マンション理事長へろへろ日記1裁判を起こす

マンション管理士に気をつけろ

 4月29日付毎日新聞朝刊に『マンション管理のトリセツ』(幻冬舎から自費出版)を紹介する半5段広告が掲載されていた。部数の急激な落ち込みが伝えられる毎日新聞とはいえ、全国版広告だから、掲載費は決して安くないだろう。「好評につき重版でき」とうたっているから、売れているようだ。「マンション管理」に関心を持つ人が数多くいるらしい。

 「管理会社と設計事務所の財布にならないために」、「悩める管理組合理事・役員 必読の一冊」というキャッチコピーも目を引いた。上半身の大きな写真つきの著者肩書には、NPO法人近畿マンション管理者協会会長、マンション管理士となっていた。ネットで調べると、「近畿マンション管理者協会」ではなく、「マンション管理者協会」が正式名称のようだ。HPでは、大規模修繕工事のコンサルタントやリプレース、理事長代行業務等の各種業務を行い、管理組合からの報酬を得ていると書かれていた。近畿地区にはマンションがたくさんあり、商売繁盛のようである。ただ、マンション管理士という肩書だけで信用するのは危険であり、マンション管理組合理事、役員は気をつけたほうがいい。

 静岡経済新聞「お金の学校」の2019年7月1日付『謎の「マンション管理士」に気をつけろ!』で、マンション管理士とは何なのかを書いた。わたしのマンションをキャバクラ寮に貸し出したH育英会とのやり取りの中で、H育英会が相談したというマンション管理士と面会し、その不思議な活動を紹介した。H育英会側に立って便宜を図るような活動したマンション管理士は、そのために平然と真っ赤な嘘をついていたのである。

 マンション管理士という国家資格を持つ専門家が嘘をついていたことが分かったから、すべての事情をマンション管理士の全国組織・日本マンション管理士会連合会に質問状を送った。同連合会が当マンション管理士からも事情を聞いたあと、わたし宛に謝罪とともに、当マンション管理士に対する処分の文書を送ってきた。当マンション管理士は、H育英会に便宜を図るために非弁活動を行った可能性が高い。管理会社には、数多くのマンション管理士の資格を持つ社員が働く。もしかしたら、マンション管理士が管理会社の意を汲んで活動しているかもしれないのだ。

 「NPO法人近畿マンション管理者協会の会長が本音で語る一流のマンション・マネジメント」というキャッチコピー通りであれば、『マンション管理のトリセツ』は参考になるのかもしれないが、十分に注意をしたほうがいい。

 もうひとつ、「国土交通省が勧めた理事・役員の輪番制は廃止すべき」と内容の一部も紹介してあった。それはその通りである。つまり、マンション管理士を信用、そのことばを鵜呑みにしないためには、理事・役員は必要最低限の知識とともに経験が必要であり、輪番制では単なるお飾りになってしまう可能性が高いからだ。つまり、管理会社に任せきりとなってしまう。

 わたしのマンションは管理会社へ委託せず、自主管理を行い、わたしが25年以上、理事長としてさまざまなトラブルに当たってきた。『マンション管理のトリセツ』は何かの役に立つのかもしれないが、わたしのマンションでは少なくとも「管理会社」や「設計事務所」の財布になることはなかった。

 わたしのマンションは8階一棟建てマンション(1階が駐車場)だから、7区画、7世帯しか住んでいない。管理会社に委託したくても、7世帯の管理費等では財政的な余裕はないから、管理会社に費用を払って委託するのは合理的ではない。管理会社の「財布」にならないのは、それだけお金が潤沢ではないからだ。

 大規模マンションであれば、多額の収入があり、潤沢なお金の中で、”腐敗”の生まれる可能性もあり、国交省は理事・役員を定期的に交替するように勧めている。しかし、わたしのマンションのように7世帯しかない場合、どのようにしたら、将来の大規模修繕のために積立金を増やしていくのか頭の痛い問題であり、毎年の管理費等をいかに少なく済ますのか必死にならざるを得ない。

 さて、そろそろ本題に入る。25年間も理事長をやっていると、さまざまなトラブルに直面する。今回のトラブルは裁判に発展してしまった。

マンションをキャバクラ寮に貸し出した育英会

 どんな素晴らしい住宅でも購入後、そこで生活してみると、さまざまな問題が生じる。わたしの住むマンションでも、びっくりするようなトラブルが次から次へと起きてきた。その度に、理事長一人で対処しなければならない。トラブルに当たるのは嫌いではないが、今回のトラブルはちょっと面倒で大変である。いまも解決に至っていない。

 それで、今回のトラブルの対応について、経過報告をしながら、マンションに住む人たちにマンション管理について関心を持ってもらいたい。少しでも”生きた教科書”になれば、幸いである。

 わたしは、1993年にJR静岡駅から徒歩約15分~20分の繁華街にマンションを購入した。91年新築、約91㎡の専有面積でエレベーターが開くと、そのまま玄関という、当時としてはグレードの高いマンションだった。映画館やデパート、スーパーマーケットなど至近距離にある。バブル時代に計画したから、バブル崩壊で売れ残り、大幅値引きが始まった。ようやく3区画売れ、わたしは新築2年後にさらに値引きすると言う営業担当者の勧めに乗ってしまった。わたしが入居した段階では、3区画は売れ残っていた。その後、何年も掛かって、買い手がついた。その間に、マンション価格はわたしの購入したときから大幅に下げた。長期の住宅ローンを支払いながら、資産価値の下がるのを横目で見ていた。

 93年に購入したあと、分譲した不動産会社とのトラブルに当たった。不動産会社が売れ残り区画の管理費等をちゃんと支払っていなかったからだ。このときには、静岡地裁で調停を行った。何とか、不動産会社から請求額の半分をもらい、その功績が認められた。95年に理事長に就いてから、ずっと理事長としてマンション管理の現場に立ってきた。

 今回のトラブルの発端は、2019年7月1日付『謎の「マンション管理士」に気をつけろ!』でも書いた、7世帯のうち、唯一、賃貸に出しているH育英会所有の1区画をキャバクラ寮にしてしまった問題である。

 2017年9月末、突然、H育英会から新入居の電話連絡が入った。当然、どのような入居者か聞いたが、プライバシー侵害に当たるので職業さえ言うことができないと説明された。翌日、入居あいさつに来た若い男に聞くと、”キャバクラ従業員”と名乗った。前日提出された届け出書類にある氏名、電話番号は若い男とは違い、それがキャバクラ会社の社長のものだった。そこで、キャバクラ寮としてH育英会が賃貸に出したことがわかった。

 その後、何度も何度も、H育英会にはキャバクラ寮契約の解除を求めたが、H育英会は拒否し続けた。2019年3月の通常総会で、H育英会に制裁的な管理費等の値上げで対抗した。H育英会は値上げ分の支払いを拒否した。こちらは管理規約の改正とともに、滞納金請求を続けることで、キャバクラ寮の契約解除を求めていた。

 昨年のコロナ禍の中、H育英会は全く連絡もなく、突然、マンションを売却した。売却を担当した不動産会社は、新たな買主に重要事項の告知を行う義務がある。わたしは、重要事項としてH育英会の管理費等滞納金68万円がある旨を知らせた。

 新しくマンションを購入した女性Kは、H育英会から管理組合から滞納金と言われているが、法的根拠はないので支払う理由はないと説明を受けたのだという。H育英会の事務局員Tとその父親のT常務理事(弁護士)から説明を受けたようだ。もともとはこのマンションを購入、ここで亡くなったHさんの遺言承継人、弁護士がTであるが、面識は全くない。Kは、H育英会(亡くなったHさんの遺産の一部でつくったから、H育英会と称している)と支払う義務のない契約をしたから、管理組合には滞納金を支払わないと通告してきた。

 理事長として、そのまま滞納金未払いを黙って見過ごすわけにはいかない。

静岡簡裁から静岡地裁へ「移送申立」反対

 キャバクラ寮の契約解除のためにさまざまな苦労を味わされた。このまま滞納金を未払いで済ますわけにはいかない。けじめをつけなければならない。結局、管理組合が原告となり、Kを被告として、68万円の滞納金請求訴訟を静岡簡易裁判所に起こした。

 3月の通常総会で議題として取り上げ、Kにも訴訟提起を説明した。友人の弁護士に会って、68万円の滞納金請求訴訟を受けてもらえるのか聞くと、面倒な手間は同じだから、100万円程度の弁護士費用となってしまう、という。少額訴訟の裁判を低価格で受ける弁護士は非常に少ないとのことだった。それで、本人訴訟と決め、訴状をつくり、立証のための詳しい証拠をつけて、3月22日、静岡簡裁に提出、無事に受理された。

 4月28日になって、Kの訴訟代理人にH育英会のT弁護士が就いた、と知らされた。それだけでなく、Tは静岡簡裁から静岡地裁への移送申立書を提出してきた。なぜ、静岡地裁へ移送するのか、さっぱり理由がわからない。それで、この訴訟について、相談した友人の弁護士に連絡すると、簡裁裁判官のほうが”優しい”と曖昧なことを言っていた。

 30日午後、「移送申立に反対する意見書」を静岡簡裁に提出した。

 T弁護士は管理規約で「静岡地方裁判所をもって、第1審管轄裁判所とする」とあり、民事訴訟法第11条に基づく「専属的合意」による管轄の定めとしている、と移送の理由を書いていた。

 これに対して、1)当マンション管理規約は「専属的合意裁判所とする」とまでは定めていない。管理規約制定時、当マンションの所在地から最も至近距離にある裁判所を選択して、静岡地裁としたのであり、静岡簡易裁判所であってもその条件は全く同じである(静岡簡易裁判所は1階にあり、2階から静岡地方裁判所になっている)。2)簡易裁判所と地方裁判所の審理に何ら変わりはないから、管理規約に反することにならない。3)3月13日開催の管理組合総会で、被告Kに対して、訴訟を起こす旨を説明した。68万円という少額であり、簡易裁判所に提訴することも説明、Kから異論、反論は出なかった。4)2003年公布の「裁判の迅速化に関する法律」では、裁判所、弁護士、当事者は裁判の迅速化を推進する責務を負う。移送すれば、5月11日の第1回口頭弁論の期日が変わり、裁判の遅延は確実である。この4つが移送反対の理由だった。

 5月7日、静岡簡易裁判所書記官から電話があり、「裁判官は静岡地裁への移送を決定した」と告げられた。決定及び理由の書面到着から1週間以内、即時抗告ができる旨も告げられた。

 本人訴訟としたが、相手が弁護士となれば、今回の移送申立同様に裁判テクニックは不可欠なのかもしれない。友人の弁護士に電話で、相談業務のみ乗ってもらえるよう依頼、了解してもらった。近く、弁護士と面会して、費用等についてちゃんと確認する。

 民泊の場合同様に、キャバクラ寮としての貸し出しを規制できるのか、また、管理費等を制裁的に値上げしたことが法的に問題ないのかどうか、この裁判で争うことになるはずである。

※「マンション(管理組合)理事長へろへろ日記」は、今回の裁判にへこたれないよう、その経過を報告して、みなさんの支援を得ていくのがこの連載の目的です。『裁判官も人である 良心と組織の狭間で』(岩瀬達哉著、講談社)によると、簡易裁判所の裁判官年収は約1500万円らしい。なぜ、わたしの反対意見書が採用されなかった理由がちゃんと書かれているのだろうか?

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