「タトゥー」と「ワイン」と静岡市

日本文化の特異性を問うゴーン事件

カルロス・ゴーン氏の著作

 「日産に来てから、平時は一度もありませんでした。危機を乗り切り、胸をなで下ろそうとするたびに、まるで隕石のように新たな危機が発生する。その繰り返しです。計画通りにいくことなど、ありません。人生と同じですね。だからこそリーダーが必要なのです。」(2013年11月出版「カルロス・ゴーン リーダーシップ論」日経BP社)

 2兆5千億円以上の連結有利子負債を削減させ、奇跡的に業績をV字回復させ、英雄ともてはやされた外国人が一夜にして、メディア報道では強欲な犯罪人に落とされてしまった。ゴーン氏の犯罪への関与とともに、海外から日本という国への関心が高まっている。ゴーン氏が「いまそこにある危機」を乗り越えるために全力で戦う過程を通して、司法手続きを含めてすべてが違う欧米と日本文化の違いを認識させられるはずである。

 特異な日本文化の真価が問われる事件なのだろう。

「タトゥー」禁止で判断分かれる

 週2度ほど近くにある「ラペック」(静岡市北部勤労者福祉センター)のフィットネスジムを利用、そこには大きな浴槽、小さなサウナ室、個別のシャワー室を備えている。「タトゥー(入れ墨、刺青)の利用者を容認しているのか?」という利用者からの問いに、施設は「明らかに暴力団構成員と認められる場合を除き、禁止措置を講じていない」と回答していた。

 ところが、静岡市内にある民間施設は、すべて「タトゥー禁止」だ。

 静岡市総務課に問い合わせたところ、市の統一見解はなく、担当課の判断に任せている、と回答。担当する商業労政課は「公平公正の観点から利用を断ることはできない」と答えた。

 民間施設の「タトゥー」禁止判断は間違っているのか?

入れ墨とタトゥーの違い

 日本では1890年から戦後の1948年まで「入れ墨」は警察処分令(軽犯罪法の前身)で処罰されていた。入れ墨を背にして威嚇、周囲に恐怖を与えていたことが理由だった。

タトゥーも暴力団員も禁止だ

 静岡市公衆浴場法施行条例ではタトゥーへの規定はないが、民間施設が「タトゥー禁止」なのは、やはり周囲に与える威嚇、恐怖感などだろう。入れ墨に対する恐怖は日本人に植え付けられてきたものだ。

 静岡県は観光庁からの通知を基に、増加するインバウンド(訪日観光客)への配慮から、手のひらサイズならば威圧感はなく問題はない、また、大きなものならばシールで隠すなどして対応してもらえるよう施設にお願いしている。

 欧米での流行を受けて、日本でも若い人たちの間でタトゥーに抵抗感を持つ人は少なくなっているのかもしれない。

 ことし5月アメリカ・シアトルの家族を訪問した。その家族の26歳長女が腕から肩に掛けて、映画のシーンを再現した見事なタトゥーをしていた。後で両親に聞くと、若いときはファッションとして良くても年取って深刻な問題になることを心配していた。大人の人格が備わってからの判断であり、両親にひと言の相談もなかったそうだ。

 日本の場合、入れ墨をすれば親不孝だと考えた。

日本固有のお風呂の”裸文化”

 日本と西洋の違いではっきりとしているのは、温泉や銭湯などで大勢の人たちが裸で付き合うことだ。お風呂の裸文化は日本固有のものではないか。

 日本人はお風呂が大好きだ。お風呂にのんびりとつかる。大きな浴場で水着などはつけず、何も隠さないで平気で歩き回り、体を洗い、さまざまな種類の浴槽を楽しむ。そして、裸のつきあいをする。ところが、西洋人たちはお風呂につかわず、ほとんどシャワーで済ませている。みんな裸でお風呂を楽しむ習慣は西洋文化にはない。だからこそ、みんな素っ裸になってお風呂を楽しむ日本文化では、入れ墨のような怖い人がいないことを求める。

 ラペックの表示にある「明らかに暴力団構成員」とは、入れ墨を施している者を指すのか?どのように見分けるのか、教えてほしい。もし、体中に入れ墨をしていたら、「あなたは暴力団構成員ですか?」と誰が聞くのか?

公共施設主催のワイン講座

 ラペックでは11月30日に「ワイン基礎講座 秋の夜長を楽しむワイン」を開催する。会費は2時間3千円。街中の飲食店では飲み放題3千円コースがあるくらいだから、安くておいしくてワインがたくさん提供されるのだろう。

 公共施設主催の酒(アルコール)を楽しむ会というのは初めて聞くので、担当課になぜ、このようなイベントを開催するのか聞いた。「勤労者に楽しんでもらう」という回答だった。

 30年前ならばいざ知らず、いまやワインは簡単に手に入るアルコールであり、当然飲みすぎれば体に良いはずはない。3年前からは自転車の飲酒運転も禁止されている。「ワインの魅力を学ぶ」とチラシにあったが、ワインの次はウイスキー、次は日本酒、焼酎の魅力を学ぶ講座をラペックで開催するのか聞いたが、回答はなかった。ワインだけが別格のようだ。

なぜ、ワインだけが別格なのか

 アルコール依存症は約4百万人とも言われ、ギャンブル依存症との相関関係が深いことがわかっている。飲酒による交通事故も後を絶たない。飲酒運転者に民間の飲食店がアルコールを提供した場合、厳しく責任を問われる。

 なぜ、ワインだけは別格なのか。フランスやイタリア、アメリカのワインを飲めば、お気軽に西洋文化に触れられるつもりでいるのかもしれない。

 「タトゥー」と「ワイン」。似て非なるものだが、静岡市の対応はどこか共通点がある。

 「タトゥー」は「入れ墨」であり、「ワイン」は単に「酒」であるが、静岡市では違うらしい。タトゥーであれ入れ墨であれ、場合によっては大いに恐怖を感じるし、どんなワインでも飲めば酔うだろう。

 日本文化の特異性は、明らかに「西洋文化(圧力)に弱い」ことだ。カタカナ英語ではなく、日本語で考えて判断した場合、答えは違うかもしれない。

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