「県議の資格ない」川勝知事発言の行方

なぜ、「謝罪」に転じたのか?

 12月25日付朝刊の新聞各紙は知事会見について、読売、静岡、朝日、産経は「県議の資格ない」「やくざ、ごろつき」発言を伝えたが、中日、毎日は記事にしなかった。最も大きな扱いは朝日で、地方版のトップ記事だった。

 24日午後2時から始まった川勝知事の会見は1時間を過ぎたところ、静岡新聞記者の質問で会見の様相が一変した。ことしの漢字を「祥」と書いて、1年を振り返り、笑顔が続いた川勝知事の表情は急に厳しいものになった。

 「文化力の拠点」を巡り、公明党県議団、共産党県議との面談で「反対する理由は川勝が嫌いだというだけ」「反対する人は県議の資格はない」などとした発言について、記者は「謝罪、撤回しないのか」と問いただした。この記事を掲載したのは静岡新聞のみで、他社は取材していない。この質問に対して、川勝知事は「撤回する必要はない」「こんなことを言った覚えはない。書いた人はそう思って書いたが、言った覚えはない」などと述べた。

 もし、知事の言う通りならば、静岡新聞は「嘘」を掲載したことになる。記者は「当方の信用に関わるので、議会の要請があれば、音声記録を提供する」と追及したが、川勝知事は「言った覚えは全くない」とした。

25日付朝日新聞朝刊

26日付静岡新聞朝刊

 ところが、朝日記者に続いて、NHK記者の「やくざ、ごろつきと言ったのか」という質問で、知事は「(図書館)建設に反対する人はいない。県民がみな欲しいと言っているものに反対するのは公益に反する。公益に反する人は議員の資格がないと申し上げた」、さらに「公益に反する人を反社会的勢力という。それはやくざ、ごろつき」などと述べた。結局、川勝知事は20日付静岡新聞に掲載された発言を認めるかっこうとなったが、謝罪、撤回は最後まで拒否した。

 25日夕方、急展開する。川勝知事は緊急記者会見を開き、発言をすべて謝罪したのだ。発言の撤回まではしなかった。静岡新聞によると、2月県議会で来年度予算審議への影響が避けられない、つまり、2020年度予算案を否決するなどと最大会派の自民党県議団が県に伝達したことで、川勝知事も謝罪会見が避けられないと考えたようだ。

県立図書館の駐車場は「有料」に

坪内県議も雑誌静岡人のPRに一役買ってくれました

 「文化力の拠点」について、24日の会見で川勝知事は「職員の(県議団への)説明不足がはっきりした」と述べた。12月県議会では、事業規模などを巡り自民の坪内秀樹県議の代表質問に対して、川勝知事が詳細に答弁した。それでも、今月末に予定していたパブリックコメント(意見聴取)は延期された。その延期に対して、川勝知事は「公益に反する」などと発言、「ごろつき、やくざ」「議員の資格はない」などにつながった。

 川勝知事はどこに問題があるのか、ちゃんと理解しているのだろうか?

 12月県議会の答弁で川勝知事は、図書館来館者について岡山県の100万人、山梨県の90万人を例に出して、「魅力ある図書館を整備すれば、それに応じた集客を生む」として、現在の20万人から「100万人」も可能だと述べた。

 さらに「食の都」にふさわしい、さまざまな食を楽しめるレストラン、フードコート、カフェなどのワンフロア全体に集め、図書館に来なくても食を楽しむ人たちが集まる施設にしたいと述べている。AI、ICTの拠点、大学コンソーシアムなど魅力あふれる施設などは当初の計画とは大幅に変わっている。

 昨年度、県立図書館が新図書館建設で行ったパブリックコメントを見て、驚いた。そこに「駐車料金を減免してほしい。広い駐車場がほしい」という意見が寄せられていたからだ。

写真手前に県立図書館施設を計画。向こうに見えるのが、日本の文化パチンコの殿堂だ。駐車場は無料。

 現在の県立図書館は県立美術館の隣にあり、駐車場は「無料」である。しかし、新しい図書館では駐車場は「有料」となることが決まっている。お隣の山梨県では最初の1時間は無料だが、その後有料である。しかし、新県立図書館では最初から「有料」となる。東静岡駅と隣接するだけに、駐車場を無料というわけにはいかないらしい。県民は図書館を利用するためには駐車場代を支払うことを歓迎するだろうか?

 現在、グランシップの駐車場(550台)はグランシップ利用者は半額となっている。県立図書館が建設されれば、両者は同じ駐車場を共有して利用することになる。これまでのグランシップ駐車場と同じ方式が採用される可能性が高いだろう。

 12月県議会で川勝知事は「学生時代、昼食、夕食の食費を削って本を買って、勉強した思い出がある」などと述べた。それだけに、県立図書館への思い入れが強いのかもしれない。ただし、毎日、長時間、図書館で勉強すれば、昼食、夕食の食費は駐車場代に消えてしまうわけだ。

駐車場の大混雑は避けられるのか?

 駐車場は現在(550台)と同じ規模である。年約70万人来館するグランシップ、年100万人来館する県立図書館だけでなく、ワンフロア―すべてが「食の都」となれば、同じ駐車場をすべての施設で共有するだけに、土曜、日曜日は大混雑を引き起こすことの懸念はないのだろうか?

 図書館、食の都だけでなく、AI、ICTの拠点、大学コンソーシアムなど魅力あふれる施設にすればするほど、来館者は増えるだろう。グランシップのイベントだけでも駐車場が満杯になる場合がよくあるのに、果たして、新たな数多くの利用者を見込めば、駐車場が不足する事態は避けられないだろう。

 県議団の各会派はプロジェクトチームをつくり、施設の問題点を洗い出すことになった。今回の知事発言で多くの県民が「文化力の拠点」に強い関心を持つことになっただろう。

 19日、共産党の鈴木節子県議は「県立中央図書館にいろいろ付けて財政が膨らむのは再考すべき」と求めた。川勝知事は「県議会はなぜ、足を引っ張るのか。反対する人は県議の資格はない」とまで述べたようだ。

 まず、「文化力の拠点」にいろいろ詰め込むのではなく、「県立中央図書館」機能のみにすべきである。「県立図書館」に反対する人はいないが、その他の機能には県議会各派も疑問を抱いている。

 図書館の駐車場が「無料」から「有料」になる。それだけでも、多くの県民は反対意見を持つ。さらに、グランシップと共有の駐車場では、大混雑を引き起こす可能性さえある。

 「県議の資格はない」かどうか、来年度予算案を審議する2月県議会定例会で「文化力の拠点」についてさまざまな議論が出ることを期待したい。議会は行政のチェックをする役割が大きい。知事がその議会に対して、反対する人は「県議の資格はない」「やくざ、ごろつき」などと言う発言が正しいのかどうかは、議場での議論で明らかになるだろう。

 県立図書館に反対しているわけではなく、「文化力の拠点」機能や膨らむ事業費に異論があるようだ。少なくとも、わたしは県立図書館の駐車場が「無料」から「有料」になることに反対であり、大混雑も避けたい。多分、多くの県民も同じではないか?しっかりとパブリックコメントを行い、県民の意見に耳を傾けてほしい。

※タイトル写真は、自民の坪内県議が「文化力の拠点」について疑問を呈した12月県議会。「県議の資格はない」など本人たちの前で言えるのかどうか

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