ニュースの真相

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リニア騒動の真相39「謝罪」と「議論」の行方

JR東海社長が静岡県批判を「謝罪」した?  22日付中日新聞1面「JR社長トップ会談要望 知事に手紙 県批判を謝罪」3段見出しにある「謝罪」の2文字に目が釘付けになった。記事は4月27日の有識者会議で静岡県を批判したことを謝罪するとともに、「直接会って謝罪する意向とみられる」とも書かれていた。調べてみると、中日は21日付夕刊で川勝平太知事に同日朝、直接取材した記事「JR社長から謝罪の手紙 知事に会談要望」(見出し)をすでに掲載していたのだ。21日夕方になって、「中央新幹線南アルプス静岡工区の準備再開について(お願い)」という標題で、川勝知事に宛てた20日付の金子慎JR東海社長文書が公表されたが、そこには「謝罪」の2文字はなかった。それだけに、中日記事にはびっくりした。  JR東海社長の(お願い)文書には、「トンネル掘削の前段で行うヤード整備等整備を進めるに当たって6月中にも準備工事を再開する必要がある。2027年開業に向けて工程は大変切迫した状況にあり、面談を早い時期に調整してもらいたい」と知事面談の依頼が書かれていた。  金子社長の面談依頼に対して、同じく21日公表された川勝知事コメントは「大井川流域市町の利水関係者に確認のうえ、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、調整を進める」とあった。これまでのように面談依頼を断るのではなく、「調整を進める」とあるから、面談の手続きを進めるのだろう。しかし、どこにも「謝罪」に関することは書かれていない。  20日に開かれた県議会5月臨時会で、「新型コロナ」対応だけでなく、リニア問題に触れ、川勝知事は「JR東海の宇野護副社長が(静岡県の抗議を)重く受け止めているとしたが、金子社長が発言を撤回しないのは納得できない」などと不満を述べていた。  20日県議会で厳しい発言が出たばかりで、21日に金子社長から「謝罪」の手紙が届いたとしたら、絶好のタイミングである。中日記事を読めば、県が21日に公表した『JR東海社長の(お願い)文書』のほかに、「謝罪」したという金子社長の別の手紙があるはずだ。「謝罪」の手紙を教えてもらおうと担当課に連絡したが、担当者は不在だった。  金子社長は本当に謝罪したのか? 川勝知事、金子発言の「謝罪」求める  4月27日ウエブ方式による第1回有識者会議で、金子社長が発言した静岡県の対応に関する主な批判は以下の通り。  「南アルプスの環境が重要であるからといって、あまりに高い要求を課して、それが達成できなければ、中央新幹線の着工も認められないというのは、法律の趣旨に反する」  「有識者会議におかれては、静岡県の整理されている課題自体の是非、つまり、事業者にそこまで求めるのは無理ではないかという点を含めて、ご審議いただければ幸いです。併せて、それが達成できなければ、工事を進めてはならないという(静岡)県の対応について、これは、事業を所管されるのは国土交通省でありますけれども、こういった趣旨を踏まえて、適切に対処をお願いしたい」  上記の2項目を含めて6項目の金子社長発言に対して、静岡県は国交省の水嶋智鉄道局長宛に5月1日付で抗議文を送った。静岡県の抗議を受けた国交省は、金子社長発言が「有識者会議は科学的、工学的な議論の場」を逸脱するとして、赤羽一嘉国交省が「誠に遺憾」、水嶋局長が文書でJR東海に注意した。川勝知事は13日の記者会見で国交省の対応に「感謝する」と述べ、「(金子社長は)厳重に謹んでもらいたい」とも指摘、怒りの矛先を収めた感があった。  金子社長が川勝知事に面談を求め、謝罪の意向を示すことに何ら問題はない。ただ、担当者に確認したところ、金子社長が「謝罪」したという別の手紙は存在しなかった。中日記事は、20日付JR東海社長(お願い)文書にある「国交省から、発言は会議にふさわしくなく、今後は説明責任者として真摯に取り組むよう指導を頂いたことは、申し訳なく、重く受け止める。真摯に対応することで、地域の心配解消に取り組む」を好意的にくみ取り、静岡県への「謝罪」と受け止めたようだ。  中日記事「謝罪」が影響したのか、川勝知事は22日にあらためて金子社長宛に20日付文書に対する回答書を送り、その原文を公表した。回答書の最後に「(面談については)次回の有識者会議で発言の謝罪及び撤回を見届けた上で、関係各位と相談する」とあり、21日知事コメントよりもハードルがぐっと高くなった。水嶋局長にも、次回の会議に金子社長の出席を求め、発言の謝罪と撤回で指導の徹底を求めた。つまり、川勝知事ははっきりと「謝罪」を要求したのだ。  水嶋局長に「謝罪と撤回」で指導の徹底を求めた川勝知事の文書には「金子社長の勝手な発言を許可し、また、有識者会議の目的を全く理解していない事業者トップの不見識ぶりを如実に示した」「(金子社長は)みずからの不徳を恥じねばなりません」など厳しい文言が続いていた。  さらに、静岡県の抗議文などを有識者会議メンバーにちゃんと回覧するよう求めている。第2回会議の対応で金子発言に対する静岡県の抗議は決着をしたとばかり思っていたが、事はそう簡単に収まりそうもない。  「リニア騒動の真相38『今は来ないで!静岡県』?」で書いたが、静岡県の怒りの大きさ(wrath=憤怒、激怒レベル)に、国交省はちゃんと気がつくべきだったかもしれない。金子社長に頭を下げてもらはなくては会議が進まなくなった。 JR東海「お願い」は筋違い?  川勝知事の回答書を読むと、金子社長の依頼する6月中のヤード整備等再開へも異議を唱えている。これでは、たとえ金子社長が川勝知事と面談できたとしても、JR東海にとって首尾よい結果が得られるのか疑問は大きい。  回答書には、「当面は有識者会議の検討を見守るのが筋だ」と記した上で、1、静岡市と約束した県道三峰落合線のトンネル工事の早期着工がどうなっているのか、その完成見通しをはっきり表明してほしい。2、JR東海が「静岡工区の準備再開」を強く訴えるのであれば、畑薙から西俣へ通じる作業道の静岡市東俣林道整備を早急に進めるべきだ。危険な林道整備のほうが作業員の安全確保のために急務などと書かれている。  川勝知事は、JR東海が求める西俣ヤード整備等の準備に入る前に、1、2の懸念事項について明らかにするよう求めているのだ。いずれも静岡県ではなく、静岡市が対応する問題である。それなのに、『それ(約束した工事)を放置したまま「お願い」とは筋違いである』とまで書いている。JR東海がトンネル建設と林道整備を約束したのは、田辺信宏静岡市長に対してであり、当然、川勝知事ではない。  2018年6月20日、田辺市長と金子社長は静岡市の東俣林道をリニア工事作業道として使用の便宜を与える代わりに地域振興(県道三峰落合線トンネル建設)に関する基本合意書を結んだ。この合意書に対して、静岡県、大井川流域の8市2町は「抜け駆け」などと厳しく批判した。トンネルについては現在、静岡市が地権者との合意を結ぶ作業をしているとされる。ただ、2年も経過するのに、井川地区の期待が大きいトンネル工事についてその後、静岡市は何ら発表していない。一体、どうなっているのか、と考えるのは川勝知事だけではない。  東俣林道についても、何ら発表していない。唯一、10月12日から13日の台風19号による東俣林道の大きな被害について田辺市長は発表、沼平ゲートから3・8キロ地点の路肩決壊個所写真をメディアに提供した。12月になって、ゲート近くの舗装をJR東海は行うとしたが、これも静岡市は発表していない。だから、現在どうなっているのか全くわからない。  いずれの工事も主体はJR東海であり、静岡市は許可権限等を有し、管理監督する立場だ。川勝知事ではなく、静岡市が本来、JR東海に一体、どうなっているのか質すべきだが、静岡市にとっては全く他人事のようである。JR東海から何らかの申請が出れば、それを許可していくというスタンスを取っている。少なくとも、川勝知事のように作業員の安全確保にまで考えは及んでいない。  もし、金子社長が求めた川勝知事との面談が行われるならば、2つの懸念事項もテーマになるのだろう。静岡市の問題なのに、田辺市長は蚊帳の外に置かれてしまうのか?  いずれにしても、なぜか、静岡市の懸念事項について川勝知事がJR東海に回答を求めているのだ。 もっと早い段階で金子社長は面会すべき?  国交省に静岡県は合意5項目のうち、「会議の透明性」が履行されていない、と有識者会議の「全面公開」を求めている。「地域住民ならびに国民は、国費を使って行われる会議の内容を知る権利がある」などとして、「委員の自由な発言を阻害する恐れがあり、公開を限定する」という鉄道局の挙げた理由を退けている。  それでは、果たして、静岡県はすべての審議会、委員会を全面公開しているのか?  静岡県によると、県主催の会議はすべて原則、全面公開されているという。県表彰審査委員会、県総合計画審議会、県行政不服審査会、県情報公開審査会、県特別職報酬等審議会、県固定資産評価審議会、県感染症審査協議会などそれぞれの担当課に確認しなければならないが、「地域住民ならびに国民は、国費、県費を使って行われる会議の内容を知る権利がある」ことが守られているようだ。  金子社長とのトップ会談について、川勝知事は3月13日の会見で「金子さんが来られるとすればもっと早い段階で、社長が代わられたときに、すぐに来られる筋のものではなかったか」、「全部の地域住民の意見を尊重するべきなのに、そうした形がなかったのは残念だ」などと述べている。これが川勝知事の本音なのだろう。   JR東海は東俣林道の使用許可権限も持つ静岡市には早い時期から働き掛けを行っている。自民党静岡市議団が「南アルプスの保全が図れない工事を認めない」など厳しい姿勢でのぞんでいたこともあり、最終的に140億円の三峰バイパストンネルをJR東海の全額負担で行うという合意書を結んだ。当然、金子社長は早い段階で田辺市長と面談の機会を持ったのだろう。川勝知事になぜ、そのような面談を求めなかったのか?  それは、今回の金子社長発言から想像できる。国家的な優先度の高いプロジェクト・リニアについて、静岡県が大井川の水環境問題などで高いハードルを課すのはおかしいが見え隠れしている。(あまり知られていない)河川法の許可権限がなければ、JR東海は強行着工していたかもしれない。  この半年は、川勝戦略の”土壺”にはまったまま身動きできない。コロナ後の日本で、リニアが以前と同じ優先度の高いプロジェクトであるのかどうか?「謝罪」で「議論」が先に進むのか、全く見えてこない。 ※タイトル写真は、20日に開かれた県議会5月臨時会。当局の人数も非常に少ない

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コロナ危機4 無敵の「免疫」所有者は5人に1人!

映画「コンテイジョン」が教える現実  「新型コロナ」のパンデミック(世界的流行)を予言したと評判が高く、ネット動画配信サイト・ネットフリックスなどでランキング1位を続けるアメリカ映画「コンテイジョン(Contagion、接触感染)」(スティーヴン・ソダーバーグ監督)。題名の通り、他人との接触だけで感染していくために小池百合子東京都知事がよく使う「オーバーシュート(感染爆発)」が全世界で起こってしまう。感染したアメリカ女性の隣にいたまさしく日本人のステレオタイプ「黒眼鏡、黒スーツ」男性ビジネスマンが東京へ帰り、バスの中で意識を失い、倒れてしまうシーンが登場する。その後、日本でオーバーシュートしたかは定かでないが、病名不明の男性と接触したバスの乗客や救急隊員らが次々と感染していったと予測される。  マカオのカジノで感染したアメリカ女性は帰国後、自宅でけいれんを起こし、意識を失ったため、マット・デイモンふんする夫が女性を病院に連れていくが、女性は亡くなってしまう。夫が自宅に戻ると小学生の息子も同じ症状で死んでいる。女性の同僚、息子の学校のクラスメートなどに集団感染が起こり、全米、全世界に感染は広がり、パンデミックとなる。学校閉鎖、医療崩壊、食料品などの買い占め、ロックダウン(都市封鎖)によるパニックなどが起こり、まさにいま世界のどこかで起きていることを予言したシーンがこれでもかと続く。  UCLAサンフランシスコ校の研究者により、新型ウイルスが2003年のSARS同様にコウモリコロナウイルスの新種であることが突き止められ、CDC(米疾病予防管理センター)を中心にワクチン開発に必死で取り組んでいく。コロンビア大学感染症予防センターの研究者が監修しただけに、リアルな医療現場に焦点が当てられている。「人は1日に2千回から3千回も顔や頭を触り、起きているときには1分間に3~5回触る」として、接触感染を防ぐための水と石鹸による手洗い、マスクの着用なども映画の中で薦めている。特に、マスクの習慣のなかった欧米では、いまの現実そのものである。  最後に謎の病気の原因がわかる。ウイルスの宿主コウモリの落とした食べかすを子ブタが食べ、そのブタを調理した中国人からアメリカ女性、日本人ビジネスマンらへ感染していく。そう、まさに今回の新型コロナの発生を連想させるシーンで終わるのだ。2012年の公開当時、日本ではヒットはしなかったが、2020年の最高傑作に挙げられるだろう。  ところで、マット・デイモンふんする夫は妻、息子2人と濃厚接触するが、けいれん、意識障害など症状も出ないし、何らかの処置もしないのに元気そのものだ。周囲すべての人たちがマスクなどで防御をするのに、マット・デイモンだけは最後のシーンまでマスクさえ着用しない。  これは虚構の映画であるから、そんな設定をしたのか?それとも、現実の世界でも新型コロナに「免疫」を持っている人間がいるのか?ネットなどで情報を探したが、残念ながら、本当のことは分からなかった。  ようやく最近になって、実際に新型コロナでも最初から「免疫」を持つ人がいることを英国の科学雑誌が教えてくれた。 17・9%が「不顕性感染者」と判明  5月12日号の英感染症専門誌「ユーロサーベイランス」が、新型コロナに感染しても、全く症状の出ないまま治ってしまった人の割合を明らかにした。ウイルス名「SARS-CoV-2」(コウモリコロナウイルスに関係する、SARS-Cov-1に近い7番目のコロナウイルス)に感染しても、熱、のどの痛みや咳、だるさ、肺炎など新型コロナの病名「COVID-19」に掛からない人たちがいる。新型コロナに対する「免疫」を獲得している人を「不顕性感染者」と呼んでいる。  「不顕性感染者」はワクチンも治療薬も必要ない。どこかは分からないが、体の一部の何かが違うのだ。それで、最初から「新型コロナ」に負けない「免疫力」を持っている。そんな無敵の人たちがわたしたちの周りにいるのだ。  調査結果を発表したのは、京都大学、オックスフォード大学、ジョージア州立大学の研究者グループ。新型コロナ感染の流行で『1、亡くなった人 2、発熱や咳、肺炎などの症状の出た人 3、全く症状の出ないまま治ってしまった人(不顕性感染者) 4、未感染者』の4グループに分類した。3番目の「不顕性感染者」が数多く存在することで新型コロナウイルスは、SARSやMERSに比べて毒性が強くないことがわかる。  調査では、横浜港に停泊したダイヤモンドプリンセス号のクルーズ船乗船員3711人を対象に、3063回PCR検査が行われ、634人に陽性反応が出た。2月21日までに306人に症状が出て、2週間の潜伏期間などを経て、最初にPCR検査で陽性反応が出たが、全く症状の出ないまま治った「不顕性感染者」を113人と推計した。PCR検査で陽性とされ、隔離されたが、熱など軽い症状さえ出ない人が17・9%もいたことになる。他人への感染を考慮しなければ、「コンテイジョン」のマット・デイモンふんする夫同様にマスク、手洗いも不要な「免疫」獲得者ということになる。  静岡県では、PCR検査で陽性とされた人は2週間入院後、2回のPCR検査後に陰性と判定されれば、めでたく退院となる。県疾病対策課によると、感染者73人のうち、12人が無症状病原体保有者(不顕性感染者)だったという。単純に計算すれば、16・4%が不顕性感染者だったわけだ。その内訳は10代から60代までさまざまであり、そこにどのような共通点があるのかは全く不明である。ダイヤモンドプリンセス号の場合、さまざまな国からの50代から70代の高齢者が中心だった。今後、彼らの血液検査によって新たなことが分かるのだろう。  新型コロナの場合、今回の調査などでわかるように「不顕性感染者」の割合が高いのが特徴。だから、逆に気づかないうちに広がる恐れがある。いくら、「今は来ないで!静岡県」とキャンペーンしても、封じ込めは非常に難しいことになる。「集団免疫」を獲得することで終息を目指すほうが早いのかもしれない。不顕性感染者の割合が多いほうが治療を受けなくても免疫を獲得していく人が多いので有利だと言われる。  そして、すべての人が願うのは、自分自身も新型コロナに「免疫力」を持つ不顕性感染者に入ることである。 「不顕性感染者」になりたいのだがー  新型コロナの「不顕性感染者」の共通点はどこにあるのか?そんな調査研究はいまのところ後回しのようだ。目の前の「恐怖」に精いっぱいといったところか?  川勝平太知事は15日、休業要請を18日から解除した上で、「ふじのくに基準」に基づく新型コロナの流行は「限定期」、警戒レベル3の「注意」段階だと発表した。これまでと同様に「三密(さんみつ)」の回避、手洗い、消毒、マスク着用、ソーシャルディスタンス(約2mの距離確保)を求めている。14日現在、73人の感染者のうち、1人死亡、入院11人、退院者61人と深刻な状況にほど遠い。  「ふじのくに基準」の警戒レベルは6段階もあり、赤の「都市封鎖級」「特別警戒」、濃い黄色の「警戒」に次ぐのが、薄い黄色の「注意」だという。水色の「ほぼ日常」にも3種類もあり、全く色のない昔と同じ日常に戻るのは大変なことだ。2週間以上も感染者ゼロが続くのだから、「ほぼ日常」ではなく、「注意」とは首をかしげるが、どうも警戒度を上げることはあっても、下げたくはないらしい。映画「コンテイジョン」を見たあと、「油断するともっと恐ろしい第2波がやってくる」と脅されれば、多くの人は従うしかない。  ただあまりムダなことに予算を使うのも考えものだ。静岡市の155室のホテル「東横イン」1棟の借り上げを12日、発表している。お隣の神奈川県では隔離施設としてホテルの2450室確保したのに、滞在者は65人のみで97%が空室であり、緊急事態宣言が最初に出された東京、大阪7都府県では約9割が空室という。当初はPCR検査数の不足原因に、隔離施設の不足が叫ばれた。ところが、隔離施設としてホテルを用意すると、ほとんどの感染者が自宅療養を選んでいる。  中国製マスクの供給が進む中、いまだ「アベノマスク」が届かないように、2週間以上、感染者ゼロが続くいま、隔離対策施設に多額の予算を掛けるのに疑問が多い。各都道府県知事の知恵比べ、アイデアを競うようなコロナ対策を見ていて、”ふじのくにコロナ対策ビジョン”で「川勝流の発想」の切れが見られないと感じる県民は多いようだ。  3月13日の記者会見で川勝知事は、静岡県で感染者が少ないのはお茶をよく飲んでいるからではないかと話した。お茶にそんなパワーがあるのかどうかは分からないが、ワクチンや薬に頼るのではなく、「免疫力」をUPさせて、新型コロナに負けないほうがいいに決まっている。  「不顕性感染者」にどうしたらなれるのか? 「免疫力」はわたしたちの体の中にある  最近の報道を見ていると、専門的知識を有する医者が優位に立ち、何でも決めてしまうパターナリズム(父親的温情主義)と呼ばれる医療が支配する風潮が強くなっているよう感じられる。患者は何でもかんでも医者の言うことを聞いていればいい、と子どものように従ってしまうことだ。インフォームドコンセントやセカンドオピニオンということばが一般的となり、医者と患者がパートナーシップを持つと言われる時代になってずいぶんたつが、正体不明の新型コロナで何か昔に戻ってしまったようだ。  患者は医者の言うがままにワクチンや薬を飲んでいれば大丈夫かと言えば、決してそんなに簡単なことではない。医者も一方的な真実でしか、見ていないことが多いからだ。  いまから40年ほど前まで、お腹が痛いと言えば、何でも「盲腸」と呼んで5人に1人が手術を受けていた時代があった。(詳しくは大鐘稔彦著『外科医と「盲腸」』岩波新書)。いま「盲腸」と呼ぶ人はいない。現代で言えば、胃炎と言えば、胃がん対策として、ピロリ菌を抗生物質で”退治”してしまうことだ。ピロリ菌は病原体であり、除去すべきという医者がほとんど。ピロリ菌は日和見菌であり、除去することで、最近、急増している胃食道逆流症、その後の食道がんリスクを大きくしてしまう。びらん性胃炎の50代の患者に対して、徳島県医師会は「ピロリ菌は50歳以上の70%が感染しているが、胃・十二指腸潰瘍を起こすのはそのうちの2~3%、胃がんに至るのは0・4%に過ぎない」と回答している。胃がんを恐れてピロリ菌除去すべきか、与える障害を踏まえ、実際の症状を確認すべきである。  患者と病院とのつき合い方を取材して一冊にまとめたとき、監修していただいた脳外科医の前田稔・順天堂大学静岡病院長(当時)から言われたのは、「医者は患者を選べないが、患者は医者を選ぶことができる」(詳しくは『世界でいちばん良い医者に出会う「患者学」』河出書房新社)だった。  新型コロナでさまざまな治療薬やワクチンの開発が進んでいるが、実際は、そんな薬を飲まないでも新型コロナに負けない「免疫力」を持つ不顕性感染者であったほうがいいだろう。  静岡県は「社会健康医学」を推進する大学院大学設置を進めている。ぜひ、感染症に負けない「免疫力」についてちゃんと研究成果を出してほしい。新型コロナがちょうどよいテーマになるだろう。 ※新茶のシーズンもたけなわ、お茶と免疫力に関係があることはわかっている。写真は呉服町の竹茗堂。

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リニア騒動の真相38 『今は来ないで!静岡県』?

静岡県の対応は「法律の趣旨に反する」?  「南アルプスの環境が重要であるからといって、あまりに高い要求を課して、それが達成できなければ、中央新幹線の着工も認められないというのは、法律の趣旨に反する」(金子慎JR東海社長)  「新型コロナ」の影響を受け、ウエブ方式で国交省と各専門家、静岡県などをつないだリニア問題「有識者会議」(国交省鉄道局主催)が4月27日、初めて開かれた。第1回会議はこれまでの議論を整理することだけで本格的な論戦は次回以降に行われる予定だった。ところが、会議の前に「工事を進める事業責任者」としてあいさつをした金子社長の発言が、地元の強い反発を生んでしまった。金子発言には、JR東海が単に謝罪することだけでは済まされない内容を含んでいた。鉄道局は第2回会議で十分な時間を取り、適切な対応を迫られている。  島田市の染谷絹代市長は28日の会見で「(金子発言は)いかにJRが地元を理解していないかという表れ」とあきれ、さらに30日、川勝平太知事は金子発言を厳しく批判した。翌日5月1日新聞各紙の紙面を見れば、メディア(世論)がどちらについているのか一目瞭然である。お互いに名古屋市に本社を持つJR東海にとって、特に親しい関係を築いているはずの中日新聞が『JR東海社長の県批判 知事「無礼」と抗議』と社会面3段の大きな見出しをつけた。金子発言がいかに常識外れにとらえられたかを物語っている。  川勝知事を筆頭に、大井川流域の2市8町、大井川土地改良区など11の利水者団体連盟は1日、国交省の水嶋智鉄道局長宛に「抗議文」を送った。  静岡県が作成した分厚い「抗議文」を手にして、すぐに頭に浮かんだのは、1930年代の大恐慌下のアメリカを舞台にしたノーベル賞作家ジョン・スタインベックの小説「怒りの葡萄」だった。  「怒りの葡萄」の原題は「The Grapes of Wrath」。一般に「怒り」と来れば、「Anger」だが、「神の怒り」を象徴するWrathが使われている。Wrathは並大抵の「怒り」ではなく、「激怒」「憤怒」を指す。その分厚い「抗議文」はまさに「Wrath」(激怒、憤怒)そのものを感じさせた。抗議文を手にした水嶋局長は困惑するだけでは済まされない。静岡県側の「Wrath」に適切に対処しなければ、「有識者会議」メンバーがJR東海への反発を強めるだけでなく、会議の趣旨そのものに疑問を抱くことになってしまうのだ。  「有識者会議」開催は静岡県側がいくつかの注文をつけて遅れに遅れた。1月に鉄道局が提案してから、4カ月近くもたってようやく初会合となった。当然、JR東海は静岡県が意図的に開催を遅らせているのではといういらいらを募らせた。それだけに「有識者会議」は苦境に立つJR東海の援軍であり、会議での結論がJR東海に有利に働くと考えたのか、初会合開催を手放しで喜んでしまった。それが金子発言につながった。  JR東海トップの金子社長は、その発言の意味を理解しているのだろうか?静岡県の「抗議文」が金子発言の常識外れを事細かく明らかにした。 「有識者会議」に「政治的」役割を求める?  難波副知事が起案した「抗議文」は、A4判用紙7枚、8項目に分けてびっしりと書かれている。金子社長の発言内容を6項目で指摘、その問題点を詳細に明らかにした上で、最後の7、8項目で厳しい抗議を表明している。  1項目の「環境に関する法制としては、環境影響評価法に基づいて、資料の作成をしております。私どもは、中央新幹線の事業は、有益な事業であるからと、環境保全を軽んずるつもりは全くございません。果たして、逆に、南アルプスの環境が重要であるからといって、あまりに高い要求を課して、それが達成できなければ、中央新幹線の着工も認められないというのは、法律の趣旨に反する扱いなのではないかと考えているものです」、6項目の「有識者会議におかれては、静岡県の整理されている課題自体の是非、つまり、事業者にそこまで求めるのは無理ではないかという点を含めて、ご審議いただければ幸いです。併せて、それが達成できなければ、工事を進めてはならないという(静岡)県の対応について、これは、事業を所管されるのは国土交通省でありますけれども、こういった趣旨を踏まえて、適切に対処をお願いしたい」という金子発言が特に川勝知事らにとって「無礼」であり、「激怒」に至った内容である。  裏を返せば、JR東海が「有識者会議」に期待する「本音」そのものに違いないだろう。  ただ、トンネル工学や水文学の専門家で構成する「有識者会議」について、水嶋局長は「会議の趣旨はこれまでの議論の検証、政治的ではなく科学的、工学的な議論の場にしていただきたい」とその趣旨、役割を述べている。つまり、金子社長が「有識者会議」に「法律の趣旨に反するかどうかなど、適切に対処を願いたい」と求める役割にはほど遠いのだ。  水嶋局長の発言から読み取るべきは、『有識者会議は科学的、工学的にとどめ、「政治的な働き掛け」は水面下で行うべき、とくぎを刺している』ことである。「有識者会議」初会合で有頂天となった金子社長は、まさに「政治的な発言」にまで踏み込んだことに気づかなかった。  昨年10月、リニア南アルプストンネル静岡工区の早期着工を図るために、鉄道局主導の三者による「調整会議」設立を目指した。しかし、12月末、川勝知事が「環境省や農林水産省などすべての省庁の参画」「これまでの静岡県とJR東海との対話内容の評価」を求めたため、鉄道局は「調整会議」ではなく、水文学などの専門家による「新有識者会議」を立ち上げることとした。  1月20日付『リニア騒動の真相30「北風作戦」は失敗』で、『国は苦肉の策として「新有識者会議」設立という”奇策”に打って出た。藤田次官まで出張って事の解決に当たろうとしたが、時間の掛かる面倒な”宿題”を増やしただけである』と書いた。金子社長の”活躍”もあって、鉄道局はまさに時間の掛かる面倒な”宿題”ばかりを増やしている。第2回会合で鉄道局は設立の趣旨について、もう一度、ちゃんと有識者委員に説明しなければならない。設立の趣旨が「JR東海に有利で適切な対処をする」ことであれば、静岡県はさらなる”抗議文”を提出するだろう。 「論理」を説くのではなく、「感情」に訴える  このままでは、国の有識者会議も川勝戦略の”土壺”にはまって身動きできない状態が続いてしまうだろう。  2027年開業を目指すリニア工事は「新型コロナ」問題が絡み、各地で遅れている。いまのうちに、最大の課題とされる南アルプストンネル静岡工区の着工問題を解決したいのがJR東海の「本音」だろう。その解決のために金子社長は「企業論理」を全面に打ち出した。「企業論理」に立てば、金子社長の発言は間違っていない。しかし、いくら「論理的」に正しくても、世論が味方しなければ大衆の支持を得られない。  日経ビジネス2018年8月20日号で、川勝知事は「静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」とJR東海を批判、リニア工事が大井川中下流域の62万人の利用する地下水へ影響を及ぼす危険性を指摘した。それで、「立派な会社(JR東海)だから、まさか着工を強行することはないだろう」とも訴えた。知事発言は「論理的」な部分の代わりに、わかりやすいことばで「感情」に訴えた。だから、県民から多くの支持を得たのだ。  今回の金子社長の発言で、何度も「蓋然性(がいぜんせい)」ということばが使われた。「蓋然性」とは「事象が実現されるか否か」であり、類語に「可能性」「実現性」とあるが、一般にはあまり使われない。金子発言は「有識者会議では、専門的な知見から、これまで心配な事態が起こる蓋然性について、どの程度なものなのか、また、発生する可能性が大きいと考えておいでなのか、あるいは小さいものなのかを、お示しいただければありがたい」。静岡県は不測の事態が起きないようJR東海に求めているが、いくら科学的、工学的に議論をしたとしても、「不測の事態」が起きないと断言できる専門家は、存在しないだろう。金子社長は有識者会議の議論の行方にまで踏み込んでしまったのだ。  JR東海トップである金子社長は「論理的」に話すのではなく、現在の窮状のみを「感情的」に訴えれば、まだ違っていたのではないか。トップの役割は議論に介入するのではなく、深く頭を下げるだけで十分である。 JR東海に「一定の合理的な負担を」指導すべき  4日に新型コロナでの「緊急事態宣言」延長が決まった。生活困窮者への30万円給付ではなく、国民全員に一律10万円給付が始まった。中小企業、自営業者への持続化給付金、各県での休業要請に対する補償など「緊急事態宣言」延長で、さらなる財政出動を求める声が高まるだろう。  財政出動が繰り返され国債を発行し続ければ、いずれハイパーインフレ(物価高騰)などを招く恐れがある。ほとんどの人は政治の話には無関心だが、10万円を再び、もらえるという話であれば、目を輝かせる。政治家の話に耳を傾け、喝采を送る。そんなにお札を刷って大丈夫かと心配する向きもあるが、”コロナ”だから目をつむるしかない。すべて「論理」ではなく、「感情」が優先する。  大衆が支持するのは「論理」ではなく、「感情」である。1月20日付『リニア騒動の真相30「北風作戦」は失敗』で産経新聞主張(2019年12月3日付)を紹介した。『リニア新幹線は静岡県内に駅がなく、その経済的なメリットは小さいとされる。川勝氏は今年(2019年)6月にJR東海による経済的な代償を求める考えを示唆した。同社による一定の合理的な負担を含め、国交省が主導して環境対策などでも真摯な協議を進めるべきだ』。  鉄道局はJR東海に対して、『(静岡県へ)一定の合理的な負担する』よう指導すべきと産経は書いている。これも「論理」の話ではない。有識者会議の議論とともに、JR東海が『静岡県への一定の合理的な負担』を行うことは、静岡県民の「感情」に訴える一つの方策なのだろう。  「今は来ないで!静岡県」。東西の県境道路沿いに幟や旗などで静岡県が県外ナンバーの車などに要請している。「緊急事態宣言」延長で、そのまま同じ要請を続けていくのだろう。リニアに対して、『今は来ないで!静岡県』といつまで叫び続けるのか分からないが、JR東海の「無礼」(川勝知事)な対応が続く限り、『今は来ないで!静岡県』は続くはずである。 ※タイトル写真は、国交省で開かれた有識者会議。ウエブで結ばれた(鉄道局提供)

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「コロナ」危機2「休業補償」狂騒曲(静岡市編)

「25日から休業要請」と田辺市長が言った!  25日土曜日昼頃、静岡市の繁華街を歩くと、街の様子は一変していた。寿司屋、そば屋、イタリア料理店、うなぎ屋、ラーメン屋などなじみの店のシャッターが下り、ほぼ同じ内容のお知らせが店頭に貼ってあった。マクドナルド、ケンタッキーなどのテイクアウトを除き、ほぼすべての店が休業に入ったのだ。  「静岡市よりの要請により、臨時休業致します。休業期間 4月25日(土曜)~5月6日(木曜)」、「重大なお知らせ 静岡市からの休業要請に伴い4/25~5/6までレストラン営業は休業させていただきます」など同じ内容のお知らせが貼られていた。前日までふだん通り営業していた食事を提供する、市民にはなくてはならない店舗ばかりだった。浜松市も同じく、「4月25日から5月6日まで」の休業要請と補償について鈴木康友市長が21日記者会見を行った。浜松市は期間中、休業していることを第三者が見て明らかにわかるチラシを店頭掲示した写真を求めていた。当然、静岡市も同じなのだろう。  田辺信宏市長は23日、新型コロナ対策として静岡市独自の休業要請とその補償を発表した。「4月25日から5月6日」までの休業要請期間に、静岡市内の料理飲食を提供する約3200の事業者が閉店休業すれば、中小企業または個人事業主に1事業者当たり「50万円」、2店舗以上の事業者に「100万円」を支払うという内容だった。突然の発表に、各事業者らから「どうしたら50万円もらえるのか?」など問い合わせる市の相談窓口の電話は鳴り放しとなった。全国的に見て「50万円」「100万円」という飲食店への休業補償は大判振る舞いである。  23日夕方ローカルニュース、24日新聞朝刊各紙が田辺市長の発表を大きく報道した。25日からすべての店が休業に入るから、24日夜が最後と思い、近所にあるなじみの居酒屋に出掛けた。当然、休業補償が話題になった。店主は「組合は27日月曜日からと言っていた、土曜日曜は店を開けたいのだがー」と情報が錯そうして不安な表情。手元にあった24日静岡新聞、日経新聞朝刊に「25日から5月6日まで」と書いてある。静岡商工会議所HPの田辺市長名の通知も「25日」となっている。「27日からは間違いだ!」と酔った常連が叫んだ。  それで25日昼頃、繁華街を見て回った。やはり、すべての店の掲示が「4月25日~5月6日」となっていた。  ところが、25日午後7時頃、1軒のてんぷら料理店のみ煌々と明かりが輝き、店内には大勢の客が詰め掛けていた。その店の「お知らせ」を見て、驚いた。他の店舗とは違っていたのだ。 「27日が休業開始日」と変わっていた?  てんぷら屋のお知らせは「4/27(月)~5/6(水)まで休業させていただきます。4/25(土)26(日)は短縮営業させていただきます」。この土日は他店が一斉に休業しているから、昼夜とも利用客は多いかもしれない。しかし、「25日から」を守らなければ、休業補償を受け取れなくなってしまう。本当にそれでいいのか?  25日午後10時過ぎに静岡市HPをもう一度、確認した。「協力金ご案内」タイトルの項目は「最終更新日」が「4月25日」となっているのに気づいた。きょう(25日)情報を更新しているのだ。  25日何時に、どこをどのように変えたのかわからないが、そこに「4月27日(月)を休業の開始日とします」とあった。『※休業要請期間は「令和2年4月25日(土)から令和2年5月6日(水)」までであり、この期間について休業を行っていただくことが基本ですが、事業者の方への周知期間を勘案し、 協力金を支給する要件については「令和2年4月27日(月)」を休業の開始日とします』。何だ、これ、てんぷら屋の「27日から」は(休業補償をもらうのに)全く問題なかった。  それでもう一度、静岡商工会議所HPで23日付の静岡市危機対策本部長田辺信宏名「静岡市の休業要請及び同要請に基づく協力金の支給について」を確認した。「対象要件」は「4月25日から5月6日まで協力いただいた中小企業及び個人事業主」となっている。「協力金支給要件」は間違いなく「25日から」である。新聞、テレビは、協力金支給要件と合わせて休業要請を「25日から」と報道した。だから、ほぼすべての料理店事業主は25日から休業しなければ、50万円を受け取れないと勘違いした。しかし、実際は「27日から休業」で問題なかった。  飲食店が支払っている経費は「店舗賃料」「店舗保険」「食材、飲料仕入れ」「スタッフ給料」「HP管理費」「電気、ガス、水道代」など20以上の支出項目がある。「売り上げ」から「経費」を差し引いて、「利益or借金」が出る。「コロナ」自粛で客足は伸びていないから、ほとんどの飲食店の「借金」がふくらむ状況だった。もし、ちゃんと分かっていれば、土日の2日間営業をした料理店は多かったはず。2日間の違いはあまりに大きいのだ。  27日から5月6日までの10日間、単純に割れば1日当たり5万円の補償額となる。「25、26日の2日分10万円を上乗せしてほしい」。個人経営の小さな飲食店が多いから、切実にそう望むだろう。それでなければ、不公平である。 5月6日以降、休業延長を続けるのか?  静岡県が「20万円」の補償金を支払うことで休業要請したカラオケ、バー、スナックなどに静岡市は「30万円」を上乗せして「50万円」、静岡県の対象外となった料理飲食店に、独自に「50万円」を補償する。店舗の大小に関わらず、一律「50万円」の休業補償である。約17億円の補正予算を組んだ。  静岡市も休業状況が確認できる書類として店頭ポスターの写しを求めているから、手書きであれ、印刷であれ、お知らせを掲示しなければならなかった。ただ、そのお知らせは「4月25日~5月6日」の期間ではなく、「27日から」で全く問題なかった。  もう一つ、大きな問題がある。「連休明け後に休業しなくて大丈夫か?」である。「期間延長は社会情勢を踏まえて」などと書いた掲示も多かった。5月6日に「新型コロナ」収束が見えなかったら、各店舗とも引き続いて、感染を防止するために休業を続けるかどうか、判断に迷うところだ。  収束が見えなければ、政府、静岡県は引き続いて休業要請の方向で検討に入る。そうなれば、静岡市も再び、独自の休業要請を迫られる。休業延長で1日当たり5万円補償をするならば、各店舗とも休業を続けるだろう。  5月末までとしたら、22日間、1日当たり5万円の補償を支払うとすると各事業者へ110万円が必要。3200事業者、約35億円。田辺市長は「身を切る覚悟で休業補償を行う」と述べたから、市長報酬を削るだけでなく、市職員の協力を得て35億円を捻出するのか。  そんな仮定のことではなく、まず何よりも、17億円予算を組む前に補償などあてにせず、多くの店舗が休業していたことを静岡市は調査したのだろうか?  7割方の飲食店はすでに休業していた  静岡市内の繁華街では、田辺市長の休業要請を待たずに、すでに7割程度の飲食店は店を閉め、夜の街はひっそりとしていた。各店舗のお知らせを見れば、一目瞭然である。早いところでは、4月5日から休業に入っていた。8日から始まった7都府県の緊急事態宣言に合わせた自粛要請に従い、11日以降、飲食店の多くが順次休業に入っていた。  ある老舗居酒屋では「4月15日より5月下旬頃まで休業いたします」とあった。率先して5月下旬まで店を閉めるというのだ。そのまま廃業してしまうのではないか、そんな心配を寄せる常連が多かった。そうかと思えば、チョコレート専門店だが、待ち合いの5席があるだけの店舗でも、「4月25日~5月6日まで終日店内での飲食は利用できません」というお知らせを掲示、「50万円」を受け取るようだ。店内飲食でとうてい「50万円」もの売り上げがあるとは思えないが、飲食店側からすれば喉から手が出るほどにほしい補償なのだろう。  自主的に長い休業に入った店舗から言えば、25、26日の2日間の問題などしれている。後出しジャンケンのような不公平感が漂う。そう考えると、最大の疑問はそもそも休業補償「50万円」が必要だったのか? 料理飲食店の営業は「不要」なのか?  市単位で飲食店への休業補償を行っている自治体はほとんどない。福岡市、神戸市、千葉市、熊本市はテナント賃料を家主に補助することで飲食店の負担を少なくする試みを行っている。熊本市の場合、1カ月分の80%家賃補助で最大限28万円としている。  京都府、新潟県、宮城県などは県単位で個人事業主らに10万円程度の休業補償を行うと表明した。飲食店へは休業ではなく、時間短縮を求めている。東京都の協力金も食事提供施設に時間短縮であり、休業を求めていない。各自治体の詳しい支給要件まで分からないが、静岡市の休業補償は他と比べて破格の手厚い支援であるのは間違いない。5月6日までに「コロナ」との闘いが終わる予測が成り立てばいいが、そうやすやすと問屋はおろさないだろう。他県にならい、最初はもっと少ない金額でもよかったのではないか。ほとんどの県は飲食店への休業補償を表明していない。  公共施設はそれぞれの判断で休業期間を決めている。20日から5月7日まで閉館に入った静岡市美術館、静岡市内12の図書館は25日から5月10日(11日も休館日)まで閉館するとした。その1週間前、18日から閲覧席など利用できないような、びっくりするような感染対策を取っていた。それがとうとう休館となってしまった。  静岡市中央図書館長は「開館していることで市民から批判を受けることがあった。もはやこれ以上、火種をつくることはできない。正しいのは、新型コロナから市民を守ること」と話していた。さらに、「今後の状況により、期間等変更になる場合があります」と但し書きさえつけている。「新型コロナ」の収束はそんなに簡単ではないと考えているのだ。  今回の休業補償は見切り発車の様相が強く、いろいろな意味で拙速である。  料理飲食店は「時間短縮」すべきか「休業」すべきか?そもそも「不要不急」の意味をいまだに理解できない。おいしい食事を提供していた料理店は市民にとって「不要」の場所なのか?疑問が次々と浮かび、頭の中の「コロナ狂騒曲」はいつまでも鳴りやまない。 ※タイトル写真は、25日土曜日昼頃、静岡市七間町通り。休館中の美術館企画展「めぐるジャポニズム」PR旗が風になびく。人通りは消え、ゴーストタウンのようである。

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「コロナ」危機1生活困窮者を支援する財源は?

一律10万円給付の財源は真っ赤な国債  17日朝、日本銀行静岡支店の前を通りかかり、そうだ、徳川家康ならば、ちゃんと教えてくれるかもしれない。家康は小判1両を基準とする定位貨幣をつくり、金銀銭3貨の貨幣制度を考案、亡くなったあと、「お金の神様」と呼ばれた。家康の貨幣制度が約270年にも及ぶ、江戸幕府の安定政権を支えた。その原点が駿府の金座である。目の前の日本銀行静岡支店が金座跡。駿府の金座は江戸に一本化され、江戸金座跡に日本銀行本店が建つ。そもそもの日本の金融制度の始まりはここにある。日銀静岡支店の建物を眺めていて、「お金の神様」家康ならば、どのように現在の状況を見るのか、きっといい知恵を出してくれるだろう。そんなふうに考えた。  16日夜、全国民に一人当たり「10万円」を支給、全国すべての都道府県に「緊急事態宣言」を適用すると安倍晋三首相が発表した。「新型コロナ」で所得が半減した困窮世帯へ「30万円」給付の撤回を公明党が求めた。それにこたえ、「30万円」をやめて一律「10万円」配布に安倍首相は舵を切り替えた。17日の日経平均株価は607円も値を上げ、2万円回復も間近の高値で終えた。マーケットも「10万円」配布を大歓迎のようだった。(実際は日銀や年金運用機構が演出した”官製相場”かもしれない?)  今月7日、まず、安倍首相はコロナ緊急経済対策として108兆円規模の事業支出、39兆円の財政支出を打ち出した。その舌の乾かぬうちに、今回の一律10万円配布で、政府が国民すべてにおカネをバラまく初めての”ヘリコプターマネー”を決めた。必要なおカネは、約12兆5千億円。東京都はじめ各道府県、市町村でもコロナ対策のバラまきが目立つ。毎日毎日、首相や知事らが登場した政治ショーが繰り広げられ、おカネが飛び交うのを目の当たりにする。  働かなくてもおカネがもらえる。こんないいことはない。コロナが長引けば、多くの国民はもっともっとおカネをくれと言いだすだろう。  「打ち出の小槌」などないから、すべて赤字国債発行で賄うしかない。逆に考えれば、赤字国債発行は「打ち出の小槌」であり、いくらでもおカネを生み出すことができる。事業破綻や大量の失業など目の前にある実体経済に関わらず、値上がりする強気の株価を見ていると、金融緩和や赤字国債がバブル再来さえ演出できると錯覚する。  1980年代後半、株は永遠に上がり続け、地価が上昇し続けると思われた時代。世の中は好景気が当たり前で、投資すれば必ず儲かるから多くの人が株に手を出した。そんな世の中がずっと続けば、こんな楽なことはない。幻想に酔っていたのだ。大量の赤字国債を何度も発行でき、そのたびに一律10万円配布されれば、国民は大喜びだ。しかし、そんなうまい話があるのか。バブルはいつかはじける。バブル崩壊後、20年以上もの暗い時代が続いた。赤字国債の大量発行は本当に大丈夫か。  危険な綱渡りなのか、真相はさっぱり見えない。さてさて、この難所に直面した家康ならば、どんな知恵を授けてくれるのだろう。 家康が質素でけちだった理由とは?  家康は関ヶ原の戦いに勝利した翌年(1601年)、日本最初の銀座を伏見に設置した。1603年征夷大将軍に任じられ、江戸幕府を開くよりも前に、貨幣制度の確立に乗り出した。各大名ごとに私鋳銭が横行していては、天下統一はできないからだ。将軍職を秀忠に譲り、駿府を大御所の拠点にすると、金座、銀座、銭座の中心をここに移した。  家康は駿府に移った1607年、伏見城に蓄えていた金銀すべてを駿府城に移した。金銀の重さで駿府城の床が抜けたという記録が残る。その年暮れ、駿府城が焼けてしまったため、金銀を久能城(現在の久能山東照宮)に移した。いまも久能山に125万両の埋蔵金伝説が残る。秀吉、家康の時代、佐渡金山、伊豆金山、多田銀山、生野銀山など全国で数多くの金銀鉱山が発見され、日本はまさしくジパング(黄金の国)だったのだ。  家康の最大功績は、安定した政権を維持するため、すべての鉱山を幕府直轄として金銀を支配したこと。「日本人とユダヤ人」の著者山本七平は、家康が質素でけちだった理由について、第1に『幕府が通貨の一元的な発行権を握り、幕府に金の地金蓄積、いわゆる「金準備」が必要だったため』と指摘した。第2に『当時の主な輸入品は火薬、生糸、綿であり、この決済に金銀が必要だった』、第3に『財政が破綻すれば政権は維持できないと知っていた』という。歴史をおカネから覗けば、見方が変わる。  豊臣家滅亡もおカネのためだった。1615年大坂の夏陣のあと、家康は駿府の金座長官、後藤光次を大坂城に派遣、家康を上回る大金持ち、秀吉が残した金銀すべてを没収した。聚楽第、金の茶室など秀吉は金銀を湯水のように使ったが、家康は派手を好まず、食べるものを含めて質素、倹約に徹した。江戸時代を通じて、武士のモットーは質素、倹約となり、それが幕府の安定につながった。  それでも、さまざまな天災などで財政はひっ迫し、江戸幕府は何度か貨幣品位を落とす改鋳という「打ち出の小槌」を使い、財政基盤を強化した。金の産出量が大幅に減った佐渡金山を立て直したあと、勘定奉行となった荻原重秀の金銀改鋳が特に有名で、1・5倍の改鋳で得た利益が元禄文化の隆盛を演出した。  ペリー来航後に開国と続き、その結果、貨幣制度が破綻、幕府は崩壊した。  小判一両(金貨)と一分銀(銀貨)の金銀比価は1対5で、金1gに対して銀5gが同じ価値だったが、当時の国際金銀比価は1対16、金1gに対して銀16gだった。開港した横浜では銀5gで金1gが購入できたから、外国商人らは3倍以上の儲けを手にできた。初代駐日公使ハリスらは多額の金銀両替を求め、膨大な金が海外流出した。この事実に驚いた幕府は金流出を避けるため、対銀の金価格を3・75倍に引き上げた。これで一分銀の価値が3・75分の1に下がり、一分銀の下落に反映して、物価は瞬く間に3・75倍に向かって上昇した。  驚くべき物価高騰(ハイパーインフレ)が始まり、困窮疲弊した武士らは尊王攘夷に走り、開国した幕府の無能ぶりを責めた。狂乱物価は江戸、大坂、京都などで大混乱をもたらし、家康が確立した貨幣制度は機能不全に陥った。  今回の赤字国債の行方はいずれ、ハイパーインフレをもたらし、幕末と同じ大混乱を招くのだろうか? 大量の赤字国債発行を容認する「経済理論」  「コロナ」危機に直面したとき、政府の指導理論は「生きている人を守る」である。ウイルスとの闘いだけでなく、不況が人々の生活を困難にしているならば、何もしないで眺めているわけにいかない。108兆円もの緊急経済対策などだ。赤字国債によるおカネのバラまきでインフレの進行と通貨価値の下落が起きるリスクに対して、竹内淳・前日銀静岡支店長は「デフレ圧力があるので、インフレにはならない」と分析した。  世界中が新型コロナの「緊急事態」にあり、おカネをバラまいているのは日本だけではない。だから、有事の際の円は強く、円高基調を堅持、国債の暴落による金利の上昇など全く起きる気配はない。円安、インフレの心配もなく、赤字国債発行にためらうこともないのだろう。  「経済学」の科学的革命と呼ぶ、MMT(現代貨幣理論)は、日本の場合、年率2%のインフレターゲットになるまで赤字国債発行に問題はなく、赤字国債は永久債化して回収しなくていいのだとびっくりするようなうまい話をする。現在のインフレ率は1%前後だから、日本の赤字国債発行に問題なしとなる。  と言っても、多くの正統な経済学者はMMTは単に突飛な雑な思いつきで、数字に裏付けられた経済理論ではないと批判する。まあ大体の経済理論は当てにならないし、赤字国債発行の現状を見れば、日本の政治家の多くはMMTに信頼を置いているのかもしれない。  ただ、政治家は目先の利益で動くから、大きな落とし穴に気づかない。大量の赤字国債の高いリスクに警戒は必要なのだろう。 「令和天皇」即位の記念金貨発行を!  赤字国債は政府が(日銀発行の)紙幣を得るためのものだが、政府はダイレクトに貨幣を発行できる。5百円までの硬貨(補助貨幣)だが、それでは大きな収益を得ることはできない。そうか、硬貨であれば、金貨も発行できるのだ。  1986年、政府は天皇在位60周年記念の10万円金貨を発行した。金(20g含有)は10万円の40%程度で、鋳造費用を加え、6万円弱が発行益となった。1千万枚発行したから、額面では1兆円、約6千億円が発行益となった。10万円金貨は一般に流通していないから、各家庭などに退蔵された。金価格の高騰で、天皇在位60周年金貨は10万円以上の価値を持つ。  さて、提案するのは、この未曽有の事態を踏まえた令和天皇即位の記念金貨の発行である。失業者の増加が顕著になる「コロナ」後を想定する。頃合いを見計らって、20万円、10万円金貨をそれぞれ1千万枚発行する。額面で3兆円、天皇在位60周年金貨に比べて、金の含有量は少なくていい。その発行益で生活困窮者らに10万円支給できる。  昨年12月時点で日本の個人金融資産は1900兆円という。前回も書いたが、日本でも格差は広がり、100万ドル(1億1千万円)以上のミリオネアは何と約3百万人。令和天皇ご夫妻もコロナの影響について心を痛められている。国民の天皇家への愛慕の念は非常に強い。令和天皇即位金貨を購入する人は多いだろう。  いまから25年ほど前、絶滅の危機に瀕する野生生物を守る運動に取り組む世界自然保護基金日本委員会(WWFJ)総裁を務める秋篠宮ご夫妻を静岡市へ招き、WWFJへの寄付を募るパーティーを開いた。一人当たり20万円もの寄付が集まり、多額の浄財を元外務大臣の大来佐武郎WWFJ会長に手渡すことができた。多くの困っている人がいる一方、富裕層と言われる人々も多く、おカネの使い道に迷っていることがわかった。秋篠宮皇嗣ご夫妻の即位記念金貨も発行したほうがいいだろう。  赤字国債でおカネをバラまくことは簡単だが、みんなが納得できる捻出法として、天皇ご夫妻、皇嗣ご夫妻の金貨発行を薦めたい。家康が残したという久能山埋蔵金を見つけられれば、それを使ったほうが早いかもしれない。家康はこんな危機を見込んで、「埋蔵金」をどこかに残してくれたのだろう。 人口100万人当たりコロナ死者数(4月19日現在)  先週(12日)に続いて、「worldometers」(4月19日午前10時の統計)で調べた「各国の人口100万人当たり死者数」を紹介する。死者数は大幅に増えているが、100万人当たり死者数の各国順位は先週と同じだった。ニューヨーク州の死者数は異常に多い。日本の死者数はいまだ非常に少なく、東京もひと桁である。(カッコ内は実際の死者数)  1、スペイン355人(2万6606人)、2、イタリア324人(2万3227人)、3、フランス296人(1万9323人)、4、英国228人(1万5464人)、5、スイス159人(1368人)、6、スウエーデン149人(1511人)、7、米国118人(3万9014人)、8、ドイツ54人(4538人)、9、カナダ39人(1470人)、10、韓国4・53人(232人)、11、中国3・22人(4632人)、12、シンガポール1・89人(11人)、13、日本1・88人(236人)、14、香港0・53人(4人)、15、台湾0・25人(6人)など。  ニューヨーク2162人(1万7671人)、東京8・16人(68人)

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「コロナ」に負けない「お茶パワー」を!

息子2人を感染症で失った家康  1607年3月11日徳川家康は駿府城築城を指揮するために、江戸から駿府に戻る。江戸滞在中の2月18日家康は4男で清洲城主忠吉と面会した。忠吉の顔は鼻、くちびるが崩れ、顔面が特にひどい症状で紫の布で顔を覆い、病状もあって、今生の別れは短時間で終えた。その後、忠吉は清洲に戻ろうとしたが、3月になり江戸で亡くなってしまう。享年29歳。その1カ月後、4月には家康の2男、越前城主結城秀康が忠吉と同じ病気で亡くなる。享年34歳。8月には家康側近、紀州和歌山城主浅野幸長も同じく亡くなった。享年37歳。いずれも関ヶ原の戦場で生き永らえたのにあっけなく生命を落としてしまった。  家康は2人の子供のために当代随一の医者を派遣したが、その病気を治療することはできなかった。病名は、性的接触により感染する「梅毒」。1910年ドイツのコッホ研究所でエールリヒと秦佐八郎が特効薬サルバルサンを発見するまで、世界中で流行、数百万人の生命を奪った。その3百年前、家康は梅毒に効果的な薬はないのか、一生懸命に調べている。久能山東照宮には、家康が赤線を入れた「朝鮮版和剤局法」(国重要文化財)難病の部に梅毒治療薬として生薬「山帰来」が登場する。当時の梅毒は死に至るまでの期間が短く、感染しやすく、死亡率も高い病気だった。  家康の側近となった英国人ウイリアム・アダムス(三浦按針)の乗船してきたオランダ船リーフデ号に飾られた「海の守護神」エラスムスの木像。アダムスが尊敬した、科学的な思考の持ち主エラスムスは、「梅毒はあらゆる病気の中で最も恐れるべきものであり、これほどまでに全身に広がり、すべての医術を退け、患者を残酷までに苦しめる伝染病は他にない」と警告した。家康はアダムスから梅毒の恐ろしさを十分に聞いていたのだろう。1616年4月、74歳で亡くなるまで、水泳などで心身を鍛え、大好きなお茶を飲んで免疫力を高めることを第一に考えた。  さて、新型コロナウイルスである。世界中にまん延、死者数が10万人を突破(10日現在)、安倍首相は東京都など7都府県に緊急事態宣言を行い、愛知、岐阜、三重知事らも独自の「宣言」をした。コロナ関連であれば、どんな話題でもメディアが大きく取り上げる。メディア報道は毎日の感染者数速報を大々的に伝え、逆に不安を煽っていると批判する声も多い。  静岡人はメディア報道に踊らされることなく、家康流に冷静に「コロナ」を見てみることにしよう。  死者数を比較すれば各国の状況が分かる  海外報道は日本ではPCR検査を意図的に行っていないので感染者数が極端に少ないと伝え、メディアはそれに乗って安倍首相批判の恰好な材料にする。どう考えても、「感染者数」と「死者数」は全く違う。「生きている人を守っているのかどうか」はどちらなのか?最も良い指標は国民の生命を守ることを比べる「各国の人口100万人当たり死者数」。リアルタイムに世界中の人口、コロナ患者数などさまざまな統計数字を出す「worldometers」(4月12日午前10時の統計)を使って、静岡経済新聞が独自に調べた。  人口100万人当たりで最も死者の多いのは、スペイン(人口4670万人、死者1万6606人:以下同じ順序)355・58人、次いでイタリア(6千万人、1万9468人)324・46人。  感染者、死者数が世界で一番多い国となった米国(3億3千万人、2万555人)62・28人、カナダ(3770万人、653人)17・32人。死者の7割を占めるヨーロッパで死者数が少なく、メルケル首相の評価が高いドイツ(8370万人、2871人)34・30人、フランス(6520万人、1万3832人)230・53人、英国(6780万人、9875人)145・64人、スイス(860万人、1036人)120・46人、スウエーデン(1010万人、887人)87・82人など。  最初に新型コロナを発症、武漢封鎖を行った中国(14億3800万人、3336人)2・3人、韓国(5120万人、208人)4・12人などであり、最も死者数が少ないのはSARSを経験した台湾(2380万人、6人)0・25人、香港(750万人、4人)0・5人、シンガポール(580万人、7人)も1・2人と非常に低い数字が続く。  さて、緊急事態宣言や経済対策など安倍首相へ風当りの強い日本(1億2650万人、144人:ダイヤモンドプリンセス号の死者数含む)は、何と1・13人だった。何かと批判も多いが、この数字はいま流行りの「すごいぞ ニッポン!」と賞賛してもいいのではないか。  「臨時休業」や「自粛」などでメディアが大騒ぎの日本。毎日、新型コロナの感染者は増えているが、現在のところ、死者数は世界各国と比べて圧倒的に少ないのがまぎれもない事実である。 経済格差が莫大な死者数を生んだ?  ニューヨーク(817万人、8627人)ではアメリカの中でも飛び抜けて多く、100万人当たりの死者数は何と1055・93人。ほぼ同じ人口規模の都市、東京(833万人、40人)4・80人と比べれば分かるように、あまりに異常な数字である。なぜ、ニューヨークの死者が莫大なのだろうか?  2018年4月8日から21日まで、ニューヨークの隣町にホームステイして約50分のバス旅行で大学へ通った。ホームステイ先はコロンビアからの60代移民男性宅であり、熱烈な共和党のトランプ支持者だった。周辺は移民たちの貧しい地区で道路にはゴミが散乱していた。  毎朝通う中型バスの中で、一番驚いたのは、肥満体の若い男女たちがひしめき合うラッシュの様子だった。夕方の帰りのバスに目立つのは貧しい白人の高齢者たちだった。日本のバスの中では、めったに見ることのできない大きなお尻が座席を占領していた。バス停は1キロごとくらいにあり、次のバス停で停車希望者は必ず大きな声で「Next Stop」と運転手に指示しなければならなかったが、この地域のバス料金は非常に安かった。  いまと同じ季節のニューヨークは非常に寒く、数多くのホームレスや乞食が目立った。新型コロナによって亡くなっているのは、そのような貧しい人々なのだろう。日本とは全く事情が違うのだ。新型コロナで亡くなる人が日本で少なく、ニューヨークで多い理由について、英国の研究者が明らかにしている。  リチャード・ウィルキンソン、ケイト・ビケット著「平等社会」(酒井泰介訳、東洋経済新報社、2010年4月)。経済格差が健康状態に及ぼす影響を分析した。格差の少ない平等社会ほど、不健康や社会問題の発生頻度が低く、格差が広がるほど健康、社会問題に影響しているのだという。日本は世界の中で最も格差が少なく、健康、社会問題が少ない位置にあり、逆にアメリカは最も格差が大きく、貧しい人たちの健康、社会問題は最悪だと指摘する。  また格差の大きいほど成人の肥満率が高いことも明らかにして、日本人はアメリカ人の肥満率の12分の1以下であるという。毎日ペプシの3㍑ボトルを飲み干す若い黒人女性やヒスパニックの男性が3食ともファーストフード店で済ます例が挙げられていた。肥満は高血圧、糖尿病、心臓疾患、胆のう病のリスクが増すのだから、ニューヨークの新型コロナ患者たちが持病を持つことを容易に想像できる。  4月7日雑誌フォーブスは恒例の「世界長者番付」を発表、3年連続トップはアマゾン創業者ジェフ・ベゾス1130憶ドル(約12兆3千万円)、2位ビル・ゲイツ980憶ドルなどでアメリカの格差はますます広がった。1千万ドル以上の金融資産を有するビリオネア2095人のうち、日本からはユニクロの柳井正(197億ドル)ら26人が入っていた。SARS後に中国のアリババが極端に伸びたように、「新型コロナ」の影響で、ネットフリックスやズームなどシリコンバレーや中国企業が売り上げを伸ばし続けているから、新たなビリオネアが誕生するだろう。  金融資産100万ドル(約1億1千万円)世帯はアメリカでは10%、日本では5%程度だから、格差社会は日本もアメリカに近づきつつある。  残り95%のおカネを持たない平均的な日本人がなぜ、健康で「新型コロナ」の猛威に持ちこたえているのだろうか? 「強い免疫力」は弱毒性ウイルスを恐れない!  3月12日の記者会見で川勝平太知事は、静岡県民はお茶を飲んでいるから免疫力が高く、新型コロナに感染しても打ち勝つことができると述べていた。そうだ、お茶の力が大きいのだ。  新型コロナウイルスは弱毒性で自覚症状がないからまん延するのであり、一度抗体ができれば重症化リスクは低いとされる。ウイルスに感染しても異物を発見して駆除する抗体をつくり、ウイルスを排除していく。ウイルスとの闘いに勝つためには免疫機能がちゃんと働くことが重要。ふだんから家康のように水泳、武道に励み、お茶を飲み、十分な栄養を摂ることに心掛ければいい。新型コロナは鳥インフルエンザのような強毒性ウイルスではないから、免疫力の高い日本人の死亡者が少ないのだろう。  いまはマスク、手洗い、消毒が必要だが、実際は、ふだんの十分な睡眠、運動、栄養、ストレスのない生活こそが重要、それで免疫力は高まる。アメリカに行ったとき、ホテルのスタバで緑茶を注文したら、たっぷり砂糖の入った甘い緑茶が出された。アメリカ人の味覚は砂糖を好み、肥満につながることに目をつむる。過度の砂糖は免疫力を失わさせる。幸福なことに日本人は砂糖なしのお茶を飲む習慣を持っている。  タイトル写真にあるように新茶を祝う八十八夜イベントで川勝知事と踊った「お茶がえるクン」はいま、「新型コロナに負けないゾ音頭」をつくっている。「ちゃ、ちゃ、ちゃ、お茶のパワーでコロナに勝つぞ♪…」。川勝知事と一緒に踊る日を待ちわびる。さあ、静岡県発で元気が出るお茶パワーを発揮しよう。  古代ギリシアの悲劇詩人エウリピデスは「私が富に関心を持つのは、病んだ人に健康を取り戻させるため。富は日々の小さな喜びを与えるにすぎない。ひもじさが満たされれば、富者も貧者も同じである」と述べた。  「コロナ後の格差社会」は日本に必ず到来する。だから、静岡人はお茶をがぶがぶ飲んで、踊ったり、歌ったりして楽しい生活を送れば、健康でいられる。「格差社会」到来の大波の中で、安倍首相でも小池知事でもなく、また、リニア問題で考えを異にする大村愛知県知事、鈴木三重県知事でもなく、静岡県をお茶パワーで引っ張る川勝知事が手腕の見せ所だ。 ※タイトル写真は、八十八夜イベントでお茶がえるクンと踊る川勝知事たち。ことしも八十八夜はやってくるが、どうなることやら?

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リニア騒動の真相37「コロナ」と「リニア」の間に

ウイルスも「生物多様性」に含むのか?  2020東京オリンピックの来年7月への延期を受けて、静岡県庁本館正面でオリンピックムードを盛り上げていた大看板の掲示が入れ替わっていた。  突然の延期であり次回の計画も決まっていなかったせいか、閉会間際にも関わらず、ふじのくに地球環境史ミュージアム(静岡市駿河区)の企画展「大絶滅 地球環境の変遷と生物の栄枯盛衰」(4月5日まで)を急きょ採用したようだ。同展は、気候変動や隕石落下によって滅びたティラノサウルス、スピノサウルス、トリケラトプスなど子供たちに大人気の恐竜の歴史などを追っている。「大絶滅」と記されたタイトルの右横にあるキャッチフレーズに目が釘付けとなった。  『いま私たちは、その(絶滅の)境界に立っている』  WHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的流行)を宣言、「COVID-19」と名付けられた新型コロナウイルスは世界中にまん延、5日現在120万人以上が感染、6万4千人以上が亡くなるなど猛威を振るい続けている。いまや、人類全体を「絶滅の境界」に追い込もうとしている。静岡県庁本館前の看板キャッチフレーズは、まさに、新型コロナウイルスの影響を受けるわたしたちの世界を物語っていた。  隕石落下や気候変動ではなく、新型ウイルスの脅威が襲った世界を見ていると、新型ウイルスがリニア問題に深く関係していることに気づいた。  細菌など目に見えない生物を微生物と規定する。細菌よりさらに微小なウイルスは果たして、生物なのかどうかという議論と関係しているのだ。ウイルスを生物とするか無生物とするかは長年、論争の的だった。その論争はまさに生命とは何かに答えることであり、リニア議論のテーマ「生物多様性」とつながるのだ。  静岡県の「生物多様性」専門部会では、リニア工事による大井川の沢涸れ、河川流量の減少による希少種を含む生態系への影響を議論する。JR東海が作成した食物連鎖図では、大井川上流部の絶滅危惧種を象徴する「ヤマトイワナ」を頂点に餌となるカメムシ、コウチュウ、ハエ、ハチ類の流下昆虫、その餌となるカゲロウ、トビケラ類や流下昆虫などを支える藻類、微細粒状有機物、さらにミズナラ、コメツガ、カラマツなどの豊かな森林、植物など複雑な連鎖が続いている。  頂点のヤマトイワナだけではなく、その生存に関わるすべてを守ることが「生物多様性」ならば、JR東海作成の食物連鎖図は不十分であり、数えきれない微生物にまで及ばなければならない。どこまで調べるのかという問題であり、そもそも「生物多様性」とは何かという疑問につながる。 「病原体」は生物ではない?   コロナウイルス自体はありふれたウイルスで、典型的な風邪などの疾患を引き起こす。2002年に問題となったSARS(重症急性呼吸器症候群)のような特殊な新型コロナウイルスは「特定病原体」と呼ばれ、人々の生命を脅かす存在に分類される。実際、香港、中国などで多くの生命を奪ったため、WHOは感染拡大の防止を世界中の医師らに呼び掛けた。SARSの日本上陸は阻止された。  SARSは中国広東省のキクガシラコウモリが感染源となった可能性を指摘されたが、流行が始まった地域で捕獲されたハクビシンからSARSと似たウイルスが発見されたことで、中国政府は1万頭以上のハクビシン、アナグマ、タヌキを処分した。2018年サウジアラビアで現れたMERS(中東呼吸器症候群)はSARSに似た病気だったが、致死率は40%にも達した。MERSはヒトコブラクダからの感染が疑われ、コウモリの持っていたウイルスがラクダに広がった可能性が指摘される。  「COVID-19」新型コロナウイルスも食用のコウモリが感染源と疑われるが、キクガシラコウモリなのか、他の種類なのかいまのところ明らかにされていない。ただ、ウイルスを最初に媒介するのは小動物であることに間違いない。  COVID-19と同様に世界に惨禍をもたらしたペストは従来ネズミが運んだと考えられていたが、現在ではネズミなどのげっ歯類の動物からノミ、シラミがペスト菌を運んだ可能性が高いとされる。「黒死病」と恐れられたペストは世界全体で7500万人から2億人の生命を奪ったとされる。北里柴三郎らがペストの病原体となる細菌を発見し、感染経路をつきとめ、ヨーロッパで大流行したネズミが関与するペストは終息していった。  ペストなどの細菌に比べ、ウイルスはその何十分の一から何百分の一という小さな存在で、1930年代以降に登場する電子顕微鏡が使われるまで世界はウイルスという存在そのものを知らなかった。  千円札に描かれる野口英世(1876~1928)は、黄熱病研究のためにガーナのアクラに滞在していたが、病原体を突き止めたとされる黄熱病で亡くなった。狂犬病や黄熱病など数々の病原体の正体を突き止めたという野口の論文は、いまではほとんどすべて間違ったものとされている。1915年まで3度にわたってノーベル賞候補とされ、日本では紙幣に登場するほど高い評価のままだが、欧米では彼の業績を完全に否定、ノーベル賞を授与しなかったことが逆に、評価されている。野口の研究成果が単なる錯誤だったかねつ造だったかは分からないが、当時、野口の使っていた光学顕微鏡では微小すぎるウイルスの存在を確かめることができなかった。  黄熱は黄熱ウイルスを持った生息環境の異なる2種類の蚊に刺されて発病する。黄疸のために皮膚が黄色くなり、ひどい苦しみをともなうため、黄熱におかされた野口はパニック状態となり、助手に「私にはわからない」と告げて亡くなったという。野口は自分の生命を奪うことになったウイルスの存在を「わからない」ままこの世を去った。  全く目に見えないウイルスは生物だろうか?  黄熱ウイルス、ジカウイルス、SARSやCOVID-19新型コロナウイルスなどに直面したとき、「人間の生命を守る」が大原則となる。たとえウイルスが生物だとしても、人間が守るべき「生物多様性」の一部分と見なさない。危険ウイルスを媒介する小動物を徹底的に駆除することにもつながる。食物連鎖の最上位にヒトがいるからなのだろう。  2月に開かれた静岡県主催の「ふじのくに生物多様性地域戦略」シンポジウムでも、結局、『「生物多様性」とは非常に分かりにくい概念』が結論だった。  リニア議論でもまず、「生物多様性」とは何であるのかはっきりとさせたほうがいいのではないか?大井川の象徴ヤマトイワナを守ることだけが決まっているが、なぜ、それほどまでに重要なのかは説明されていない。 多額の費用を掛けて守るものとは?  大井川の支流西俣川のさらに奥深い支流、人々が踏み入ることさえない場所でモニタリング調査をすることが決まっている。この調査で「生物多様性」の名の下に何を守ろうとしているのか、理解できない。  リニアトンネル工事の基地となる西俣ヤードを過ぎて、さらに奥に踏み入っていくと蛇抜沢、新蛇抜沢、小西俣沢、上岳沢、瀬戸沢、魚無沢、内無沢などへつながっている。タイトル写真は西俣ヤードを過ぎたばかりの場所だが、すでに林道は消えてなくなってしまい、人が踏み入れることはない魚無沢や内無沢などそのずっと先にある。とうの昔に林業はすたれてしまったから、昔のカーブミラーもいつか朽ち果てるだろう。当然、禁漁区であり、イワナを狙った渓流釣りの人たちが入ってくることはできない。そんな場所にJR東海は監視カメラを設置、それぞれの沢の流量を計測するのである。  大井川上流部は夏になれば毎日夕立ちがあり、一挙に水嵩は増える。昨年10月の台風19号のように沢自体が激変する可能性もある。リニアトンネル工事期間中の影響と自然環境の変化で起こることをどこまで区別できるのだろうか?  そして、そこまでの費用を掛けて守るものとは何だろうか?もし、それほどまでに重要なものであるのならば、なぜ、静岡県、静岡市はこれまで手をこまねいてきたのだろうか?「生物多様性」議論を聞いていて、一体、何を守ろうとしているのかさっぱり見えてこない。  豊かな生態系がなければ人間の存在が脅かされるから「生物多様性」を守らなければならないと言うが、初めから、そこに人々は住んではいない。南アルプスのニホンジカやキツネ類は害獣として駆除されている。長い間、人間の都合で多くの野生動物を追いやって来た。どこまで何を守るのか、最初に議論すべきである。 デジタル革命が加速、リニアの役割に変わりはないのか  新型コロナウイルスの影響を受けて、3日に行われた静岡県と国交省鉄道局との「事前協議」はオンラインを使うネット会議に変わった。2月6日以来何度も、東京、静岡を往復する面倒な移動はあっさりと省かれた。書類のやり取りをした上で不明な点があれば、画面を見て質疑応答をすればいいのだ。直接対面するのではなく、バーチャルなネット会議に移行、コスト節約の効果は非常に大きい。新型コロナがさらなるデジタル革命を加速させるはずだ。皮肉なことに、テレワークが進むことでリニアへの期待は小さくなる。鉄道局は新型コロナ収束後の世界をいまから検証すべきである。  さて、10日までに静岡県は公募の委員候補を絞り込んだ上で、鉄道局に委員候補リストを送るのだという。鉄道局は静岡県が忌避する委員を検討した上で何らかの回答を寄せるのだろう。その後に静岡県の候補リストを検討しなければならない。そのやりとりを含めて、4月中旬の第1回有識者会議開催は絶望的だ。この先もだらだらと「事前協議」が続くのだろう。  鉄道局はあらためてちゃんと「戦略」を立て直したほうがいい。新型コロナ収束後の世界では、リニア議論にもドラスティックな変化が起きるだろう。そこで、肝に銘じなければならないのは、人間のごう慢さについてである。「生物多様性」議論からはそれがはっきりと見えるのだ。ぜひ、わたしたち市民にも理解できるような説明をお願いしたい。

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リニア騒動の真相36「苦闘」鉄道局の打開策は?

ワニが教える「地球温暖化」論議  浜松市HPに『6万年から12万年前、浜名湖湾岸に広がる低湿地ではナウマンゾウが草を食べ、水辺には体長3mのワニが生息していた』とある。本当に熱帯に生息するワニが浜名湖にもいたのか?  20年ほどまえ、浜名湖湾岸にワニが生息していた証拠の化石を発見した長谷川善和・群馬県立自然史博物館長(現・名誉館長)のもとを訪れた。長谷川さんは1968年浜名湖の北部引佐地区の採石場でワニ20頭などの化石を発掘、骨格からマレー半島などの沼や川にすむ口がとがったマライガビアルワニの種類に近いと教えてくれた。群馬県博物館に保管していたワニ化石を倉庫から出してくれた。20頭のワニ化石をつなぎ合わせてもらい、現在、生息するワニの白い頭骨を置くと何とか1頭のワニに見えた。(※タイトル写真)  当時の浜名湖周辺はインドネシアと同じくらいの熱帯性気候だった。だから、現在よりも温度は4、5度高かった。その後、非常に暑かった間氷期が自然変動で終わり、ワニたちは滅びていく。  小氷河期のあと間氷期となり、日本はワニのいない温帯性の四季に恵まれた気候の中で過ごしている。ところが、CO2(二酸化炭素)増加に伴う地球温暖化が進むと、4、5度の気温上昇で再び、ワニのいる時代に逆戻りだという。そんな気候変動を抑えるため、CO2削減は全世界的なテーマとなっている。  スウエーデンの少女グレタ・ツゥーンベリ(17歳)は昨年9月の国連地球温暖化対策サミットで、大幅なCO2削減を求め、「もしあなたたち(大人たち)がわたしたち(次世代の若者)を裏切ること(人為的なCO2増加)を選ぶならば、あなたたちを絶対許さない」と訴えた。「地球を救える時間はあと数年」と叫ぶグレタは若者を中心に世界中の共感を得ている。  来年以降にならないと詳細は分からないが、ことしの地球は過去20年間でCO2排出量は最低の状態を記録するはずだ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によって、日本を含め、CO2を大量排出する先進国が機能不全に陥った。ニューヨーク、パリなど世界中で実質的な”都市封鎖”状態だ。グレタはCO2大量排出の航空機移動を拒否したが、世界中の航空便がほぼ全面的にストップしてしまったから、航空会社の多くが倒産するかもしれない。  さて、これでCO2排出量が極端に少なくなり、温暖化が進む地球を救える、とグレタは大喜びだろうか?  温暖化は「人為的CO2排出」か「自然変動」か?  地球温暖化進行と言うが、30年前と比べて実際には気温は0・3度程度しか上昇していない。わたしたちは生涯に30トンもの有害汚染物質?CO2を吐いているが、世界中でCO2削減は大テーマ。静岡市でも、地球温暖化をテーマに、NPO法人に「協働パイロット事業」の提案募集を行っている。『脱炭素化社会の実現に向けた市民・事業者の取り組み』である。(4月6日まで)  「世界共通の喫緊課題として地球温暖化が挙げられており、2050年までに脱炭素化社会を実現すべく、多くの自治体でCO2排出ゼロを宣言している。市民・事業者のライフスタイルを見直すための意識変革が必要である。地球温暖化を身近な問題と捉え、多くの人が意識変革できる、実効性のある提案を募集する」。大幅なCO2削減につながる実効性の高い「意識変革」とは何だろうか?  CO2排出の影響を告発した映画「不都合な真実」で有名な元アメリカ副大統領アル・ゴアらは、地球温暖化問題の「意識変革」を促すために、2016年、「ママもパパも聞いてよ、僕たちが大きくなるうちに温暖化がひどくなるんだ。そんなふうにしたのは大人たちだ!」と子供が親を追及するCMをつくっている。まさに、”グレタ・ツゥーンベリ”を全米各地に誕生させる試みだった。  静岡でもグレタにならって「地球を救える時間はあとわずか(2050年を目標とするとあと30年)」活動に子供たちを「温暖化防止大使」に起用するのが一番いいのかもしれない。   ところで、人間たちがCO2を排出していなかった10万年前は大気中のCO2濃度はいまよりずっと濃かった。浜名湖でワニが生息できるほどのCO2濃度はいつ実現するのかわからない。30年間でたった0・3度の気温上昇が人為的なCO2排出が原因かどうかさえわかっていない。  米国の環境保護庁(EPA)は、温暖化対策をしても世界のCO2排出量はほとんど減らず、気温もほとんど変わらないと発表した。パリ協定にアメリカ、中国など未加盟国が加わったとしても地球の気温は変わらないことも認めている。オバマ時代に参加したパリ協定に、トランプは大統領就任直後に離脱、石油資源豊富なアメリカではCO2削減に対して民主、共和両党の間で真っ向から意見衝突する。まさに科学的な知見も激しく対立するから、CO2削減でどちらが正しいかわからない。  ところが、静岡市だけでなく、日本全体で年5兆円以上の「温暖化対策費」が飛び交うのは、グレタやゴアらスーパーヒーローの存在があるからだ。CO2削減が正しいかどうかは別にして、「意識変革」とはどちらかの側につける工作なのだろう。 鉄道局の嘆き「新有識者会議」開催めどたたず  3月27日国交省鉄道局から静岡県に提出された「有識者会議について」の文書では、「鉄道局がリニア問題に関与して昨年8月から7カ月以上、有識者会議提案から2カ月が経過したが、会議開催のめどがたっていない」と嘆いていた。  23日静岡県は「有識者会議」メンバーについての疑問やJR東海の立場が不明などという文書を提出した。27日の鉄道局文書はそれに回答したものだが、鉄道局の嘆き通り、「新有識者会議」が開催されるかの見通しは暗い。鉄道局は「トンネル湧水の全量戻し」「大井川中下流域の地下水影響」を2大テーマとしてまず、何とか課題解決に持っていく方針なのだが、そうは問屋が卸さなかった。  そもそも13日に突然、川勝平太知事は記者会見で「新有識者会議」メンバーを公募すると発表、「驚きだ」(水嶋智局長)、「理解できない」(金子慎JR東海社長)などとメディアを含めてびっくり仰天した。  県の公募理由を求めたため、難波喬司副知事は5項目の理由及び意見を水嶋局長宛に提出した。それが今回の「このままでは会議のめどが立たない」という鉄道局の嘆きとなる。川勝知事の突然の公募発表からでさえ2週間も経過した。こんな状況を見て、28日付静岡新聞は「新有識者会議の開催見通せない」と伝えた。  まてよ、2月7日付中日新聞は「事前協議」の長期化の可能性を指摘、いつになったら「新有識者会議」が発足するか見通せない状況であると1カ月以上前に予測していた。中日「リニア着工までの流れ」図によると、「事前協議」が終わると、「トンネル湧水の全量戻し」「大井川下流域の地下水への影響」を評価する「国の新有識者会議」が方向性を見つける。その後、国、県、JR東海の「3者協議」で着地点を見つける取り組みを行うことで、静岡県の「有識者会議」が納得するような結論が得られるようだが、「事前協議」段階がまだ終わりそうにない。  鉄道局は4月中旬に第1回有識者会議開催を提案したが、新型コロナの影響が大きくなる一方の中で、やはり見通しは真っ暗である。 「生物多様性」議論は「こんにゃく問答」になる  川勝知事「戦略」では、「水循環」「委員公募」と来て、とうとう「生物多様性」まで「新有識者会議」に加えてしまった。「中立性」にこだわる鉄道局は川勝知事「戦略」に負けてしまったのだ。  「生物多様性について議論する場合の委員構成を明らかにせよ」という静岡県の主張に対して、27日付文書で鉄道局は「現時点で委員の選定を行うのは難しい。有識者会議で議論を行う段階でメンバーを検討する」と拍子抜けの回答をした。つまり、全く考えていないことを明らかにしたが、この回答で新有識者会議でも「生物多様性」について議論することを表明したのだ。  「生物多様性」まで加わったら、リニア問題が本当に解決できるのか、鉄道局は「大混乱」の行く末を分かっているのだろうか?立ち位置の違う鉄道局に自然環境保全はあまりに荷が重いはずだ。  「リニア騒動の真相」では、これまで何度も鉄道局「戦略」を見直したほうがいいと書いてきた。JR東海、川勝知事の「闘い」に鉄道局は参入したが、「地球温暖化」議論を見れば分かる通り、環境問題の科学的議論ではどちらが正しいという決着はつかない。お互いにとんちんかんの「こんにゃく問答」になるのが落ちである。  静岡人はイルカを食べるし、伊東ではイルカ漁も行ってきた。日本人がクジラ、イルカを食べることを欧米人には許せない。しかし、日本の食文化である。静岡県の生物多様性専門部会で「イワナ」が大きなテーマである。ヤマトイワナ、外来種のニッコウイワナ、その交雑種が大井川上流部には生息する。専門部会ではヤマトイワナを守ることが至上命題らしい。5年ほど前、静岡市調査で西俣川支流でヤマトイワナは確認されているが、絶滅危惧種に指定されるから、JR東海調査では発見されていない。  西俣川支流に生息するヤマトイワナのDNAを守ることが生物多様性だというが、これは非常に難しい。一般には全く理解できない。釣り人たちに試しに聞いてみたが、ヤマトイワナとニッコウイワナの味に違いはないのだという。イワナを食べるのではなく、守るのは誰だろうか?本来は静岡県、静岡市の役割だが、今回はJR東海に任せたいらしい。  川勝知事は品川ー名古屋間2027年リニア開業にこだわらず、品川ー大阪間の開通を一挙に目指したほうがいい、と発言してきた。スケジュールの遅れ具合から、鉄道局も川勝知事の考えに賛同して後押ししているのかと疑ってしまう。このままでは全く見通しが立たない。  鉄道局に「打開策」はあるのか?川勝知事「戦略」に対抗するならば、グレタ・ツゥーンベリ、アル・ゴアばりのスーパーヒーローを招へいして、市民を味方につける「意識変革」を始めたほうが早い。ほとんど何だか分からない「生物多様性」をちゃんと教えたほうがいい。

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リニア騒動の真相35「ブラックスワン」が起きる?

アスティ静岡は14店舗が閉店した  「新型コロナウイルスの影響でJR静岡駅アスティ西館にある多くの店舗が閉めってしまった」。びっくりするような話を聞き、行ってみると、アスティ西館の飲食店などが板囲いに覆われていた。14店舗があった白い壁面に「閉店」あいさつが掲示されていた。ついこの間まで各店舗とも客でにぎわっていた様子だったのに、何らかの理由で契約を解除したのだ。「閉店」は本当に新型コロナの影響なのか?  アスティ静岡に聞いてみると、「新型コロナ影響」は単なる噂で、全く関係ないようだ。2月13日に今回の閉店を発表した。新型コロナの深刻な影響が出る前である。担当課によると、古くなった空調設備などを含めた15年ぶりの大改装を以前から予定、各店舗の契約終了が2月末からであり、新型コロナの影響が大きくなった時期と重なったという。  新店舗のラインアップは5月中旬に発表され、8割の店舗が7月頃、残り2割が秋頃までにリニューアルオープン予定という。新型コロナに不安を抱く市民が事情を知らずに、勘違いしたようだ。これまでは「閉店」の貼り紙だけだったが、担当課は「新しいフードテラスの様子を飾ってリニューアルを強調したい」と話していた。静岡駅でもインバウンド需要がなくなったから、この時期、改装工事に当たったのは僥倖(ぎょうこう)だったかもしれない。  世界保健機関(WHO)が3月11日、パンデミック(世界的流行)を宣言、欧米へ感染が拡大すると、新型コロナへの不安は急速に高まった。特にひどいのは、株価である。NY市場のダウ平均は2月初めに3万ドル寸前だったのが、一気に1万9千ドルと30%以上も値を下げた。東京市場も日経平均が2万4千円から1万6千円台にまで下落している(3月19日現在)。  経済に対する市場の危機感や将来の動向を表すのが恐怖指数(VIX指数)。リーマンショック後に起きた世界金融危機時には89・53という最高値を付けた。現在は80前後。日本の株式市場で恐怖指数を表す日経VIは世界金融危機時に92、現在、60前後まで高まっている。今回の恐怖指数がこのままおさまるはずもなく、世界中で金融危機が起きる兆しから、恐怖指数はさらに高くなるはずだ。  新型コロナウイルス感染のパンデミックによって、「ブラックスワン」が起きてしまった。 「大不況」に襲われるのが確実となった  17世紀末オーストラリアでブラックスワンが発見されるまで、スワンは「白い鳥=白鳥」とヨーロッパの人々は信じて疑わなかった。英国からのオーストラリア入植者が「黒いスワン(白鳥)」が存在することを伝えると大騒ぎになった。スワンは白鳥という常識が覆されたのだ。たった1羽のブラックスワンが世界の常識(姿)を大きく変えてしまった。オーストラリアと言えばコアラやカンガルーが有名だが、西オーストラリアの州都パースを訪ねる機会があれば、ぜひ、ブラックスワン見学に行かれることをお薦めする。(※タイトル写真もモンガー湖のブラックスワン)  西洋社会の常識を変えた「ブラックスワン」は、金融危機や自然災害で極端に確率が低い予想外のことが起こり、それが大きな波及効果をもたらす現象に使われるようになった。2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災などがそれに当たる。  日本の原発は五重の安全策が施され、絶対にメルトダウンのような重大な事故は起こらないと信じられてきた。東日本大震災によって、福島第一原発事故という未曽有の大災害が起きた。3機の原子炉がメルトダウンを起こし、使用済み核燃料を保管していたプールが崩壊して大量の放射性物質が飛散、東日本全域が高濃度の放射能に汚染される深刻な事態に発展した。原発は「絶対安全」ということばは使われなくなり、すべての原発は一時停止に追い込まれた。放射能に汚染されたがれき処理や土壌の除染費用などは巨額に上り、いくら費用を掛けても事故前の住環境を取り戻すことは不可能である。  そしていま現在、新型コロナウイルス感染によって、世界中を巻き込んだ「ブラックスワン」(常識を覆す大きな変化)が起きているのだ。  歴史の授業で習った「The Crash of ’29(1929年の大暴落)」以上の「The Crash of ‘2020(2020年の大暴落)」が将来、名前を残すはずだ。1929年の大暴落は世界大恐慌の引き金になり、多くの企業倒産、失業者があふれ出した。今回の「ブラックスワン」に世界が協調して対応するはずだが、財政破綻などで「国家破産」が起きる可能性を否定できない。世界全体が大不況になるのは間違いないが、実際にはどうなるのか、「ブラックスワン」が始まったばかりで予測がつかない。  100キロ離れた「地下水」の影響はない?  新型コロナウイルス感染の起きる前から静岡県とJR東海のリニア問題の「対話」を聞いていて、何度も「ブラックスワン」が頭をよぎった。  リニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区から約100キロも離れた大井川中下流域の地下水への影響についての議論である。静岡県は、トンネル工事によって地下水の流れを切断、または流れを変える可能性、重金属等の有害物質が地下水に流出する可能性を指摘してきた。  JR東海は「中下流域の地下水は掘削される南アルプストンネルから約100キロ離れており、影響は全く生じない」と説明する。当然、これまでの大規模な土木事業で100キロも離れた地下水の影響について議論されたことは一度もない。そんなことが起こるとは誰も考えたことがなかったからだ。  大井川は間ノ岳(3189㍍)を源流に駿河湾まで約168キロの長さ、流域面積1280キロ平方㍍の大河川だ。間ノ岳だけでなく、大井川の水源には日本第2位の白根北岳(3192メートル)、荒川岳、赤石岳、聖岳など3千メートル級の南アルプス13座の山々が連なる。北アルプスに比べて降水量も多く、リニアトンネル建設地の下流域に数多くの支流があり、豊富な水が本流に流れ込み、下流域の利水の役割を果たす長島ダムに水を供給している。  さらに、大井川地域の地中に蓄えられている地下水賦存(ふぞん)量は58・4億㎥、そのうち地下水障害を発生・拡大させることなく利用できる地下水量は3・4億㎥と莫大な量を有する。約430の事業所が地下水を利用している。静岡県は中下流域の15本程度の井戸によって、地下水の経年変化を調べている。現在まで大井川地域の地下水に大きな異常は見られない。そもそも地下水量に大きな影響を及ぼすのは、ほとんどはその地域に降る雨量や取水量である。  約百㌔離れた河川上流部の水の変化が中下流域の地下水にどのような影響を及ぼすのかという研究は行われたことはなく、水循環に携わる水文学専門家の研究対象ではない。JR東海の説明通り、「中下流域の地下水への影響はない」と判断するのがふつうの考え方だろう。  地下約4百㍍に建設される南アルプストンネル(約8・9キロ)が100キロ以上離れた地域の地下水に影響を与えてしまうのか?科学的な常識を超えたばかげた疑問のようにさえ思える。 流域の首長も「公募」を望んでいた  17日国交省の「新有識者会議」人選を巡り、水嶋智鉄道局長は静岡県が勝手に公募を始めたことに不信感を示した。国交省の「新有識者会議」にいちゃもんを付けたのだから当然である。それに対して、難波喬司副知事は「公募をやめるつもりはない」と明言した。今週中にも静岡県は公募に踏み切った理由などを国交省へ説明しなければならない。公募の目的に「水循環の科学的知見を持つ人」を挙げたが、国交省は水循環研究の第一人者を提示したと反発した。  1月20日の川勝平太知事と大井川流域10市町首長とのリニア関連意見交換会は非公開だったため、事務局の島田市に議事録を情報公開したところ、3月18日になってようやく文書開示が行われた。この中で、「鉄道局はリニア推進の立場であり、公平・公正な調整役ではない。第三者委員会(国の新しい有識者会議)のメンバーを公平・公正にするために、県からメンバーを入れる必要がある」という意見があった。流域の首長も静岡県の公募を望んでいたのだ。  そうか、やはり静岡県は「ブラックスワン」が起きることを心配しているのか。『リニア騒動の真相32川勝知事「戦略」の”源”は?』で水循環研究者でも中下流域の地下水の影響を判断できない、と書いた。それだけ難しい問題である。  2014年の水循環基本法成立後に設置された、フォローアップ委員会座長を務める沖大幹・東大教授(水文学、水資源学)は国交省が太鼓判を押す水循環研究の第一人者であることに間違いはない。静岡県の専門家会議に水循環研究者は見当たらない。  「ブラックスワン」が起きてしまえば、波及する影響は甚大であり、川勝知事の指摘通り62万人の生命に危機が及ぶだろう。「新有識者会議」は過去に一度も議論されなかった100キロも離れた中下流域の地下水影響が重大なテーマとなる。だからこそ、静岡県は「国の新有識者会議」に、公募までして水循環の専門家を入れたいのだろう。沖教授だけでなく、南アルプスをフィールドにし、大井川の個性などについてよく知る水循環の専門家が必要なのだ。  「全量回復と水質保全を大前提とした上で、JR東海の責任において、不測の事態に対し恒久的な対策を行う確約がない限り、基本協定の締結は認められない」、「想定外の事態(地下水の枯渇)に対し、誰も責任を取り続けることができない。JR東海は100年、200年、300年、400年と責任を取り続けてくれない」(流域首長の意見)  国の「新有識者会議」が静岡県民の不安をすべて取り除くことができるよう期待したい。 ※ブラックスワンは優雅な白鳥と違い、ドナルドダックみたいにコミカルである。人間を恐れる様子もなく、「何か餌を寄越せ」とばかり、大きな赤いくちばしで突っついてくる。原生自然保護地域を中心とした南アルプスエコパークにも常識を覆すようなブラックスワンが生息するかもしれない。生物多様性についてはこれから調査すべきことが多い。

ニュースの真相

リニア騒動の真相34 JR東海「いばら道」へ第一歩

JR東海株、昨年4月から1万円以上の急落  昨年(2019年)4月1日に2万6255円の最高値を付けたJR東海株は、その後2万2、3千円前後で推移、2月17日に2万円を割ると、3月13日終値1万5180円と1万円以上も値を下げてしまった。  3月10日、金子慎社長は東海道新幹線の利用半減(3月1~9日)という厳しい状況を伝えた。11日になってWHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的な大流行)を宣言、新型コロナウイルスの勢いはおさまりそうにない。今後もJR東海に逆風が吹き荒れる可能性が高く、どこまで影響が出るのかの見通せない状況だ。  静岡県との「対話」が続くリニア計画から見れば、2018年10月、JR東海の「原則的に静岡県外に流出する湧水全量を戻す」表明は、JR東海株が好感される材料の一つとなった。昨年1月30日の県有識者会議で、JR東海は「湧水の全量を戻すことで中下流域の不安を解消できた。”不確実性”の高い議論ではなく、工事着手をして何かあれば対応したい」と自信のほどを示していた。  株価が最高値をつけた4月初めは、5月1日の令和天皇即位にともない「10連休」という祝日が組まれ、令和新時代誕生に向けて観光旅行への期待が高まり、JR東海へ追い風が吹いていた。一方、リニア工事着工に異議を唱える川勝知事に対して、週刊誌、ネットメディアなどが厳しい批判を続け、中日新聞リニア特集は「国交相、沿線知事らの静岡包囲網はできつつある」とまで書き、川勝知事に対して四面楚歌の様相を呈していた。  ところが、8月に入り、JR東海が「工事期間中の湧水全量を戻すことはできない」と湧水の一部は山梨、長野に流出することをはっきり認めると、潮目が変わる。それまでの川勝知事への逆風はぴたりと消えた。  そして、10月12日から13日に掛けての台風19号の影響でリニアトンネル建設の工事道路となる静岡市東俣林道が崩落、西俣ヤードまでの特種東海の私道もずたずたになってしまい、準備段階の工事計画は大きく狂い始める。  そんな厳しい状況の中で、官邸の指示を受けた国交省鉄道局はJR東海と静岡県との間に積極的に調整に入ってきた。 国交省「新有識者会議」は打開策にならない  『リニア騒動の真相20「暗闘」が始まった』(11月4日)、『リニア騒動の真相21正々堂々の「ちゃぶ台返し」』(11月11日)、『リニア騒動の真相22早期着工の「視界」ゼロ』(11月18日)を読んでもらえれば分かる通り、川勝知事は国交省との「闘い」を始めたことがわかる。  昨年12月25日、国交省が提案した新たな枠組み「三者協議」設置に向けて、川勝知事は「環境省など他省庁の参画」「これまでの対話の評価」を求める2つの要請をした。「2つの要請」をうやむやにするかたちで、国交省は1月17日、新たな「国の有識者会議」設置を提案してきた。  トンネル工学や水文学の専門家で構成、県有識者会議の議論を検証する「新有識者会議」について、静岡経済新聞は『川勝平太知事がただ黙って、それを受け入れるはずもないだろう、たとえ、「新有識者会議」が設立されたとしても、屋上屋を重ねるムダな時間をさらに費やし、国交省が望む「解決策」に至るのにほど遠いことははっきりとしている。なぜ、国交省がそんな”奇策”(愚策?)に出たのか分からない』(1月20日『リニア騒動の真相30「北風」作戦は失敗』)と疑問を投げ掛けた。  『これ(新有識者会議)では、川勝知事の術策にはまって、土壺にはまった現実に変わりない。”奇策”は打開策にはならない』。新有識者会議の行方まで予測した。 再び、川勝知事の「ちゃぶ台返し」  まず、静岡県は、5条件(①会議の全面公開②議題は県の求める47項目③会議の目的はJR東海への指導④委員は中立公正を旨として、県の専門家部会長らも参加すること⑤会議の長は中立性を確認できる者)を提示、国交省の”思惑”をはずそうとした。2月6日難波喬司副知事らが国交省に出向き、「事前協議」という腹の探り合いが行われた。「事前協議」が繰り返されることで、「新有識者会議」設置は不透明になっていく。  そんな状況を打破したい国交省はやむを得ず5条件を飲むこととし、今月6日「新有識者会議」人選案を示した。この協議でも、難波副知事は人選案を検討して、回答するとしただけで結論めいたことを避けた。一方、何が何でも「新有識者会議」発足にたどり着きたい国交省は、静岡県の了解なしに人選案を決定事項のように報道各社に配布してしまう。  9日には、宇野護副社長が昨年9月に約束した西俣ヤードでの鉛直ボーリングについて、工事開始の見通しがつかない状況を明らかにした。東俣林道終点から西俣ヤードへの道路まで台風19号の影響でずたずたになり、その修復工事に時間が掛かっているのだという。なるべく早く着工したい希望だが、見通しは立っていない状況を説明した。  昨年12月初め、JR東海は東俣林道沼平ゲート近くの約1・5キロ間で舗装改良工事を始めたが、それさえもいまだに完了していない。冬季に西俣ヤードで工事に入ることなどできるはずもなかった。  翌日の10日、金子社長は南アルプストンネル静岡工区の2019年度着工を断念すると発表した。どう考えても、昨年10月の時点でトンネル本体工事はおろか準備工事にさえ入れないことは明らかだった。年度ぎりぎりになって本体工事の「着工断念」を宣言した。今後の見通しが不透明な中で、「新有識者会議」を唯一の打開策として「期待したい」と述べた。  その3日後、13日に川勝知事は金子社長の「期待」をこなごなに打ち砕いてしまった。  川勝知事は、記者会見で「有識者会議」人選案を否定、さらに、静岡県による「新有識者会議」委員公募まで発表した。国交省に事前連絡を行わない川勝知事の”独断専行”である。その掟破りが何を意味するのか?「新有識者会議」人選案を決定事項のように報道各社に配布したしっぺ返しだが、これによって川勝知事”独断専行”に国交省は文句をつけられなくなってしまった。  再び、川勝知事の見事な「ちゃぶ台返し」が行われたのだ。 静岡県「新有識者会議」委員候補の公募?   「新有識者会議」人選案に、「リニア新幹線を推進する人物が入っていることで中立性が疑われる」「土木系に偏っている」などと県の有識者会議委員が意見を寄せたことを説明。ただし、大成建設社外監査役以外の他の委員候補を了解したのかなど全く明らかにしていない。国交省の人選案を大問題にしているというシグナルには十分だった。  2月の定例会見で川勝知事は「新有識者会議」座長は、水循環基本法に携わった専門家であることが望ましい、と述べた。川勝知事は水循環基本法に関わった中川秀直・元自民党幹事長に面会、「新有識者会議」委員候補に高橋裕東大名誉教授(河川工学)、稲場紀久雄阪大名誉教授(環境文化史)、蔵治光一郎東大教授(森林水文学、森と水と人との関係)の3人を推薦してもらった。国交省はこの推薦候補を無視できないだろう。面倒な作業と手間が課せられることになった。  そして、もっと面倒なのは、寝耳に水の静岡県による委員候補公募が始まったことだ。3月末までを締め切りとして、候補者が出そろったところで県有識者会議委員が「委員」候補にふさわしいのかどうかを選定するのだという。それから、国交省に提案するらしい。川勝知事は「国民全体に論点を広げて、科学的技術的知見を持つ人が科学的エビデンスに基づいて問題を解決しようとしなければならない」と述べた。静岡県が推薦する「委員」候補が出そろったところで、その後に難波副知事らとの「事前協議」が開かれるのだろう。これでは「新有識者会議」発足はいつになるのか見えてこない。水嶋智鉄道局長は川勝知事の術策にはまってしまったのだ。  国交省はこのまま身動きできないだろう。めちゃくちゃにひっかき回された「新有識者会議」が発足したとしても、その存在理由に官邸などから疑問の声が上がるのは言うまでもない。  『「新有識者会議」という”奇策”は打開策にはならない』。予測した通りの結果になった。 JR東海「借金」5兆円に迫るがー  「東大教授の場合には国の施策を支援するのは重要な役割」(沖大幹著「東大教授」新潮新書)と書いてある通り、国交省が設置する以上、国交省の意向を受けた委員会構成になるのが当然である。静岡県の有識者会議メンバーを「当事者」と鉄道局審議官が口を滑らせたというが、事実、全くその通りである。「謝金」を払う側の意向を忖度するのが世の常である。  静岡県の求めた5条件の1つ「会議の目的はJR東海への指導」を遵守するのならば、「中立性」は無用であり、JR東海の事情をよく知っていたほうがいいに決まっている。トンネル工事を請け負った大成建設社外監査役こそぴったりの人選である。「新有識者会議」の真の目的、静岡県のこれまでの議論にいちゃもんを付けることが丸見えなのだろう。「川勝戦略」で見事にこなごなにされてしまったがー。  沖・東大教授は「(東大教授は)年度初めには一年間のスケジュールがほぼ埋まってしまう」と書いている。これから手間暇かけて候補を決めたあと、正式に委員委嘱できても会議開催は早くても夏以降だろう。その上、どんなに時間を掛けても国の思惑通りに「新有識者会議」は進行しないのも確かだ。『大きなお世話かもしれないが、鉄道局は「川勝戦略」の”源”をちゃんと押さえた上で、対抗できる「戦略」を考えたほうがいい。いまのままでは、川勝知事の術中にはまり込んだまま身動きできなくなる』(『リニア騒動の真相32川勝知事「戦略」の”源”は?』)。ぜひ、記事を読み返してから「戦略」を立ててほしい。  最初にJR東海の株価を示したのは、約6千億円の経常利益を稼ぎ出す東海道新幹線が、新型コロナでがたがたになっている事実をちゃんと押さえておいたほうがいいからである。大黒柱の新幹線に危機が及ぶ事態は初めてだろう。リニア工事が始まり、JR東海の借金は5兆円近くに膨らんでいる。もし、リニア開業が1年延びれば、数千億円単位で総工費はかさむ。2019年度静岡工区着工は断念したが、「新有識者会議」混乱の3月時点で、2020年度着工の危険性まではっきりと見える。  いずれ、新型コロナの「非常事態」は収束し、株価も上昇に転じるかもしれない。しかし、経済的損失も半端ではないことが分かるだろう。数字の力は絶対である。JR東海は「いばらの道」へ第一歩を踏み出す可能性が高い。 ※タイトル写真は、3月2日朝、静岡駅に到着した新幹線こだま号。新幹線に繁忙期料金はあるが、閑散期料金は設定されていない。「閑散期」など想定しない東海道新幹線でさえ危機に見舞われているのだ