リニア騒動の真相77国交省はダムの話をすべきだ!

大井川最大の水問題を語ろう!

 大井川最大の水問題とは何か?

上流から送られてきた水をたたえる塩郷えん堤。この大量の水が地下導水管で川口発電所へ運ばれる

 「生命の水を守れ」ー川根本町、島田市の一部(旧川根町)の人たちの熱い思いを原稿にしたい。そう、ずっと考えていたところ、2019年3月末が期限だった中部電力の川口発電所(最大使用量毎秒90㎥)の国の水利権更新で期限切れから2年経過するのに、いまだ許可が下りていないことがわかった。河川法では更新許可に当たって、知事意見を求めることになっている。国からの書類が県に届いていないから、それ以前の審査がいまのところ続いているようだ。

 事業継続は認められているから、これまで同様に発電所は稼働しているが、県は現在のままで「正常流量」にふさわしいのか、ちゃんと調べているのか?リニア問題で流域住民の理解が重要だと言っているのだが、県は、大井川の恩恵を受ける利水団体の下流域ではなく、水源涵養に取り組み、「水返せ」を求める中流域の住民の意見をちゃんと聞いているのか?

 いまのところ、県は全く手をつけていない。

正面に見えるのが塩郷えん堤。地下導水管に回され、大井川に放流される水はわずかだ

 80年代、大井川で行われた全国初の「水返せ」運動を知る人たちも少なくなった。大井川には数多くの水力発電所が建設され、各ダムが導水管で結ばれている。当時、塩郷えん堤から川口発電所までの下流域は、年間約210日間も表流水がほとんど流れていない悲惨な”河原砂漠”の状況が全国に伝わり、大きなニュースとなった。流域住民と歴代知事が一緒になって、「水返せ」に取り組み、1989年3月、塩郷えん堤からの河川維持流量毎秒3㎥から5㎥を勝ち取った。それで、少しは改善したかもしれないが、昔の大井川を知る人たちからすれば、豊かな清流が戻ったとは決して言えない。

 それから30年はあっという間に過ぎた。ようやく、新たな河川維持流量を議論する川口発電所の水利権更新の時期を迎えたのだ。更新期限となる2019年3月が過ぎてしまったから、住民たちは川勝平太知事は何も動いてくれなかったのか、と半ばあきらめていた。最近になってようやく、住民たちは水利権更新がストップしていることを知らされた。

 21日東洋経済オンラインにアップされた『「静岡リニア」川勝知事、ダム取水になぜ、沈黙? 中部電力川口発電所、国の許可得ず稼働続ける』が記事化されたから、流域住民だけでなく、多分、知事も読んでくれただろう。

 さあ、これで、「生命の水を守れ」川勝知事の新たな出番となるのか?鈴木敏夫川根本町長をはじめ全町民が知事に期待しているのだ。

導水管で「河川流量」維持は全く問題ない

 東洋経済オンラインの記事を読めば、「水返せ」が大井川最大の水問題だとわかってもらえるだろう。それなのに、リニア問題を伝える報道はダム問題に全く触れようとしない。それでは、読者は「河川流量」の本当の意味を理解できないだろう。

3月21日付静岡新聞

 21日静岡新聞朝刊1面『中下流域の地下水 表流水維持で「影響小」』という大きな見出しの記事を読んでみれば、それがはっきりとわかる。大井川の表流水のほとんどは、導水管を流れていく。「水返せ」をちゃんと理解していれば、表流水は維持され、下流域の利水に影響ないこともはっきりとわかるはずだ。

 記事は、第8回、9回の国の有識者会議で福岡捷二座長が「中下流域の河川流量が維持されれば、中下流域の地下水量への影響は極めて小さいと考えられる」との見解を示したことに触れている。リニア工事との関係で議論されているが、当然、導水管で川口発電所までつながっているから、河川流量は維持され、下流域の利水は担保されている(詳しいことは、東洋経済オンライン記事)。

 沖大幹東大教授が一度、長島ダムの役割に触れていた。井川ダムから奥泉ダム、大井川ダム、塩郷えん堤、笹間川ダムを経て川口発電所に導水管で結ばれている。長島ダムで貯水された水は、井川ダムの水位が下がり、大井川広域水道などに影響の可能性があると思われるとき、放水される。導水管で川口発電所まで運ばれ、いざという時、長島ダムが下流域の利水ための役割を果たすのだ。

 静岡新聞記事は、ただ単に会議での生の議論をそのまま伝えるだけだから、一般読者にはチンプンカンプンで、一体、何を言いたいのか、さっぱり分からない。これでは、JR東海の工事で河川流量に大きな影響が出るという印象操作をしたいだけなのか、と疑ってしまう。

 記事の最後に、『難波喬司副知事が「河川流量が維持されるとの前提条件付きだ。維持されなければ中下流域の地下水がダメージを受けると言っているのと同じ」と指摘した。改めて、トンネル工事に伴う湧水全量戻しの議論が重要になるとの考えを示している』となっていた。副知事は立場上、「山梨県境の湧水全量戻しは重要」と発言するだろうが、下流域の地下水等に影響はほとんどないことを承知している。

 そもそも、中下流域の水問題への影響が、リニアトンネル掘削工事で最大0・05億㎥から0・03億㎥(10カ月間の工事期間中)の山梨県外流出と関係するなど有識者会議で一度も議論されていない。川勝知事の「水一滴も県外流出はまかりならぬ」発言に対応するため、JR東海は県外流出対策を有識者会議に提案している。

JR東海作成の水循環図。導水路が水色のために河川と区別しにくく分かりにくい

 記事では、JR東海が提出した、1つの水循環図を使っているが、肝心の川口発電所を削除していた。また、井川ダムから長島ダム、大井川ダム、塩郷えん堤、笹間川ダムを経て、川口発電所を導水管で結ぶ、別のわかりやすい2つの水循環図(1つは拡大図)をJR東海は資料として提出している。なぜ、こちらを使わないのか不思議である。

 この2つの水循環図を使い、読者に説明すれば、中流域と下流域の水問題が全く違うことを分かってもらえただろう。印象操作とともに、話を複雑化しようとしている。 

国交省鉄道局が複雑怪奇にしている

 専門性が高く、ある程度、わかりにくいことは仕方ないが、リニア問題をこれだけこじれさせているのは、問題を整理して、シンプルに解決の方向に導く”必殺仕分け人”のような人材に欠けているからだろう。国交省がその役割を果たすはずなのに、もしかしたら、話をさらに複雑怪奇にさせているのは、当の国交省かもしれない。

会議後、上原局長が質問を受けた

 3月14日、島田市で開かれた国交省と大井川流域10市町の意見交換会(非公開)の後、上原淳国交省鉄道局長、江口秀二審議官が会議の内容を説明した。続いて、島田市、牧之原市、藤枝市、吉田町の4首長が相次いで囲み取材に応じた=タイトル写真=。記者たちの質問を聞いていて、何だか話がおかしい方向に進んでいると強く感じさせた。

 会議の趣旨は、第9回有識者会議の福岡座長コメントについて、国交省が分かりやすく説明することだった。今回の会議のために資料を作成、江口審議官らが10首長に中身を詳しく解説した。

 ところが、国交省が作成した資料の中で「解説3:工事期間中のトンネル湧水の県外流出に対する対応策」を読んで、首をかしげてしまった。「流出量の全量を大井川に戻す代替措置として、先進坑貫通後に県外流出量と同量の山梨県内のトンネル湧水を時間をかけて大井川に戻す方策」を図に示して、説明している。

 「これらの方策の実施に関しては、今後、JR東海が静岡県や流域市町等との間で協議されるものと考える」。これが国交省のコメントである。わざわざ「流域市町等」と書いてある。流域市町とは、当然、意見交換会に参加している10市町を指すのだろう。

 有識者会議の議論では、JR東海が想定した「流域市町」とは、山梨県の自治体だったはずだ。それなのに、国交省の資料は「大井川中下流域の10市町」を指していた。「水一滴」問題までJR東海は、大井川流域市町と協議しろということになっている。

 流域市町との話は「中下流域の河川水量の減少」「中下流域の地下水量の減少」に限定すべきだ。そのテーマに沿って、ちゃんとわかりやすく説明をして、流域市町にほとんど影響のないことを理解してもらえばいい。山梨県外へ工事中の10カ月間、最大0・05億㎥から0・03億㎥の湧水が流出しても、「中下流域の河川水量の減少」に影響はほとんどない、という有識者会議の結論をちゃんと説明すればいい。

 会議後の囲み取材に応じた4首長に「有識者会議では下流域の地下水への影響はほとんどない、という結論の方向だ、みなさんは知事と同じで水一滴の流出も容認できないのか?」と聞いた。染谷絹代島田市長が「そういうことではない」と答えていたが、回答は曖昧であり、さらに「下流域の水問題への影響だけでなく、南アルプスの自然環境も問題」など生物多様性にも触れていた。県と同じスタンスであることを強調したかったのだろう。「水返せ」の川根本町の立場が最もわかりやすいが、各市町とも事情は全く違う。

 ダムの導水管問題、水利権許可は利水団体にも関係してくる。鉄道局だけでなく、中部整備局担当者も流域市町との意見交換会に出席してもらうべきである。

 単に、有識者会議の議論を説明する意見交換会では前に進まない。国交省はダムの問題をテーマにすべきであり、そうすれば、解決への糸口も見えてくる。

「飲水思源」の思想に立ってみよう

 流域10市町長は20日、静岡市で「流域住民の理解と協力を得ることなく、リニア工事着工をしないよう」求める要望書を宇野護JR東海副社長に手渡した。要望書の内容は県と打ち合わせた通りなのだろう。

 しかし、これは一体、何なのか。もし、南アルプスの自然環境保全までJR東海に求めるならば、大井川の水の恩恵を受ける下流域の自治体は、水源涵養などで応分の負担もすべきである。

 静岡市井川地区の人たちは、早期のリニア工事着工を要望している。上流と下流の経済格差や過疎の貧しさを十分に承知しているのは、中流域の川根本町の人たちかもしれない。JR東海は当然、流域のための地域貢献べきである。ただ、単にリニア工事の説明に訪れても、流域の住民たちは聞く耳を持たないかもしれない。

 知事は何度も、川根本町千頭と井川地区を結ぶ市道閑蔵線トンネル建設をJR東海に求める発言をしていた。県、静岡市、JR東海が3分の1ずつの費用を負担して、閑蔵線トンネルを建設することが望ましいが、流域10市町は一体になって、閑蔵線トンネル建設を要望すべきではないか。水の恩恵を受ける人たちは、その源流を守る人たちに感謝しなければならない。「水返せ」を理解することも同じように重要である。

 国交省が主体となって、シンプルに解決の方向に話を持っていくべきである。JR東海を指導するとはそういうことではないか。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *