宏名「静岡市の休業要請及び同要請に基づく協力金の支給について」を確認した。「対象要件」は「4月25日から5月6日まで協力いただいた中小企業及び個人事業主」となっている。「協力金支給要件」は間違いなく「25日から」である。新聞、テレビは、協力金支給要件と合わせて休業要請を「25日から」と報道した。だから、ほぼすべての料理店事業主は25日から休業しなければ、50万円を受け取れないと勘違いした。しかし、実際は「27日から休業」で問題なかった。

 飲食店が支払っている経費は「店舗賃料」「店舗保険」「食材、飲料仕入れ」「スタッフ給料」「HP管理費」「電気、ガス、水道代」など20以上の支出項目がある。「売り上げ」から「経費」を差し引いて、「利益or借金」が出る。「コロナ」自粛で客足は伸びていないから、ほとんどの飲食店の「借金」がふくらむ状況だった。もし、ちゃんと分かっていれば、土日の2日間営業をした料理店は多かったはず。2日間の違いはあまりに大きいのだ。

 27日から5月6日までの10日間、単純に割れば1日当たり5万円の補償額となる。「25、26日の2日分10万円を上乗せしてほしい」。個人経営の小さな飲食店が多いから、切実にそう望むだろう。それでなければ、不公平である。

5月6日以降、休業延長を続けるのか?

 静岡県が「20万円」の補償金を支払うことで休業要請したカラオケ、バー、スナックなどに静岡市は「30万円」を上乗せして「50万円」、静岡県の対象外となった料理飲食店に、独自に「50万円」を補償する。店舗の大小に関わらず、一律「50万円」の休業補償である。約17億円の補正予算を組んだ。

 静岡市も休業状況が確認できる書類として店頭ポスターの写しを求めているから、手書きであれ、印刷であれ、お知らせを掲示しなければならなかった。ただ、そのお知らせは「4月25日~5月6日」の期間ではなく、「27日から」で全く問題なかった。

 もう一つ、大きな問題がある。「連休明け後に休業しなくて大丈夫か?」である。「期間延長は社会情勢を踏まえて」などと書いた掲示も多かった。5月6日に「新型コロナ」収束が見えなかったら、各店舗とも引き続いて、感染を防止するために休業を続けるかどうか、判断に迷うところだ。

 収束が見えなければ、政府、静岡県は引き続いて休業要請の方向で検討に入る。そうなれば、静岡市も再び、独自の休業要請を迫られる。休業延長で1日当たり5万円補償をするならば、各店舗とも休業を続けるだろう。

 5月末までとしたら、22日間、1日当たり5万円の補償を支払うとすると各事業者へ110万円が必要。3200事業者、約35億円。田辺市長は「身を切る覚悟で休業補償を行う」と述べたから、市長報酬を削るだけでなく、市職員の協力を得て35億円を捻出するのか。

 そんな仮定のことではなく、まず何よりも、17億円予算を組む前に補償などあてにせず、多くの店舗が休業していたことを静岡市は調査したのだろうか? 

7割方の飲食店はすでに休業していた

 静岡市内の繁華街では、田辺市長の休業要請を待たずに、すでに7割程度の飲食店は店を閉め、夜の街はひっそりとしていた。各店舗のお知らせを見れば、一目瞭然である。早いところでは、4月5日から休業に入っていた。8日から始まった7都府県の緊急事態宣言に合わせた自粛要請に従い、11日以降、飲食店の多くが順次休業に入っていた。

 ある老舗居酒屋では「4月15日より5月下旬頃まで休業いたします」とあった。率先して5月下旬まで店を閉めるというのだ。そのまま廃業してしまうのではないか、そんな心配を寄せる常連が多かった。そうかと思えば、チョコレート専門店だが、待ち合いの5席があるだけの店舗でも、「4月25日~5月6日まで終日店内での飲食は利用できません」というお知らせを掲示、「50万円」を受け取るようだ。店内飲食でとうてい「50万円」もの売り上げがあるとは思えないが、飲食店側からすれば喉から手が出るほどにほしい補償なのだろう。

 自主的に長い休業に入った店舗から言えば、25、26日の2日間の問題などしれている。後出しジャンケンのような不公平感が漂う。そう考えると、最大の疑問はそもそも休業補償「50万円」が必要だったのか?

料理飲食店の営業は「不要」なのか?

 市単位で飲食店への休業補償を行っている自治体はほとんどない。福岡市、神戸市、千葉市、熊本市はテナント賃料を家主に補助することで飲食店の負担を少なくする試みを行っている。熊本市の場合、1カ月分の80%家賃補助で最大限28万円としている。

 京都府、新潟県、宮城県などは県単位で個人事業主らに10万円程度の休業補償を行うと表明した。飲食店へは休業ではなく、時間短縮を求めている。東京都の協力金も食事提供施設に時間短縮であり、休業を求めていない。各自治体の詳しい支給要件まで分からないが、静岡市の休業補償は他と比べて破格の手厚い支援であるのは間違いない。5月6日までに「コロナ」との闘いが終わる予測が成り立てばいいが、そうやすやすと問屋はおろさないだろう。他県にならい、最初はもっと少ない金額でもよかったのではないか。ほとんどの県は飲食店への休業補償を表明していない。

御幸町図書館雑誌閲覧室

 公共施設はそれぞれの判断で休業期間を決めている。20日から5月7日まで閉館に入った静岡市美術館、静岡市内12の図書館は25日から5月10日(11日も休館日)まで閉館するとした。その1週間前、18日から閲覧席など利用できないような、びっくりするような感染対策を取っていた。それがとうとう休館となってしまった。

 静岡市中央図書館長は「開館していることで市民から批判を受けることがあった。もはやこれ以上、火種をつくることはできない。正しいのは、新型コロナから市民を守ること」と話していた。さらに、「今後の状況により、期間等変更になる場合があります」と但し書きさえつけている。「新型コロナ」の収束はそんなに簡単ではないと考えているのだ。

 今回の休業補償は見切り発車の様相が強く、いろいろな意味で拙速である。

 料理飲食店は「時間短縮」すべきか「休業」すべきか?そもそも「不要不急」の意味をいまだに理解できない。おいしい食事を提供していた料理店は市民にとって「不要」の場所なのか?疑問が次々と浮かび、頭の中の「コロナ狂騒曲」はいつまでも鳴りやまない。

※タイトル写真は、25日土曜日昼頃、静岡市七間町通り。休館中の美術館企画展「めぐるジャポニズム」PR旗が風になびく。人通りは消え、ゴーストタウンのようである。

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