「本人訴訟」入門①民事紛争の発端から?

25年以上、マンション管理組合理事長を務める

 わたしが1995年4月からマンション管理組合の理事長を務めるマンションは、8階建て鉄骨鉄筋コンクリート建物1階が駐車場、エレベーターを降りると、そのまま玄関で2階から8階が住居、7世帯が暮らすという非常に小規模なものである。1991年4月に完成した。

 わたしは1993年7月に、その1室を購入した。これで、4室は売れたが、3室は不動産会社が賃貸に出していた。賃貸物件の1室に、マンションを分譲した不動産会社社長も入居していた。入居した当時、管理組合は結成されていなかった。さまざまなトラブルがあり、不動産会社関連の管理会社に、早急に管理組合発足の総会開催を求めた。12月になって、管理組合設立総会が開催された。不動産会社社長が理事長、管理者を務め、わたしは監査役に就いた。

 不動産会社は1991年4月時点から売れ残りマンションの管理費、修繕積立金を支払う義務があるのだが、収支決算を見ると、デタラメだった。不動産会社は未払いの管理費等の支払いに応じず、わたしは静岡地裁に調停を申し立てた。不動産会社側は管理委託費をもらっていない、社員の行った清掃費未計上などと抗弁した。この調停に、不動産会社は弁護士を立ててきた。結局、未払金の半分を貰うことで手を打ち、今後は自主管理を行っていく道を選んだ。7世帯のみの管理費等で管理会社に委託すれば、将来的に収支がマイナスになるのは目に見えていた。(マンション購入時は住宅ローン返済で頭がいっぱいで、マンション管理の問題など全く考えられなかった)

 1995年3月の総会で理事長に就き、毎月の会計管理、マンション全体の維持、修繕、公共機関などとの交渉を引き受けるのが仕事となった。管理規約では「役員の任期は、毎年4月1日から翌年3月31日とする」と決まっているが、「再任をさまたげない」とも定めているから、わたしの都合のつく限り、なるべく長く理事長を続けてほしいとの要望を受けた。毎年の総会で理事長選任の手続きは省かれた。就任当初は無報酬だった。のちに月5千円の報酬。トラブルが続き、2年前から月1万円となった。

 「本人訴訟」を行うトラブルの舞台となる3階には、故廣田さん(面識はない)の介護人だった今吉さんが住んでいた。入居後、亡くなった廣田さんは風俗関係の事業で大儲けしたが、身寄りが全くなく、莫大な財産は育英会をつくって子供の教育に使ってほしい、という遺言を残したのだという。遺言執行者をT弁護士(東京第一弁護士会)に依頼したのだが、公正証書遺言ではなかったようで、廣田さんの姉(実姉ではない)の息子を名乗る人物が現れたり、遺産相続を巡る争いが起きたことなどを今吉さんが詳しく話してくれた。事情に詳しい今吉さんは数年後、T弁護士に追い立てをくらった。

 廣田さんの名前を冠した廣田育英会が設立されたのは、亡くなってから10年以上もたってからである。T弁護士は廣田育英会常務理事に就いた。その後は、廣田育英会が3階の所有者となった。2018年から始まった廣田育英会との面倒なトラブルが、今回の「本人訴訟」に関連するので、のちほど詳しく説明する。

 その面倒なトラブルが続いているさ中、広田育英会は2020年12月に3階を売却した。

滞納金68万円は支払わなくていい?

 2020年10月22日、廣田育英会から売却の仲介を任された不動産会社代表ら2人から、3階売却の準備を進めていることを聞いた。また、すでに購入を希望する相手がいるようだった。不動産会社には、廣田育英会に滞納金があり、何度も督促をしている事実を告げた。

 マンション売買は「重要事項」を告知する義務が不動産会社にある。今回の売却交渉に当たって、購入希望者には廣田育英会との間にトラブルがあり、滞納金がある旨を「重要事項」として説明するよう求めた。不動産会社は購入を仲介する別の不動産会社から購入希望者に伝える、と応じた。

 11月になって、売却がほぼ、決まったという話を受けて、11月22日に廣田育英会の滞納金は11月までで68万円となり、ちゃんと清算するようメールで求めた。

 12月10日のマンション購入時、3階を購入したK(独身女性)、売買を仲介した2つの不動産会社代表と面会した際にも滞納金68万円を支払うよう求めた。その後も引っ越しの終わるまでに、滞納金を清算するようKに電話及びメールで要請した。

 Kは2月16日のメールで「債務は存在していない(引き継ぐ必要がない)」「引き継いでいないから、Kに支払い義務がない」「もし、Kが独断で支払いをしたら、今後一切、協力しない」と廣田育英会が言っている、マンション購入契約時に「債務の話は聞いていたが、債務は法的に存在しないから無効」「債務関係は廣田育英会が対応してくれる」「廣田育英会が対応する代わりに、支払いをしてはならない」という契約を廣田育英会と結んでいるので、Kは支払いはできないのだ、という。

 T弁護士が「Kと話してもらちが明かない」「話し合いの場を設けるのならば話をしてやってもいい」とメールに記されていた。つまり、Kはこのトラブルについて、廣田育英会、T弁護士の主張を全面的に信じて、支払う義務はないと言ってきたのだ。

廣田育英会が「キャバクラ寮」にしてしまう

 2016年頃から、廣田育英会の事務局員(理事)にT弁護士の息子Hが就き、それまで管理を担当していた不動産会社を切り、直接、3階の管理に当たるようになった。8月に3階台所天井の大規模な水漏れが発覚、大騒ぎとなった。その修理などを経て、2017年9月29日、Hから3階に新入居者があることを電話で告げられた。どのような人物であるか聞いたが、個人情報だから告げられないと回答。翌日(30日)、Hと不動産会社代表が「第三者に関する届け出事項」(日付は9月29日)を持参した。

 賃借人には「太田雅仁」とあり、呉服町2丁目の住所が記されていた。「太田雅仁」が301号室を使用するにあたり、規約・使用細則等を遵守することを誓約していた。10月1日、若い男性がインタホンを鳴らしたので、出て行くと、「3階に入居する者である」と言った。名前を聞くと、「太田」ではなく、「榑林」と名乗った。昨日貰った「第三者に関する届」の名前と全く違っていた。「何をやっているのか」と聞くと、「キャバクラの店長だ」と答えた。「太田雅仁」はキャバクラ経営者だという。その午後に、駐車場にゴミ袋が置いてあったので、中身を調べると、「榑林」名の水道料金の督促状が混ざっていたから、廣田育英会に連絡した。

 すぐに不動産会社代表が現れ、「若い者なので許してやってほしい。大目に見てほしい」などと謝罪した。

 11月になって、「榑林」からインタホンで「大家さん、駐車場が空いているならば、借りたい」などと言うから、わたしは「大家」ではないと断った上で、「もし、駐車場を借りたいのであれば、廣田育英会に言ってください。ただ、現在は空いていない」と答えた。「榑林」は6階が借りている駐車場区画がいつも空いているので、それを借りたいのだと理解できた。事情があって、6階はふだんは車を止めていないが、駐車料金を支払っていた。

 12月になってから、6階区画に灰色の車が駐車されるようになった。6階の車だろうと気軽に考えていた。3月になって、6階からのメールで駐車場の車が全く別人の物であることが発覚、すぐに陸運局で調べてもらい、車が「太田雅仁」所有であることが判明した。

 つまり、3階「榑林」が無断で不法駐車をしていたのだ。「榑林」以外に別の者も3階に居住しているらしいが、分からなかった。

 廣田育英会のHを呼んで、不法駐車の件を話すと、3階「榑林」はすぐにインタホンで謝罪を求めてきた。この件は、区分所有者で3階を管理する廣田育英会との話なので、「榑林」の謝罪は棚上げとした。廣田育英会のHには、不法駐車していた4カ月分をまず、3階「榑林」に支払わせ、廣田育英会から管理組合に支払うよう求めた。過去にも、他の入居者が無断駐車していたことで、管理組合総会で「不法駐車は1日1万円」というルールを決めていた。6階が1日1万円ルールを主張する可能性もあるから、ここは4カ月分の駐車料金を支払ったほうがよいと話した。

 3月の総会でも、同じ話をしたが、Hは聞き入れなかった。総会後、3階「榑林」はインタホンで、「大家さんが止めてもいいと言っていた」とこれまでの主張を変えた。3階「榑林」にとって、わたしはいつまでも「大家」であり、マンションの区分所有について理解できないようだった。

 マンション近隣の住人が「早朝5時過ぎに若い人たちが大挙して、ここに来ていて、あなたのマンションの雰囲気が変わった。異様だ」などと話した。その話などで、3階がキャバクラの社員寮になっていることがようやく判明した。

 何かもっと大きなトラブルが起きる可能性もあり、早急に対応しなければならない。理事長として早急に対応すべき問題となった。

キャバクラ寮の契約解除を求める

 2018年9月に管理組合臨時総会を開催した。当日の議事録及び結果事項を示す。

 『昨年12月から3月まで無断駐車していた入居者は、3月の組合総会後に理事長と面会を要請、入居者は「理事長の許可を得て駐車した」と説明。理事長は「無料で駐車できるスペースはどこにもない」と言ったところ、「お金は払うつもりだった」と答えた。ところが、現在においても管理組合への支払いを行っていない。

 問題を穏便に解決するために、組合としては4カ月分の駐車料金を支払い、その間の6階の駐車料金を免除する方針であるが、その解決策に区分所有者の廣田育英会Hが異論を持ち、Hは駐車場を借りている6階との問題であり、6階と話し合って解決するので、管理組合との問題ではないと主張している。

 現在の3階入居者は「キャバクラを業とする会社(会社名等不知)の従業員寮」という状態であり、これまで管理組合ではそのような使用を認めないと決定しており、Hから理事長に届け出た内容は虚偽であり、管理組合として、そのような使用はできない旨を申し伝え、早急に3階入居者との契約を解除するようHに伝えた。

 また、6階駐車スペースへの3カ月余にわたる無断駐車(3階入居者は理事長の許可を得ていると主張しているが、現在に至っても駐車場料金は支払っていない)など一般的な常識に欠いている部分が多いことも契約解除を求める要件である。

 7階入居者から、「3階入居者との契約は期限を区切っているであろうから、その期限更新の際に契約解除するのが合理的ではないか」との意見が出された。Hに期限はどうなっているのか問い合わせたが、「財団に戻らないと分からない」と回答した。

 組合としては現在の寮としての使用できない旨をHに伝え、早急に対応するよう要請した。Hは、契約期限等について理事長に報告すると答えた』

 その後、廣田育英会から「3階キャバクラ寮の契約解除」について、自動更新であり、未来永劫、「太田雅仁」との契約は続く旨の報告を受けた。その後、何度も契約解除を求める手紙等を廣田育英会理事長宛に送った。

廣田育英会から内容証明郵便が届く

 広田育英会の理事長印があるが、氏名が記されていない内容証明郵便が11月になって送られてきた。当然、Hが書いたことは分かった。

 『当該駐車場の専用権は6階が有し、駐車場の使用に関する当事者適格は6階にあるものと思料され、当財団と管理組合の問題ではない』などと書かれ、T弁護士の息子Hも法律を学んだことをうかがわせる。ただ、たった8万円の駐車場料金なのに、話を複雑にしているようだった。

 また、3階キャバクラ寮の契約解除については、『当財団はコンプライアンスを重視しており、法的根拠を旨とした検討の結果、3階の賃借人との賃貸借契約については、3階の賃借人の住居使用状況、駐車場使用の件などを検討しても、賃借人に債務不履行も借地借家法第28条の更新拒絶の正当事由も見当たらないのであって、到底法的に契約解除や契約更新の拒絶を求められるところではない』などこちらも法律用語満載で書いてきている。

 つまり、廣田育英会と「太田雅仁」との契約において、いくら管理組合が求めても、契約解除ができないと言っている。そもそも、キャバクラ寮とするなどこちらは聞いていないのだから、その説明をしなかった廣田育英会に問題があることをHは無視していた。

 その後、さらに2通の「通知」がHから内容証明郵便などで送られてきたあと、Hの父親であり、廣田育英会常務理事のT弁護士が2つの通知を送ってきた。さらに法律用語満載で、また、Hからの情報を基にT弁護士が文書を作成していることがわかった。

 今回の「本人訴訟」では、わたしは管理組合代表として原告となったが、被告の訴訟代理人はT弁護士である。68万円という少額の滞納金請求事件でT弁護士がお出ましなのは、Kとの契約からなのだろうか?

(きょうはここまでとします。近日中に「本人訴訟」入門②をお送りします)

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