川勝VS田辺2「劇場型選挙」は不発に

難波副知事の市長選撤退

 4日県庁で、難波喬司副知事が静岡市長選に「出馬しない」ことを宣言した。また川勝平太知事に辞表願を提出したが、知事は受け取らず、引き続き、難波氏は副知事として県政にあたることも明らかにした。当初の予想通り、会見内容は「市長選不出馬」と「副知事職の継続」の2点のみだったが、テレビ、新聞の取材陣は驚くほどに多く、また、翌日の新聞報道でも中日新聞の1面準トップ、社会面トップ、中面トップの破格の扱いをはじめ各社とも大きな紙面をさいて、このニュースを伝えた。

 記者会見前に「予想に反して、副知事が出馬宣言すれば大きなニュースなる」と記者の一人が冗談めかして言った。1月25日中日新聞は朝刊準トップで「難波氏 事実上の出馬表明」と顔写真入りで大きく伝えた。前回の市長選でも、田辺氏の対立候補が川勝知事の出席した出版記念会の翌日、出馬表明している。自著の出版記念会後に難波氏は「近いうちに出るか出ないか決める」と述べただけだったが、発言や会の盛り上がりなどから中日記者は「出馬の意向」と受け止めた。その報道は支援団体らの期待を膨らませた。

 どう考えても、情勢を正しく分析すれば、難波氏の出馬がいかに困難か予想できた。出馬を望む川勝知事、市民団体らの声がどんなに大きくても、ほとんどの政財界メンバーは田辺氏を推薦する側に回っていた。

 選挙に不可欠な3要素をたとえた「3バン」の「ジバン(地盤=支援組織など)」「カンバン(看板=容姿、知名度など)」「カバン(鞄=選挙資金など)」を見ても、地元出身、小中高時代からの友人も多く、難波氏よりも5歳年下で見た目も若い田辺氏に軍配が上がる。すぐれた政策や資質ではなく、選挙では3バンが重要であり、何よりも現職の後援会組織は大きな強みである。

「静岡県型県都構想」が争点

 「信条の『共創』で、みんなと課題解決することを訴える選挙戦にできるのであれば、立候補したいと思っていたが、劇場型の選挙に出馬するのは公務員としての私の信条に合わない」。また、「相手方を徹底的にたたく」劇場型選挙は「望ましくない」と述べた。すべての新聞が「劇場型選挙を望まない」と報道している。

 「劇場型選挙」とは、2005年小泉純一郎首相が「郵政民営化」の賛成か反対かという単純明快なキャッチフレーズで国民の信を問うた衆院選挙で使われた。「小泉劇場」「刺客」などが新語、流行語となり、小泉氏率いる自民党圧勝の選挙戦略となった。

 2014年の大阪府知事・市長選では「大阪都構想」、また東京都知事選で「原発反対か賛成か」で同じような「劇場型選挙」が戦略として使われている。

政策などではなく公務員の能力UPを説いた難波氏の著書

 多分、難波氏はわかっていて「劇場型選挙」を使ったのだろうが、もし、難波氏が立候補していれば、川勝知事が繰り返し述べていた「静岡型県都構想」が選挙の争点になっていたのではないか。法律的には「県都構想」は難しいが、川勝知事の意向を受けて静岡県、静岡市が連携して相互に補完し取り組む新しい行政スタイルを「静岡型県都構想」として訴え、冷え切った静岡県との良好な関係を築くかどうかが選挙の争点になったはずだ。そうなれば、多くの市民は「静岡型県都構想」に期待しただろう。

 ただ、いまのままでは単に「川勝VS田辺」は一種のけんかにしか見えない。何度か「川勝VS田辺」の応酬があったが、表面的に仲の悪いことは見えても、その応酬の中身がどちらが正しいのか、また、自分たちにどんな利益があるのか市民には見えないからだ。「静岡型県都構想」で、事業整理や行革などが進み、法人、個人の住民税、国保税、水道料金などが大幅に減少できるところまで提案しなければ、市民には「劇場型選挙」同様にちんぷんかんぷんで争点にはならないだろう。

虎視眈々と知事選狙う細野豪志氏

 「知事と副知事はともに静岡市政批判を口にしてきた」(毎日)、「一連の騒動で知事と田辺氏の確執は修復しようがなくなった」(読売)など今回の出馬騒動で、県と静岡市との関係は完全に冷え切ったとの見方が大勢を占める。

 また、難波副知事の慰留について「知事が自らの批判を回避したとの見方がある」(静岡)、「田辺氏の対抗馬を擁立できない上に『右腕』を失うことになり、自身の求心力の低下を招きかねない事態」(読売)と見られ、さらに「市長選で『不戦敗』になった後、過剰に市政批判を重ねれば県政に対する民意は離れかねない」(毎日)と厳しい指摘もあった。

2016年1月平山佐知子氏の参院立候補会見に同席した細野豪志氏(当時は民主党だった)

 そこで登場するのが細野豪志代議士である。自民二階派の特別会員となり、党入りを目指す動きが連日伝えられる。当然、自民県連、5区支部とも入党拒否要請を本部に申請しているが、細野氏の狙いは2021年7月の知事選だとすれば、全く問題ない。京都府出身の細野氏が静岡に降り立ち、三島地域を選んだのは、全国をマーケティングして「ここならば勝てる」と踏んだからであり、生まれたばかりの赤ちゃんともども選挙区を回り、20代だった細野氏は大学生ら若者を味方につけ、圧勝。その後の活躍はご存じの通りである。

 いまは風見鶏として厳しい批判を受けているが、2021年10月の衆院選ではなく7月の知事選となれば、5区支部も関係なく、川勝知事の対抗馬に悩む県連も受け入れ、田辺氏は応援に回るだろう。そこまで計算して、細野氏は自民党入りを目指している可能性が高い。川勝知事が4選に出馬すれば、今回の騒動は大きな失点となるかもしれない。

 「知事と市長ではうまくいかない県との間の懸案が難波さんのおかげでうまく解決できてきた。とどまってよかった」(朝日)と市幹部の談話を紹介、副知事が県と市との接点の役割を果たしている。「実務家公務員の技術力」(発売元・静岡新聞社、1800円+税)に「60代は、実務家公務員として積み上げた技術力が社会問題の解決のための重要資源となる」と書かれている。「リニア環境問題」など静岡県の将来に向けて最善の方向で解決する「技術力」を60代の難波副知事が発揮してくれることを大いに期待したい。

※タイトル写真は中日新聞4日朝刊1面準トップです。

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