コロナ危機4 無敵の「免疫」所有者は5人に1人!

映画「コンテイジョン」が教える現実

DVDのジャケット

 「新型コロナ」のパンデミック(世界的流行)を予言したと評判が高く、ネット動画配信サイト・ネットフリックスなどでランキング1位を続けるアメリカ映画「コンテイジョン(Contagion、接触感染)」(スティーヴン・ソダーバーグ監督)。題名の通り、他人との接触だけで感染していくために小池百合子東京都知事がよく使う「オーバーシュート(感染爆発)」が全世界で起こってしまう。感染したアメリカ女性の隣にいたまさしく日本人のステレオタイプ「黒眼鏡、黒スーツ」男性ビジネスマンが東京へ帰り、バスの中で意識を失い、倒れてしまうシーンが登場する。その後、日本でオーバーシュートしたかは定かでないが、病名不明の男性と接触したバスの乗客や救急隊員らが次々と感染していったと予測される。

 マカオのカジノで感染したアメリカ女性は帰国後、自宅でけいれんを起こし、意識を失ったため、マット・デイモンふんする夫が女性を病院に連れていくが、女性は亡くなってしまう。夫が自宅に戻ると小学生の息子も同じ症状で死んでいる。女性の同僚、息子の学校のクラスメートなどに集団感染が起こり、全米、全世界に感染は広がり、パンデミックとなる。学校閉鎖、医療崩壊、食料品などの買い占め、ロックダウン(都市封鎖)によるパニックなどが起こり、まさにいま世界のどこかで起きていることを予言したシーンがこれでもかと続く。

 UCLAサンフランシスコ校の研究者により、新型ウイルスが2003年のSARS同様にコウモリコロナウイルスの新種であることが突き止められ、CDC(米疾病予防管理センター)を中心にワクチン開発に必死で取り組んでいく。コロンビア大学感染症予防センターの研究者が監修しただけに、リアルな医療現場に焦点が当てられている。「人は1日に2千回から3千回も顔や頭を触り、起きているときには1分間に3~5回触る」として、接触感染を防ぐための水と石鹸による手洗い、マスクの着用なども映画の中で薦めている。特に、マスクの習慣のなかった欧米では、いまの現実そのものである。

 最後に謎の病気の原因がわかる。ウイルスの宿主コウモリの落とした食べかすを子ブタが食べ、そのブタを調理した中国人からアメリカ女性、日本人ビジネスマンらへ感染していく。そう、まさに今回の新型コロナの発生を連想させるシーンで終わるのだ。2012年の公開当時、日本ではヒットはしなかったが、2020年の最高傑作に挙げられるだろう。

 ところで、マット・デイモンふんする夫は妻、息子2人と濃厚接触するが、けいれん、意識障害など症状も出ないし、何らかの処置もしないのに元気そのものだ。周囲すべての人たちがマスクなどで防御をするのに、マット・デイモンだけは最後のシーンまでマスクさえ着用しない。

 これは虚構の映画であるから、そんな設定をしたのか?それとも、現実の世界でも新型コロナに「免疫」を持っている人間がいるのか?ネットなどで情報を探したが、残念ながら、本当のことは分からなかった。

 ようやく最近になって、実際に新型コロナでも最初から「免疫」を持つ人がいることを英国の科学雑誌が教えてくれた。

17・9%が「不顕性感染者」と判明

 5月12日号の英感染症専門誌「ユーロサーベイランス」が、新型コロナに感染しても、全く症状の出ないまま治ってしまった人の割合を明らかにした。ウイルス名「SARS-CoV-2」(コウモリコロナウイルスに関係する、SARS-Cov-1に近い7番目のコロナウイルス)に感染しても、熱、のどの痛みや咳、だるさ、肺炎など新型コロナの病名「COVID-19」に掛からない人たちがいる。新型コロナに対する「免疫」を獲得している人を「不顕性感染者」と呼んでいる。

 「不顕性感染者」はワクチンも治療薬も必要ない。どこかは分からないが、体の一部の何かが違うのだ。それで、最初から「新型コロナ」に負けない「免疫力」を持っている。そんな無敵の人たちがわたしたちの周りにいるのだ。

 調査結果を発表したのは、京都大学、オックスフォード大学、ジョージア州立大学の研究者グループ。新型コロナ感染の流行で『1、亡くなった人 2、発熱や咳、肺炎などの症状の出た人 3、全く症状の出ないまま治ってしまった人(不顕性感染者) 4、未感染者』の4グループに分類した。3番目の「不顕性感染者」が数多く存在することで新型コロナウイルスは、SARSやMERSに比べて毒性が強くないことがわかる。

プリンセスダイヤモンド号(パンフレット)

 調査では、横浜港に停泊したダイヤモンドプリンセス号のクルーズ船乗船員3711人を対象に、3063回PCR検査が行われ、634人に陽性反応が出た。2月21日までに306人に症状が出て、2週間の潜伏期間などを経て、最初にPCR検査で陽性反応が出たが、全く症状の出ないまま治った「不顕性感染者」を113人と推計した。PCR検査で陽性とされ、隔離されたが、熱など軽い症状さえ出ない人が17・9%もいたことになる。他人への感染を考慮しなければ、「コンテイジョン」のマット・デイモンふんする夫同様にマスク、手洗いも不要な「免疫」獲得者ということになる。

 静岡県では、PCR検査で陽性とされた人は2週間入院後、2回のPCR検査後に陰性と判定されれば、めでたく退院となる。県疾病対策課によると、感染者73人のうち、12人が無症状病原体保有者(不顕性感染者)だったという。単純に計算すれば、16・4%が不顕性感染者だったわけだ。その内訳は10代から60代までさまざまであり、そこにどのような共通点があるのかは全く不明である。ダイヤモンドプリンセス号の場合、さまざまな国からの50代から70代の高齢者が中心だった。今後、彼らの血液検査によって新たなことが分かるのだろう。

 新型コロナの場合、今回の調査などでわかるように「不顕性感染者」の割合が高いのが特徴。だから、逆に気づかないうちに広がる恐れがある。いくら、「今は来ないで!静岡県」とキャンペーンしても、封じ込めは非常に難しいことになる。「集団免疫」を獲得することで終息を目指すほうが早いのかもしれない。不顕性感染者の割合が多いほうが治療を受けなくても免疫を獲得していく人が多いので有利だと言われる。

 そして、すべての人が願うのは、自分自身も新型コロナに「免疫力」を持つ不顕性感染者に入ることである。

「不顕性感染者」になりたいのだがー

 新型コロナの「不顕性感染者」の共通点はどこにあるのか?そんな調査研究はいまのところ後回しのようだ。目の前の「恐怖」に精いっぱいといったところか?

 川勝平太知事は15日、休業要請を18日から解除した上で、「ふじのくに基準」に基づく新型コロナの流行は「限定期」、警戒レベル3の「注意」段階だと発表した。これまでと同様に「三密(さんみつ)」の回避、手洗い、消毒、マスク着用、ソーシャルディスタンス(約2mの距離確保)を求めている。14日現在、73人の感染者のうち、1人死亡、入院11人、退院者61人と深刻な状況にほど遠い。

静岡県の警戒レベル

 「ふじのくに基準」の警戒レベルは6段階もあり、赤の「都市封鎖級」「特別警戒」、濃い黄色の「警戒」に次ぐのが、薄い黄色の「注意」だという。水色の「ほぼ日常」にも3種類もあり、全く色のない昔と同じ日常に戻るのは大変なことだ。2週間以上も感染者ゼロが続くのだから、「ほぼ日常」ではなく、「注意」とは首をかしげるが、どうも警戒度を上げることはあっても、下げたくはないらしい。映画「コンテイジョン」を見たあと、「油断するともっと恐ろしい第2波がやってくる」と脅されれば、多くの人は従うしかない。

 ただあまりムダなことに予算を使うのも考えものだ。静岡市の155室のホテル「東横イン」1棟の借り上げを12日、発表している。お隣の神奈川県では隔離施設としてホテルの2450室確保したのに、滞在者は65人のみで97%が空室であり、緊急事態宣言が最初に出された東京、大阪7都府県では約9割が空室という。当初はPCR検査数の不足原因に、隔離施設の不足が叫ばれた。ところが、隔離施設としてホテルを用意すると、ほとんどの感染者が自宅療養を選んでいる。

 中国製マスクの供給が進む中、いまだ「アベノマスク」が届かないように、2週間以上、感染者ゼロが続くいま、隔離対策施設に多額の予算を掛けるのに疑問が多い。各都道府県知事の知恵比べ、アイデアを競うようなコロナ対策を見ていて、”ふじのくにコロナ対策ビジョン”で「川勝流の発想」の切れが見られないと感じる県民は多いようだ。

 3月13日の記者会見で川勝知事は、静岡県で感染者が少ないのはお茶をよく飲んでいるからではないかと話した。お茶にそんなパワーがあるのかどうかは分からないが、ワクチンや薬に頼るのではなく、「免疫力」をUPさせて、新型コロナに負けないほうがいいに決まっている。

 「不顕性感染者」にどうしたらなれるのか?

「免疫力」はわたしたちの体の中にある

 最近の報道を見ていると、専門的知識を有する医者が優位に立ち、何でも決めてしまうパターナリズム(父親的温情主義)と呼ばれる医療が支配する風潮が強くなっているよう感じられる。患者は何でもかんでも医者の言うことを聞いていればいい、と子どものように従ってしまうことだ。インフォームドコンセントやセカンドオピニオンということばが一般的となり、医者と患者がパートナーシップを持つと言われる時代になってずいぶんたつが、正体不明の新型コロナで何か昔に戻ってしまったようだ。

 患者は医者の言うがままにワクチンや薬を飲んでいれば大丈夫かと言えば、決してそんなに簡単なことではない。医者も一方的な真実でしか、見ていないことが多いからだ。

 いまから40年ほど前まで、お腹が痛いと言えば、何でも「盲腸」と呼んで5人に1人が手術を受けていた時代があった。(詳しくは大鐘稔彦著『外科医と「盲腸」』岩波新書)。いま「盲腸」と呼ぶ人はいない。現代で言えば、胃炎と言えば、胃がん対策として、ピロリ菌を抗生物質で”退治”してしまうことだ。ピロリ菌は病原体であり、除去すべきという医者がほとんど。ピロリ菌は日和見菌であり、除去することで、最近、急増している胃食道逆流症、その後の食道がんリスクを大きくしてしまう。びらん性胃炎の50代の患者に対して、徳島県医師会は「ピロリ菌は50歳以上の70%が感染しているが、胃・十二指腸潰瘍を起こすのはそのうちの2~3%、胃がんに至るのは0・4%に過ぎない」と回答している。胃がんを恐れてピロリ菌除去すべきか、与える障害を踏まえ、実際の症状を確認すべきである。

 患者と病院とのつき合い方を取材して一冊にまとめたとき、監修していただいた脳外科医の前田稔・順天堂大学静岡病院長(当時)から言われたのは、「医者は患者を選べないが、患者は医者を選ぶことができる」(詳しくは『世界でいちばん良い医者に出会う「患者学」』河出書房新社)だった。

 新型コロナでさまざまな治療薬やワクチンの開発が進んでいるが、実際は、そんな薬を飲まないでも新型コロナに負けない「免疫力」を持つ不顕性感染者であったほうがいいだろう。

 静岡県は「社会健康医学」を推進する大学院大学設置を進めている。ぜひ、感染症に負けない「免疫力」についてちゃんと研究成果を出してほしい。新型コロナがちょうどよいテーマになるだろう。

※新茶のシーズンもたけなわ、お茶と免疫力に関係があることはわかっている。写真は呉服町の竹茗堂。

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