リニア騒動の真相54静岡県は「全面公開」を!

県が国を批判する「全面公開」とは?

  静岡県はことし1月、国交省提案の有識者会議を受け入れる前提として、5条件を挙げた。県が真っ先に挙げた条件は「会議は透明であること」。「(生物多様性、水環境など)47項目を議論する」「会議の目的は、国によるJR東海の指導」「委員選定は中立公正に行う」「座長の中立性担保」を含めて、国は5条件を了承した。ところが、会議がスタートしたいまでも、県は最初の条件「会議の透明性」に見解の相違があるとして、対応を改めるよう国に厳しく求める。有識者会議にさまざまな注文を付けるのは、当然、「命の水」問題解決に向けての”川勝戦略”だろう。

第5回有識者会議では、市町議会議員らのWEB傍聴も認められた

 国交省は「会議の透明性」を、有識者会議委員の自由な発言を担保するためにメディアのみに会議傍聴を限定、会議後に議事録をなるべく早く公開するとし、これまで原則非公開だった国の会議としては異例の対応だった。その対応では満足できない県の再三にわたる批判に応じて、国は県環境保全連絡会議専門部会委員、県議、利水者、市町議員らの傍聴を順次、認めてきた。

 しかし、県が求めているのは、不特定多数の視聴であり、希望するすべての人が自由に傍聴できる「全面公開」。関係者のほぼ全員が傍聴できるようになった第5回会議終了後の会見でも、川勝平太知事は「全面公開」を国に断固として求めた。

 「県民にわかりやすい議論が行われること」。県が「全面公開」を求める理由である。もし、本当にそうであるならば、逆に、県はリニア問題に関してはすべての情報を県民に開示しなければならない。

 川勝知事はJR東海、国交省が相次いで求めたヤード(宿舎などを含む作業基地)の準備工事を認めなかった。「流域市町の理解が得られない」を理由に、県自然環境保全条例の解釈、運用を根拠にしたが、これは非常に分かりにくい。「県民にわかりやすい議論が行われている」のかどうかを念頭に、県に対して2つの情報開示請求を行った。

 果たして、県の「全面公開」が県民にとって満足のいくものだったか?

墨塗りされた県会議録の”秘密”発言?

 昨年5月31日、県庁で行われたリニア問題をテーマにした「大井川利水関係協議会」会議録を県情報公開条例に基づいて開示請求した。会議録では、まず、6月6日にJR東海に送る「中間意見書」について、県中央新幹線対策本部長の難波喬司副知事が説明している。さらに、担当者から「準備工事」に関わる県自然環境保全協定の締結などの説明が行われ、協定を締結する準備工事は、あくまでも利水者の理解が得られた範囲であり、本体工事における保全協定は、準備工事とは全く別に改めて結ぶなどの説明があった。また、難波副知事が「準備工事の取り扱いの考え方」についての見解を示している。

 利水者から発言があったのは、染谷絹代・島田市長、鈴木敏夫・川根本町長(その他の首長は出席していない)の2人のようだが、発言者の欄は墨塗りされ、誰の発言かわからない。『「準備工事と本体工事の境界って何なんだ」。本体工事にかかる前の準備工事として、樹木の伐採や整地を認める。だんだんだんだん、印象としては、堀を埋められていくような感じでね。準備工事といって、堀を埋めていくことを認めておいて、いざ本体といったときに、「本当にそれで断れるの」』と氏名不詳者が漠然とした不安を述べている。

墨塗りされた利水者の氏名、発言内容

 また、別の氏名不詳者が『初歩的な問題として、やはり静岡県には、リニア絡みでメリットは一つもないじゃないかという意見が非常に多いということを聞いております』と述べた後、9行にわたって墨塗りされて発言が隠されている。いずれの氏名も県が本人に確認した上で、「個人情報」として非開示とした。墨塗りした発言は、県情報公開条例7条(非開示の理由)第5項「公にすることにより率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え不利益を及ぼすおそれ」を理由に非開示とした。

12行分墨塗りされた難波副知事の発言

 また、難波副知事の発言でも、2カ所で12行、7行にわたり墨塗りされ、内容は全く分からない。やはり、こちらの発言も県情報公開条例7条第5項が非開示の理由。取材すると窓口の県水利用課は「会議のテーマとは別件を話題にしたため」などと説明した。いくら別件と言っても、当然、リニア問題に関する話題である。

 川勝知事は「中下流域の市町の理解が得られない」と述べたが、議論のほとんどは当局の説明である。会議は、冒頭のみ報道関係者に公開されたにすぎない。このため、「県民にわかりやすい」議論が行われたのかを議事録に求めたが、非開示部分でどのような発言があったのか、墨塗り個所に何か重大な”秘密”が隠されているのでは?

 県の「非開示」は、国が有識者会議委員の発言に配慮した理由とほぼ同じである。流域市町長の発言だけでなく、難波発言まで墨塗りするのでは国に「全面公開」を求める理由「県民にわかりやすい議論」とはかけ離れている。

「自然環境保全条例」は県の許可権限ではなかった!

 6月26日、ヤード(宿舎などを含む作業基地)工事の再開を求めた金子慎JR東海社長との「対談」で、川勝知事は「県自然環境保全条例で5㌶以上であれば、自動的に委員会にかけて許可、不許可が決まる。県の権限はこれだけである」と述べ、さらに囲み取材で「ヤード工事は明確にトンネル工事ではない。5㌶以上の開発であれば、(県自然環境保全)条例を締結すれば、問題ない。条例に基づいてやっているので、協定を結べばよい。活動拠点を整備するのであればそれはよろしいと思う」などとと述べた。

 JR東海「ヤード工事」は県条例の解釈、運用で認められないことになったが、果たして、他の「自然環境保全協定」でも同じような取り扱いなのか。ことし6月10日、川勝知事と中部電力安倍川火力発電所の河戸義之所長との間で交わされたばかりの「自然環境保全協定書」を開示請求、1カ月以上掛かって8月31日にその一部が開示された。

 この結果、分かったのは県自然環境保全条例に基づいて、交わされた協定書はたったの2枚であり、事業名、所在地、面積のみが中電の事業を示している。ひな型があり、内容はどの事業でも全く同じである。

 中電は「協定」を裏付けるための「自然環境保全計画書」を提出、その中に「具体的に動植物などに配慮する措置」や「緑化実施計画」を示している。つまり、中電が企業努力として「自然環境」を保全する内容を示し、県はその計画書通りに保全を行ってもらえるよう「協定」を結んだ、というのである。

 県が強制的に何かを求めている内容は全く見えてこない。川勝発言「県自然環境保全条例で5㌶以上であれば、自動的に委員会にかけて許可、不許可が決まる。県の権限はこれだけである」。まるで県条例が許可権限を持ち、県がJR東海と協定を結ぶような手続きを持つ錯覚を受けたが、実際には、許可権限でも何でもない条例上の単なる手続きである。

 県が企業に要請(お願い)して作成してもらう「保全協定」を根拠に、ヤード工事をストップさせることはできないことも明らかになった。

 ところで、県が開示した中電との「保全協定書」はほとんど墨塗りとなっていて、全く何が何だか分からない。134枚(開示費用1440円)のうち、全面真っ黒なページばかりが続いていた。非開示理由は県情報公開条例7条第3項目「法人の機密に関する情報」、6項目「希少種の保全のため」。

 本当にそうなのか?

江口審議官訪問は、なぜ、”非開示”?

緑化計画に「希少種」が含まれるとは考えられないが、緑化計画平面図はすべて墨塗りとは!

 自然環境保全協定の“肝“となる、中電が植物、鳥類、昆虫類、両生類について具体的に講ずる措置を見てみる。すべて「どの種においても、固有の特別な保全対策は必要としない」と記されている。つまり、中電は保全対策を一切、何もしないと述べている。それにも関わらず、県はすべての生物名を墨塗りしている。生育が確認された場所以外にも周辺に広く分布し、特別の対策をしない「調査対象外の重要種」は当然、「希少種ではない」はず。さらに、開発周辺に繁殖に適した場所もない生物名まで墨塗りをしている。図面に限って言えば、何でもすべて「墨塗り」には驚いてしまった。緑化計画平面図、えん堤の現況写真、植生現況図などすべて真っ黒なのだ。まさか、中電の電力ダム緑化計画平面図まで”秘密”にする理由があるのか?

 担当者は「紳士協定として中電が出してきたものだから」と説明した。つまり、開示するのには、開発地域を管理する中電の許可が必要と受け取れる発言で、どんな些細な情報でもすべてが”企業秘密”と県は判断したのだ。あらゆる情報をなるべく隠すことに努めるのが行政であり、今さら驚くべきことではないが、リニア関する情報は「全面公開」するという”川勝戦略”の掛け声とはほど遠い。

 7月10日の国交省の藤田耕三事務次官との「対談」でも、中下流域の市町の理解が得られないとして、知事は県条例を根拠にヤード工事を認めなかった。その結果、藤田次官はヤード整備についての理解を求めるために流域市町へ個別に説明する了解を求めた。県がその要請に応じたため、現在、江口秀二技術審議官が各市町長を訪問している。

昨年の江口審議官訪問を伝える静岡新聞報道。ことしは全く報道されない

 各市町長の要請で、江口審議官の訪問は”非開示”とされ、報道機関にも知らされていない。昨年、江口審議官が各市町を訪問した際、連日、大きく報道された。今回はなぜ、”非開示”なのか?今回の江口審議官の流域市町訪問で、国交省は県に許可を取る”仁義”を切ったのだ。それなのに、県は知らんぷりで全くタッチしていないという。「リニア問題は知事一任という」各首長たちの判断としているが、これでは、有識者会議委員が限定的な公開を希望したことを県は批判できない。

 川勝知事はリニアに関する情報はすべて「全面公開」と言うが、県担当部局の「全面公開」は絵に描いた餅である。国に「全面公開」を求めるのが”川勝戦略”ならば、足元でも「全面公開」を徹底すべきである。「命の水」問題で戦略を誤れば、解決の方向性も誤ることになる。

※タイトル写真は、ことし1月20日に県庁で開かれた川勝知事と10市町長のリニア関係協議会。冒頭のみ公開で、会議そのものは非公開だった

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