リニア騒動の真相57県と新聞社がマッチポンプ?

週刊東洋経済オンラインをご覧ください!

 2日に東洋経済オンラインで『静岡リニア「非公表資料」をリークしたのは誰だ 怒り心頭の川勝知事発言はマッチポンプか』という記事をUPしました。ぜひ、こちらからご覧ください。URLは以下の通り。https://toyokeizai.net/articles/-/378666

9月10日付静岡新聞の1面トップ。この記事で理解できるのは見出しだけ

 東洋経済オンラインは字数の関係もあり、また、わかりにくい点もあるので、少し説明を加えたい。まず、9月10日付静岡新聞1面トップ記事は4回連載の第1回であり、スクープ記事仕立てで、JR東海の”非公表資料”を入手したと大騒ぎしていた。東俣川(大井川最上流の西俣川分岐から大井川本川の呼び名、タイトル写真)直下の断層について、地下水が大量に存在している可能性があり、高圧大量湧水の可能性がある、と指摘している。

 県地質構造・水資源専門部会でも東俣川直下の断層については、塩坂邦雄委員が指摘していた。9月5日のリニア工事差し止めを求める準備学習会でも、講師となった塩坂委員は「東俣川直下の断層で背斜構造となっていて、力の掛かり具合が非常に複雑である」などの懸念を示していた。

 ところが、静岡新聞記事には塩坂委員の名前は登場せず、南アルプスの地質に詳しいとして狩野謙一静岡大学防災総合センター客員教授(地質学)が「追加調査の必要がある」との談話を寄せていた。狩野教授は、ことし7月3日付静岡新聞で山梨県境付近の大規模断層について、詳しい調査が必要だとの見解を示し、さらに同じ内容を詳しくまとめた記事が7月31日付でも掲載されている。いずれも今回の東俣川直下の断層の話ではなく、井川ー大唐松山断層についてである。狩野教授に連絡を入れて聞くと、「塩坂委員の指摘については承知していない」と回答した。つまり、「追加調査が必要」は以前、別の地域を問題にしたことを、今回の記事でニュースバリューを高めるために使ったようだ。「追加調査が必要」と言ったのは事実だが、東俣川直下の話ではないのだ。

 なぜ、こんなことが起きるのか?

 報道機関としての姿勢は別にして、地質学が非常にわかりにくい分野の学問であることが理由のひとつである。日本列島に関係しただけでも、地質学的に不明なことが多く、学者はそれぞれの専門、フィールド調査などによって主張が大きく異なる場合がある。専門用語ひとつとっても、一般には理解しにくい。地球科学を専門にする磯崎行雄東大教授によると、日本が火山と地震列島である理由について、ユーラシアプレートの下に、東から潜り込む太平洋プレートが押し合い、「しわ(付加体)」ができるからだと説明する。押し合う2枚のプレート表面の「しわ」が日本列島ということになる。しかし、県専門部会の議論を聞いていると、「付加体」はしわの意味のようだが、それぞれもっと細かい個所を指している。7億年前から日本列島を形作り始めた「しわ」は、ときに弛んでひっくり返ったりもする。伊豆半島も「しわ」のひとつのようだ。

 そのせいか、静岡新聞の記事、解説ともJR批判の強烈な見出しを印象づければそれでいいとしか思えないほどわかりにくい。一般読者がこの記事を理解できるはずもない。

 静岡新聞連載2回目に、2018年10月に段ボール箱を県庁に運び込まれた当時の話が出てくる。そこで、問題になる個所は、『JRとやりとりした県の稲葉清環境政策課長(当時)は「JRの担当者から、外部に公表しないでもらいたいのでサインがほしい、と求められた」と明かす。稲葉氏は公表すべきだと考えたが「資料の所有者はJRなので、条件をのむしかなかった」と振り返る。』である。稲場氏に連絡を入れて、「本当に公表すべきと考えた」のか疑問をぶつけた。

 稲葉氏は「報道機関には写真と報告書の内訳のみ公表すればいいと考えた」と回答をしたから、なぜ、記事には『稲葉氏は公表すべきだと考えた』と書いてあるのか、聞くと、「これは電話での取材で、そんな成り行きだった」という。実際には『公表すべきだと考えていたわけではない』ようだ。

 また、記事には『川勝平太知事は昨年9月の記者会見で「いろいろな専門家、隠れた知識人の意見を聞くために公表したほうがいい」と述べたが、借用書の条件に沿って資料は既に返却されていて、踏み込んだ対応は取れなかった』とある。そんなはずはない。条件には、コピー、データ化を禁止していないのだから、踏み込んだ対応とは何かわからないが、やればいいのだ。相手の機密情報とも言える資料をすべて県側は持っていたはずである。

 当然、県専門部会委員の要請で必要と思われる個所はすべてデータ化している。県委員が”非公表資料”を使って、説明しているのは、何度も目にしている。

 大きな問題となるのは、JR東海しか所持していない”非公表資料”をどのようにして静岡新聞は入手したのかである。JR東海が提供したわけではない。県関係者からリークされた以外に入手する方法はない。ただ、県は「第三者へ提供しない」と借用書に署名した。コピー、データであれ、その条件は守らなければならない。たとえ、県委員がリークしたとしても県の責任は免れない。警察であれ、検察であれ、リークとはその組織がメディアを使って、それぞれの業務を都合よく進めるためのものである。企業であれば、内部情報などで企業の被害や悪事を暴露することもある。今回の場合は、全く違う。「第三者へ提供しない」とされる文書を県関係者が提供すれば、社会的な信用を失い、県がいくら正当性を主張しても、議論そのものへ影響も出てくる。

 JR東海の主張について批判するのならば、県専門部会の議論の中でやるべきである。マッチポンプのような手法を使って、JR東海批判をすべきではない。JR東海は方針なのか、自ら説明するようなことがないから、批判されてもそのままというのがいまの状況である。こんなみっともない場外乱闘を見ていれば、静岡県はリニア反対だと考えざるを得ない。

 リニアトンネル建設、リニア計画そのものを推進するのかどうかは「人間の都合」である。コロナ禍でリモートワークが主流となり、リニアの存在価値についても議論はある。長野県、山梨県沿線にはリニア開通を期待する住民の数は多く、さらにリニア工事だけでなく、リニア開通後もさまざまな雇用も生むだろう。リニア反対の声もあるから、「人間の都合」は全体の中で決めるべきだが、これまで経済的に豊かではなかった長野、山梨県民など地方からのリニアに期待する声を無視すべきではない。同じ地方の静岡県は他の地域の発展を願っているはずだ。

週刊東洋経済10月3日号もご覧ください!

週刊東洋経済の表紙

 そんな中で、週刊東洋経済10月3日号『エアライン鉄道 激震!』に、『リニア「工事再開」への”秘策”』という題名の原稿を掲載してもらった。こちらもぜひ、ご覧ください。やはり、字数の問題もあり、東洋経済オンラインに近いうちに、リニア静岡問題の解決を期待される「静岡市の実力」を含めて、あらためて紹介したいと考えている。まずは、週刊東洋経済を手に取っていただき、どんな”秘策”なのか読んでもらえれば、幸いである。

 2日、日本記者クラブ(東京・内幸町)で開催された難波喬司副知事の会見をウエブで傍聴した。難波副知事が県の正当性について詳しく説明した。「リニア問題で国論を巻き起こす」と息巻いている政治家、川勝知事ならば、全く違った会見になっていただろうが、官僚である難波副知事のそつのなさはさすがである。過去に川勝知事が主張していたメリット論についても論理的に説明していた。

 今週は非常に難しい「生物多様性」とは何かについて、別のところに原稿を書いていたので、「リニア騒動」はお休みにしようかと思ったが、東洋経済オンライン、週刊東洋経済での記事をみなさんにお知らせすることにした。ぜひ、ご覧ください。

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