「コロナ」危機1生活困窮者を支援する財源は?

一律10万円給付の財源は真っ赤な国債

日銀静岡支店の仕事を知る人は少ない

 17日朝、日本銀行静岡支店の前を通りかかり、そうだ、徳川家康ならば、ちゃんと教えてくれるかもしれない。家康は小判1両を基準とする定位貨幣をつくり、金銀銭3貨の貨幣制度を考案、亡くなったあと、「お金の神様」と呼ばれた。家康の貨幣制度が約270年にも及ぶ、江戸幕府の安定政権を支えた。その原点が駿府の金座である。目の前の日本銀行静岡支店が金座跡。駿府の金座は江戸に一本化され、江戸金座跡に日本銀行本店が建つ。そもそもの日本の金融制度の始まりはここにある。日銀静岡支店の建物を眺めていて、「お金の神様」家康ならば、どのように現在の状況を見るのか、きっといい知恵を出してくれるだろう。そんなふうに考えた。

 16日夜、全国民に一人当たり「10万円」を支給、全国すべての都道府県に「緊急事態宣言」を適用すると安倍晋三首相が発表した。「新型コロナ」で所得が半減した困窮世帯へ「30万円」給付の撤回を公明党が求めた。それにこたえ、「30万円」をやめて一律「10万円」配布に安倍首相は舵を切り替えた。17日の日経平均株価は607円も値を上げ、2万円回復も間近の高値で終えた。マーケットも「10万円」配布を大歓迎のようだった。(実際は日銀や年金運用機構が演出した”官製相場”かもしれない?)

 今月7日、まず、安倍首相はコロナ緊急経済対策として108兆円規模の事業支出、39兆円の財政支出を打ち出した。その舌の乾かぬうちに、今回の一律10万円配布で、政府が国民すべてにおカネをバラまく初めての”ヘリコプターマネー”を決めた。必要なおカネは、約12兆5千億円。東京都はじめ各道府県、市町村でもコロナ対策のバラまきが目立つ。毎日毎日、首相や知事らが登場した政治ショーが繰り広げられ、おカネが飛び交うのを目の当たりにする。

 働かなくてもおカネがもらえる。こんないいことはない。コロナが長引けば、多くの国民はもっともっとおカネをくれと言いだすだろう。

 「打ち出の小槌」などないから、すべて赤字国債発行で賄うしかない。逆に考えれば、赤字国債発行は「打ち出の小槌」であり、いくらでもおカネを生み出すことができる。事業破綻や大量の失業など目の前にある実体経済に関わらず、値上がりする強気の株価を見ていると、金融緩和や赤字国債がバブル再来さえ演出できると錯覚する。

 1980年代後半、株は永遠に上がり続け、地価が上昇し続けると思われた時代。世の中は好景気が当たり前で、投資すれば必ず儲かるから多くの人が株に手を出した。そんな世の中がずっと続けば、こんな楽なことはない。幻想に酔っていたのだ。大量の赤字国債を何度も発行でき、そのたびに一律10万円配布されれば、国民は大喜びだ。しかし、そんなうまい話があるのか。バブルはいつかはじける。バブル崩壊後、20年以上もの暗い時代が続いた。赤字国債の大量発行は本当に大丈夫か。

 危険な綱渡りなのか、真相はさっぱり見えない。さてさて、この難所に直面した家康ならば、どんな知恵を授けてくれるのだろう。

家康が質素でけちだった理由とは?

 家康は関ヶ原の戦いに勝利した翌年(1601年)、日本最初の銀座を伏見に設置した。1603年征夷大将軍に任じられ、江戸幕府を開くよりも前に、貨幣制度の確立に乗り出した。各大名ごとに私鋳銭が横行していては、天下統一はできないからだ。将軍職を秀忠に譲り、駿府を大御所の拠点にすると、金座、銀座、銭座の中心をここに移した。

駿府城公園に移植された東京・銀座の柳

 家康は駿府に移った1607年、伏見城に蓄えていた金銀すべてを駿府城に移した。金銀の重さで駿府城の床が抜けたという記録が残る。その年暮れ、駿府城が焼けてしまったため、金銀を久能城(現在の久能山東照宮)に移した。いまも久能山に125万両の埋蔵金伝説が残る。秀吉、家康の時代、佐渡金山、伊豆金山、多田銀山、生野銀山など全国で数多くの金銀鉱山が発見され、日本はまさしくジパング(黄金の国)だったのだ。

 家康の最大功績は、安定した政権を維持するため、すべての鉱山を幕府直轄として金銀を支配したこと。「日本人とユダヤ人」の著者山本七平は、家康が質素でけちだった理由について、第1に『幕府が通貨の一元的な発行権を握り、幕府に金の地金蓄積、いわゆる「金準備」が必要だったため』と指摘した。第2に『当時の主な輸入品は火薬、生糸、綿であり、この決済に金銀が必要だった』、第3に『財政が破綻すれば政権は維持できないと知っていた』という。歴史をおカネから覗けば、見方が変わる。

 豊臣家滅亡もおカネのためだった。1615年大坂の夏陣のあと、家康は駿府の金座長官、後藤光次を大坂城に派遣、家康を上回る大金持ち、秀吉が残した金銀すべてを没収した。聚楽第、金の茶室など秀吉は金銀を湯水のように使ったが、家康は派手を好まず、食べるものを含めて質素、倹約に徹した。江戸時代を通じて、武士のモットーは質素、倹約となり、それが幕府の安定につながった。

 それでも、さまざまな天災などで財政はひっ迫し、江戸幕府は何度か貨幣品位を落とす改鋳という「打ち出の小槌」を使い、財政基盤を強化した。金の産出量が大幅に減った佐渡金山を立て直したあと、勘定奉行となった荻原重秀の金銀改鋳が特に有名で、1・5倍の改鋳で得た利益が元禄文化の隆盛を演出した。

 ペリー来航後に開国と続き、その結果、貨幣制度が破綻、幕府は崩壊した。

 小判一両(金貨)と一分銀(銀貨)の金銀比価は1対5で、金1gに対して銀5gが同じ価値だったが、当時の国際金銀比価は1対16、金1gに対して銀16gだった。開港した横浜では銀5gで金1gが購入できたから、外国商人らは3倍以上の儲けを手にできた。初代駐日公使ハリスらは多額の金銀両替を求め、膨大な金が海外流出した。この事実に驚いた幕府は金流出を避けるため、対銀の金価格を3・75倍に引き上げた。これで一分銀の価値が3・75分の1に下がり、一分銀の下落に反映して、物価は瞬く間に3・75倍に向かって上昇した。

 驚くべき物価高騰(ハイパーインフレ)が始まり、困窮疲弊した武士らは尊王攘夷に走り、開国した幕府の無能ぶりを責めた。狂乱物価は江戸、大坂、京都などで大混乱をもたらし、家康が確立した貨幣制度は機能不全に陥った。

 今回の赤字国債の行方はいずれ、ハイパーインフレをもたらし、幕末と同じ大混乱を招くのだろうか?

大量の赤字国債発行を容認する「経済理論」

竹内日銀静岡支店長(4月13日付で本店国際局へ異動された)

 「コロナ」危機に直面したとき、政府の指導理論は「生きている人を守る」である。ウイルスとの闘いだけでなく、不況が人々の生活を困難にしているならば、何もしないで眺めているわけにいかない。108兆円もの緊急経済対策などだ。赤字国債によるおカネのバラまきでインフレの進行と通貨価値の下落が起きるリスクに対して、竹内淳・前日銀静岡支店長は「デフレ圧力があるので、インフレにはならない」と分析した。

 世界中が新型コロナの「緊急事態」にあり、おカネをバラまいているのは日本だけではない。だから、有事の際の円は強く、円高基調を堅持、国債の暴落による金利の上昇など全く起きる気配はない。円安、インフレの心配もなく、赤字国債発行にためらうこともないのだろう。

 「経済学」の科学的革命と呼ぶ、MMT(現代貨幣理論)は、日本の場合、年率2%のインフレターゲットになるまで赤字国債発行に問題はなく、赤字国債は永久債化して回収しなくていいのだとびっくりするようなうまい話をする。現在のインフレ率は1%前後だから、日本の赤字国債発行に問題なしとなる。

 と言っても、多くの正統な経済学者はMMTは単に突飛な雑な思いつきで、数字に裏付けられた経済理論ではないと批判する。まあ大体の経済理論は当てにならないし、赤字国債発行の現状を見れば、日本の政治家の多くはMMTに信頼を置いているのかもしれない。

 ただ、政治家は目先の利益で動くから、大きな落とし穴に気づかない。大量の赤字国債の高いリスクに警戒は必要なのだろう。

「令和天皇」即位の記念金貨発行を!

 赤字国債は政府が(日銀発行の)紙幣を得るためのものだが、政府はダイレクトに貨幣を発行できる。5百円までの硬貨(補助貨幣)だが、それでは大きな収益を得ることはできない。そうか、硬貨であれば、金貨も発行できるのだ。

 1986年、政府は天皇在位60周年記念の10万円金貨を発行した。金(20g含有)は10万円の40%程度で、鋳造費用を加え、6万円弱が発行益となった。1千万枚発行したから、額面では1兆円、約6千億円が発行益となった。10万円金貨は一般に流通していないから、各家庭などに退蔵された。金価格の高騰で、天皇在位60周年金貨は10万円以上の価値を持つ。

 さて、提案するのは、この未曽有の事態を踏まえた令和天皇即位の記念金貨の発行である。失業者の増加が顕著になる「コロナ」後を想定する。頃合いを見計らって、20万円、10万円金貨をそれぞれ1千万枚発行する。額面で3兆円、天皇在位60周年金貨に比べて、金の含有量は少なくていい。その発行益で生活困窮者らに10万円支給できる。

 昨年12月時点で日本の個人金融資産は1900兆円という。前回も書いたが、日本でも格差は広がり、100万ドル(1億1千万円)以上のミリオネアは何と約3百万人。令和天皇ご夫妻もコロナの影響について心を痛められている。国民の天皇家への愛慕の念は非常に強い。令和天皇即位金貨を購入する人は多いだろう。

秋篠宮ご夫妻を静岡市に迎えた

 いまから25年ほど前、絶滅の危機に瀕する野生生物を守る運動に取り組む世界自然保護基金日本委員会(WWFJ)総裁を務める秋篠宮ご夫妻を静岡市へ招き、WWFJへの寄付を募るパーティーを開いた。一人当たり20万円もの寄付が集まり、多額の浄財を元外務大臣の大来佐武郎WWFJ会長に手渡すことができた。多くの困っている人がいる一方、富裕層と言われる人々も多く、おカネの使い道に迷っていることがわかった。秋篠宮皇嗣ご夫妻の即位記念金貨も発行したほうがいいだろう。

 赤字国債でおカネをバラまくことは簡単だが、みんなが納得できる捻出法として、天皇ご夫妻、皇嗣ご夫妻の金貨発行を薦めたい。家康が残したという久能山埋蔵金を見つけられれば、それを使ったほうが早いかもしれない。家康はこんな危機を見込んで、「埋蔵金」をどこかに残してくれたのだろう。

人口100万人当たりコロナ死者数(4月19日現在)

 先週(12日)に続いて、「worldometers」(4月19日午前10時の統計)で調べた「各国の人口100万人当たり死者数」を紹介する。死者数は大幅に増えているが、100万人当たり死者数の各国順位は先週と同じだった。ニューヨーク州の死者数は異常に多い。日本の死者数はいまだ非常に少なく、東京もひと桁である。(カッコ内は実際の死者数)

 、スペイン355人(2万6606人)、、イタリア324人(2万3227人)、、フランス296人(1万9323人)、、英国228人(1万5464人)、、スイス159人(1368人)、、スウエーデン149人(1511人)、、米国118人(3万9014人)、、ドイツ54人(4538人)、、カナダ39人(1470人)、10、韓国4・53人(232人)、11、中国3・22人(4632人)、12、シンガポール1・89人(11人)、13、日本1・88人(236人)、14、香港0・53人(4人)、15、台湾0・25人(6人)など。

 ニューヨーク2162人(1万7671人)、東京8・16人(68人)

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