保険2 保険に加入しないが「基本」だ!

2050年年金はもらえない

 静岡グランシップで開かれた講演会「お金について考えてみよう タイゾーの金融経済超入門」(金融庁、日本銀行、静岡県などの主催)の中で、元政治家、タレント杉村太蔵(39歳)は「2050年に70歳になるが、わたしは年金をもらえない」と嘆いた。その前段で、60年前に制定された国民皆年金法の制度設計が間違っていたことも指摘。つまり、いまから30年後、国のミスもあって年金を受け取ることができないひどい時代が到来する、それが「タイゾーの金融経済超入門」の趣旨だった。「歴史的にいま、わたしたちは大転換点の時代にいる」と自虐的なギャグを交え、会場の若い人たちをステージに呼んだりして「大転換点の時代」を説明。軽妙なおしゃべりは詰め掛けた多くの人の笑いを誘っていたが、30年後?に年金受給者入りする若い人たちが、「2050年の未来」をしっかりと実感できたのかどうか。

 2009年厚生労働省は「2031年に厚生年金積立金が枯渇し、年金制度が破綻する」と試算、さらに2050年までに厚生年金だけでなく、国民年金も積立金が枯渇すると予測した。2050年は65歳以上の年金受給者1人当たりを現役世代(20~64歳)1・2人で負担する人口割合となる。年金積立金が枯渇、現役世代が支払う年金保険料を65歳以上に回すこともできず、年金財源を新たに確保しなければ、70歳のタイゾーは年金を受け取ることはできないわけだ。

 そんなに暗い時代が到来する話なのにエンタテインメントに徹した「タイゾー」ショーは大笑いが続いた。年金制度の破綻など誰も信じていない?

「年金」保険に入れば、将来安泰か?

 先週知人の独身女性A子さん(53歳)から6通もの保険証券を預かって中身を吟味してほしい、と依頼された。保険はすべて日本社のみで、義理がらみで頼まれ加入したものばかり。リストラで会社を移り、年収がほぼ半減したため無駄な出費を減らしたい、できれば、整理したいのだが、自分では理解できていないという。計算すると、年間約60万円も保険料を支払っている。これでは整理したい気持ちはよくわかる。

 6通のうち、「年金」保険は3通もあった。1通目が「個人年金保険10年確定」。1990年24歳のときに加入、60歳まで36年間、毎年8万8千円支払い、60歳から10年間80万円ずつ合計8百万円を受け取る。掛け金の合計317万円だから、約2・5倍の保険金を受け取る。最後の受け取りは69歳だが、この保険を”お宝保険”と他社の営業社員が言ったとのこと。いまの時代から見れば、確かにそうなのだろう。

 2通目は「年金払い積立傷害保険」。1996年30歳のとき加入、60歳まで毎月1万円(年12万円)支払う。30年間合計360万円、60歳から64歳まで5年間、毎年約110万円ずつ合計550万円を受け取る。傷害保障が約1千万円あるため、その分年金額が少なくなる仕組みだ。

 3通目は豪ドル建て無配当個人年金保険。2年前、51歳で加入、65歳まで毎月1万5千円総額252万円を支払う。契約時積立利率2・5%とあるが、小さな字でいくつもの(注)がつき、肝心の70歳から10年間受け取る年金額は会社の定める方法で計算する金額とあるだけ。金融庁が外貨建保険への監督強化を打ち出したニュースが流れたばかり。本サイト「保険1 積立利率3%のなぞ」で指摘したように為替手数料、為替リスクなど考慮した上で加入すべきだが、保険証券には何ら記されていない。なぜ、最近になってこんな危ない保険に加入したのか?

保険に入っても大損する

デフレに沈む暗い話題ばかり

 2001年8月号の「文藝春秋」に『生保破綻で大損した筆者が教える「賢い保険術」』を書いた。当時、千代田生命加入当時5・5%の予定利率の生命保険を「転換」するように勧められたのを機会に、千代田と交渉した記録を紹介した。1997年の日産を皮切りに、東邦、第百、大正、千代田、協栄、東京の7つもの生保が破綻したことなど懐かしい記憶である。

 わたしの場合、千代田破綻後の保険金は6割カット、予定利率も1・5%に引き下げられた。魑魅魍魎のうごめく保険会社を回り、保険の基礎知識を得ることができたのは貴重な財産になった。現在も保険会社の体質は変わっていない。20年が過ぎて、A子さんの”お宝保険”のように過去の予定利率の高い保険はお荷物だろう。最近の保険は1・5%に遠く及ばないのだから、大損する仕組みははっきりしている。

 はっきり言えるのは、「保険はできるだけ入らない」がすべての基本だ。保険会社が儲かる仕組みの保険ばかりで、加入者にとって得になる保険など皆無。やはり相談を受けた自営業者のB子さんを年金保険に加入させたのは、税制上の利益(年間8万円の保険料で4万円の所得税控除)を受けられるからだ。10年間支払い、元金が戻ってくるのは15年も先のことだが、それでも税制上のメリットは大きい。

 生命保険が必要なのは子育て期間中のみで、年間10万円以内(年8万円で4万円所得税控除)×20年間程度の死亡保障が高い定期保険がお薦め。がん保険も医療保険も不要である。

「金を稼ぐ」パワーが必要

 さて、タイゾーの講演会で厚生年金、国民年金もひどいことがわかった。こちらも「保険はできるだけ入らない」を実践できるのか。会社に勤めていれば、いやでも給料天引きで厚生年金保険料が引かれる。まるで税金である。ほとんどのサラリーマンの場合、「年金保険料=税金」のようだ。

 厚生年金、国民年金が保険である理由は、将来の生活保障(タイゾーの説明通り当てにならない)とともに、病気やけがなどの障害認定を受けたときに受給できる障害基礎年金や被保険者の遺族に支払われる遺族年金の役割を有しているからだ。それを考えるとますます、民間の保険に加入する必要がなくなってしまう。

 講演会で、タイゾーは「元本保証」で利率20%、30%という投資詐欺が横行しているので注意をするよう呼び掛けていた。日本人の好きな「元本保証」につけこんでいる、という。くれぐれも厚生年金、国民年金が「元本」割れにならないことを祈るが、タイゾーは大丈夫なようだ。 

わたしの年金手帳は「社会保険庁」の文字が記されている

 タイゾーは「悲惨な世代」に向けて政府広報のスピーカーを務め、全国津々浦々に出掛けて2百回以上を超える「タイゾーの金融超入門」講演会でギャラを稼いでいる。年金が破綻しようが、「金を稼ぐ」パワーがありさえすれば全く問題ないことを訴えていた。会場に詰め掛けた若い人たちは、タイゾーの年金に頼らず生きる「パワー」に共感していたが、本当に大丈夫か。保険会社破綻や旧社会保険庁のずさんな年金をめぐるさまざまな事件を見てきただけに、将来、年金制度に何が起きるのかわたしにははっきりと見える。

 ところで、静岡県金融広報委員会が取材に訪れたわたしに「注意」することがあると言って会場の外につまみ出された。結局、何らの「注意」もなかった。それが一体何だったのかぜひ、知りたいものだ。書いてはならないことを書くな、ということもかもしれない。それは何だろうか?

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